愛の近くに・・・4


威神 武士(いかみ たけし)   42歳  恋愛小説作家

杜原 有華(もりばら ゆか)   30歳  OL



第 4 話


威神はその日、ゆかに付き合ってやることにした。
ゆかは武士があんな風に決着をつけるとは思ってもいなかった。
でも、自分に解決出来たとも思えなかった。
武士は自分のやったことを説明しなかったし、これからも何も言わない、
ゆかはそう感じた。

昨日のことが嘘のように明るい武士に、ゆかはほっとしていた。
2人でテーマパークで子供のように遊んだりした。


その、複雑な思いが、ある時堅い紐がするすると解けるような出来事が
起こった。それは、誡の個展と、その紹介番組の中のインタビューだった。

「先生、この作品群について、一言お願いしたいのですが・・・」

「・・・・・これですか。

・・・よく、画家は作品を産むという表現を使うんですが、これは・・・
父親や、大きな力が、自分を鍛え上げた・・・・そんな、産まれたものの責任、
ですね。

人は、そのままで、人になるのではない・・・・

ある時、大きなものが自分を、もう一度鍛えようと現れる・・・・・・
それが、試練と映るか、必然と映るか・・・・

私は、弱いですから、試練だと思ったのです」




「先生~~~~!!ちょっとちょっと!!この誡先生って、知り合いなんですか?
先生の本の表紙、描いてもらいましょうよ~~~~!!」
「あほか。・・・・・・出来るわけねえ!!!一億円賭けてもいい」「なに言ってるんですか!
成せばなる!!」「とらぬたぬきの皮算用だな」「今話題なんですよ~~~!!」
「ああ、わかったわかった。 じゃあ、あいつが頭下げて描かせて下さいって言ってきたら
いいぞ」「馬鹿も休み休み言いましょうねえ!」「そうだねえ」


武士は小説の新しい構想を考えていた。しかし、またさっきの話が浮かんできた。



・・・誡、か・・・・・

あいつ、結局、逃げなかった。殴られたからな。俺があれだけ凄んでみせても・・・・
ゆかの目も、捨てたもんじゃない。

まあ、俺がゆかをあきらめることはないが、ゆかは危なっかしいからな。
ほんと、俺って馬鹿かもしれねえな・・・・・
あいつがふらふらしないように、俺がみててやらないと・・・・・・・・
・・・・まてよ・・・なんだか俺・・・こんなにいいやつだったっけ???

俺だって遊びたいんだがな~~~~~!!!ちきしょーーーーー!!
こんなんじゃ、小説のネタにもならねえ!!!!!

携帯が鳴った。

「ああ、ゆか?・・・・・え?誡の個展??行くわけないだろ・・・・・ええ??
招待状????あ、あほか!!!!!

・・・・・・なんだよ?泣いてるのか?

俺は、行かない。まあ、ゆかに来た招待状なんだろう?


・・・メッセージ?」


「・・・・・・そうなの。こう書いてある・・・・・


     愛の近くに、 いきたいと 思います      」




「そうか・・・・・・・・・・わかったよ。一緒に行こうな」「うん・・・・・・・ありがとう、武士」




・・・個展を観たら、何かわかるかもしれないな、と、武士は思った。

愛の 近くに、  か。    そうだな、そこには何があるんだろう・・・・・・・
その場所に、俺達がいる、そう思いたい・・・・・




・・・・桜の蕾が 枝の先で強い風に吹かれている道を、武士はゆかの待つ場所へと
急いだ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)                            
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by f-as-hearts | 2010-03-17 22:59 | 短編小説

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