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砂の国 異聞 ~「君の夢で世界が溢れるまで」外伝

登場人物 

  妖精国ヴァルヌス

ジュード・ラーク    ・・・・28歳  ”イースの三剣士”
ブラウン・ローゼズ  ・・・・21歳  召喚師
ティック・ミルス    ・・・・17歳   魔法使い
ヒル・ダルトン     ・・・・15歳   魔法使い
カッシリーナ・ザレッカ・・・・16歳   魔法使い
ゴルベール       ・・・58歳   イース・キャラバン「月の道」の長
マリー          ・・・22歳    女盗賊



第 9 話 「 幸運の中身 」


ジュードは箱を届けるという、本当に単純な依頼を、何故遂行できなかったのか、考えていた。おのれの弱さか、相手がうわてだったのか・・・いや、それだけではなかったのだ。
幸運・・・・・その魔法が自分にも起こったのだと、信じたのだ。馬を走らせながら、思い出したのは父の言葉だった。

「・・・お前の剣に迷いがあれば、それは死をお前にもたらす。お前は剣を持つ者だ。お前に安らぐ時が来なくても、それはお前が選んだ道だ。よいな、迷うなよ!お前はそういう道を選んだのだから」父は剣士になる息子を褒めたりしなかった。俺の噂を聞いても、いつも「お前がどこで死のうとも、覚悟はできているよ」という父だった・・・・・・

俺は一体、何を観ていたんだろう・・・ぎりっと奥歯をかみ締めると、再び馬に鞭をいれた。

ブラウン達は女盗賊が来る前に、2000騎はいようかという盗賊団をちりぢりにしようと、魔法で応戦していた。「砂の巨人よ、あれ!盗賊を檻に閉じ込めよ!」「砂漠のサソリ、砂漠のヘビ、砂漠の毒を!砂漠の牙を!盗賊に叩き込め!」「砂漠の砂は あり地獄 砂地獄 盗賊を砂の地獄に引きずり込め!!!」砂の巨人が、無数のサソリとヘビが、そして大きなあり地獄が、驚く盗賊達の前に次々現れた。

「風神よ、魔法使いを守る風の盾となれ!風塵結界!!雷神招来!悪しき魂に怒りの鉄槌を!!!雷よ あれ!!!」ブラウンは力の限り、神々を召喚した。

盗賊達は、その数で勝るものの、否応も無く魔法に倒されていった。天空には雷神が、そして風神は巨大な鳥の姿で、盗賊共を恐怖に陥れた。そして砂の巨人は、水の神の力でかちこちに固まり、盗賊を砂の檻に捕まえていった。しかし3人の魔法使い達は、その気力、魔法力共に、若いがゆえに続かなかった。段々と、魔法の詠唱が出来なくなっていた。

ブラウンは皆に自分の周りに集まるように叫んだ。


その少し前・・・・

ジュードは女盗賊マリーに追いついた。そして・・・・・・馬に乗ったまま、その剣を閃かせると、マリーの手の中のたずなと鞍の皮ひもを切り落とした。「きゃああ!!!」マリーは突然バランスを崩して落馬した。そして・・・ジュードから逃げ出した。ジュードは馬に乗ったまま、もう一方の男の馬のケツを思いっきり蹴り飛ばした。馬はいななくと、たまらずに暴れて物凄い勢いで走り出した。「と、とまれええ!!!!!」男の悲鳴を遠くに聞き流し、ジュードはマリーを追った。

マリーは息を切らせて、追いついたジュードに振り返ると、睨みつけた。
「・・・・・・・箱を、出せ。」ジュードはフードから顔を出さずに、一言いった。
マリーは、ジュードの姿を2倍くらいの大きさに感じ、一瞬ひるんだ。「・・・取引きしない?」
「・・・・・・・・・・・・・・」「わたいは、これを売る。その半分を、あんたにやるよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」「・・・じゃあ、3、7でどう?それならあんたが家を持つくらい、わけないんじゃない?ねえ・・・」

「箱をだせと  言った」ジュードは剣をすらりと抜いて マリーの目線に剣先を向けた。剣の磨かれた表にジュードの目がタカのように光った。マリーはジュードという男を、初めて知ったように思った・・・・ああ、残念!わたいはもう終わりだ・・・だがその時、マリーは思いがけない行動に出た。箱を、剣に刺したのだ!

「・・・・!!!!」その箱は、魔法で封印されていて、どんなものでも切られる事がなかった・・・筈であった。しかし・・・・「あああ!!!ひ、紐が切れてる!!!」マリーは捨て鉢になってこの箱を壊したい衝動から、剣に刺したが、まさか本当に切れる事があるとは思わなかった。
「魔法の!!!!中身は何?なんなの??」マリーは好奇心でいっぱいになって叫んだ。


・・・・・・・・・けっして、箱を 箱の中身を見てはいけません・・・・・・・・

ジュードは、はっとして気が付いた。しかし、一瞬箱の中に光る影を左目の端で見てしまった。
「ぎゃあああああああ!!!目、目が!!目が!!!!!焼ける!!!!」

ジュードの左目の端も、焼け付くように痛んだ。マリーはそれを見てしまったのだ。マリーの両目は焼けただれ、見るも無残だった。箱の中のものは、ジュードを一瞥すると、バサッと羽音を残して、飛び去っていった・・・・・・・・西の方角へ。

ジュードは唖然としたが、もう遅かった。マリーは目を押さえて闇雲に逃げ出した。ジュードはもう、マリーを追う気も失せ、馬に乗ると西の方へ向かった。その後、左目が弱視になってしまった。それが、またジュードの欠点となったのは、ずっと先の話である。

そのものは・・・なんだったのか?ジュードは兎に角、飛び去ったであろう方角を目指した。
by f-as-hearts | 2007-05-31 01:34 | ファンタジー小説Ⅳ

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