森の蒼い城  ブルーキャッスル 10

 登場人物


ラムズ・シュッツトガルド        16歳

イライザ・シュッツトガルド       34歳   ラムズの母

ディーオ                  16歳   ラムズの友人

魔女 イシュス             ???  世捨て魔女

魔女ザザーランディア        ???  北の魔女

南の魔法使い             ???  




第  10  話   「 白い鹿 」


ラムズは背後で亡霊と魔法使いが戦っていることなど、まるで聴こえ
ず感じない闇の中で、白い鹿を追っていた。
足元の光ゴケが小さな緑色の光をぽつぽつと浮かべて、時々満月が
樹影とともに動く。満月が雲に隠れるのか、それとも闇が隠しているのか
・・・・見た事も聞いたことも無い不思議な森の中に迷い込んだラムズは、
この真夜中の森に魅了されていた。森全体の呼吸が、風の中でわかった。

ラムズは白い鹿に近づこうと頑張って歩いていたが、その距離はいっこう
に縮まらなかった。だが不思議なことに、その距離は遠ざかりもせず・・・
そして歩いてゆく内に森の生き物の息吹がラムズに注ぎ込まれてゆくのを
感じていた。生命の営みが、自分がよく知っている昼の森とは違う、その
森の荒々しいまでのエネルギーが、身体に沁み込んでいくようだった・・・・

ラムズはやっと、鹿の行きたかった場所がわかった。
そこには、木々の影に群れて休む鹿達がいた。鹿達は、ラムズの足音に
真っ先に反応し、一番大きな、群れのボスが、その立派な角を振り上げて
ラムズを見た。そして、白い鹿の姿も、見たように思えた。

他の鹿達も何頭か頭を上げた。ボスはゆっくりと立ち上がると白い鹿の
方へ歩いてきた。と、白い鹿はそのボスに擦り寄ったように見えた。
「・・・・・・・まさか・・・・・・・」ラムズが思わずつぶやくと、白い鹿はそのボス
と重なるようにして消えた。
「白い鹿!!」ラムズには、それがどういうことかわかった。
白い鹿はボスに最後の別れを言いに来たんだ・・・・・・・夫婦だったのだ。

ボスはラムズにその大きな角を振り、見下ろした。
ラムズは身動きが出来なかった。大鹿は前足のひずめで地面を掻いた。
そして突然大きく跳躍するとラムズを飛び越した。
そのひずめの下に狼が踏みつけられ、息絶えた。ラムズは狼が後ろから
狙っていた事すら、気がついていなかった。大鹿は仲間にすぐ逃げるように
いなないた。鹿達は一斉に逃げた。大鹿はラムズの目を見た。

「え?僕を背中に乗せてくれるって?」ラムズは大鹿が前足を折るのを、
信じられない気持ちで見ていた。「・・・狼が来る!!」ラムズは大鹿の背中に
乗った。大鹿は信じられない速さで、森の奥へ奥へと駆け出した。

ラムズは大鹿の背中で、感激のあまり泣いていた。
自分がこれからどうなるのか、そんなことはまるで気にならないくらい、
この大鹿の背中が頼もしかった。そして、こんな感情が湧く事がまた、信じら
れない奇跡だと思っていた。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2010-04-11 00:30 | ファンタジー小説Ⅴ

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