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召喚師 ミンクの冒険 4

・・・昔々、召喚師が大勢いた頃のお話。


ミンク・デリーシュア       ・・・20歳        召喚師

アーカディ・カッシ         ・・・19歳        魔法使い

ホワン・イーリイ          ・・・28歳        武術師範

ガウル               ・・・???        召喚獣 火炎妖魔 

クク・スースルーズ        ・・・???       魔獣王



第  4  話   「 怪物  」



ミンクはホワン師範の圧倒的な強さに、驚いていた。
その姿や顔立ちは端正で、どちらかというと武術師範というより舞踏家のように
さえ思えたが、昨夜の怪物と闘っていたホワンは、ミンクが今まで会った武術家
の誰よりも、静かな気迫に溢れているように見えた。

朝、ミンクは師範から逃げ回っていた。弟子の一人が、ミンクに声をかけた。
「ホワン師匠に怒られましたか?どうしたんですか?」「あ・・・・っ・・ええっとね・・・
うん、朝の練習出なかったから、怒られそうだしね~!」「一緒に行ってあげます」
「はい??」「だから、一緒に行って、謝りましょう」「・・・・・いいよいいよ、自分で
行くから~~!あっはっは!!」(う~この子ったら、5歳なのになんでこんなに
しっかりちゃんなのかな~~!!まて、落ち着こう、ミンク!!私は20歳、20歳!!
・・・よし、大丈夫!!!!)「ありがとう。今から謝りに行って来るね」


師範は、木陰で皆の修練を見守っていた。そこに、ギクシャクしながらミンクは近づいて
いった。「おはようございます、ホワン師範」

ホワンは挨拶を返した。「ミンク、昨夜はありがとう。そなたが傍にいて召喚獣を呼んで
くれたお陰で、怪物は早々に引き上げてくれた」
「・・・いえ・・・ホワン師範は、私が余計なことをしたと思ったでしょ?」
「まさか!そなたがあんな立派な召喚獣を呼べるのだと、驚きはしたが、感謝している」

ミンクはくすぐったい気持ちになった。「あはは・・・あの召喚獣は、ね・・・」


突然、過去の記憶が戻ってきた。
(・・・まったくダメ召喚師だな!!あんな怪物に、まったく歯が立たないじゃないか!!)
(ほんと、私達魔法使いがいなかったら、どうするつもりだったのかしら?)

「・・・・・・・・・・ううん・・・なんでもない・・・です。あの・・・また練習してきます」
「そうか、ミンク、辛いかもしれないが、ここでの修練はそなたの為だ。よいな?」
「はい・・・えっと・・・はい」「?まだ、何かあるのか?」「あははは!・・・大丈夫です」
ホワンが見ているのを感じながら、ミンクは走って皆の練習に加わった。


ミンクはそれから、数日は厳しい鍛錬にもついていこうとした。そして、夜にはまた外に
怪物が来たりしないだろうかと、窓からじっと外を眺めるのが、日課になった。



そして怪物はやってきた。
あの日から1週間・・・怪物は前の時より、一回りは大きく、まるで成長したかのように
見えた。ミンクはその姿に寒気を覚えた。・・・なんだろう??あの姿は・・・何故あんなに
大きくなったの???

庭にはすでにホワンがやってきていた。
「また現れたか。どうだ、強い人間には会えたのか?」
「モチロンダ。ダカラオレハ ツヨクナッタ。オマエハ マエト カワラナイヨウダナ」
「どうして私のところへ来るのだ?」
「アタリマエダ・・・オマエハ シッテイル。コノアタリデイチバンツヨイノハ オマエダ」
「・・・それでは、何故強くなりたいのか、話してもらおうか?」
ホワンは、構えた。「どうした?また闘いたいのだろう?」

怪物は身体を震わすと、全身の毛を逆立てた。「タタカウ?ソウジャナイ、オマエハ
シヌノダ!!!」

その大声は、建物中に響き渡り、人々を起こした。「わ~~~!!やばいって!!!」
ミンクは大慌てでホワンの下へ走って来た。「師範、みんながおきちゃいます!!!!」
「・・・そうだな、ミンク手伝ってくれるか?」「はい!!」

「私は召喚する、火炎妖魔ガウル、すぐに来て!!!」
ガウルは待ちかねたかのように、空中に躍り出た。「来てやったぞ!」ガウルは
そう吼えると跳びかかった。「感謝しろ!馬鹿チビ!!!」

庭を望む窓には、館の弟子達やそこの従者達が集まり始めていた。
皆が、見たこともない怪物と炎の番犬と2人の人影に、驚いて騒いでいた。
「ホワン師匠と、あれは!ミンクではないか?!あの怪物と闘っているのは・・・」
「まさか、怪物同士が戦っている??」「よく見えない、庭にいこう!!」


ホワンはガウルが怪物を引きつけてその四肢の高い跳躍力で、5メートルはジャンプ
できることに驚いた。「ガウル、怪物の羽を折れるか?」「いいだろう!!!」
「サセルカ!」怪物は羽ばたくともっと上空へ飛ぼうとした。「おせえんだよ!!!」
ガウルは近くにあった木の上までジャンプし、そこからまた枝の反動を使ってジャンプを
した。怪物の風切羽根に噛み付くと、その身体の重みで怪物を地上へ落とした。

ガウルが片羽を噛み砕く音が響いた。その時、ミンクは、また妙な違和感に襲われた。
「ホワン、こいつはオレが殺すからな!!!」「待って!!」ミンクは大声で止めた。
「オマエノカイヌシハ バカダナ!!!」怪物が何かを飛ばした。「きゃあっ!!」
ミンクの左腕に激痛が走った。腕に怪物の羽が刺さっていた。
「てめえ!!!!」ガウルは怪物の息の根を止めた。


ミンクは腕の痛みに必死に耐えながら、ガウルの方へ行こうとした。
しかし、そのミンクをホワンが支えるように止めると、言った。
「待て、様子がおかしい?!」「ガウル?!」

ガウルは怪物の上から離れようとして、突然動かなくなった。「ぐぐぐううう・・・・・!!!」

ガ・ガ・ガ・ガガガ・・・・・・!!!!「こ・・・の・・・ばけも・・の!!」

ガウルの姿が変化し始めた。背中から赤と黒の羽が生えると、それはさっき死んだ筈の
怪物の姿だった。
「ガウル!!!!」さっきまでガウルだった妖魔は、口から火炎の息を吐き出すと、笑った。

「ハハハハ!!バカナヨウマダ!!スッカリノボセタヨウダッタナ!
・・・ホワン、ミンク、ツギハ オマエラノバンダ!!」

「ガウルを、どうしたんだ、怪物!!」「・・・ノットッタンダヨ、コノオレガ!!」
「・・・・・・・!!憑依?!まさかお前は、憑依する怪物だったの?!」
「キガツイタトコロデナニモデキマイ!!!」

ホワンは、一気に自分の闘気を開放した。
「・・・そうか。お前はそれが目的だったのか。では、今度こそ、本気でいかせてもらうぞ!」


その次の瞬間、かまいたちの風のようにホワンは怪物に一撃をぶつけた。
それはあまりに圧倒的な拳だった。怪物の心臓は止まった。そして憑依しようとホワンを
狙った。

ホワンはその怪物の妖術を撥ね返した。「ナンダト??ヒョウイデキナイ??」
「私に憑依できると思ったのか?戻れ、怪物!!!」
その言葉で、怪物の身体が、ドクンと波打った。
「・・・・くっそう!!!この・・・ガウル様を 乗っ取るだと??させるかよ!!」
ガウルが吼えると、怪物はその身体からも追い出された。「クソ!!ナニヲ・・・」
「てめええ!!おまえこそさっさと飼い主のところへ戻りやがれ!!!!」

怪物は、姿を見せずにそのまま消えた。

ミンクはホワンに支えられて、ガウルとともに立ちつくしていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2010-07-18 23:59 | ファンタジー小説Ⅵ

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