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ファントム Ⅱ  過去の亡霊 4

・・・・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・・

ヴォーグ・レーヴィエ            67歳
                     ・・・革新派議員 ジョルジュの伯父



ルシウス・トゥラスト             39歳
                     ・・・王子(グラハム王の長男)




アイーダ・ローゼンハイム          24歳
                          ・・・女優


ゴード・エンタールⅢ世            30歳
                          ・・・俳優(ファントム)

ミシェル・グルックス              55歳
                          ・・・新聞社所長(アイーダの叔父)



第  4  話  「  見えない手  」


   親愛なる 叔父様

私の唯一の保護者で敬愛してやまない叔父様

どうか 悩みを、聞いて下さいませ。
短い時間でも構いません、お願いです、叔父様。

        
          アイーダ・ローゼンハイム




   アイーダへ

このところ、新聞社に泊り込んでの仕事が続き、私も外に出かけたいのはやまやまだが。
ところで何をそんなに悩んでいるのだね?
また舞台の事ならば、私はいつでも観に行くよ。それとも、ゴード氏の事なのかな?
明日は昼休みが取れそうだから、その時に会おう。


          ミシェル・グルックス


「叔父様、ゴード様は・・・今、新聞社にいらっしゃるのですか?」
アイーダは勧められた食事にも手をつけずに真剣な眼差しで叔父に詰め寄った。
「-ゴード・・・ああ、ジャンは時々来ているようだが。記者の仕事も本業のように上手いね」
叔父はスープを飲みながら答えた。
「叔父様・・・最近ゴード様におかしな様子はないですか?」
「-おかしな?とは?」「・・・何も変わらないということなのです」
「?もう少し、分かる様に話してくれないかね?」
「あんな噂が流れたのに、何も気にしていないなんて、おかしいとは思いません?
叔父様・・・」
叔父は、パンをちぎってスープと一緒に食べだした。
「あんな噂とは?巷には、どんな噂が流れているのかな?」
「ファントムがヴァレンシアに関わった大臣を制裁しているという、噂なんです」
「-それは、穏やかではないね!・・・いや、だが、ゴードは気にすることはないと
思ったんじゃないかね?」
「-本当に、ゴード様は何ともありませんか?」

叔父は、ちょっと黙った。
「・・・そういえば・・・今日は朝からゴードを見ていない・・・な。時々どこかへ
行くようだが。わかったよ、アイーダ。これからはお前に、ゴードの様子をなるべく・・・



・・・!!ああ!泣かないでくれ!!

わかったから!ゴードのことは、ずっと見ているようにするからね!」
「お願いよ、叔父様!」アイーダは叔父に慰められてやっと安心したのか、泣き止んだ。
「私には、叔父様だけが頼りなの」


アイーダが帰った後、また一心に印刷機を回しながら、所長は独り言を言った。
「本当に悩んでいるようだな」

そこへ、ゴードが戻ってきた。所長は大声で話しかけた。
「-あの大臣の一件は、何か判ったか?」
「-いえ・・・漁師達の目撃証言の他は、特に目新しい話もないですが」
「そうか・・・ゴード、噂の件でお前が動きづらいなら、私が取材に行くが?」
「-ああ、その一件ですか・・・」
ゴードはちょっと眉をしかめてみせたが、頷いた。
「お願いした方が良いようですね。では、私は今日の内容をまとめたいので
これで失礼します」「わかった。頼むよ」




・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国会議場・・・・・・・・・・・・・

保守派議員、大臣達は、緊急の会議を開いていた。
保守派の大臣が殺害されたと思しき事件について、まず保守派の中で情報を把握しようと
していた。
「議長、今回の事件ですが、グラス・ダンカン卿が勾留され、取調べ中という時期と、そのダンカン卿
と一番親交のあった大臣の殺害という事で、我々保守派の中にも、何事が起ころうとしているのか、
不安が広がっております。まずは検察の内容を皆に開示して頂きたいと思います」

議員の一人が立ち上がると、資料を皆に配り始めた。
「一応検察に資料を借りましたので・・・これをご覧下さい」
ざわざわ・・・・・・・・皆が大騒ぎを始めた。

「これは・・・!大変な内容ではないか!!ダンカン卿の供述とそして・・・この大臣が、ダンカン卿
と共に、ヴァレンシアに加担していた、とある!!これを、裁判にかけると言うのか?!」
「これでは、我々保守派がまるで彼らの動向を知っていて、それを黙認していたように受け取れる」
「国民がそれを聞いて、また騒ぎ出すやも知れぬな!」
「冗談じゃない!!それじゃなくてもファントムとやらが、不穏な大臣を制裁しようとしているという、
噂まで出始めているのだぞ?!火に油を注ぐようなものではないか!」

「まあ、待て!兎に角ダンカン卿には今後の事を考えて頂く事にしたいが、どうかね?
我々もダンカン卿の為になれれば良いのではないかと思うが?」
その問答の後、皆が考え込んだ。
「それはまた・・・しかし、ダンカン卿はそんなに簡単にヴァレンシアとの関係を、断ち切るでしょうか?」
「方法は、ある」
・・・・ざわざわ・・・・
「つまり我々保守派議員全員の署名をもって、ダンカン卿の無罪を王へ直訴する。
理由は、王制を維持する為には保守派内での揉め事をこれ以上、世の中に知らせぬ必要性と
わが国と王についての重要機密の漏洩を防ぐ為、ダンカン卿を我々保守が完全に拘束する、
それをもってダンカン卿には今後の事をよく考えて、供述して頂く。
ダンカン卿は命を救われ、我々は保守派の面目を保てると言う訳だ」




・・・・・・・・・・・・ルシウス王子の遊技場にて・・・・・・・・・・・・・・・・

ルシウスはレーヴィエ卿と事の成り行きを話し合っていた。
「レーヴィエ卿、私は議会というものが一体何を決める所なのか、実際わからなくなりました」
ルシウスはチェスの手が読めないのか、諦めた様に言った。
「-ダンカン卿の事ですかな?」レーヴィエ卿はビショップを動かしながら答えた。
「予測はしておりましたが」

「何故ヴァレンシア王に忠誠を誓っていた者を、保守の議員達は・・・」
「・・・国民を恐れ始めているのでしょうな」「隠したところでもうどうにもならぬのに」
「流れというものでしょうか。王子にはどのような未来が、この国には必要とお思いですか?」
その言葉で、ルシウスは、キングを動かさず、ナイトを一歩前へと進めた。
「私が動くしかないのでしょう」
「・・・なかなか良い一手です。王子、私の負けです」レーヴィエ卿は微笑んだ。






(この お話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2009-03-19 23:59 | ミステリー・ファントム 2

タロット占い師ASのブログです。


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