砂の国 異聞 ~「君の夢で世界が溢れるまで」外伝
2007年 05月 30日
登場人物
砂漠の国 イース
ジュード・ラーク ・・・・28歳 ”イースの三剣士”
ブラウン・ローゼズ ・・・・21歳 召喚師
ティック・ミルス ・・・・17歳 魔法使い
ヒル・ダルトン ・・・・15歳 魔法使い
カッシリーナ・ザレッカ・・・・16歳 魔法使い
ゴルベール ・・・58歳 イース・キャラバン「月の道」の長
第 7 話 「 オアシスの惨事 」
「・・・これも、幸運ってやつなのか?」ジュードは荷造りしながらブラウンに訊いた。「魔法使いが助けてくれる旅か・・・」「・・・いいえ、そうではないと思いますよ・・・私はこの印に従っただけです」ブラウンの手には赤い不思議な印が浮かび上がっていた。「炎の神が、何か私に伝えたいことがあったようです。今は何も語りませんが」ジュードは昨日からめまいのような感覚に囚われていた。「・・・悪いが、どうもオレはそういう話は苦手だ」
ゴルベールは鼻歌まじりにキャラバンの皆に号令をかけていた。「今日この先のオアシスに着けば、丁度半分の道のりまで歩いたことになる。皆、頑張ってくれ!」
オアシスが夕暮れの砂漠の美しいシルエットとなって現れた時、ジュードは本当に、こんな美しい世界はない、いつもそう思うのだった。今日もまた、椰子の木の葉が水の上に揺れる影を見られるのだ、緑のハーブの爽やかな匂いが、鼻孔の奥に甦ってくるのを感じた。冷たい水・・・新鮮な野菜・・・
ところが、そんな期待は、一瞬で砕け散った。「酷い!!!なんということを!!!!」オアシスは壊滅状態だった・・・人々は砂漠へ逃げた後だった。その村に火を放った者がいたせいだった。 全てが焼け焦げた匂い・・・・・
「・・・・助けてください・・・・・助けて・・・・・・」オアシスの家から、一人の女性が出てきて倒れた。
ジュードは駆け寄ると、急いで女性を助け起こした。「どうしたんだ、何があった?」「盗賊です、盗賊が・・・私の村を・・・・」女性は咳き込んだ。「私は、地下に隠れていたんです」
ジュード達は、女性を自分達のテントへ運ぶと、他に人がいないかオアシスをくまなく探した。しかし、すでに何処にも人はいなかった。「娘さん、残念だが・・・村には 今はもう誰もいない」ゴルベールが気の毒そうに女性に告げると、女性は気絶してしまった。
テントにいる女性を、キャラバンの女性達がかわるがわる面倒をみていた。その夜のうちに、女性は少しだけ、食べ物を口にできるようになった。そして、キャラバンの人に礼を言うと、自分の家へ帰ろうとした。「まだ、休まれた方がいいですよ。オアシスは、私達魔法使いが、明日の朝には元通りに直しますから」カッシリーナは、その女性に話しかけた。「・・・ありがとうございます。でも・・・私は、自分の力で生きていきますから。優しい魔法使いさん、ありがとう」
・・・それを外で聞いていたジュードは、テントから出てきた女性に、横を向いたまま一言つぶやいた。「・・・1人で生きていく気か?」女性は、毅然とした態度で、背筋を伸ばした。「ありがとうございました、ジュードさん・・・大丈夫、私はイースの女だから」
ジュードはちらっとその女性の顔を見た。女性はジュードの方を見ていなかった。「あー・・・・その、なんだ・・・・・・今夜の月は、満月で よかったな」「・・・・・そうね、明るいわ」
「・・・・・・・・・・・・くそっ!ヤメだ、オレには似あわねえ!あんた、俺達と来ないか?俺はあんたが一人でここに残るって言うのは、反対だね。また盗賊が来ないともかぎらねえし・・・なにより・・・・・・なにより・・・・・」女性は、いつの間にか じっとジュードを見ていた。
「・・・・・綺麗な女は、危ないってことを、知るべきだ」ジュードはいいながら、女性の腕を引っ張った。「そんなにオレを見るな!」女性のフードを目の下まで引き下げ、ジュードはその女性を抱きしめた。「・・・あんた、名前は?」「マリ・・・」2人の声は、そこで途切れた。
ブラウンは、ティックと賭けをしていた。あの2人はどうなるか?である。「勿論、私は2人が結婚する方に銀貨3枚」ブラウンが言うと、ティックは「・・・・・・じゃあ、オレは別れる方に4枚」「・・・・・ははあ、お前もあの娘が気に入ったのか?」「ばっ!!!馬鹿いえ!!!!あのジュードだぞ?オレは、意外性の方に賭けるよ」「・・・・・・ほほう、成る程」
そんなこんなで、夜が明けて、オアシスを魔法使い達がなんとか修復した頃、ジュードはゴルベールにマリーを連れて行くという話を通していた。ゴルベールのにやにやにやけた面は、二度と見たくない、そう思いながら。
(*・・・・・・これは[君の夢で世界が溢れるまで]の年より19年前の物語です)
砂漠の国 イース
ジュード・ラーク ・・・・28歳 ”イースの三剣士”
ブラウン・ローゼズ ・・・・21歳 召喚師
ティック・ミルス ・・・・17歳 魔法使い
ヒル・ダルトン ・・・・15歳 魔法使い
カッシリーナ・ザレッカ・・・・16歳 魔法使い
ゴルベール ・・・58歳 イース・キャラバン「月の道」の長
第 7 話 「 オアシスの惨事 」
「・・・これも、幸運ってやつなのか?」ジュードは荷造りしながらブラウンに訊いた。「魔法使いが助けてくれる旅か・・・」「・・・いいえ、そうではないと思いますよ・・・私はこの印に従っただけです」ブラウンの手には赤い不思議な印が浮かび上がっていた。「炎の神が、何か私に伝えたいことがあったようです。今は何も語りませんが」ジュードは昨日からめまいのような感覚に囚われていた。「・・・悪いが、どうもオレはそういう話は苦手だ」
ゴルベールは鼻歌まじりにキャラバンの皆に号令をかけていた。「今日この先のオアシスに着けば、丁度半分の道のりまで歩いたことになる。皆、頑張ってくれ!」
オアシスが夕暮れの砂漠の美しいシルエットとなって現れた時、ジュードは本当に、こんな美しい世界はない、いつもそう思うのだった。今日もまた、椰子の木の葉が水の上に揺れる影を見られるのだ、緑のハーブの爽やかな匂いが、鼻孔の奥に甦ってくるのを感じた。冷たい水・・・新鮮な野菜・・・
ところが、そんな期待は、一瞬で砕け散った。「酷い!!!なんということを!!!!」オアシスは壊滅状態だった・・・人々は砂漠へ逃げた後だった。その村に火を放った者がいたせいだった。 全てが焼け焦げた匂い・・・・・
「・・・・助けてください・・・・・助けて・・・・・・」オアシスの家から、一人の女性が出てきて倒れた。
ジュードは駆け寄ると、急いで女性を助け起こした。「どうしたんだ、何があった?」「盗賊です、盗賊が・・・私の村を・・・・」女性は咳き込んだ。「私は、地下に隠れていたんです」
ジュード達は、女性を自分達のテントへ運ぶと、他に人がいないかオアシスをくまなく探した。しかし、すでに何処にも人はいなかった。「娘さん、残念だが・・・村には 今はもう誰もいない」ゴルベールが気の毒そうに女性に告げると、女性は気絶してしまった。
テントにいる女性を、キャラバンの女性達がかわるがわる面倒をみていた。その夜のうちに、女性は少しだけ、食べ物を口にできるようになった。そして、キャラバンの人に礼を言うと、自分の家へ帰ろうとした。「まだ、休まれた方がいいですよ。オアシスは、私達魔法使いが、明日の朝には元通りに直しますから」カッシリーナは、その女性に話しかけた。「・・・ありがとうございます。でも・・・私は、自分の力で生きていきますから。優しい魔法使いさん、ありがとう」
・・・それを外で聞いていたジュードは、テントから出てきた女性に、横を向いたまま一言つぶやいた。「・・・1人で生きていく気か?」女性は、毅然とした態度で、背筋を伸ばした。「ありがとうございました、ジュードさん・・・大丈夫、私はイースの女だから」
ジュードはちらっとその女性の顔を見た。女性はジュードの方を見ていなかった。「あー・・・・その、なんだ・・・・・・今夜の月は、満月で よかったな」「・・・・・そうね、明るいわ」
「・・・・・・・・・・・・くそっ!ヤメだ、オレには似あわねえ!あんた、俺達と来ないか?俺はあんたが一人でここに残るって言うのは、反対だね。また盗賊が来ないともかぎらねえし・・・なにより・・・・・・なにより・・・・・」女性は、いつの間にか じっとジュードを見ていた。
「・・・・・綺麗な女は、危ないってことを、知るべきだ」ジュードはいいながら、女性の腕を引っ張った。「そんなにオレを見るな!」女性のフードを目の下まで引き下げ、ジュードはその女性を抱きしめた。「・・・あんた、名前は?」「マリ・・・」2人の声は、そこで途切れた。
ブラウンは、ティックと賭けをしていた。あの2人はどうなるか?である。「勿論、私は2人が結婚する方に銀貨3枚」ブラウンが言うと、ティックは「・・・・・・じゃあ、オレは別れる方に4枚」「・・・・・ははあ、お前もあの娘が気に入ったのか?」「ばっ!!!馬鹿いえ!!!!あのジュードだぞ?オレは、意外性の方に賭けるよ」「・・・・・・ほほう、成る程」
そんなこんなで、夜が明けて、オアシスを魔法使い達がなんとか修復した頃、ジュードはゴルベールにマリーを連れて行くという話を通していた。ゴルベールのにやにやにやけた面は、二度と見たくない、そう思いながら。
(*・・・・・・これは[君の夢で世界が溢れるまで]の年より19年前の物語です)
by f-as-hearts
| 2007-05-30 00:29
| ファンタジー小説Ⅳ