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夢造りのブロックハウスで 後編

ワコがカルタに聞いた。
「このブロックはどうなっているんですか?」

カルタは壁に寄りかかりながら、ロボット基地を指差した。

「これのこと?」「そうです。」「さっきの少年のだよ」
「少年が組み立てられなかったことってなんだったんですか?」
「そうだね・・・・・・・・

自分の、気持ちかな?」
「え?気持ちって・・・・・・組み立てるものなんですか??」

カルタはちょっとだけ目を閉じた。

「うまく・・・・・言えないことって、あるよね。
そういう、感情とか、気持ちって・・・・・・・・ある、んじゃないかな」

ワコがどんな顔をしているかわかる。

「ワコはきっと、なんでも言えるんだね。
だから、ここにずっといられるんだな・・・・・・」
「なんでも言えるというか、自分では言いたいことがはっきりしている
とは思いますけど?」

カルタは目を開けると、ワコを見た。
「だからかな。

世界は2ついらないんだね。全部、ひとつなんだね。」

「それは、普通ですよね?」
「誰にもそれは答えられない問題みたいだよ。」

カルタの言葉に、ワコは反論した。

「でも、答がなければ、悩み続けるんじゃないですか?」


組み立てられたロボットは、すうっと消えていった。

「・・・・・・答えはあっても、それを受け取るかどうするかは
自由だと思うから。

もしかしたら、違う答えも出てくるかもしれない。

悩んでも、苦しんでも、自分で出した答なら、きっと納得できるんだ。」

ワコは頷いていた。

「カルタさんは、答がはっきりしてるじゃないですか。」
「・・・・・・・自分に、言い聞かせているだけだけどね。」
「言い聞かせてるんですか?やっぱり面白いですね!」
「やっぱりって・・・・・・面白いかなあ??」

カルタはワコの言葉に時々ムッとする時もあると言った。
「でも、ワコはワコだって思う。」
「カルタさんも同じですよね。」
「ありがとう。」「どういたしまして。」


ワコが扉に消えて、またノックの音がした。
椅子はひとつ。

「この前の・・・・・・」

「はい。

カルタさんに見てもらいたいもの、持ってきました。」


カルタはその手の中にある物を、見ようとしたが、あきらめた。
どうしても光って、その形も色もわからないんだと、正直に言った。

「でも、君が置いていってくれるなら、きっと見えるようになる。」

「置いていったら、忘れてしまわないかな・・・・・」


カルタはその手の中の物を受け取ると、立ち上がって天井を見上げた。
天井は、この空間が夢で出来た家であると教えてくれるように、すうっと
透き通り・・・・・・・

沢山の小さな星座の並ぶ空間になった。


「誰かが忘れていったものは、失くしたと思っていても

時間が覚えていてくれるんだ。

君がこれを思い出してあげたら、これも喜んでだんだんと形が
はっきりするみたいなんだ。

今はこれが成長する為に、君にも時間が必要だって思う。


・・・あれは砂場で遊んでいた子どもの、大切にしていたおもちゃだったみたい。

そしてあれは、もうどこにもない世界一綺麗だった夕焼けの思い出だって。

写真に残せたらよかったのにって言ってたよ。」


それが星座になっているとカルタが言った。

「僕が、みてもらいたいものは・・・・・・・・・」

その話をしようとしている顔は、とても落ち着いていた。



ノックの音がした。

椅子が現れると、すぐにそこへカルタの父親がやってきた。

「カルタ。

そろそろ、引越しの準備をしてくれ。

・・・・・・勝手なようだが、もう時間がないんだ。
いつまでも、お前のわがままには付き合えない。

学校なら、新しい赴任先にも良いところがあるんだ。
だから、いいな?明日には荷造りをしておくんだぞ。」

カルタは黙って頷いた。

父が出て行って、しばらくボーっとしていたが、ワコが話しかけてきた。

「カルタさん。

やっぱり引越しすることになったんですね?」

「うん・・・・・・・・

現実の僕は、まだ高校生だ。

君よりずっと年下で、頼りなくて、1人では何も出来ない。

ここで沢山のことを見てきたけど、時間は僕に何をさせようと
しているんだろう。」

ワコは天井を見上げた。

そこはまた様々な星座が浮かぶ空間になっていた。


「仕事を、してきたじゃないですか。

映像も音楽も生きる意味も、一緒に創り上げる仕事の中に
あったじゃないですか。
感情や想い出もカルタさんの仕事のおかげで、もう一度創り直せた
人達がいるって、素晴らしいと思う。」


「・・・・・ワコ、ありがとう。

だけど、きっと現実の僕はまだーーーーーー」



・・・・・・・・・バタン・・・・・・・・・











ワコは泣いていた。


「・・・・・・・・またカルタさんとお別れなんですね。

でも、きっとまた、新しいカルタさんに逢える・・・・・・


だって・・・・・・・


私は、カルタさんの夢で・・・・・・・・・・

時間が覚えていてくれるカルタさんの夢の住人だから。


カルタさん。

あなたがどんな人になっていても、私にはわかるんだから。

あなたがどんなにこの世界を大切に想っていたか・・・・・



・・・・あなたを待っている人が、いるよ。」

ワコはメッセージを書いた。







・・・・・・・・・・この世界で繋がっているカルタへ・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・送信・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・END・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2013-01-20 00:00 | 絵のない絵本

タロット占い師ASのブログです。


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