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予言のリング 6

カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェリスト
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト


エメラダ            ・・・ 68歳   バイオリニスト 故ノーザンクロスの妻



第 6 話


指揮者テグンはコンコードとの電話の後、ノーザンクロスの遺作をどう発表するのが
一番いいのか、過去の事例を紐解いていた。

テグンは、コンコードがノーザンクロスと直接話をしている、それを確信した。
遺作があることを知っていた、それと、勿論彼が奥さんの話をしたからだった。

しかしノーザンクロスの遺言は奥さんにしかわからない筈だし、コンコードの言う通り
事情があるのなら、いくら美術教会に贈られた物だとしても、勝手に世に出せる代物
ではないのだ。
だが、一度聴いたからには、自分にもこの遺作に関わる権利がある。そう強く思うのだ。

コンコードは電話でテグンの話を聞き、奥さんの了承があれば真実を話してもいいと
言った。

「コンコードさん。私はこの遺作をオーケストラで演奏したいんです。
キンググランドオーケストラの演奏者が役不足だとは思わないが、私は・・・・・・
この楽曲の演奏者達を抜きには、この曲を語れないと思っています。

・・・・コンコードさん、この曲はあなたの代表作でしょう?

きっと、そうなると、私は確信しているんです」

コンコードは何も言わなかった。電話口で彼はふうっと息を吐いた。
「・・・話はわかりました。それでは私は、用がありますから・・・」・・・プッ・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・海辺のノーザンクロスの家・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


カシュクは奥さんの話を聞いて、立ち上がって手を出した。

「奥さん・・・・私は、この曲は奥さんに贈られた最後のプレゼントだったんだと
知らなかったんです。ごめんなさい。勝手なことを言いました。

この曲の想いをどんなに誰かが語っても、それは他人の言葉になります。
奥さんが受け取った心は、いつまでも色褪せないんですね。
それが、一番大切なことだと思います。

美術教会には、私から話をします。
大丈夫です。私も、あなたからこの曲を聴かせてもらえて幸せでした。
この曲は、お返しします。」


その言葉に、老婆はこらえきれなくなって泣き出した。
エシェリーは傍にいって肩を抱きしめた。「奥様・・・・・・・」

「・・・・・・・・この・・・・曲は・・・・・・・

私の、支えだったんですよ・・・・・・・・・・・・・・ずっと・・・ずっと・・・・・

ごめんねえ・・・・・・こんな・・・に・・いい曲なのに・・・・・


主人が    私の こどもだって言って くれた・・・それが

それが・・・・・ほんとに 嬉しかったんですよ・・・・・・・・・・・・




・・・決心 というのは  いつまでたっても・・・・・できないんですよ・・・・・

いつだってね・・・・悔やんでばかり・・・で・・・・・・・・



だから、あなたのリングに 訊いてみたかったんです・・・・



・・・私は あなたの曲を 皆に 聴いてもらったら

それで  それを  幸せに 感じられるんでしょうかって・・・・・」






リングが、 鳴った。


「・・・・・・あなた。  ありがとう・・・・・・・・・」


エシェリーはカシュクに訊いた。


「本当に?」

「はい・・・・・・・・・・」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・美術教会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



レンカはジュライの言葉に、頷いていた。

「ジュライさん・・・・・・・

私は、奥さんが・・・・・・もしかしたら、曲を聴いて・・・そのことに、気がついて
いたんじゃないかと、思います。
そして、何も言わずに曲を大切にされてきた。

ジュライさんが、もしこのことを話してくださらなかったら、私は不躾にあなたや
あなたのお子さんを傷つけていたかもしれません。

・・・この曲を聴いて、キンググランドオーケストラの指揮者テグンは私に
3人目の人物が、若くてとても瑞々しい演奏をしている、まるで若い頃の
ノーザンクロスだと絶賛していました。

ですから・・・私は、もしかしたらと思っていました。



・・・・・・ひとつだけ、わかっていることがあります。

ノーザンクロスは、この3人とでなければ、この曲を創り上げなかった。
・・・あなたと、あなたのお子さんが、賛同してくださらなければ、この
遺作は発表しません」

ジュライは顔を上げた。



「・・・・・・・・・・・・・曲を、   聴かせてください・・・・・・・・・・

  もう一度、あの曲を・・・・・・・・・・・・・」



ジュライは ひとりで音響の部屋で、曲を聴いた。

ジュライは手が震えているのを感じた。





・・・・これ は    私の 音 ?

・・・・私 は     こんな 音を  弾いて ・・・・・・・!!!

震えが 止まらなかった。



レンカはその後、ジュライから驚くような言葉を聞いた。

「あの音を、どうやって出したのか、わからない・・・・・・
本当に私は、あんなに良い音を 弾けたんでしょうか?」

「・・・・・・・・?え??それは、どういうことですか?」

「言葉の通りです。・・・・・・これは、ノーザンクロスがいたから出来たんです。
今の私に、出来るかどうか、自信がありません・・・」

レンカは言葉がなかった。

音楽家の、その楽曲への心は推し量れるものではないと、その時
気づいたのであった。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-09-12 11:20 | ファンタジー・予言のリング

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