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ガウルと火の鳥  外伝・・・遥か昔の話・・・4

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・ウンディーネは、エクスの名を聞いた瞬間に、火の鳥が狙われていることに
気がついた。しかし、それは神々の間でさえ触れずにおかねばならない話であった。
ガウルにどう説明すればよいのか・・・・・・ましてやガウルには火の鳥が危ないなど
とは、絶対に言えない・・・それはガウルが火の鳥に忠誠を誓っているからだった。
2人は噴水の広場から人のいない町はずれまで歩いた。ウンディーネはゆっくりと
話し始めた。

「エクスというのは・・・混沌と混乱の巨人の名よ。不和の女神の恋人で・・・いえ・・・・
違うわ、恋人ではなくて愛人、というべきかしら。

・・・兎に角、この話は今では私達神の間でも触れられない話になっているの。
気になるのは、復讐の3姉妹がエクスの命令で動いていることだけど・・・
彼女らの狙いがわからないわ」

ガウルは唸った。「不和の女神だって?!聞いたことあるぞ!!!あの金のリンゴで
起こった戦争の話!!!そんな奴の、愛人だと????」「そうよ、困ったことにね」
「ウンディーネ、そのエクスを殺せば済む話だろう?巨人族だろうがなんだろうが
俺はーーーー」「困ったことというのは、あの3姉妹は与えられた使命を依頼主が
亡くなってもまっとうするというところよ」「!なんだとおお?!ばっかじゃねえの?!」

くすっとウンディーネは笑った。
「ガウル、是非言ってあげて欲しいわ。ばっかじゃねえのって、彼女達に」
「だが、ウンディーネにも奴らの復讐の相手がわからねえのかよ?」
丘からの風が冷たく吹き抜けた。

「・・・・・・・・・・・ひとつだけわかるのは・・・・」ウンディーネはガウルを見上げながら
言った。「幻獣界に、その相手がいるから、あの結界を破ったのでしょうね。巨人族には
魔法使いはいない筈。エクスに協力して結界を破った魔法使いが現世にいるのよ・・・
それに、あの復讐の魔女達も、現世にいた者達だから・・・」
「そうか、わかった。・・・今はあいつらの行動を阻止すること、か。俺達に出来るのは」
「・・・・・・・・・そう、ね」

2人は共に現世の洞窟から再び幻獣界へと戻った。ガウルはウンディーネの怒りが
静まったことに、何故か不安を感じていた。
「俺は王に報告してくる。ウンディーネ、あんたはどうするんだ?」「一緒に行くわ」
「じゃ、全速で行く。俺はせっかちなんでね!!!」「あら、おあいにく様。私は本当に
速いのよ」一瞬で水の塊と化したウンディーネは、ガウルの4本の足に負けない程の
スピードで流れていった。ガウルは炎の息を吐きながら宮殿へと駆けていった。



火の鳥は、宮殿でそれまでの話を聞くと、言った。
「エクス、そして不和の女神か?我はその者達を知らぬ・・・エクスとやらの目的はわからぬ
が、知っての通り、我はこの幻獣界のことにしか目が利かぬ。エクスとその不和の女神との
間に、何が起こったのか・・・神々ならばご存知であろうが。
ウンディーネ、もしもこの幻獣界に異変が起こるのであれば、助けてはくれぬか?」

「・・・・いいわ。でも、これは我々神々の問題でもあるから」
「ウンディーネ、この幻獣界で起こったことのみでよい。そなたらの世界での問題にまで
我々は関与しないつもりだ」「是非そうしていただきたいわ」

「あ~~~~~~~~!!!!つまり、なんだあ?!
何にでも首つっこむんじゃねえっっ!!てことかよ!!!
てめえらの建前なんかどーーーーーーでもいいんだよっ!!!
あの、くそったれ3姉妹にあきらめさせりゃいいんだろ?!!違うか??」

「単純にして明瞭、だな」「そうよ、悪い?」「げっっ?!・・・そうなのかよ??やっぱり・・・」

火の鳥とウンディーネはそろって笑った。「頼りがいがあるのかないのか、わからないわね」
「ガウルは我の腹心の友だ。ガウルになら全てを任せられる」「それ一番危険だと思うけど」

ガウルはその対照的な2人が並ぶ姿に、とまどっていた。
全身緋色に輝き、金色の光がこぼれる眩い姿の女王と、透き通り、水色のドレスに銀色の
髪の毛がしっとりと艶めく水の神・・・・自分をからかっている2人の、その顔が笑っている。

「ふんっ!!てめえらのように澄ましていられるかよっ!!!俺は行くぜ、じゃあな!!」

ガウルは自分があの2人とは異質だとわかっていたが、そうだとしても、あの2人が笑って
いるのを見るのは、わるくないと思った。・・・わるくないよな。俺は、ああいうのがいい。
ガウルは神殿からひとり、走り出た。風は少しだけ南に変わっていた。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-03-07 23:59 | ファンタジー小説Ⅵ外伝

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