ファントム Ⅱ 過去の亡霊 3
2009年 03月 10日
・・・・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・
ジェラール・レックス 48歳
・・・マジシャン
ベルガー警部 55歳
ゴード・エンタールⅢ世 30歳
・・・俳優(ファントム)
グラス・ダンカン卿 53歳
・・・貴族院保守派議員
第 3 話 「 怪事件 」
ベルガー警部はダンカン卿の取調べを行っていた。
長引く検察の取調べと拘束に根を上げ、また、一生牢獄でよいのか、と問われて
やっとダンカン卿は自分がヴァレンシアの密偵の役割を果していた事を、告白した。
「黒馬の特殊工作部隊は、ヴァレンシアの軍隊の上位にいた。
その者達は常に王の警護と騎馬軍隊への指揮の伝達なども行っていたらしい。
・・・詳しくは知らん。
私を含め、ヴァレンシアの為に このシャトーグランデ王国でそれらの行動を補佐したり
情報を流す者達は、この国で普通に暮らしている。
私はそういう人間がどれだけここにいるかは知らない。
ブランの集団については、伝令で知っていたが・・・・・・
・・・・・・・・・私と ヴァレンシアの関係かね?
私の家系は、古くはヴァレンシア王家の血筋だからだよ。
200年前の、シャトーグランデ・・・いや、トゥラスト家の独立戦争の時に、
まったく信じられない事だが、トゥラスト家の側で戦争に使用する武器を売っていた
祖先のおかげで、我々はヴァレンシアに造反した者という烙印を捺されてしまった。
・・・・・なんとも、馬鹿馬鹿しい話ではないか!
それを、私の代に至るまでずっと払拭出来なかった。私がやっと、この国の大臣に
登りつめ、ヴァレンシアに今も忠誠を誓っている事を訴え続けて・・・
私は、やっと、王に許された。
・・・どのみち、ヴァレンシア王がこの国をこのままにする訳がなかろう。
私が牢獄で果てようが、外で戦火に焼かれようが、大差ないということだ」
「---では、ヴァレンシアが勝つとお思いか?」
「勝つ、もなにも・・・・・元々この国は、ヴァレンシアの領土だ。
ここが元通りになるだけの話だ」
ベルガー警部は、ダンカン卿の顔を睨みつけた。
「断じて、そんな事を 納得する訳にはいかんですな!我々の独立は当然と
あのヴァレンシアの国を知る私は、信じております!」
ダンカン卿の裁判は、長引くブランの裁判の為になかなか始められなかった。
保守派の議員達は、その成り行きに冷ややかな目を向けるばかりで、ほとんどが
問題を避けているように見えた。
そのダンカン卿の取調べの最中、怪事件が起こった。
ダンカン卿と常に行動を共にしていた保守派の大臣が、変死したのである。
その大臣は 海釣りの最中、船から落ちて死亡したと新聞では報道されたが、実は
発見された時、その大臣は議会に出席するような正装だったと、引き上げた海岸の
漁師達は証言しているのだ。
その内容はベルガー警部が取り調べで一日中かかりっきりであったので、担当となった
警ら隊の隊長からの報告を聞いただけであり、今後、他殺か自殺か、という線でも
洗い直さねばならなかった。
そしてその怪事件の後、とんでもない噂が広まった。
「ファントムが、ヴァレンシア王国に関わっている大臣達を、制裁しようとしているらしい」
「!!なんだって?!ファントムが・・・ゴードが、大臣を殺害しただと?!
何を馬鹿な!!」
ベルガーは、その噂をジェラールから聞くなり、一笑にふした。
「ゴードは笑っていなかった」 ジェラールは真面目に続けた。
「・・・どんな噂にでも、隠された真実がある・・・と、言っていた。
ーー勿論、俺だって ゴードを疑っちゃあいない。 あいつが殺人鬼になる訳がない」
いつもの酒場は常連客だけで、ベルガーはいつものスコッチをぐっと空けた。
「-捜査の鉄則だな。うむむ・・・・ジェラール、又何か噂でも情報でも何でもいい、
何かあったら教えてくれ」「ああ」
「・・・そういや、お前 今日は酒は呑まんのか?」
「呑んで良かったか?」「・・・考えさせてくれ」「じゃあ、俺はこれで消えるよ」
「・・・悪かったな。またな」
ジェラールはベルガー警部の肩を叩くと、外へと出た。
春はすぐそこだと暦は言うが、冬の星座が天空に冷たく輝き、ジェラールはコートの
襟を立て、足早に人通りのない街を通り過ぎていった。
(このお話は フィクションです)
ジェラール・レックス 48歳
・・・マジシャン
ベルガー警部 55歳
ゴード・エンタールⅢ世 30歳
・・・俳優(ファントム)
グラス・ダンカン卿 53歳
・・・貴族院保守派議員
第 3 話 「 怪事件 」
ベルガー警部はダンカン卿の取調べを行っていた。
長引く検察の取調べと拘束に根を上げ、また、一生牢獄でよいのか、と問われて
やっとダンカン卿は自分がヴァレンシアの密偵の役割を果していた事を、告白した。
「黒馬の特殊工作部隊は、ヴァレンシアの軍隊の上位にいた。
その者達は常に王の警護と騎馬軍隊への指揮の伝達なども行っていたらしい。
・・・詳しくは知らん。
私を含め、ヴァレンシアの為に このシャトーグランデ王国でそれらの行動を補佐したり
情報を流す者達は、この国で普通に暮らしている。
私はそういう人間がどれだけここにいるかは知らない。
ブランの集団については、伝令で知っていたが・・・・・・
・・・・・・・・・私と ヴァレンシアの関係かね?
私の家系は、古くはヴァレンシア王家の血筋だからだよ。
200年前の、シャトーグランデ・・・いや、トゥラスト家の独立戦争の時に、
まったく信じられない事だが、トゥラスト家の側で戦争に使用する武器を売っていた
祖先のおかげで、我々はヴァレンシアに造反した者という烙印を捺されてしまった。
・・・・・なんとも、馬鹿馬鹿しい話ではないか!
それを、私の代に至るまでずっと払拭出来なかった。私がやっと、この国の大臣に
登りつめ、ヴァレンシアに今も忠誠を誓っている事を訴え続けて・・・
私は、やっと、王に許された。
・・・どのみち、ヴァレンシア王がこの国をこのままにする訳がなかろう。
私が牢獄で果てようが、外で戦火に焼かれようが、大差ないということだ」
「---では、ヴァレンシアが勝つとお思いか?」
「勝つ、もなにも・・・・・元々この国は、ヴァレンシアの領土だ。
ここが元通りになるだけの話だ」
ベルガー警部は、ダンカン卿の顔を睨みつけた。
「断じて、そんな事を 納得する訳にはいかんですな!我々の独立は当然と
あのヴァレンシアの国を知る私は、信じております!」
ダンカン卿の裁判は、長引くブランの裁判の為になかなか始められなかった。
保守派の議員達は、その成り行きに冷ややかな目を向けるばかりで、ほとんどが
問題を避けているように見えた。
そのダンカン卿の取調べの最中、怪事件が起こった。
ダンカン卿と常に行動を共にしていた保守派の大臣が、変死したのである。
その大臣は 海釣りの最中、船から落ちて死亡したと新聞では報道されたが、実は
発見された時、その大臣は議会に出席するような正装だったと、引き上げた海岸の
漁師達は証言しているのだ。
その内容はベルガー警部が取り調べで一日中かかりっきりであったので、担当となった
警ら隊の隊長からの報告を聞いただけであり、今後、他殺か自殺か、という線でも
洗い直さねばならなかった。
そしてその怪事件の後、とんでもない噂が広まった。
「ファントムが、ヴァレンシア王国に関わっている大臣達を、制裁しようとしているらしい」
「!!なんだって?!ファントムが・・・ゴードが、大臣を殺害しただと?!
何を馬鹿な!!」
ベルガーは、その噂をジェラールから聞くなり、一笑にふした。
「ゴードは笑っていなかった」 ジェラールは真面目に続けた。
「・・・どんな噂にでも、隠された真実がある・・・と、言っていた。
ーー勿論、俺だって ゴードを疑っちゃあいない。 あいつが殺人鬼になる訳がない」
いつもの酒場は常連客だけで、ベルガーはいつものスコッチをぐっと空けた。
「-捜査の鉄則だな。うむむ・・・・ジェラール、又何か噂でも情報でも何でもいい、
何かあったら教えてくれ」「ああ」
「・・・そういや、お前 今日は酒は呑まんのか?」
「呑んで良かったか?」「・・・考えさせてくれ」「じゃあ、俺はこれで消えるよ」
「・・・悪かったな。またな」
ジェラールはベルガー警部の肩を叩くと、外へと出た。
春はすぐそこだと暦は言うが、冬の星座が天空に冷たく輝き、ジェラールはコートの
襟を立て、足早に人通りのない街を通り過ぎていった。
(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts
| 2009-03-10 23:26
| ミステリー・ファントム 2