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紡ぐ夢 綴る夢

fashearts.exblog.jp

タロット占い師ASのブログです。

          <ロイドのミス>

ロイドは博士の言葉に、逆上した。「それは、私が殺人に関わった、という意味ですか?!名誉棄損で訴えますよ!」

「――どうぞ?私は 事実を述べただけです。」ロイドが また何か言おうとした瞬間、ドアが乱暴に開いて、ライトが慌てて入って来た。「ボ、ボス!!き、緊急の連絡が!」

「なんだ?こっちはそれどころじゃ――」「ボス、会社が、会社のコンピューターが、暴走し始めたそうです!」「なんだって?!馬鹿な!あのコンピューターは―――」ロイドが博士の方を見た。

博士は、冷静にその様子を眺めていた。まるで、そうなる事を知っていたかのように。

「博士、まさか・・・まさか、アオイが・・・いや、あのコンピューターは完璧なんだ!あれは・・あれは・・・!!」その後の言葉を飲み込むと、博士の顔を睨み付けた。   「ボス!早く!」

「何をしたんだ?!博士!何をした!何をした!何をしたんだ!!」わなわなと震えるロイドをボディーガード二人が抱えて外に連れ出していった。怒鳴り声は、博士の部屋にまで聞こえていた。  博士は1人になった部屋で、ロイドに言う筈だった言葉を、呟いた。

「・・・そうだ、あのアオイの2つ目の脳のスイッチは、柱時計の鐘の音だよ。ロイド、おまえの大事なコンピューターは、ジョリーンの設計だ。・・・・ロイド、おまえが 殺してまで奪った、ジョリーンの・・・」  博士は、ゆっくりと部屋の奥の、古いアンティークのレコードプレーヤーの方に歩いていった。そして覆いを外すと、電源を入れた。

その頃、リョウは研究室に辿り着くと、トンボと共に[アオイ]を停めようとしていた。トンボはアオイに繋がっているコードを触ろうとして、電流に弾かれた。「トンボ!大丈夫か?!」

「アオイ、アオイ、聴こえてるか?!トンボ、アオイは、今どんな状態なんだ?!」トンボはくらくらしながら立ち上がると、言った。
「2つ目の脳は、取り入れたデータをどんどん、圧縮していくんだ。1/10、1/100―――そして1/10000000に、どんどん・・・・そうしていって、このコンピュータ―の全てを写して、それから・・・それから、きっと・・・」トンボは震え出した。その時、研究所員が慌てて入って来た。

「お前達、そこで何をしている!」リョウは、すばやく腰の銃を構えると、所員に狙いをつけて、低く言った。「俺達のものを、返して貰いに来ただけだ。出て行け!」所員は、悲鳴を上げて両手をあげると、すぐに部屋を出て行った。ドアを椅子で動かないようにしてから、トンボを見た。

「今まで動いていた脳を書き換えていくんだ。それも圧縮して。もう、今はこのビルのコンピューターはアオイそのものなんだ。アオイはそれだけじゃなく、このコンピューターが繋がっている世界中のコンピューターに侵入していくんだ。そうして、どんどん、本当のアオイはいなくなってしまう。うんと小さなデータになって・・・」トンボは、泣き出した。

「停めて、アオイを停めて!彼女は、自分がウイルスになるのを、知っていたんだ!こうして、いなくなってしまう存在だって・・・」トンボは、わあわあ泣いている。俺は呆然としていた。
「アオイがウイルスだって?!いなくなるなんて事が・・・・」   ああ、あの朝、俺に彼女は言ったじゃないか・・・いずれ、忘れてしまうでしょうと。  俺の中で、答が全て噛み合った。

「トンボ、どいてろ!俺は電源を切る!アオイが、化け物になるなんて、許せるもんか!」銃を構えるとコンピューターを打ち抜いたが、まだ電源は切れない。「このビルの、電源を落とさないと駄目なんだな!トンボ、先にアオイを降ろそう!」

2人でアオイのコードを絶縁体で覆ってから引き抜いた。すでに、アオイには何の反応も、無かった。リョウは泣きたいのをこらえると、制服の上着をアオイにかけてやった。

            <ラスト・ソング for you・・・>

・・・その時、反応の無い筈のアオイから、微かに音楽が流れているのに気がついた。
「・・・曲だ・・・一体 何の・・・」 すると、その曲と共に、コンピューターの暴走は収束していった。

「博士・・・・か?!」博士は、アオイを停める鍵を、やはり持っていたのだ。
リョウの携帯が鳴った。   「博士、アオイを連れて行く。 いいな!」

博士は、レコードの音楽を聴きながら目をつぶると、言った。
「そうか。・・・・私はこれから、アオイが送ってくれたその会社の情報を元に、大統領にロイドの逮捕命令を出してもらうつもりだ。・・・・リョウ、君は 君の 生きたいように生きてくれたまえ。」

「ジェームズ・・・・」 アオイから聴こえていた音楽が、なんだったのか、今やっとわかった。

「I  say  good-by my love」 ・・・はるか昔にジョリーンが好きだったカーペンターズのナンバーだった。

アオイを抱きかかえて、俺はトンボと一緒にまだ混乱しているフロア―を抜けて行った。フロア―ではコンピューターのデータが、無残な状態になっているのが解って、またあっちこっちで悲鳴が上がっていた。 ・・・アオイのデータは、博士の元へ無事届いたんだろうか。二人は、ガードマン達の出入り口から、会社を後にした。すれ違いに、ロイドが、ボディーガードを叩きながらビルの中に入っていった。

それからのアオイは、俺のベッドで眠り続けている。いや、本当は生きていないのだが、シフォンのドレスで横たわる姿は、まるで眠り姫のようだった。

博士は、I・S・Cのデータをまとめて、大統領に送った。そして、その中に写真のデータが入っているのに気がついた。
アオイが撮ったものか・・一体何を・・・?そう思い、開いてみると そこには・・・・

花火に浮かび上がったリョウの姿が、 あった。・・・・たった1枚の写真。

博士は、それが アオイの どうしても残したかったものだと判って、知らずに涙が流れていた。

「トンボ、おまえ、なんでPC持って歩いてるんだ?」大事そうに超小型PCを抱えて、にこにこしながら公園を歩いているのだ。未だに、時々コンピューターに異常が見られたり、信号機がおかしくなったりしてるけど、最悪ではない。

「え?!ううん、なんでもないよー。そうだ、ニュース!ロイドはレッド・シャドーと共謀して、大統領を狙ってた事がバレて、牢獄行きだって。会社も勿論閉鎖。再開のメドは立たないってさ。
ざまあみろ!」  その言葉に、PCから返事があった。
      
     「ざまあみろ、クソジジイ!」

「え?」 その声は? トンボはもじもじして、言った。「あのね、黙っていようかって思ったんだけど、ほら、博士 研究していいって言ってくれたから・・・僕、アオイのデータを僕のPCに移して
いたんだ・・・」

     「これからもよろしくね、ボディーガードオヤジ」


俺は、大笑いした。「トンボ、お前は大天才だよ!本当に!」 「あ、でもまだデータ、戻せないんだよ?いずれは、さ、出来ると思うけど・・・・リョウ?」
俺は本当に 泣きながら笑っていた。

ふん、博士には もう少しガッカリしていてもらおう。 ・・・そんな事を思いながら。


                 E  N  D



あとがき

  皆さん、長いお話を、また未熟者の作にもかかわらず最後までお付き合い頂き 本当に  ありがとうございました。

 
ずっと以前に マンガにした時は、エンディングでアオイは復活(?)していませんでした。 でも、トンボなら、きっと みんなを裏切ってくれるんじゃないかと(爆)彼の、大天才ぶりに 期待を残しました。

タイトルの 「瞳の中の 記憶」の意味、実は二重の意味があるんです。一つは 写真。 もう一つは・・・・あのアオイの瞳は、実は・・・・・

・・・・お分かりのようですね。

占いに関係なく、SFなぞ 書きました。皆様の暖かい励ましのお蔭です。コメントやブログでのご紹介も、身に余る光栄でした。

また、以前にボツッたネタ、小説にします。(懲りてないなあ)その時は、また どうぞよろしくお願い致します。


                          AS   
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# by f-as-hearts | 2005-02-25 00:00 | SF瞳の中の記憶 | Comments(0)