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夢造りのブロックハウスで

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カルタは夢をブロックのような塊にして、組み立てることが仕事だった。
彼の仕事は、彼を知る人からすると、いつの間に出来たのかわからない
というもので、彼の噂はとりとめのない、とらえどころもない不思議として
まるで嘘のような言葉で彩られていた。

彼を知る人々のその証言。

「私は彼とひとことふたことしか話していない。なのに、建築現場の
監督に任せたように、出来上がってきた。」
「仕事?ええ。お願いしたわ。速かったかって?
言ったそばから、何故か私の頭の中に、内容まで説明がつくように
組み立てられていたわよ。・・・何って、頼んだ仕事よ。」
「はい。つまり自分で考えたことが、整理できた感じです。
彼のやったこと、ですか?・・・まあ、彼に会ってみればいいんじゃないですか?」


カルタはいつも部屋にいた。
特別、何かを必要としたこともなかったが、S・O・Sには非常に敏感であった。

カルタにはカルタと対照的な、とても愛想のいい秘書兼事務員がいた。

「カルタさん。
今度のお仕事は、その方ですか?」
年頃は29歳名前はワコ。自称イケてる勝負師のその女性は、カルタの仕事の場である
サイトの常連であり、いつの間にか有能な秘書として自分を売り込んで、なんと
いついてしまったのだった。

「それにしても・・・お客様で大賑わいですね。この人、また来てますよ?」
どこが有能な秘書なんだと反発確実なのんびりさだが、カルタにはこのいい加減さが
そこそこいい感じだという。

「お客様がおみえです。お通ししますね(笑)」

お客様は親子連れだ。

ワコが母親に説明している。
「カルタさんとお話をしていただいて、1時間でこれくらいです(笑)」

カルタの部屋の前の扉で、2人は話し合っていた。
「こんな格好でよかったかしら?」「僕はここに何しにきたんだろう?」
「カルタさんに会いたいっていってたじゃない」「でもここにこなければ
いけないなんて、誰も言わなかった」「でも着たんだからいいじゃない」
「だってここは気持ちが悪い」「そうかしら?静かだし綺麗じゃない」

「もういいですか?入ってもらえます?時間ばかり過ぎますけど?」

母親が扉に触ろうとしたのを、ワコが止めた。
「すみませんが、息子さんが扉に触ろうとしています。」

母親は手を引っ込めた。
扉のノブを息子が回して、2人は部屋の中へと入った。

カルタは机を背にして椅子に座って、こちらを向いていた。
顔は上げず、手前の2つの椅子を見つめていた。

椅子に先に座ったのは、母親だった。
息子はうろうろと部屋を歩き回っていた。

カルタはそのままの姿勢で、何も言わずに待っていた。

「ここに座らないと」母親が言った。
「あなたが会いにきたんでしょ」

息子は答えなかった。

「何故あなたは私の言うことを聞かないの?」

息子はちょっとだけカルタを見た。
そして言った。

「ここは変な場所ですね」

カルタは少し目を上げたように見えた。
カルタは小さな声で言った。

「気になる?」

息子は頷いた。

「なんだか、かたつむりが・・・・・」

窓から外をのぞいて、息子が言った。

「殻をとられてしまう場所みたいだ・・・」



母親の姿が消えた。

「殻、消えちゃった。」
「そうだね。・・・・・寒いかい?」


「ううん?

僕、何しにきたんだっけ・・・・・・・・・


そうだ・・・・・・・・・・

カルタさんに、見せたいものがあったんだ・・・・・・・」


一生懸命どこに仕舞ったか考えている様子だ。

「・・・どこにしまったんだろうね?」

「・・・・・・・時間がないんですよね・・・・・・・・

どうしよう・・・・・・」



カルタは静かに待っている。


ドアのノック音が聴こえた。



そしていきなり風景が変わった。

カルタの前には椅子が1つ。


「カルタさん、こんにちは。

私は以前、小説が書けなくなって伺った者です。
覚えていらっしゃいますか?」


カルタはじっと聴いていた。

その人はとても熱心に話をしていた。

どうやら書きたいことができたらしい。


ノックの音がした。


カルタは何も無い部屋で横になった。

目をつぶると、自分の部屋が見えた。


「カルタ、どうしたんだよ?また妄想中だったのか?」
「ちがうよ、寝てたんだよ。」
「もっと悪いよ!普通、ゲーム中に寝る奴が・・・あ、いるわ。
悪い、おまえだけじゃなかったな!」

カチャカチャ・・・・・・・

「ごめん。俺、離脱する。」

カルタはそういうと、PCのヘッドフォンを外した。

カルタは特別何かを必要としたことがなかった。
この生活が嫌になったこともないし、大変だと思ったこともなかった。

夢の世界ではなく、そこは本当に実在していて、それに気づいてからは
カルタの2つの世界は調和し始めた。
まるでいつか読んだファンタジーのようだなと、そう思う反面、何故自分の
世界が2つになってしまったのか考えてみるのだ。


「カルタさん、お休み中にすみません。
この人の依頼は、どうしますか?」

ワコは両方のカルタを知っている。この部屋とPCの中とを行き来するカルタ
・・・そこで行なわれる不思議な仕事・・・

「?」
「組み立てがどうとか?よくわからないけど上手くいかないそうです。」

部屋の中に椅子が現れた。


扉から現れたのは、可愛い少年だった。

「カルタ~~!おまえなんでもできるんだって?」
「ううん?

もしかして、君は、できるの?」

「できるよ~~!!見たことがあることならなんでもね!」
「・・・・・じゃあ、私に用事はないんじゃないかな?」

「だからさ~~!!見たことがあることだけなんだってば!

なんかさ、見ることができるものは、本物で、
見れないものって本当かなって思わない?

僕がここに来たのは、カルタを見に来たんだ~!」

「そうか・・・」

「それでね、僕はよく怒られるんだけど~!
人の話を聞いてても、あんまり頭ン中に入っていかないんだ。

どうやったら、人の話が面白くなるかな?」

「聞きながら、絵を思い浮かべればいいと思うな」

「絵?・・・・・・まってよ、それさ、どんな絵でもいいの?」
「見たことがあれば、思い浮かぶんじゃないかな」


少年は首をかしげた。
「・・・・・・・・じゃあさ、この前、僕人の話を聞けって
怒られたんだけど・・・・・

雷みたいだったんだけど、どしゃぶりの中で立ってる
みたいだったんだけど・・・そんな絵?

なんかさ、もっとひどくない?」

「どしゃぶりの中にいるのが、カエルなら、いいんじゃないかな」
「カエルかあ~~~~!!!

カルタ、カエル好きなんだ?

僕は鳥の方が好きなんだ~~!
でもさ、目の前にいる人間はどうやっても別の動物には
見えないし・・・・・・・

どうしよう・・・・・」


「・・・君なら、また新しいことを思いつくよ。

ここにも来れたんだから。」



そう言った後、ノックの音がした。

椅子は消えた。

その代わりに、空気のような透明なブロックが現れた。


「・・・・・お礼ってことかな?」

それはとても綺麗な色で、透明な中に光があって、くるくる回って
全体を明るくしたり、時々暗くなったりして、まるで表情のようだった。

大きいのが一つ現れて、その後、小さいのや、他にも沢山・・・・・・・


組み立ててみよう・・・・・・・・

あの少年が組み立てられなくて悩んでいたのは、これなのかもしれない・・・・

ワコが、あの少年が言ってたって・・・・・・・・



最初は・・・・・・どれなのかな?

なにしろ、崩れたりしないように、組み合わされるところへ置いていこう。

バラバラでもこれとこれは合う。そしてこれはここがいい。


カルタは楽しんでいた。




出来上がってみると、それはロボットのようにも見えた。

全体が光る、透明なロボットの家・・・・・


やった~~~~!!かっこいい!!!

秘密の移動基地だ!!!!!

声が聴こえるような気がした。


カルタはそれを見ながら、眠りについていた。





・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2013-01-15 00:00 | 絵のない絵本

タロット占い師ASのブログです。


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