SF小説 ジェームズ・ビンセント博士の憂鬱 5


 登場人物 

 ジェームズ・ビンセント博士   38歳    科学者 アンドロイド製作・研究 の第一人者
 
 執事                 80歳    ジェームズ博士の執事

 T・W                 ??    ザ・フー  博士の助手

 リョウ・ロバートソン        38歳    日系アメリカ人 探偵 

 トンボ                12歳    本名 アレックス・K・ロートレックス 天才少年
                            リョウの相棒

 リンダ                ??    元国際警察・犯罪捜査官

 アオイ                ??    ジェームズ博士のアンドロイド



  第 5 話  「 ここに戻って欲しいから・・・ 」


皆がアオイに呼びかけたり、アオイのデータに間違いが無いか確認して騒いでいた。
トンボは、必死になって博士の作業の状況を訊き、フーと言われた男が代わって説明していた。だが、作業に何の手違いも無かった。「考えられるのは・・・」博士が重い口を開いた。
「あの、セキュリティーサービスのビルに囚われた時、いちどきに電圧が上がり、アオイの人工頭脳に過重な電流が流れたとしたら・・・それがアオイの頭脳を麻痺させた可能性がある。機械といっても、かなりデリケートな部分なのでね」「博士、それって・・・自然には元に戻らないってことですか??」「・・・・・・わからないんだよ。なにしろ、そんな研究データは無いんだ。だから、人工頭脳を元から作るしかない・・・」「でも、それじゃあ・・・・」「・・・・・時間が足りない。アオイは戻せない・・・私は、政府の機関に行かねばならないから」

皆が肩を落としていた。「博士・・・・・私は、まだあきらめたくないです」「フー・・・すまないね。しばらくひとりにしてくれないか?」「僕も・・・・・僕もあきらめられません!!博士、僕にもアオイの人工頭脳の設計図見せて下さい!!」トンボは必死に食い下がった。「・・・トンボ君・・・わかった。そこの、PCにその部分を出しておこう・・・」

それぞれに皆が動いていた。リョウはその様子を見ながら、自分もまだあきらめていないことに気がつき、そのことに驚いた。(何故だ?・・・・・アオイはもう、あれだけ大変な目に遭ったんだ。起きたくないに決まってる・・・俺だったら、もう2度と目覚めたくないだろう・・・だが確かにPCのデータのアオイには、そんな恐ろしい記憶は、無い筈だ)リョウは悩んでいた。もう一度アオイの顔を見たら、答えがわかるかもしれない・・・

リョウは誰もいない診療台に眠るアオイを見ようと、ふらっと部屋に入った。
静か過ぎる部屋は、天井から小さなライトが点いていなければまるで霊安室のようだ・・・そこに、アオイのマリア様のような横顔が浮かんで見えた。

「アオイ・・・お前、もしかしたら、この体の記憶が辛いのか?博士には笑われるだろうが・・・そんな、信じられないような話・・・・」
そうだ・・・誰に言っても、取り合わないに決まっている。アンドロイドは機械と一緒だ。だが俺は、本物の女性だと思った時が、あった。アオイは・・・アオイにどれだけ驚かされたか・・・・・・

「・・・お前を、本物の人間の女だと思った・・・・俺は あの夜から、 お前に嘘ばかりついていたんだ・・・
・・・どうすれば、許してくれるんだ?」

どうしてこんなことを話しているのか・・・リョウはアオイが聴いている、そんな気がしていた。
今にも開きそうなまぶた、それに・・・・唇・・・・・それまで思いもしなかったような感情が、いきなり沸き起こってリョウはアオイにキスをしていた。

氷のように冷たく、それなのに柔らかい唇が、リョウの頭を痺れさせた。
心の境界が壊れて・・・まるで自分までが死んでゆくように感じた。
「アオイ・・・・・・・・戻ってきてくれ・・・・・冗談は、もうやめてくれ・・・・・・・・どうすればいいんだ・・・・・・」

リョウは自分の頭を抱えて、アオイの側から動けなくなっていた。












「・・・・・・・・・・・・・リ ョ ・・・・・ウ ・・・・」      アオイのまぶたが 少し揺れ、小さな声がそののどを通って風のように耳に聴こえてきた。
あまりに小さな声で、リョウは自分の名前を呼ばれたと気がつかなかった。しかし、何かが動く気配ではっとしてアオイを見た。


「・・・・・・・・アオイ?!・・・アオイ?」
「・・・・リョウ・・・・・・」


リョウは思わず大きな声を出した。
「・・・・・博士!!トンボ!!!アオイが、目覚めたぞ!!!」「・・・・・・・リョウ・・ね?」
「ああ、そうだよ・・・・見えるか?アオイ?」「・・・・・・・・・リョウ・・・・・・見える・・・でも・・・体が 動かない・・・・
体・・・・・・・・どうしてかわかる・・・・オイル・・・体のオイルが循環していない・・・・・」「オイル??」「体を温めるのに、お湯・・・シャワーがいるの・・・・」「わかったよ」

「アオイが目覚めたって?」博士達が驚くのを尻目に、アオイを抱えてリョウはシャワー室へ駆け込んだ。
アオイを覆っていた布を取ると、アオイの白い身体は彫像のようで・・・リョウには正視出来なかった。

「お湯・・・・は・・・39度で・・・・・・・心臓のあたりから末端へ・・・・・・」徐々にアオイの体が柔らかくなり、そのうちに体温を一定に保つ機能も作動し始めたらしい。くたりと身体が床に沈み、リョウの手はアオイを支えた。

「・・・・・リョウ・・・・・ありがとう・・・・・・何度も助けてもらって。でも私は・・・・・・」アオイの瞳は降りそそぐシャワーの中で翳り、リョウの顔を見上げた。その先を、リョウは聞きたくなかった。

「アンドロイドでもいいんだ・・・・アオイは、他の誰でもない。だからもう、それ以上何も言わなくていい・・・・・・」

ジェームズ博士が、扉の外で立っていた。「・・・・・・アオイは、もう大丈夫だ。後、頼む」
リョウは濡れた洋服のまま、黙って個室へタオルを取りに行った。トンボもリンダもアオイが復活して喜んでいる。・・・・よかった。・・・・・・・・ただ、今はそう・・・一緒に喜べるような気持ちにはなれなかった。
・・・・・・アオイが、自分で自分をアンドロイドだから、なんていうのを・・・・・認めたくないと、リョウは思っていた。何故だか、それはアオイじゃないと思うのだ・・・理由もなく、そう思うのだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(この お話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2010-02-08 23:59 | SFジェームズ博士の憂鬱

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