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音の惑星 ミリオンドール  2

その星には永遠に鳴り響く結晶があるという・・・



ケイゴ トミタ           ・・・ 27歳  宇宙空母パイロット

アイナ               ・・・ 25歳  ケイゴの恋人

エンジェル            ・・・ 31歳  宇宙空母エンジン技師

キャプテン             ・・・ 52歳  宇宙空母艦長

ジュール              ・・・  7歳  宇宙移民の子


  <中篇>


エンジェルはキャプテンの説得に根負けしたとケイゴに言った。
「確かによ、俺がいなかったらエンジンの整備にも手が足りねえだろうけどよ。
あの新しい任務には俺は加わらねえ、それならいいってことさ!」

宇宙空母の離陸はいつも注目の的だった。通信士が冷静に皆に外の映像を見せて
解説していた。「この機械は瞬時に人の数を判断できるセンサーがついているんだ。
今外にいるのは103万2160人だそうだ。見物客の人数をまた更新したようだ」
取材するTV局を見ながら、アイナも今TVを観ているだろうかと思った。
もう出発するという頃にケイゴのコクピットに通信士がやってきた。
「ケイゴ、君宛の手紙だ」「?ありがとう・・・」
ケイゴは自分の名前しか書かれていないその手紙を、ポケットにねじこんで後で読もう
と思った。今は集中する必要があった。全てのサインがグリーン、発進出来る状態になる
まで異常が無いか目を皿の様にして盤面を見ていた。「発進準備完了です。キャプテン」
キャプテンが号令をかけた。「宇宙空母スカイライダー、発進!」歓声がどよめきと共に
巻き起こっていた。

外の騒がしさはモニター画面で拾えていたが、すぐに地球はその球体を宇宙空間に浮かべて
回転する静かな姿となって、ケイゴの意識を置き去りにした。

ケイゴは発進後、太陽系を抜けてこの銀河の中心方向にある新惑星へ向けたプログラ
ミングをスタートさせると、後は全方向からの隕石の衝突が無いか、シールドとそれらの
関連するガードシステム・・・通称ガーディアンシステムにしばらく空母の安全を任せると、
椅子にどっかりと座った。ガサッと音がして、ケイゴは手紙を思い出した。

手紙は病院からのものだった。

診断書

アイナ 川村    


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケイゴは、自分がアイナの診断書を後で送ってくれるように
頼んでいたのを、今になって思い出し・・・そして、後悔した。
覚えていれば、あと1年延びるとわかった時点で、絶対に彼女の元を離れなかった。
何故、記憶を消してもらったんだろう?!パイロットだからか??

その手紙の中に、もう一通封筒が入っていた。
「・・・・・アイナ?!」

    ケイゴへ


お医者さんに頼んで、この手紙を送ってもらいました。
今どき手紙なんて、時代遅れもいいとこって思うけど、たまには驚かせて
みようかなって。
これを読んでいるのは、きっともう空母が出発した後でしょ?
ぎりぎり間に合うかなってお医者さんが言ってたから。
ケイゴ、私・・・病気になったことが今でも信じられないの。
だから、ケイゴが私に普通に話してくれて、宇宙へも行っちゃうのって
逆に私は大丈夫なんだなって思えた。

ケイゴにお願いがあるの。
新惑星の風景や綺麗なもの、いっぱい観て来て。
そして、私も観れるように記録しておいて。
どんな世界かな。
ケイゴの観た世界を、私も観たい。

いってらっしゃい ケイゴ


       アイナ より




ケイゴはキャプテンにちょっと休んできますと言って、自分の個室に入った。
自分の部屋の壁には・・・・・宇宙に浮かぶもう豆粒のような地球が・・・
青く透明にも見える星が、絶対に還るべき場所として 光輝いていた。
ケイゴにはそう強く想えた。



地球が目視出来ないほど遠くなり、データと格闘する毎日がそれから果てしなく続いた。
空母での日常は重力を発生させているコクピット以外では、弱い磁力のあるブーツを
履かないと移動ですらままならない。そのブーツは磁力を調整できるので、壁にぴたっと
固定すれば筋力トレーニングも簡単にできる優れものだった。いつもエンジェルは腹筋と
上腕筋を鍛えているようで、ケイゴにも勧めるのだった。ただ、女性達には不人気だったが。

空母で半年が過ぎようとした頃、最初の電波が入ってきた。それは惑星セカンドからだった。

「こちら、惑星ソーシェル。我々は、地球のセカンド、第二の惑星ではなく、新たな可能性を
秘めた惑星として、生まれ変わる。地球の宇宙空母スカイライダー、君達を我々は歓迎する。
こちらの信号に従って宇宙空港へ降りてきてくれたまえ」「了解」通信士は冷静に対応していた。


惑星ソーシェルは地球の1.2倍の大きさを持ち、月のような衛星も2つあった。
先に移住した人々からすでに3世代目がこの星で生まれており、地球の影響下にあった
1世代目とはかけ離れた自由人ともっぱら地球の議会では問題児扱いされることが多く
なっていた。初代の惑星総統であるオーセィウムは、議会との折り合いが悪かったが、今は
2代目のクーガイン総統が平和に治めていた。

宇宙空母スカイライダーはキャプテンの希望で大掛かりな船体検査を受ける為、宇宙空港の
ドッグにそのまま預けられることになった。一週間、それがこの検査と修理に許された時間で
それをキャプテンから依頼されたソーシェルの技師達はキャプテンをクレイジーだと言った。
「1ヶ月の工程を1週間???地球人には常識っていうもんがないのか!!!」
「大丈夫だ。1週間我慢するだけで、あいつらは勝手に出て行ってくれるってことだ」技師の
リーダーは涼しげな顔で言った。「動けばいいっていうことだろ?こんな楽な仕事はないな!」
事実、大きな修理は見当たらず、技師達はその頑丈さに舌を巻いた。「いいか、俺達はこいつ
の技術をただで盗めるんだ!一週間、死ぬ気で頑張れ!!」「了解!!!」急に技師達は
やる気を出していった。

キャプテンはクルー全員に以前の話を持ちかけた。
「一週間、俺達には時間ができた。そこで、提案がある。
最初の計画とは違うが、ソーシェルの行方不明者を、この期間を利用して探す事にする。
異存はないな?・・・・・・・よし、それじゃあ、これから班分けをする」

小型機は4人乗りで、それを3機、12名で探索することになり、エンジェルは当然のように
行かないとごねた。キャプテンは自分はここで司令を出すとして若い者達を中心にと3グループ
を作った。「まずは、情報収集だな。・・・通信士、今までの調査結果を教えてくれ」

通信士は詳細をデータとして皆のPCに送ると、解説し始めた。グループの12名は真剣に
聞いていた。
「まずレアメタルは確かにこの小惑星ベルトと呼ばれる地帯に反応があり、合計5機の小型
宇宙船が行方不明になっています」「5機も?!」「そうです。そして全ての機体の反応が、
最後の通信後、時間はそれぞれですがこのように消失しています。ソーシェルからそれらの
機体番号と乗組員のデータをこちらに送ってきていますが、注目すべき点はその人物達にも
レアメタルを収集している各企業にも、なんの繋がりも無いということと、大体皆が口を揃えて
行方不明者は逃亡するような事情も無い人々だった、と言っていることです」

エンジェルは、離れて聞いていたが、たまらずに口を挟んだ。「それみろ!!セイレーンだ!!
宇宙の精霊が人間を惑わしているんだ!!」キャプテンはエンジェルに言った。
「エンジェル、確かにな、不思議な音が通信に残っているというのが、最初の頃あったのは
事実だがね。ここにいる若者達に無用な不安を与えるんじゃない」
「キャプテンは、宇宙人にあったことあるんですかい??こんな空母に乗ってたって、みんな
船乗りとかわりゃしねえ!宇宙は謎だらけだ!!!」「・・・・ははあ??エンジェル、おまえ、
臆病風に吹かれてるってやつか。なんだ、臆病もんは黙って聞いてるんだな!!」

これにはエンジェルも黙っていなかった。
「なんだって???キャプテン、あんたを見損なったよ!!俺はみんなの安全が心配なんだ!!
てめえはここで言いたい放題言って、行方不明者を探すわけじゃねえだろうが!!!」
キャプテンは、ちらりと細めた目でエンジェルを見て、言った。
「確かにな。だが、俺には立場ってもんがあるからな。おまえと違って」
「なんだと?!!くそっ!!いいだろう、俺はセイレーンがいるって証明してみせるぜ!!!
ケイゴ!俺と組め!!!キャプテンの鼻をあかしてやるっっ!!そんでセイレーンも捕まえて
みせるぜ!!!」勢いでエンジェルはケイゴと組むことになった。キャプテンはそれぞれに
小惑星の区分を割り当てた。「いいか?何か発見したら、すぐにこちらに通信するんだ」

キャプテンはこの空母がドック入りしている間に、行方不明者を探すと、ソーシェルの総統に
通信をした。総統はすぐに公式にキャプテン達の勇気と義援に感謝を表し、行方不明者達の
生死にかかわらず、賞金を贈ると約束した。そして、もう一つ、気になることを通信してきた。

「惑星ソーシェルは新たな惑星の発見にも期待している。すでにこの惑星から大勢の冒険者
達が新惑星の存在を信じて、活躍し始めている。地球の人々もそれが何か、気になっている
ようだ。新惑星は確かに存在する。それがどんな星か、皆が是非発見し報告してくれることを
切に望む」

キャプテンはエンジェルに笑いかけた。「こりゃあいい!!エンジェル、もしかしたらそこに
絶世の美女精霊がいるのかもしれないな!!」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-02-12 11:46 | SF音の惑星ミリオンドール

タロット占い師ASのブログです。


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