水色の光 9

カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

ザワールガス教皇     ・・・ 70歳    ルクール帝国 ルクール教皇

エシュリー教官       ・・・ 24歳    ルクール帝国特殊警部補 女護衛官

オリランドー教官      ・・・ 53歳    ルクール帝国特殊警部  特別護衛官

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者


第 9 話



老婆は微笑んでいた。
「そのリング、無くなったりしないのよねえ・・・そうでしょう?」
カシュクは頷いた。「はい。必ず、戻ってきますね」

「・・・主人は教会に預けたことで安心したといったけどね。
リングは泥棒に盗まれて、またどこかに消えてたらしい。そういう、宝物ってよく泥棒に
狙われるから。ある日主人が演奏旅行中にその会場に金品を売る怪しい男が来て
金持ち相手に盗品を売ろうとしてたんだって。
その中に、リングがあったのよ・・・
主人は驚いたそうだけど、そのリングを言い値の倍出して、買い取ったんだって。
・・・主人は、その日からそのリングを肌身離さず身につけてきたそうでね。

主人は、そのリングに時々語りかけるようにバイオリンを弾いているって・・・
懐かしい話だけどね、そういうことを言ってたねえ。

・・・そのリングのお陰でね、主人は世界中を旅していられたって。
あなたは、どうやってそのリングと出会ったの?」

カシュクはリングを見ながら言った。

「ご主人が亡くなったのは、私の国、アラバイン国で演奏旅行の最中でしょう?
確か、列車事故では?」「そうです・・・私がその現場に着いた時は、主人は病院の安置室
で私が来るのを待っていた。それはもう2日も・・・」「その時に遺留品はバラバラに?」
「そうです」

カシュクは話し出した。
「・・・この、リングは美術教会に届けられたんです。
歴史的価値のある美術品として・・・

リングを届けたのは列車に乗り合わせた乗客だったそうです。ご主人の手から離れて
いたんでしょう。リングには所有者の名前は書かれていない。ただ、その列車の中にいた
誰かのものとしか・・・それが、美術品かもしれないと届けられた人の話だったそうです。

その後、美術教会でそのリングの所持者があなたのご主人だったということまでは調べ
ましたが、私がそれを鑑定しているうちに、この予言のリングの力がわかったんです。

ご主人は音楽家で、私は美術・・・どうも、このリングは芸術が好きなんですね」

老婆は頷くとそこにある機械のスイッチを押した。

「これはねえ・・・・

主人が生前何枚か出した楽曲を録音したもので・・・・」


静かに曲が流れ始めた。

バイオリンのソロで、その音は豊かな海の情景を映し出しているようだった。

初めて聴く曲なのに 2人は心にそのメロディーが沁み込んでゆくように感じた。




「・・・リングが、訪ねてきてくれたよ、あなた・・・・・・・

よかったですねえ・・・・・」

老婆は少し泣いているように見えた。

カシュクが老婆に言った。

「このリングをお返しします」

老婆は首を振った。
「いらないよ。それは自分であなたのところに行ったんだ。
・・・このリングにどうしてそんな力があるのか、わからないけどね、
だけど、これだけはわかる。

そのリングはあなたのところへいったって」

リングが鳴った。

「ほらね・・・主人もいってた。
リングは自分でなんでも決める。だから旅行もいつも大丈夫だったって」

エシェリーは驚いたせいで、何も言えないままそのリングを見つめた。
「・・・・・・・・カシュク殿、本当のことなんですか?」「はい」

老婆と話をしたのは1時間ほどだったが、エシェリーはまるで1日いたかのように思えた。
カシュクは平然としていたが。

2人はその家を出て、海辺を歩いた。
宵闇に包まれていたが、白い砂浜に星明りが二人の足元を少しだけ照らしてくれた。
砂浜に座り、2人は黙って海を見つめた。

「・・・カシュク殿」
「はい・・・」「予言は、いつも当たるのですか?」「・・・・・・・・・・・・・・・」
「?何かおかしな質問でしたか?」

「・・・予言をしようと思うことがないので、それが予言だとは思ったことがないんです」
「そうなんですか・・・じゃ、リングには何も訊いたり出来ないんですか?」

「・・・できますけど、ね。そういうことではなく、いつの間にか心に浮かんだことに
応えてくれている、そういう感じなんです」


ザザザーーーーーーン・・・・・・・
ザザーーーーーンン・・・・・・




「・・・カシュク殿。

私は・・・・・私だったらリングに訊いてみたいことがあるんですけど、訊いてくれませんか?」

カシュクは黙って見つめ返した。

「その・・・・・現教皇は、偽者なんですか?」

リングは鳴らない。

「・・・・私は、このままでいいのでしょうか?」

リングは静かだった。


カシュクは立ち上がると、言った。

「・・・エシェリー教官。
リングは嘘は言わないんです。人は、自分の心を偽るけれど、いつかは自分の心の声に
動かされるものだと信じています。
・・・私は、宗教は知りませんが」

エシェリーはカシュクの言っている意味がわからなかった。
宗教を自分の思想から離して考える事自体、したことがなかったからだ。
ルクール教の教えには、すべての答えがある、そう思うからだった。

心の声?こんな未熟な、何も知らない自分の心の声になど、何故耳を傾けなければ
ならない??完全な、完璧な神の言葉以上に、信じるべきものがあるとは思えない。

エシェリーは(カシュクが私の宗教心を試しているのかもしれない)と 思った。
「・・・そうですか。私は、ルクール教の信者ですから」
「・・・・・・・・・・はい」
「カシュク殿は、リングの力を信じることが出来て、羨ましいです」
「そうですね」
「・・・そろそろ、戻りましょう。教皇の容態も、気になりますし」

車の中で、カシュクは疲れたのか、すぐに寝てしまった。
カテドラルに到着したのは、次の日の昼頃だった。駐車場で目覚めると、エシェリーが
訊ねてきた。
「お食事ですが、何か今そこの店で買ってきますから」バタン・・・・



突然、警備の男達が数人、車に乗り込んできた。
「カシュクだな?
騒ぐな、お前を拘束させてもらう」後部座席の男はいきなりカシュクの口にテープを貼った。
そしてロープで座席ごと彼を縛った。「車を出せ」運転席の男はすぐに車を出した。

運転手が言った。「ずい分若いな。教皇に取り入って委員長になったと聞いたが。
教皇はリングの魔力に、魅せられたって話だったな」「無駄話をやめろ」「まあな。こんなに
簡単にコイツを捕まえられるんだったら、レインの言う予言のリングってのも、まやかし
じゃねえのか?」「黙れといっているだろう!」

「おまえこそ、気にし過ぎだろう!こいつはもう俺らの手の中だ。もう何も出来ないね!
何しろこいつがいなかったら、次期教皇を任命できる権限を持つ奴がいない。つまり・・・
現教皇が死ねば、この国に教皇はいなくなるんだ!!レインの、思う壺って訳だ!」

「いいから、黙れ!検問を通るぞ!!」

同じ警備服の男達が道路にいて検問していた。
車はどんどん流れてそこに近づいていった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-08-15 23:59 | ファンタジー・水色の光

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