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闇色の魔法使い~ブラックウィザード

第 3 話 「  5本の 杖  」


ブラックウィザード・ラウムグルーズは、自分への要望を聞いて
目を細めた。
片方の、羽根になっている手でカザードを指差すと、言った。

「 その魔法については、お前達に話した覚えなど無いが。

・・・・どうやって、知った?
私の、弟子どももまだ知らぬ事だ。


・・・・はは~ん?

その顔は、本当に驚いているな、演技じゃなく?
呼吸困難なフナに似ている。

・・・・そう、か。

じゃあ本気で創らねばならない、か。
どのみち、神々と遊べなくなるのなら、こんな世の中に
興味など無い。

神々の威光、結構じゃないか。
神の力だと信じて、神々への信仰心が戻るなら
・・・・まあ、古い手ではあるが。」

ラウムグルーズは腕を広げてそれを巻きつけるような仕草を
した。
ひゅうっと小さな竜巻が巻き起こり、散らばっていた羽根が
魔法使いの身体へと集まった。

姿が巨大な真っ黒の鳥になると、カザードに向かって、言った。

「 何が必要か を 後々 知らせる。

それまで、待っているがよい。」

バサバサバサ!!!!

大神官カザードは、飛んでゆくラウムグルーズの姿を、ずっと
目で追っていた。
そして、何も訊けなかった事を、後悔していた。
魔法使いは、何でも知っていそうだった・・・・だったら、もっと
あれこれ訊けば良かった・・・・・・
だが、あの顔を見たら、何も言えない。
あんなに若く見えるなんて!!

「どうしてそんなに、長生きなんだ?!
8代目って・・・・・・・一体あなたは何歳なんですか???
・・・・今度は、絶対に訊こう。」

大神殿に戻ったカザードは、中庭から聞こえてくる歌声に引き寄せられ
人々の輪の中に入った。

ミーリアが何人かの演奏者の前で歌っていた。


♪ 可愛い私の猫は お気に入りの木の枝で寝ている

時々寝ぼけて転がりそうで 私はいつもうろうろ

ポットのお茶は飲み頃で パンはかまどでふっくら

もういかなきゃいけないのに

猫 猫 私の可愛い猫 降りておいで

おかみさんにどやされる もうお茶に遅れちゃう

私は何度も呼びかける

猫 猫 私の可愛い猫よ

笑ってないで 降りてきて おかみさんが鬼になっちゃうよ ♪



わはははっ!!!面白い歌詞に皆が笑っていた。 

カザードは微笑んで娘を見つめていた。
大神官に気がついた男が、歌詞について話し始めた。

「なんでも、街中で流行っているらしいです。あ、ざれ歌ですよ。」
「そうらしいな。娘と一緒に演奏しているのは?」
「街の通りで演奏している者達です。音楽家の卵ですねえ。
みんな器用に歌に合わせて音を鳴らしていますね。」
「ほお・・・・・・」

♪ ぽんぽんぽん

あの娘はいつも 跳ねる様に 歩く

おしとやかになさい と 言われても 

静かになさい と 言われても

ぽんぽんぽん

兎も 子馬も 

ぽんぽんぽん

バッタも カエルも

ぽんぽんぽん

言われないでしょ

まだまだこどもさ

ぽんぽんぽん

だって楽しい

ぽんぽんぽん

跳ねて 飛んで ゆかいにね

まだまだこどもさ

大人だってぽんぽんぽん

ほら 跳ねて踊って そんな日は

みんなでぽんぽんぽん ♪

「これはこども達の歌ですね~!ほらこども達が一緒に跳ねて歌いだした。」

カザードはミーリアの楽しそうな歌声を聴きながら、神殿の執務室へ戻った。
さっきまでの出来事が、嘘のようだ・・・・・
私が会っていた人物のことを、ミーリアはどう思うだろう・・・・・

そんな想像がふっと浮かんで消えた。

その頃 ブラックウィザード・ラウムグルーズは、巨大な黒い鳥の姿で
弟子達が修行しているフロル火山へと舞い降りた。

そこは黒煙をあげ溶岩が流れる活火山で、真冬でも火山の熱で地表近くは
50℃以上だった。2000メートル級の火山だったが、魔法使い達の修行場
としては、これほど環境が複雑且つ変化に富んでいる場所は無かった。
自然のエネルギーに神々の力・・・・魔法の、そのエネルギーそのものを会得
するには、特殊な常人を超えた修行が必要だとラウムグルーズは弟子に
言っていた。弟子達の中には、環境に適応できず辞めてゆく者も多数いた。
師が戻ってきたのを見て、5人の魔法使い達が出迎えた。

それぞれが個性的だ。・・・・ラウムグルーズは思っていた。
だがひとつ足りないものがある・・・・

5人はそれぞれに師が降り立つのを待っている。

「 ソーソラー 、 ツエラツェトス 、 カーグラー 、 エークメリア 、 レトス。
皆、かわりはないようだな。」

1番弟子の”銀の爪”ソーソラーがお辞儀をしてから答えた。
「 始祖様も麗しく。 何か良い兆しでもございましたか。」
「 夢見でも良かったのか?ソーソラー?」
「 いえ、まったく逆でございまして。

どうやら、我々に別離の時が、迫っているようにございます。」

”緑の手”のレトスが驚いて訊いた。
「 にいさま、それは本当ですか?いよいよ私達は、始祖様に独立を認められる
ということですか?」杖を握る手を振り回して、何故か喜んでいる。

「 レトス。おまえだけはどうやっても一人前にはなれないだろうと、私は断言
できる。」そう言ったのは、”黒い賢者”と異名をとるツエラツェトスだった。

”紅炎の魔女”エークメリアはラウムグールズをじっと見つめている。
”十音の幻”カーグラーは地面に杖で紋章を描いていた。

ラウムグルーズにとって弟子達は、自身の子供のようでもあり、魔法の杖の
ようなものでもあった。彼らにはそれぞれの魔法使いとしての大きな潮流が
あると常に話していた。

「 別離、その通りだよ。

今度こそ、お前達との永遠の別れだな。
・・・・なに、私はいつも先のことを話し過ぎると言われるが。ソーソラー。
他の者達は、どんな夢見があった?」

「・・・・神々が円卓においでのようでした。」ツエラツェトスが言った。
「しばらくこの地を離れるとか・・・・中には、反対する神もいらっしゃいましたが。」
「違うよ、反対してないよ。ただもう少し待ったらどうよ~~って言ってたんだよ?」
レトスが続けて言った。「なんかさあ、ケンカしてるって感じだったけどね??」

エークメリアはラウムグルーズに言った。
「ブラックウィザードの称号は、是非ともわたくしに。始祖様のお考えを
一番理解出来る自信があります。」
「エークメリア。
そなたの願いは叶わないだろう。そろそろ、わかっても良い頃だと・・・・」
「そんなこと、わからないわ!!!」カーグラーの言葉に、切れたようにエークメリアは
叫んだ。「わたくしが、ラウムグルーズ様と離れて生きていけると思うの?!」
「始祖様のご質問に答えるように。

私は大きな黒い結界が、この世を覆うように広がる夢を見ました。
ですから、別離とは、その魔法のせいか、と思いましたが。」
ソーソラーの言葉に皆が驚いたように始祖を見つめた。

ツエラツェトスがゆっくりと言った。
「はたして・・・・これらの夢の順はどのようになっているのでしょうか?」

ラウムグルーズはじっと目を閉じた。
そして弟子達に話していなかった魔法のことを話し始めた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2013-12-31 00:09 | ブラックウィザード

タロット占い師ASのブログです。


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