水色の光 8

カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

ザワールガス教皇     ・・・ 70歳    ルクール帝国 ルクール教皇

エシュリー教官       ・・・ 24歳    ルクール帝国特殊警部補 女護衛官

オリランドー教官      ・・・ 53歳    ルクール帝国特殊警部  特別護衛官

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者


第 8 話


オリランドーはエシェリーにカシュクが今就寝中で、自分は絵を元の場所に移動する
為ここを離れると言って、後のことを頼んだ。

地下の洞窟の中は温度、湿度が一定で、光が無いことを除けば快適な空間だった。
ここで貴重な絵を描き、保存した人々は、光が無いからまた絵の具の劣化もないと
思ったことだろう。それぐらい昔の顔料や絵の具は変化しやすかった。

だがその為に蝋燭やランタンは常に必要だった。エドラ・カテドラルは今でこそ人工の
照明が沢山つけられているが、その教会の天井には蝋燭やランタンの油煙、すすが
付着していた。今回はそういう天井も掃除の対象であった為、清掃は特別な作業に
なったともいえる。

絵の覆いは祝賀当日に式典の中で外される。すべてが整うのはまだ数日かかる、その
見込みだった。

カシュクが物音に気づいて眼を覚ますと、そこにはエシェリーがお茶を淹れている姿が
あった。「起してしまいましたか?すみません」「いえ・・・・かなり寝てしまったようです」
「お茶、どうぞ」「ありがとう」


「・・・・・・次期教皇は、見つけることが出来ませんでしたね」そう言ってエシェリー教官は
悔しそうな表情を浮かべた。
「もう、明日には式典の最終準備と教会関係者による式典の練習も始まるそうです。
教皇の安静状態は変わりませんから良いのですが・・・もう、遅いですよね・・・」

「あと3日ですか。・・・・・・・・エシェリー教官、私は一度行きたいところがあるんですが。
付いて来てくれますか?」カシュクは眠そうな眼をこすって言った。「勿論、護衛致します」
「ありがとう」

「そうは言っても、今カシュク殿がどこかに行くのは誰も許可しないでしょう。教皇の公文書
をお持ちですよね?それですべて通すことにしますから、私に預けてくれますか?」

2人は急いで出かけることにした。カシュクが行きたいと言ったのは、リングにまつわる場所
だった。エシェリー教官は運転中に、そのリングについて訊ねた。

「・・・詳しいことがわかっていないのは、他の道具についても言えるんですが・・・
これは、ブレスレットとかバングルと言われず、リングと呼ばれました。
予言のリング・・・その他にも、夢読みの指輪と、未だ語られているだけですがヘビの首輪
というものが存在するそうです。これについては呪いがかかると言われていて、所有者は
不明です。リングの前の所有者が、このルクール帝国にいると昔聞いたので、そこに行き
たいんです」

カシュクのいうところは国境に近い場所であり、車で一日かかるような海に近い場所だった。
「こんな辺境の地に・・・」「もしかしたら、次期教皇のヒントになりそうなことを聞けるかも
しれません」「そうなんですか?!」「・・・もしかしたら、ですけど」

カシュクはエシェリー教官に、何故今の仕事を選んだのかを訊ねた。
「悩みませんでした。適性検査では全部この警備関係の仕事が最高値でしたから」
「そんな検査があるんですか?」「どう転んでも正義の為に敵を撃破することが最高の
仕事だと思って行動してます」「どう転んでも」「そうです」



少し強い風に海の匂いが混じっていた。
「・・・教官、あとで海辺を歩いてみませんか?」
「え?・・・ええ、そうですね」カシュクは笑顔を向けた。
「デート、ではありません。残念ですけど」「あはは,はい・・・」

カシュクは海の見える小高い丘の上にある小さな家に向かった。
外のテラスに揺り椅子があり、その椅子の足のところに大きな牧羊犬が寝ていた。
犬は近づいてくる足音に気がついたのか、顔を上げるとこちらを見ていた。

ワオン!!

その声に、家の中から老婆が出てきた。
「・・・誰だい?誰か来たのかい?」

「こんにちは。・・・可愛い犬ですね」カシュクは手を出して犬を撫でようとした。
その手に光る2本のリングを見て、老婆はあっと声を出した。
「!まさか、そのリングを、また見ることになるとはね・・・・
どうぞ、入ってください・・・・・」

老婆は狭いところですがと言いつつ、テーブルの椅子を2人にすすめた。
ギシギシと椅子は音を立てたが、それほど傷んでいるようではなかった。
「海の風で、なんでも錆びるんですよ・・・もう慣れましたけどねえ」

「・・・このリングを、ご存知ですよね」
「はあ・・・・・・それは主人の物でした。そのリングとそこにある楽器といつも一緒でした」
老婆は曲がった腰を伸ばすと、まだお酒があったかな?と棚を探していた。
「もう、主人はいませんよ。・・・・主人はそのリングがあったお陰で演奏して世界中歩いて・・・
でももういません。亡くなったのは、もう10年以上前のことで・・・

それはあなたのところに行ったんですねえ・・・」お酒の瓶はあった。それを2人に勧め
老婆は、自分はお酒はもう飲めないと言った。

「楽器の演奏家だったんですか・・・」エシェリーは壁に掛かったその男性の写真を見た。
バイオリンを演奏する右腕に、リングが光っていた。

「・・・不思議なリングでしたよ・・・。
主人が若い時に、海でこのバイオリンを弾いていたら、沖で船が高波に呑まれるのが
見えて、すぐに主人は人を呼んで小船で助けに行ったそうです。
その中にそのリングをつけている人がいたんだそうですがねえ・・・もう死んでたんだそう
で。リングはその男の形見として、誰か身内に会ったら返そうって思ってたって・・・
でも結局、誰も捜しに来なかった・・・主人は、そのリングを着けていれば、そのリングを
知っている人に会うだろうってずっと身につけていました」

エシェリーは老婆の穏やかな顔を見ていた。懐かしい人に会ったような顔だった。

「でもある日・・・これが予言のリングだということを、人から聞いて、そんな宝物だと知らな
かった主人は、慌ててこれを教会に持っていったんだそうです。
私はこのリングを預かっていた、持ち主の家族を捜して欲しいとね。

その小さな教会はリングを預かってくれたそうで・・・その後、私と出会い結婚したんですよ。
ところが、リングはまた戻ってきたんです」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-08-13 23:59 | ファンタジー・水色の光

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