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ファントム Ⅱ  過去の亡霊  5

・・・・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・・

ヴォーグ・レーヴィエ            67歳
                     ・・・革新派議員 ジョルジュの伯父

ベルガー警部                 55歳


グラス・ダンカン卿               53歳
                         ・・・貴族院保守派議員


ルシウス・トゥラスト             39歳
                     ・・・王子(グラハム王の長男)

セシリア・トゥラスト              35歳
                     ・・・ルシウスの妃







第  5   話    「 罪の重さ   」


ベルガー警部はその部下の報告に、激怒した。
「グラス・ダンカン卿が、保釈された???無実であるという証拠が、出てきただと???
何を馬鹿な?!ダンカン卿は、あれだけはっきりと断言したのだぞ?!」
「それが、我々も未だに信じられないのですが・・・すでに、王家から書簡にて、裁判の
取止めと、ダンカン卿の先の自白は強要されたものなので、無効であるとーー」

ベルガー警部は机をおもいっきり叩くと、コートをひっつかんで部屋を飛び出した。
ベルガーは馬に乗ると、驚く警ら隊の者達には何も言わず、走っていった。

「レーヴィエ卿!!おられますか?!ベルガーです!!」
ドンドンとその邸宅の扉を叩いた。従者が現れて、彼を招き入れた。

「・・・お怒りは、ごもっともです。私も、先程その事実を確認致しました。・・・ベルガー警部
これは、私からのお願いなのですが、よろしいでしょうかな?」
ベルガーは、椅子に座ってこちらを見ているレーヴィエ卿に頷いた。
「とりあえず、その、血の滲んだ手の甲の手当てを。従者が驚いておりますので」

ベルガー警部は包帯を巻いた手を、握り締めてレーヴィエ卿を見ていた。
「理解出来ん!!!全く、許す事が出来ん!!!あの自白が、強要????我々が、強制
したと、どこの誰が思うというのか???ダンカン卿が、あの保守派の議員達の保身の為に
自分の主義を曲げたと?!裁判が出来ないとしたら、我々の仲間が黒馬の軍団に殺害された、
あの軍団をかくまっていたダンカン卿の、責任は一体どうなる!!!」

怒りに震えるベルガーに、レーヴィエ卿はゆっくりと話し出した。
「・・・保身の為ばかりではないと考えております。議員との戦いは、我々ノーブルノワールに
任せては頂けないでしょうかな?議会というところは、なかなか戦場としては凝った戦略を必要とする
場所でしてね。・・・私が恐れているのは、実はもっと別の事でして」

レーヴィエ卿はレモンハーブの香りの紅茶をベルガー警部にも勧めた。「いかがですかな?」
「・・・どうも・・・それは、どんな・・・恐れている、とは?」「まあ、噂ですが」「ああファントムの?」
「・・・実は、以前から気になる事がございましてな。・・・情報の漏洩というのでしょうか・・・

警部、ダンカン卿については、これ以上の追求、いや、訴追は難しいでしょう。ですが、まずは
あなたの亡くなられた部下達の為に国として償う方向で、私は進言致します」

「・・・レーヴィエ卿、以前から気になっていた事とは?」ベルガー警部の質問に、レーヴィエ卿は
答えた。「まあ、ちょっとした気がかりでしたが・・・」

「どうやら、ヴァレンシアは標準を定めてきたようです」



・・・・・・・・セシリア妃の部屋・・・・・・・・・・・・・


セシリア妃は、表の公務や公式行事を今後一切出席しない意志を表明した。
妃のその決意を、ルシウスは王や議会に伝え、それは受理された。
セシリア妃はヴァレンシアの貴族出身であり、またその身内同然にしていた侍従長ロザリーが
暗殺者ブランであったという重大な事実に、いかに王子の妃だとしてもセシリア妃を罰せざるをえず、
しかし、ルシウスはブランの犯罪を未然に防げなかったことは、王子自身も同等の罪であると主張し、
議会は妃への罰則を軽減、セシリア妃を更迭せず、ルシウス王子の監視下に置く、という決定が
下された。


ルシウスが来たので、セシリア妃は侍女に部屋から出るように告げた。
「・・・もうそんなに侍女を気にしなくても良いが・・・」
笑顔を向けるルシウスにセシリアは首を振った。
「ロザリーは・・・」
視線を落として、セシリアはぽつりと話し出した。
「ロザリーは・・・   暗殺者だったなんて・・・そんな・・・
今も 信じられません。そんな素振りは全く・・・何度もブランの事件の話も話題に出ていましたのに。
とても優秀で、本当に私の為に  よく働いてくれて・・・・・・
ヴァレンシアとの密偵のような事をしているのは、知っていました。
でも・・・私と、息子の護衛をしてくれていると、ずっと思っていました」
淡々と話すセシリアにルシウスは言った。

「・・・話してくれるようになって、嬉しいよ」「楽しい話ではないですのに」「それでも・・・」

ルシウスはちょっとむせた。
「それでも、君が何も話せない辛さを、私は知っていた。

そして・・・・・その君に、何も言えない 自分の、 情けない顔が・・・」
ルシウスの笑顔が崩れた。
「・・・ 夜の 闇に 浮かぶんだ   ・・・」

セシリアはルシウスとのこの14年間を走馬灯のように思い出していた。
「・・・・・・・・・私は あなたの笑顔しか、知らなかったのね・・・・・」
セシリアは、やっと顔を上げた。
「それが私の 務めだと 思っていたんだ・・・

これからは 本当の君を知りたいんだ、   もっと」






(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2009-03-24 23:59 | ミステリー・ファントム 2

タロット占い師ASのブログです。


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