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水色の光 4

カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

ザワールガス教皇     ・・・ 70歳    ルクール帝国 ルクール教皇

エシュリー教官       ・・・ 24歳    ルクール帝国特殊警部補 女護衛官

オリランドー教官      ・・・ 53歳    ルクール帝国特殊警部  特別護衛官


第 4 話


扉の外の教官がノックした。「教皇、緊急連絡です。急ぎ隠し通路より脱出してください」
エシェリー教官が2人を誘導しながら先を急いだ。「オリランドー教官があの扉を封鎖
致しました。絵は何があろうと御守り致します。特殊警部部が今集結しておりますので」
「何があったのです?」「国内の革命推進派が・・・」

突然外から何かが爆発した音が響いてきた。
「革命家のレインです。声明文を送りつけてきました」エシェリーは吐き捨てるように言った。
「教皇の政治への関与を認めよというものです。愚かな!!レインにはこの国の成り立ち
がわかっていない」「エシェリー教官」いつになく厳しい口調で教皇はとがめた。
「・・・失礼致しました。教皇、ここから地上へ出られます。昔納骨堂だった場所です」

カシュクは薄暗い地下から出た途端、外の眩しさに一瞬立ちくらみを覚えた。
「こちらで我々の仲間が・・・」エシェリー教官が立ち止まった。そこにある筈の車は爆破されて
いた。「!!すみません、こっちへ!!」エシェリーは再び今の道を戻るように2人に伝えた。
外の騒ぎは、収まりそうに無かった。冷静な眼で周りを見渡してから、電話を手にした。

エシェリーはオリランドーに連絡をとった。「・・・ダメです。車は爆破されました。別ルートに」
すぐに3人は地下通路の、別の道を歩き出した。「大丈夫です。もう一つの道を行きますから」

教皇は立ち止まると、カシュクに話しかけた。

「カシュク殿。・・・時間が無い。私は、あなたに頼みたいのだ。

あなたのその、予言のリングの力で、次期教皇を探して欲しい。
私達が決めた教皇では、この騒動をもう、抑えられぬだろう。
私達ではもう無理なのだ。その力を、どうかこの国の為に使ってくれないだろうか」

「教皇!!そんな・・・」「それから、エシェリー教官。今までありがとう。カシュク殿は
我が国にとって大切な人です。君はカシュク殿を護ってください。私からの命令です」

エシェリー教官はためらわずにその命令を実行すると言った。
「わかりました。教皇、オリランドーがじきに追いつきます。どうぞご無事で!」

エシェリーは教皇と別れるとカシュクを伴って狭い通路を急いだ。
「教官、何故教皇を護ると言わないんですか?」「教皇が命令したからだ」
「教皇の命令が間違っていても?」「間違っている訳が無い。教皇の言葉は常に正しい」

エシェリー教官は銃を構えると扉の前で言葉を切った。
「・・・私が入ったら、すぐについてきて下さい」

ドン・・・・扉の外で音がした。エシェリーはうめいた。カシュクは慌ててエシェリーを見た。
銃弾が足に当たっていた。「・・・さがっていてください。敵は1人です」エシェリーは通路に
走り出ると、銃を壁に反射させて敵を狙った。「うおおおお!!!」どさっと倒れる音がした。

「・・・もう大丈夫です。ついてきて下さい」足を引きずりながらエシェリーは急いでいた。
階段を地下へと下りると、そこには地下水路があった。そこにボートがやってきた。
「エシェリー教官、無事ですか?」「無事だ。カシュク殿、乗ってください。我々の隠れアジト
まで、彼が案内します」「あなたは乗らないんですか?」「これは2人乗りだ。行ってください」
エシェリーはボートを思いっきり蹴った。「教官!!」

「忘れないでください。あなたは教皇に大切な使命を託された。
我々にとって、それは神の声に等しいのだ。ルクール神のご加護を!!」

ボートはずいっと速度を上げた。「敵はエシェリーが止めます。ご安心ください」
「そんな?!彼女をひとりで置いていくんですか?!」カシュクは立ち上がろうとした。
「そんな心配は無用です。彼女は特殊訓練を積んだエリートです。軍隊の銃騎士であろうと
彼女にとって敵ではありません」「・・・訊いてもいいですか?」「どうぞ」
「あなた達には人間らしい感情は無いんですか?」「訓練で何事も耐えられるようになりました」
「・・・・・・洗脳ですか?」「違います。単なる恐怖の克服です」「・・・・・それでは彼女は大丈夫
ですか?」「100パーセント大丈夫です」

カシュクはモーターの音と響く騒音に耳が痛くなっていた。
「カシュク殿、エシェリーをご心配下さったことは、感謝します」その男は胸のペンダントから
同じ特別護衛官だとわかった。「・・・まさか、そんなことを言ってもらえるなんて、思いもしません
でした。今までそんな言葉をかけられたことはないもので」「・・・・・そうですか」

彼は考えているようだった。暗い水路はどこまでも続いている・・・
「海へでる道もあるのですが・・・確か、そこは断崖になっています。今は町はずれの
廃屋に避難しますが、よろしいですか?」

ピチャン・・・・・・・・


いつの間にかボートの中で寝てしまったカシュクは、ボートが止まったのと、揺れたので
頭を縁にぶつけ、眼を覚ました。寝ている間にカシュクは自分の置かれた状況とこれから
どうしたらいいのか考えていた。しかし、何も良い考えは浮かばず、そのせいもあって
眠気に襲われたのだった。 起きた途端に現実に動くしかないことを思い知らされた。

「カシュク殿、ここで連絡を待つことにしましょう」「・・・私はかなり寝ていましたか?」
「いいえ、1時間程ですね」「・・・それだけ寝れば十分です。私はこれから美術教会に
連絡を入れます。勿論、宗教上の秘密については話しません。約束したんです。
だからあなたにここで聞いていて欲しいんです」


「レンカ理事、カシュクです。
すみませんが、これを録音してください。

依頼の絵は、審判という国宝に指定された絵画です。教皇は次期教皇を私に探して欲しい
という新たな依頼をされました。現在、ルクール帝国では革命家による教皇襲撃及び
カテドラルなどの文化建造物、国宝の破壊活動が始まりつつあります。
美術教会としてその破壊活動を防ぐと宣言してください。超一級の貴重な文化財です。
軍隊に要請を。・・・はい、お願い致します。それから、レンカ理事。あなたにもすぐにここに
来てもらうしかないようです。それも、お願いします」
「なんだと??それほどの事態か?!」「はい。間違いありません」
「間違いにしてくれ、たまには!」「それはありません」「・・・馬鹿野郎だな!!」「そうですね」

傍で聞いていた護衛官は、驚いて言った。

「あなたの上官、ですか?」「はい」「美術教会なのに、軍隊を??」「はい。文化財を壊す者
達には言葉で説得するヒマはありませんから」「・・・・・・・・・・まさか、とは思っていましたが。
国境を越えて活躍する特殊な軍隊を美術教会が持っているというのは、本当だったんですね」

「はい。その中でも、レンカ最高顧問は特殊能力者です。今に来てくれますけど」





・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-08-02 21:24 | ファンタジー・水色の光

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