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森の蒼い城  ブルーキャッスル

遥か昔、まだ人々が神話と共にあった頃のお話・・・

・・・そのいにしえの 城には 秘密があった。森の奥深くに 
隠されてあり 森そのものに魔法をかけた大魔法使いは 
その強大なる魔法力をもって自身にも魔法をかけ・・・・・・
そして城を護るかのように、永き眠りについた・・・・・

大勢の軍隊を率いた王や貴族達が、その城の秘密とそこに
秘められた未知なるものを我がものにしようと、大挙して押し寄せ
また謎を解かんと世界中の魔法使い達も現れたが、誰一人その
大魔法使いに会う事はおろか、その森の中にさえ入る事が出来ず
迷い続け、いつしかその森は夜の闇に亡霊達の棲む魔の森となって
いた・・・・・・

そして森は伝承のみが語られて神話になり・・・
今はそう 魔法使いが眠りについてゆうに400年もの年月が過ぎた・・・・・・


第  1  話 「 蒼 の 森 」


子ども達が大人の仲間入りをするには、この蒼の森と言われている森の中で
狩りをしてウサギ以上の大きな獲物を捕まえて帰って来るのが、この村にある
しきたりだった。そしてそれは、自然に大人を見習い皆が会得していくものであった。
元々、この豊かな森では、狩りさえ覚えれば大抵の者が幸せに暮らしてゆけた。
また、それは開拓や争いをせずに森の恩恵を受けてきた村の、自然な姿であった。
それだけ豊かな森であったのだ。しかし、それを護る為にこの村には掟が作られた。
つまり、人間が増え過ぎてはいけない、という、厳しい掟、それがこのしきたりを
生んだのだった。
それは、村の中で今まで沢山の話し合いがされてきたことでもあった。

中にはどんなに恵まれた体に生まれついても、狩りの下手な者や優しくて
動物を殺せない者がいる。そういう若者達を集めて、ある日村長が告げるのだ。

「我々の村のしきたりだから、明日は蒼の森に入ってもらうのじゃが、よいな?
約束の3日後までに獲物を捕まえられぬ場合は、そのまま旅に出るのじゃ。
世界は広いからのう、おまえさんたちが生きてゆく世界は、この村ではないという
ことじゃ。間違わずに進むのじゃぞ?よいな。
・・・そして何かを身につけたなら戻ってくるのじゃ」


「・・・むらおさはなんて言ってた?」息子ラムズの顔をじっと見つめながら、母親
は訊いた。「明日、森に行くのかい?」
朝日が母親の持つ水桶に反射して煌いていた。ラムズは笑顔で言った。
「ああ。かあさん・・・そうだ、かあさんは何の肉が食べたい?」
ラムズは黙って家に入る母の後ろから、急いでついて行った。

「ラムズ・・・私は何もいらないよ」母は首を振った。「村長はおまえには無理
だと言わなかったのかい?」「・・・・・・・」「・・・自分の息子達にも厳しかった、あの
村長が、何も?」「・・・・・・・・」


母はヤギの乳をカップに注ぎながら言った。
「・・・私は・・・おまえが森の動物にエサをやっているのを、知っていたよ。
・・・村にはそれを良く思わない者がいる。私はおまえに旅に出てもらいたいんだ」
「かあさん?!」「・・・いいかい?これはおまえの父親の血統だと思う。誰でもそう
なるとは言わないが、おまえには旅をさせる必要があるようだと、言っていたからね」
「・・・・・でも、かあさんを置いて、どこにも行けないよ・・・」母親は微笑んだ。
「旅に出れば、わかるよ。おまえが私を忘れなければ、ね。おまえはいつか帰って
来る。おまえは今は16歳だね。父さんの言うように旅に出てもいい歳だよ」

ラムズは、母親の言う言葉を、何故か厳しいとは思わなかった。村長に言われた
時にはかなりショックだったが。村の外で自分が暮らす自信など、これっぽっちも
持ち合わせていなかったのに。母親は何故か旅にでるべきだとはっきり言ったのだ。
母親は、もう10年も帰らない父親のことを、待っている。そしてその、言葉を覚えて
いるのだ。

その日は、明日の準備に追われた。狩りの準備と旅の用意、丈夫な皮の上着も
母親はいつの間にか息子の為に用意していてくれた。

日の出、まだ暗い森を目指してラムズは足元の草を踏みしめ踏みしめ歩いていた。
自分は一体どうしたらいいんだろう、そんなことをずっと考えながら・・・・







・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2010-03-31 23:59 | ファンタジー小説Ⅴ

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