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ファントム Phantom 9

・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・

ジェラール・レックス       48歳
                    ・・・マジシャン

ベルガー警部           55歳


ゴード・エンタールⅢ世     30歳
                    ・・・俳優(現在行方不明)




第 9 話  「 再び 劇場へ  」

ジェラールがあまりに熱心にゴードの事を訊くので、ベルガーはついに根負けして、王立劇場を再捜査する旨を劇場支配人に伝えた。
支配人は、今度こそ何か進展があるだろうという期待で、一も二もなく快諾した。

いつもなら、4、5人の憲兵を連れてゆくのだが、今回は2人でよいとジェラールに言われ、ジェラールに憲兵のコートと帽子を着せて、劇場へ出向いた。
まだ日も高く、ちょっと動くと汗ばむような陽気であった。

「・・・・もう粗方調べはついているから、何も出てこんとは思うが・・・」
ベルガー警部は本当に100%そう思っていた。しかし、ジェラールだけは何かあるとふんでいた。でなければ、俺を警戒してあんな噂を流す意味がわからない。
ーーーそれは、もしかしたらーーー

舞台の上には何の変化もなかった。ジェラールは慎重に舞台の上に上がってみたが、この前のままだった。しかし、ベルガーにはいちいち訊いて、頷いてみせたが。
ジェラールは衣裳部屋に行きたいと、ベルガーに頼んだ。
衣装は流石にみな片付けられていたが、乱雑にハンガーがころがった大きなテーブルが中央にあった。

「ベルガー!これは・・・・・・・・」
「ああ、台本だと言っておりましたな、アイーダ嬢が」ペラペラとベルガーはそれをめくりながら言った。

ジェラールは息が止まるかと思った。何故台本が?!ジェラールは、ベルガー警部が何故これについて話をしなかったのか、その方を不思議に思った。
「ベルガー、お前、これをよく読んでみたか?」ジェラールは台本を受け取ると捲り始めた。
するとそこには何箇所か線が引かれていた。


「(○・・・アイーダの役か・・・)ジュリアンナ
医者様はもう兄のが尽きると・・・・
そんな・・・・・

(○)ジュリアンナ

私達の両親は・・・もういません。兄だけが・・・・


・・・・・・・・・・最後の場面・・・・・・・・・・

白い雪が降る   降り積もる    静かに・・・・・

ファントムの冷たくなった体の上に  雪は降り積もってゆく・・・・」

線が引かれている文章、その単語を、ジェラールが拾い読みした。

「医者・・・・命・・・・・両親・・・・・白・・・・・・・」ベルガー警部は、ジェラールから台本をひったくった。
「!!なんだって??」
「-医者、命、両親・・・・・・・白、白??ブラン、か?!」ベルガー警部はその言葉に記憶が甦り、いきなり思い出した事件が、あった。

「まさか、あの迷宮入りのーーーブランの事件のことか?!」
ジェラールはベルガーの興奮した顔に驚いた。
「落ち着けよ、ベルガー!話を聞かせてくれ!」
ベルガーは、はっとしてジェラールの顔を見ると、言った。
「ーーすまん・・・・・・いや、そんなまさか・・・・・いや、私の勘違いだ。
---そんな話を思い出したからといって、何も繋がりがない・・・・・すまない、ジェラール。
・・・・・・・兎に角、今日はこれでここを引き上げよう。そうだ、ジェラール、頼みがあるんだが。
ゴードは死んでいないと、一緒にここの支配人に言ってくれないかね。この劇場で、少なくともゴードは死んでいないと。
多分、それがこの劇場にとっても、皆にとっても、良い話には違いないから」
台本を握り締めて、ベルガーはそそくさと劇場を出た。
ジェラールは、いよいよベルガーが他の事件との関わりでかたくなに黙秘している事に興味を持ったが、しかし今は何を訊いても無理なのもわかっていた。

(さっきの文章は頭の中に入った。俺が調べても別に問題はないだろう。アイーダは、それにしても何故台本を置いていったんだ?)

ジェラールは勿論ベルガーの追っている事件のことも、ブランという暗殺者の存在も知らなかったのだ。

劇場の支配人は大喜びでベルガー警部の手を握りしめた。
「そうでしたか!!よかった!!私はもうこの劇場に幽霊の噂をたてる輩まで現れたもので、閉場せねばならぬのか、と、こちらまで生きた心地がしませんでしたよ!!
天下のベルガー警部のおっしゃること、私共はやっとこれで、再開できます!ありがとうございます!!!!!」

ベルガー警部の苦笑いをジェラールは帽子の下から横目で見ていたが、はたしてベルガーはゴードを捕まえられるのだろうか、と心配していた。
今のところ、どうみてもゴードのシナリオ通りに動かされている、そんな気がしたのだ。

ベルガーは混乱していたが、しかしジェラールを巻き込んではいけない、そういう冷静さだけはかろうじて保っていた。
「すまんな、ジェラール。今日は、ここで失礼する」

ベルガー警部はあの迷宮入りの事件の資料は、どこにあったか、そんなことを考えながら、馬に乗って急いで宿舎へと向かっていった。




(このお話はフィクションです)
by f-as-hearts | 2008-12-01 12:00 | ミステリー・ファントム

タロット占い師ASのブログです。


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