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ファントム Phantom   5

・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・


ベルガー警部             55歳

貴族院革新派”ノーブルノワール”

ジョルジュ・レーヴィエ        40歳
                         ・・・貴族院議員(ノーブルノワール・リーダー)
ヴォーグ・レーヴィエ         67歳
                         ・・・貴族院議員ジョルジュの伯父

暗殺者 ブラン            ???
                         ・・・ヴァレンシア国暗殺集団の1人

ゴード・エンタールⅢ世        30歳
                         ・・・俳優(現在行方不明)



第 5 話 「 暗躍 」



ベルガー警部は、未だ掴めないゴードの消息と、現時点で怪しいと目されるメイク係を追っていた。しかし・・・・・・・・・・・
「警部!ヴァレンシア国の暗殺集団の1人ではないかと思われる人物が、我が国に潜伏中だという密告が!」
顔を真っ赤にして封筒を握り締めた憲兵が、警ら隊の宿舎に飛び込んで来た。
「-なに?!」 その手紙には確かに、警部が今も追い続けている暗殺者の名前と、狙われている人物の名前、そしてその犯行予測日までが書かれていた。
「ーー!!!ここまで詳細に!・・・・ふむ、この封筒はどこから?」
「それが・・・直接投げ込まれたようで、誰も、見ていないんです。それに、消印もなくて・・・」

「暗殺者 ブラン・・・12月の、舞踏会!・・・ヴァレンシアのとある大臣と繋がりがあることまでは、調べはついているのだが。・・・今、この話を聞いた者、よいか、どこにブランの情報屋が潜んでいるかわからん!絶対に、いいな、友人であろうと家族であろうと、絶対このことは話さないように。・・・命が惜しかったら、忘れんことだ」ベルガー警部は、今までのブランの犯行を思い出していた・・・・・・・・

その手口は鮮やかだった・・・細身の短剣で背中から心の臓を一突き・・・寸分の狂いもなく。
それは、殺害されたものが、全く相手に油断していたということだった。
「ゴードの捜索は一時中断する。私はこれから上官に報告に行って来る」ベルガー警部は
この封筒を投げ込んだ人物は、一体誰なのか、そして何故この情報を知り得たのか・・・・・
その謎に、武者震いがした。「・・・・・・この情報が、本物なら、凄い事になる!」分厚いコートを
着込んでいても、警部は自分が震えているのがわかった。




その、同じ日に同じ封筒が貴族院の革新派議員ジョルジュ・レーヴィエの元に届けられていた。

革新派”ノーブルノワール”・・・・・議員の中でも異色な、そのメンバーは、貴族ではあっても腐敗しきった政治を、広く外の世界を知る事で変えてゆこうとしている人々であった。

ジョルジュはこの封筒を幸いな事に、1人の時に執事から受け取った。
そしてすぐに、ノーブルノワールに召集をかけた。


「ジョルジュ、君の所の伝令係は、あれだね、もう少し落ち着きというか、何というか・・・・そういった伝令らしくだな、きちんとした言葉遣いを覚えた方がいいと、常に言っているようにだな」
くどくどと文句を並べ立てながら、メンバーの最年長でジョルジュの伯父ヴォーグ・レーヴィエ卿が、別荘兼隠れ家に入って来た。「-実になっていない!」

深夜だったが、別荘にはすでに4、5人のメンバーが集まっていた。
「ヴォーグ卿、事は急を要しました。伝令係の無礼は大目にみてください。そんなことより、ブランが動き出したようです」ジョルジュの言葉に、皆がどよめいた。
「・・・それではやはり、ヴァレンシアの次の標的は、国王ですか?!」
「まさか、ヴァレンシアが何の策もなくブランだけを送り込むなんて、ありえないだろう!」
「議会で、新しい法案を通そうとしている議員グループがいるが、あれは何か関係があるのか?」ジョルジュの側近である、背の低い男が割って入った。
・・・・皆が、ざわざわと騒ぎ出した。「この時期にしては、おかしな話だと思っていたが、しかしあれは・・・・」
「国民権許可局を新設する、あの案件か!!」「今までは、移民については我が国の国民との婚姻か入籍によるものと法的に決められていたが、確か今回の話だと、それに加えて、国民権許可局の特別審査委員会の議員の決定で、国民と認められる・・・という法案だったな」
「それに何か問題があるのか?」

「-あるも何も、その特別に特権が行使できる貴族が、ヴァレンシアと影で繋がっているらしいと、最近わかったんだ」
「何故、それを早く言わないんだ!」「いや、本当に最近、つい先日の話なんだ」
「・・・だが、それでまさか大量にヴァレンシアの国から移民が来るなんてことは、ないだろう?!」「・・・いや、こういうことはありうるぞ・・・暗殺部隊や特殊部隊が入り込んできたら??」
皆は驚き、いや、そんなまさか?!と顔を見合わせた。

「諸君・・・・この事についてはノーブルノワールのメンバーに話すべきか、今の今まで大いに悩むところではあったのだが、ことがブランに関係するのであれば、いかに些細な事であろうと見逃す訳にはいかないのである」ヴォーグ卿は、皆の顔を見回しながらしゃべり始めた。
「私の知り得た情報だが、その法案を通そうとしている議員は、国民権は金で売買出来る一番手っ取り早く、また元手もいらない収入源たりうると、そのような考えである訳だな。つまり国としては国民は増えるし、国税も増える、そして」

ヴォーグ卿は、唐突に傍にあった紅茶を飲んで、言葉を切った。
「・・・そして、なんですか?」ジョルジュの質問に、ちらっと目線を天井に向けて、ヴォーグ卿は続けた。

「それら、国民権を得る為に移民が支払った税金、その金は、貴族院がいかようにも有用可能な資金源であり、また私腹を肥やせる訳であるからー大勢の貴族議員が賛同する事は間違いない・・・・・・実に!!実に、嘆かわしい!!」

皆がどよめいた。「国民権の売買?!そんなものが法案を通る、そんなことがあってはいけないでしょう!!」

ジョルジュが続けた。「-国民権許可局、そして貴族議員の特権・・・・この二つがどんな影響を我々の国にもたらすのか・・・そして・・・もしも、その前に国王が倒れるようなことがあれば・・・」

メンバーはブランが王を狙う、その時期が今なのだ、という結論に到達した。
そう、この法案を通す為に王が邪魔なのだ。次期国王ルシウスは、何の疑問も持たず、ヴァレンシア国の言うなりになってしまうだろう。

「ノーブルノワールは、これからこの法案を徹底的に論議し、潰す。ヴァレンシアの卑劣な政治関与を許す訳にはいかない!」

メンバーはそれから毎夜討論を戦わせ、ジョルジュの言うように次の議会での作戦を、詳細に作り上げていった。







(このお話はフィクションです)
by f-as-hearts | 2008-11-11 11:00 | ミステリー・ファントム

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