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予言のリング 3

カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェロ奏者
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト





第 3 話



12年前、アラバイン国を旅行中列車事故で亡くなったノーザンクロス・・・
レンカはその当時の新聞記事を読んでいた。

死亡者名

ーノーザンクロス  61歳  世界的バイオリニスト。 アラバイン国で演奏を
行い帰国する為に乗った列車で事故に遭う。

「・・・これだけ、か・・・・この時の列車事故の死者数 57名。重軽傷者 118名・・・
列車事故としても、未曾有の事故だったんだな・・・」


電話が鳴った。「ああ、テグン・・・・・・え? 許可?・・・誰の・・・・・奥さん?
ああ確かに、聞いていないが。・・・・・・・・・・コンコードが?!

へえ・・・・・・・わかった、それは気になるな!!!こっちで確認しよう。
ありがとう。・・・・・・・・・わかったよ!急ぐって!!!」

レンカはカシュクが仕事中は入るなという作業所に、軽くノックをした。

返事が無い。

コンコン・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コンコン!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おおい!!!!カシュク!!!いるんだろ?!」

バン!!!ドアを開けて入ると、そこにカシュクの姿はなかった。

「??どこにいったんだ??メシか??お~~~~い、カシュク~~!!
くそっ 仕方が無い」

電話を鳴らしてみたがこれにも出ない。
「どこにいったんだ??あいつ~~~~!!!」






その頃、カシュクはルクール帝国でエシェリーと会っていた。

「仕事中だったんだろ?呼び出してすまない」「いいえ、カシュク・・・こそ、こちらに
お仕事ですか?」「はい。先日の海辺のお婆さんにまた会いに行こうと思って・・・」
「そうだったんですか。・・・じゃ、私が車で」「仕事が終わってからでいいよ。待つから」
「オリランドー教官に頼めますから、大丈夫です。カシュク殿の手伝いだと言えば
彼は全て引き受けてくれます」「・・・・・・・・どうもありがとう」「それじゃ、行きましょう!」


カシュクはエシェリーにあの老婆がノーザンクロスというバイオリニストの妻だという
話をした。エシェリーは音楽関係は詳しくなかったらしく、頷くだけだった。カシュクも
曲を聴いても、誰だかわからなかったから同じだと言った。

海は穏やかな様子だった。また犬がワンッと吼えてこちらに近寄ってきた。
「あら・・・・・・また来てくれたのかい。ありがとう」「こちらこそ。お邪魔します」


この前訪ねた時と変わらないその家の様子に、カシュクは時間がここでは過ぎて
いるのだろうか?と不思議な思いに囚われて、そう話してみた。

「・・・主人にも、よくそう言われましたよ。
ここは変わらないね、それがいいんだって・・・」

カシュクは頷いた。エシェリーはにこにこと微笑んでいる。

「その・・・ノーザンクロスさんの曲を、贈って頂いて、感謝しています。
私は音楽に詳しくないんです。ここに伺った時もリングの前の持ち主が演奏家で
不慮の事故に遭ったとしか知らなくて。素晴らしいバイオリニストだったんですね。

今日は、実は・・・
美術教会を代表してレンカ最高顧問が、あの遺作を美術教会が責任を持って
世の中に送り出したいというので、その許可を戴きに参りました」

老婆はじっと考えているようだった。

「・・・・・・・そうですか。


やはり、あの人の作品は、そういうことになるのでしょうね・・・」

エシェリーは老婆の様子が辛そうなのに気がついて声をかけた。

「ごめんなさい、私はカシュクが言うその曲は知らないんですが、もしかしたら・・・
何か、思い出のある曲なんですか?」

エシェリーの問い掛けは、老婆に少し時間を与えたようだった。


「・・・・・・・・・ええ・・・・・・そうねえ・・・・・・・・

なにもかも、思い出なのよ・・・・・・・・・・・・・・

カシュクさんに、あの曲を贈りたくなったのも・・・・・・・・




私は、どうしたらいいのか、わからなくなって、ね。

・・・リングなら、きっと答えを教えてくれそうに 思って・・・・・・・・・」

「リングが、答えを?」カシュクはリングに触った。

「教えてください、何を訊きたいんですか?」

老婆はちょっとリングを見つめた。


「・・・・・・いえ・・・・・・・・いいんですよ。
そんなことは。



そうですねえ・・・・・・・

あの曲が、沢山放送に乗って流れたら、みんながまたノーザンクロスを思い出して
くれますね。
とても・・・・・・とてもいい曲だから。

ずっと、私は あの曲を 独り占めにしていたんですよ。
ノーザンクロスを・・・


ずっと旅と共にあった、あの人を、この時だけは・・・・
この曲だけは、私のものだって・・・・・・・






もう、ずい分長い間・・・・・・・・・」


老婆は咳き込んだ。

「ああ、ごめんなさい。

そろそろ窓を閉めないとね。海風はそろそろ身体に堪えて」

老婆が窓にいこうとするのを手伝って、カシュクは他の窓を閉めた。


「・・・私はあの曲を聴いた時、感動しました。
ノーザンクロスの他の曲を知らなかったんですが、今まで生きてきて、体が動かなくなる
なんて初めてでした。・・・だから、きっと奥さんにとって宝物なんだってわかったんで
電話ではなくて直接伺いに着たんです」

老婆の目が潤んでいた。



「・・・・・・・・もう少し、返事を待ってくれますか?

明日には、きっと答えを出しますから・・・」


2人は その家を後にした。
海風はだんだんと強くなり、明日は雨になりそうだと老婆はつぶやいていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-09-03 15:20 | ファンタジー・予言のリング

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