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紡ぐ夢 綴る夢

fashearts.exblog.jp

タロット占い師ASのブログです。

       <真夜中のドライブ>


車の中は、さっきまでの騒ぎが潮が引くように収まっていた。

静かなBGMは会話を邪魔しない音量。ここだけ見ると、デート中の男女としか見えないだろうが、どっちもお尋ね者なのだ。

「・・・実際、ここまで手段を選ばないってのも、驚きだな。博士は予想していたのか?」首をかしげて考えて、おもむろに「いいえ、危ない奴らだと、笑っていました。」「はっ!!どっちが!!お前をよこす博士の方が危険人物だよ。

・・そうだ、アオイは博士の事を、どう思っているんだ?」これは、我ながらいい質問だ。

「え。(思考中)・・・・・・・・・・・どう思うかと言う事を、今まで考えた事がありません。」「じゃあ、考えてみろよ。」「はい・・・・・・・・・(思考中)父親・・・・でしょうか?」ははははは!!そうらみろ、オヤジなんだよな~

「じゃあ、俺は?」「ボディーガードオヤジ」・・・・・・・・しまった。こいつの言葉につい、油断していたが、そうだこういう奴だった。俺は、自分で地雷を踏んで爆死した。

「ちきしょー、こうなったらもう何が何でもお前を届けて、キレイさっぱり博士と縁を切ってやる!!」

その頃、博士は食後のコーヒーを、思いっきり吹き出して、執事に怒られていた。

「何てお行儀の悪い。大奥様が生きていらっしゃったら、なんと嘆かれる事か!」「・・・・いや、すまない。人生というのは、面白い事も起きるものだね。いや、面白い。」自分の倍は生きているものだから未だに頭が上がらない執事だが、こんな面白い会話、聞けないのだから申し訳ないというものだ。   いや、今日はよく眠れそうだ。ありがとう、リョウ君。

「博士はこのまま、東へ行くルートを設定しています。どうしますか?」「いいぞ、だがその前にトンボを連れて行かないと。」「いいえ、トンボさんはもうそっちに向かっています。」「一人でか?!」「いいえ、なんだかお知り合いのようでしたけど?」

・・・誰かは、すぐに分かった。「リョウ、僕はもう着いたよ。誰が一緒にいると思う?」携帯の声は明るかった。「分からないな。」「リンダだよ、あの、元刑事で犯罪心理捜査官の。」

それで、トンボも安心していた訳か。リンダはトンボを助ける為に、俺と共に行動してくれた1人だ。「じゃあ、着いたらまた詳しい事を話すから。」俺は俄然元気が出てきた。やっと援軍が到着したのだ。彼女の行動には捜査で裏打ちされた隙の無い確実さがあった。

いかに疑われずに行動し他人の注意をそらすか、そういう事は彼女の十八番だった。これで、アオイを確実に届ける事が出来る。「アオイ、これで俺も良く眠れそうだよ。博士には感謝しないといけないか。」

なんだか、妙にアオイがうけているんだが?まあ変な奴だから、いいか。車は静かに倉庫の前に止まった。

            <秘密基地?>


倉庫は廃車された車の墓場の、隣りにあった。何世紀にも亘って車は人間を楽にさせてきたが、皮肉な事に車の排気ガスや中に使われていた冷却用のフロンガスが、人類の寿命を縮めたのだ。そんなガソリン車の墓場と隣り合っているのは、純粋に広い場所が欲しかったのだろう。「秘密に、研究が進められていくには、都合のいい場所」かもしれない。

中にはいってみると何もない。どこにトンボ達がいるんだろう、と見回してみると床にすこしホコリがずれたような跡が見えた。床を軽く踵で確認していくと床がスライドし始めた。携帯が鳴ってトンボが言った。「そこから入ってきて。核シェルターだったんだ、ここ。」

階段を下りていくと思ったより小さい部屋に区切られた場所に出た。奥に進むとやっとトンボのいる部屋に突き当たった。

「良かった!リョウが捕まる訳ないけど。ここは、博士がアンドロイドを研究していた施設だって。」ぐるっと見回しても、そんな形跡はどこにもない。流石というしかない。

「今は僕のコンピューターとかシステムの為の設備を全部、移動してもらったんだ。リンダのおかげだよ!」リンダが奥の部屋から、ずっと料理していたというような顔をして大鍋を持ってやって来た。

「久しぶり、ちょっとどうでもいいけど、これをテーブルの上に置いて下さらない?」リンダはサッサとスープ皿を並べると、そこに鍋に作ったパスタをトングをつかってあっと言う間に取り分けた。鍋をかたずけると、早速ディナーになった。「お子様には悪いけど、ワインは欠かせないわ。久しぶりの対面だこと。リョウ。乾杯!」「リンダ、君に会えて嬉しいよ。でも博士がよく君をよこしたな。」パスタはカルボナーラだ。ワインを飲みながら、そういえばリンダはイタリア系移民だったか、と思い出していた。

「私は、あなたには悪いけど、仕事をする人とは食事を一緒にするのが基本なのよ。食事をするとその人が分かるわ。この子達はまあ、合格ね。」リンダはそういうと、ワインをまた空けた。「リンダ、今回はセキュリティーサービスが彼女を狙っているんだが、その為には裏をかかないと・・・」そこまで言った所で、リンダの足が俺のすねをテーブルの下で蹴った。「食事終わったわね。デザートはスフレだけど、いいかしら?」

子供とアオイは隣りの部屋でニュースに見入っていた。俺達は、またワインを開けて、飲んでいた。「・・・さっきは、悪かったよ。ちょっと焦っているんだ。」リンダは別に気にしていない、という仕草をした。

それにしても、リンダは去年会った時とはまた雰囲気やスタイルが違った。去年までは確かロングヘアーを巻き髪にしていたが、今はかつらのようなショートボブだ。明るいブラウンのヘアに、少しふっくらとした体型をオレンジ系の重ね着の洋服がシャープにみせている。「あなたが、どうして関わってるかは知ってるから、気にしないで。博士の考えではあなたがいなかったら、この計画は最初っから無理なのよ。私は敵をかく乱する為に会場で仕掛けるだけ。ただ・・・・」ワインを持ち上げると、リョウにウインクした。「アオイには、大変な役ね。」

俺は、明日の予定を詳しく打ち合わせした。ホテルの間取り、出入り口、進入路、セキュリティーそれからパーティーの進行予定。「やはり、入るのは簡単だが、どうやって依頼主と会うかだな。」

リンダはにこりともせずに言った。「連れて行きさえすれば、博士が紹介する筈よ。」「博士は招待されているわ。直々に。私達は博士のゲストとして、登録されているのよ。明日はタキシード着用ね。」「アオイは?」「博士が用意しているわ。車の中にあるから、明日お楽しみにね。」


           <トンボの罠?>

朝、1番で皆を起こしたのはトンボの声だった。「やった、引っ掛かったぞ!イエーイ!」

なんだ、どうしたんだ?俺は、隣りに寝ているリンダを起こすと、トンボの部屋へ急いだ。

「見て!コンピューターに誰か触ったんだ。こっちのスクリーンに部屋の中の様子を映すよ。」確かにアパートメントの様子が映っている。2人の制服の男が苦しそうに床を転げ回っている。1人は鼻を押さえてドアを狂ったように引っ張リ始めた。

「・・・トンボ、一体どうなっているんだ?」リンダが慌ててガウンを直しながらやって来て見上げた。「まあ、まさか、これって・・・」「リンダ、分かるよね?」リンダは気色ばんでトンボの顔を見た。「嫌だ、まさか 臭素爆弾?!」トンボは大喜びで得意そうに飛び跳ねた。

「そうそう!臭いの強烈なやつだよ!ざまあみろ!僕のパソコンに勝手に触るからだ!こいつは、ガードマンの制服を着てるけどセキュリティーサービスだって!僕の特製爆弾、部屋を完全にロックしてから破裂するようにしてあったんだ。」「おい、この臭いって、どんな臭いなんだ?」

「えーとね、鼻をもぎたくなるような臭い。世界中の強烈な臭いを発酵させたようなの。1週間は、臭いが取れなくなるよ。ああ、でも毒ではないんだ。」・・・・一同、この2人に同情したのはいうまでもない。「・・・もう、出してやったら?多分この部屋に入る気は絶対おこさないだろうから。」

ロイドは、朝の報告を読んで非常に不快になっていた。「なんだと?昨夜はあの探偵を見失って、おまけに天才のガキとアンドロイドも逃がしてしまっただと?!挙句に・・・・行き先を探る為に入ったアパートで、今朝2人が窒息しそうになったぁ???一体お前達は、どんな仕事をしてるんだ!!!給料泥棒で、減俸!お前とお前と、それから、お前もだ!!!」何が、大丈夫だ、何が問題ない、だ!それとも、俺にはアンドロイドは無理だとでも言いたいのか?!朝から笑い者になった俺を笑っているのか?!

「ここまでコケにされたのは、初めてだ。償いはしてもらうからな!」ロイドは目の前のPCを机の上から払い落とした。PCはガシャンと嫌な音を残して破壊された。それを、踏み潰しながら、ロイドは拳を握りしめた。

「さて。準備は出来たか?トンボはそのスーツ、なかなかいいじゃないか。リンダ、あれ?・・・リンダはどうしたんだ?」リョウは、酷く窮屈なシャツにネクタイを締めて、鏡の前に立っていた。どうしても正装で行かなきゃならないのか、と、溜息をつくと「わあ!!凄い!!綺麗だなあ!!」という歓声が聞こえた。

リョウが振り返るとそこには、「辻が花」と言われる日本の着物を着たアオイがいた。・・・伝統的な絞り染めの高名な作家の手による、薄紫と浅黄色の霞んだような、小花が全体に銀河のように流れて、振袖にまで続いている、素晴らしいものだった。そこに、若々しい金糸を織り込んだ帯と漆塗りのポックリの下駄。髪は結わずにそのままだったが、その姿はどんな皇女も敵わないだろうと思われた。

「いいでしょ、キモノよ。博士はどうしても自慢したいらしいわね。」・・・確かに、この振袖は破格の物だが、アオイが着る為に作られたかのようだった。

「・・・これで、見納めか。アオイ、綺麗だな。」アオイの目が少し揺れたように思えた。
「リョウ、ありがとう」4人は、車に乗り込むとホテルの名前をナビに告げた。黙っていても3時間後にはホテルに着く。手に握ったハンドルが妙に汗ばむ。いよいよ近づくと、段々みんな言葉少なくなっていった。ホテルの入り口で車をボーイが持って行く。順番にゲートをくぐって行くんだが、網膜をあらかじめ登録しているらしい。「大丈夫なのか?!」リンダは妙に落ち着いている。

「博士はいいんだ、もうそのキーは手に入れた、といっていたけど。」ああ、そういえば、あの家に行った時入り口で誰かの視線を感じたなあ。これか。4人はすんなり入っていくと、会場へと急いだ。
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# by f-as-hearts | 2005-03-01 04:06 | SF瞳の中の記憶 | Comments(0)
        <仕掛けと罠と・・・>

リンダとトンボは、会場に向かうエレベーターでは、1番遠いフロアである北側に向かっていた。

そこの地下にはビル全体のセキュリティーや電源のコントロールパネルが集中している集中管理室がある。勿論、関係者以外出入り禁止。

リンダは急いで物陰で着替えると、会場でお客に接待しているバニーガールになっていた。手には、これまたどこから持って来たのか、ピンクシャンペンを抱えている。その格好で、管理室のドアをノックした。

(うそだろ~!)トンボは目を白黒させたが、管理室の前は流石にカメラがあるらしく、リンダの格好に大喜びしている声が流れてきた。「おい、べっぴんさん、会場を間違えてやしないかい?どうしたっていうんだ?」中から1人の警備の男が出てきて尋ねた。

「ハーイ、貴方達のボスが今日は警備もいつもの3倍だし貴方達にも少しプレゼント!ですって!ワタシがお注ぎしますわ!」これを断る男がいたら、凄いよな~と、見ていたら、やっぱり皆さん「一杯ぐらいなら、俺は平気だ。」そうで。やっぱりねー。次々とシャンパンを飲ませてしまうと、いきなり皆さんお休み。「さ、睡眠薬の効き目は30分。トンボ、時間がないわよ?」「アイアイ・サー!」

会場は、紳士、淑女がひしめいていた。しかし、俺達は目立つ訳にはいかないので、エレベーターの反対側にある大きな窓側で、事の成り行きを観ていた。中にはもう、博士もいるはずだし、ロイドも主役の大統領夫妻も、司会の合図を待っている筈だ。

そんな中でも、政界の人間は常に携帯やPCを使って情報を新しくし、各国との連絡を取っていた。賑やかな声の中に、ロイドの声が時に高く、饒舌に響き渡った。「大統領は、このままではこの国をネット・テロが席巻するのでは?と心配されています。私達の、インターナショナル・セキュリティーサービスが、皆さんを100%守ります!大統領夫人が、枕を高くして寝られるように私達は頑張ります。」パラパラと拍手が起った。大統領は、何も言わず、にこやかに挨拶をして廻っていた。「そろそろ始る時間ですな。」ロイドが呟くと、マイクが司会者に回された。

「今宵お集まりの紳士淑女の皆様、本日は大統領夫人のバースディーパーティーにようこそお越し頂きました。大統領ご夫妻から、心よりの感謝を申し上げます。そして、これは奥様への大統領からのプレゼントです!」

その瞬間、窓の外がパアッと明るくなり、極彩色の花火がホテルの向かいに上がって花開いた。アオイと俺は奇しくも窓に張り付いていたので、そこからの眺めは、最高だった。歓声と共に、そのまま「ハッピーバースディー!」の大コール、シャンパンの栓の抜ける音で、外の花火の音が掻き消される位だった。

アオイは、花火の光の中で、幻想的な姿で立っている。誰が見ても、このパーティーの、主役だった。

ふと、こちらを向いたアオイの顔・・・・今まで、こんなに大人びた表情をした事がなかった。これから起こる事を、考えているのか・・・・それとも・・・・・「アオイ、お前はいったい・・・」

と、突然、爆発が起こった。それも、この最上階のフロアのすぐ真下だ!

「リンダ、どうしたんだ?これは予定にはないぞ?」携帯をかけると早口に喋った。周りはもうパニックである。「リョウ、勿論私達じゃないわ!?これは、もっと前に仕掛けられていたのよ!何てこと!今、その階の安全確保のセキュリティーを作動させたわ。爆破された場所は、北側のエレベーター付近よ。そこは、封鎖したわ。」

「アオイ、来い!」俺はアオイを兎に角安全な場所に連れて行かねばならなかった。パニックになっている人々にマイクでロイドは叫んだ。

「皆さん、レッド・シャドーが、犯行声明を出しました。この爆発は、レッド・シャドーによる犯行です。落ち着いて、我々の指示に従ってください!」


           <アオイの行方>

気絶するご婦人や、怒鳴りつける政府高官を尻目に、博士は会場の出入り口から1番遠い場所に立っていた。ロイドの指示は続く。

「皆さん、今確認した所によりますと、このホールの3階下、北側のエレベーター付近で爆発があったようです。皆さん、パニックにならずに、いいですか、私達のスタッフが誘導しますから、女性とお年寄りの方を先に、南側のエレベーターにお並び下さい!大統領夫妻はすでに、ガードマンが安全にお連れしました。皆さん、慌てないで下さい!」

・・・・出来上がったシナリオを読むようだな、と博士は思った。本当のテロなら、ロイド、お前はきっと腰を抜かすに違いない。誰よりも早くエレベーターに殺到する、そんな人物だ。
博士はゆっくりと、エレベーターに向かった。

リンダは、トンボとこの爆発の意味を考え、どう動けばいいかリョウに携帯で連絡していた。

「ロイドのスタッフがそこかしこにいる。俺達は、エレベーターには行かない。」「・・・そうね、南エレベーターから、西の角の方角へ廻ると階段があるわ。そこから、10階下りるとVIPルームがあるから、そこまで、いける?」「了解」

俺とアオイは、エレベーターの前を通り抜けると、階段から下へと下りていった。アオイは走りづらい下駄を脱いで、白い足袋で走っていたが、その方がヒールより速そうだ。どんどん下の階に下りて、8階は下ったろうか、突然上と下から階段を駆ける足音が迫ってきた。

「リンダ、囲まれた、抜け道は?!」「その階のドアを右へ、そこは42階、そこから・・・」もう、その声が俺に届く事は無かった。アオイは果敢に振袖の袖を振って敵の中で戦っていた。アンドロイドはいざとなったら大の男を投げ飛ばす事も出来る程、力があるのだが流石に狭い階段では・・・・俺も、テログループの屈強な一団を下へ突き落とすまでは良かったが、それで完全に逃げ道を失ってしまった。次の瞬間、首筋に手刀を喰らって、俺は気を失ってしまった。「リョウ!!」アオイの悲痛な叫び声が、遠のく意識の中で響いていた。

目が覚めた時、自分が生きている意味が分からなかった。「あの時、俺は・・・・」頭を触ってみると傷があるらしく、包帯が巻かれていた。「何故・・・・ここは?」・・・・トンボが心配そうに覗き込んで来た。

「リョウ、ここはホテルのVIPルーム、大統領の部屋なんだよ。分かる?」リンダも傍に椅子を持ってきて、ソファーに寝ている俺の様子を見ていた。「あなたは、大統領のボディーガードに助けられて、この部屋に連れて来られたの。」

「そんな事は、どうでもいい!アオイは?!アオイは一体どうなったんだ?!」トンボとリンダは顔を見合わせて、複雑な表情で黙り込んだ。「連れ去られたんだな?!じゃあ、なんでのんびりこんな事を・・痛っ!」いよいよトンボが困ってオロオロしているのを見て、隣りの部屋からゆっくり近づいて来る人物がいた。
「博士!」博士は、リョウの傍まで来て、話し始めた。

「・・・大丈夫かね?君には本当に感謝している。これで、私達は大統領に安心して休んでもらえる。良くやってくれた。」

「なんだと?!俺は失敗したんだ!何を・・・・」
「いいや、これが我々の計画だったのだ。アオイは敵側に行かなければならなかったのだよ。私達はいかに、味方を裏切ってアオイを守ってもらうか、そして、パーティーをいかに安全に終わらせるか、その大問題を君達に託したのだ。」


         <博士の計画>

「何を、言っているんだ?俺達を、裏切っただと?」あまりの事に、意味が解らない。

博士は、ゆっくりと今までの事を話し始めた。「・・・我々が、アンドロイドを開発し始めた頃、インターナショナル・セキュリティーサービス株式会社が我々の事を嗅ぎ回っている事に気が付いた。

あの会社は、ロイドの独裁ぶりで有名だったが、世界中の安全保全の為と言って、各国の首相、大統領等に言葉巧みに、自社の製品で他を駆逐、独占していく事の必要性を説いて廻っていたんだよ。ところが、それは、彼の生きている間に完成できるような、生易しい事ではなかった。世界を自分の思い通りのシナリオで動かす・・・・大統領さえも。そんな野望の為に、彼は自分が死なずに生き続ける事を必要とした訳だ。・・・それに、私と大統領は気がついた。ロイドはとうとう、裏で レッド・シャドー と繋がった。」「・・・それは、私が大統領に警告したのよ。」それまで黙っていたリンダが、口を開いた。

「ロイドは、恐怖と 安心を演出・実行する事が、人間を操る上で、1番有効な方法だと、気が付いてしまったのよ。最初は正義が世界を支配するのが理想だったようだけど、それでは全ての人に、支配力を誇示出来ない事に気づいてしまった。自分で世界に恐怖を与え、その後で、自分について来れば安心だと思わせる。」

「もっとも、狡猾、且つ巧妙な作戦だ。しかし、我々には通じない。アンドロイドを彼の元に送って内側から崩壊させる、それが、我々の計画だ。だが、問題があった。それが、我々の狙いだと気付かれたり、疑われては水の泡。それで、君に任せる事になったのだよ。」

「・・・・・全ては、博士の手のひらの上、だと?!いいや、違うね。あんたは、完璧なシナリオを作ったかもしれないが、ミスキャストだったな!俺は知ってるんだ、アオイが、それだけの為に創られた訳が無いっていう事をな。・・・・・もう、俺の役目は終わったんだったな。俺は自由って訳だ。」ソファーから、立ち上がると、まだふらふらしやがるが、かまってられるか!

「もう、俺に指図しないでくれ。・・・・リンダ、今まで悪かったな。・・・トンボ、お前はどうする?」
「もちろん、リョウと一緒に行くよ!・・・博士、一つだけ、訊いてもいいですか?」

「なんだね?」トンボは、決心したように言った。「・・・アオイは、死ぬんですか?」
博士は微笑んだ。「・・・・もともと、生きているものではないよ、トンボ。人ではないのだから。」
「でも、特別製って・・・・・」トンボは、そこまで言って、はっと、口をつぐんだ。

「トンボ、行くぞ。」俺は 後ろを振り返らずに歩き出した。トンボは、博士に何かいいたそうだったが、俺の後をついてきた。 リンダは 溜息をついた。

「博士、なぜ 本当の事を言わないんですか?」博士は、リョウが去った方をじっと見ていたが、ふっと、視線をリンダに戻すと言った。「あくまでも、私的な事だからね。彼に背負ってもらうつもりは、ないんだ。」

「リョウ、アオイを取り返すんでしょう?」トンボが珍しく、苦しそうな表情で訊いた。「ああ、俺にはボディーガードの役目があるからな。・・・アオイと約束したんだ。」
そう言うと、車に乗り込んだ。トンボは、頷くと、やっと笑いかけてきた。
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# by f-as-hearts | 2005-02-28 23:26 | SF瞳の中の記憶 | Comments(0)
            <アオイという謎>

車の中で、ニュースを観た。

「昨夜ロサンゼルスのロイヤルグランドホテルで開かれた大統領夫人のバースディー・パーティーで、19:45頃爆発がありました。爆発は47階のエレベーター付近だった模様ですが、I・S・Cの発表によると、レッド・シャドーが犯行声明を出したと言うことです。この爆破による被害者はいませんでした。-次のニュースです。」

俺は、黙って音楽に切り替えた。トンボも、うつむいている。
「トンボ、アパートメントに帰るぞ。」部屋の匂いには閉口したが、窓を開けて暫くするとなんとか生活する事は出来そうだった。

「トンボ、仕事を頼む。I・S・Cのビルの見取り図とセキュリティー、それから・・・」テキパキと頼まれた事をこなしていきながら、トンボはそれ以外の事を考えていた。

「リョウ、今回は僕も行く。ここのコンピュータ―は、博士の言う通り、外部からの侵入に対して異常なくらい厳しいんだ。中のコンピューターからなら、なんとか進入、解析できそうだから。」二人は、二人分の武器と超小型PCを持ってI・S・Cに向かった。

その頃I・S・Cでは、ロイドが新設した研究室に意気揚揚と向かっていた。誰も見ていなかったらスキップしたいくらいだ(勿論そんなに馬鹿ではないが)すぐ傍にライトがいたが、その真面目くさった顔にもキスしたいくらいだ(勿論・・・しないが)と、思っていた。

「俺は、思うに・・・・世界が俺を求めているんだな。誰も、不死身の俺に敵う訳が無い!」「大丈夫です。問題ありません。」

研究室には、アンドロイドがいた。その姿を見るのは初めてだったが、ロイドは感嘆の声を上げた。「素晴らしい!エクセレント!ワンダフル!人間そのもの、いや、人間より美しい!!この肌を見たか?産毛すら生きているようだぞ?!しかし、人間だったら耐えられない姿だな。博士、あんたの大事な宝物を、切り刻んで細胞の果てまで研究し尽くすからな。そして、すぐに俺もアンドロイドになって、この世を支配してやる!はははは・・・・」

そこには、意識を失っているようなアオイの姿があった。裸にされ、天井のワイヤーから吊るされ手足の自由を奪われて、頭には電極らしき、髪の毛よりも細い線が数え切れない数で刺さっていた。それは徐々に太くなり、コードになってPCに繋がれていた。

「ロイド様、お話があります。」研究所長が、ロイドの前に立つと笑いを遮った。「なんだね、所長?」ゴホンと咳をして、話し始めた。「・・・このアンドロイドは、あのジェームズ博士の作ですよね?彼が、この世界での第一人者なのは、ご存知で?」「知っているが、それが何か?」

「ええ、そのですね。我々には、及びもつかない技術が使われている訳です、このアンドロイドには。」ロイドはイライラしだした。「つまり、何が言いたいんだ?」「つまりですね、このアンドロイドの脳の部分には、使われていない部分があるんです。」所長が、どうです、凄いでしょう、というような顔をするので、いよいよイライラしだした。「それの、どこが凄いんだ??」

「お分かりになりませんか?人間じゃないのに、まだ、何かに使われる筈の脳があるんですよ?それは、つまり脳が2つあるのと同じなんです!このアンドロイドは、脳が2つあって、それぞれが別々の役割を持っているかも知れないんです!!そして、そこがこのアンドロイドの特別優れた所なんです。我々は、ずっとその第2の脳の研究に取り掛かっていました。ですが、この脳が どうしたら作動するのか、依然解らないのです。」

「だが、研究の方はすぐ完成するんだろうな?どうなんだ?!」イライラは最高潮に達していた。

「なんとも。・・・鍵を探さねばなりません。博士なら、すぐに謎を解いて下さるかと。」所長は揉み手をして上目使いに見るが、気持ち悪さを倍増させた。

「何故、お前達はそんなに無能なんだ?博士に口を割らせる事が、どんなに大変か・・・いや・・・・・まてよ。・・・いいだろう、丁重にお連れしよう。紳士だからな、私は!」背広の襟を正すと、ロイドは所長に言った。「お前は、クビだ。」

「私が、直々に博士のご機嫌を伺いに行こうではないか。我々を見た時の博士の顔が見物だな。ははははは・・・・・!」ライトは、黙ってついて行った。

博士は、その一部始終をアオイを通して聞いていた。「いよいよ、だな。」読んでいたノートを閉じると本棚の中に仕舞い、執事に言った。「お客が来る。4人程だろう。それと・・・・・」執事が近くに来たので、声を落として言った。

「あの、ネジを巻いてくれたまえ。」執事は会釈をすると、仕事に取り掛かった。「もう、ロイドはビルを出た頃だな。・・・・ふむ。」
ギリギリギリ・・・・・・階段のロビーにある大時計のネジは歯軋りをする様な音を立てて巻かれていく。時間は、もうじき夕方の4時になろうとしていた。

ロイドがボディーガード5人とライトを連れてビルを出たのは、3時20分頃だった。そして、その様子を隣りのビルから観ている二人がいた。

「出掛けた様だね。」トンボは、これでやりやすくなった、とほっとしていた。ロイドがいると、騒ぎそうだと言う意味らしい。二人は周到に準備をして会社のガードマンの制服と、近所の子供の格好になっていた。


          <こどもの強み>

リョウとトンボは、I・S・Cの地下駐車場にいた。奥の柱の影に時限発火発煙装置を取り付けた。まだ、勤務時間らしく誰も降りて来ないが、注意深く二人は潜んでいた。

バァ―――――ン凄い煙と共に、まるで車が爆破したかのような音に、ビルのガードマンがドッと出て来た。「どうした!?」「テロか?!」

リョウは、ゴホゴホいいながら、その煙の中から、トンボを抱かかえて出て来た。2、3人のガードマンが慌てて駆け寄ると、リョウが煙にむせながら言った。

「いきなり、爆発音がして駐車場から煙が上がりまして、子供が中に倒れていました。早く、中の救急医療室へ連れて行かないと!」「わかった!そこから上に上がってくれ。今、中の警報を解除するから。」

リョウはトンボを抱えたまま、凄い勢いで入り口に駆け込み、まだ次々と外に出て行くガードマンを尻目に、どんどんビルの中を目的地に向かって走った。

「リョウ、もう降りても大丈夫じゃない?」トンボが、死んだフリから、片目を開けて言うと、確かにもうこの辺は、騒ぎが聞こえないし、通路を行く人も彼らに注意を払っていなかった。「そうだが、まだ研究室が分からない。誰かに訊かれても困るから・・・」そのままの格好で、うろうろしていると、研究室の白衣を着た女性が歩いている。

「任せて!」トンボが飛び降りると、その女性に近づいた。「お姉さん、僕、お父さん探してるんだけど・・・知らない?」ウルウルした目でそう言いながら、白衣の裾を、引っ張った。(やるな~!)

内心、舌を巻いた。「あら、僕のお父さんはここの人?」女性は嫌がる風も無く尋ねた。「そうなんだ、研究室にいるの」「まあ、それじゃあ誰かしら?待ってね、連絡を・・・」「いいんだ、僕、1人で来たのはパパを驚かせたいからなんだ!何階の部屋?」「そう、うふふ、15階よ。そこのエレベーターで直通だから。」「ありがとう、綺麗なお姉さん!」・・・・離れて観ていたが、これだから!相棒は頼りになるよ、全く。

その頃。博士の別荘に男達が到着していた。

「近いのに、今まで手が出なかったのは、博士に逃げられたら終わりだからだったが・・・・今日は、全くいい日だ!」ロイドは1人に車に残るようにいい、5人で屋敷の方へ歩いていった。博士は、静かにロイドの到着を待っていた。

ロイド達が、玄関入り口のチャイムを押そうとした時、中から柱時計のボーン・ボーンという音が響き渡ってきた。「どうぞ、おはいり下さい。」執事がドアを開けて、皆を中に入れると、静かに音も無くドアは閉まった。柱時計の隣りには、凛とした風情の博士がロイドを見つめていた。


         <アオイ・作動>

その日は、いつもと何も変わらない1日になる筈だった。

16:00の時刻を告げた瞬間に、それは起こった。

I・S・Cの会社のメインコンピューターが、暴走し始めたのだ。まず、会社内のPCが、全てロックされ、セキュリティーシステムに異常が多発し始めた。ビル内のドアというドア、キーの掛かる全てが解除され、PC内の情報が全て集められ、流された。
そう、「アオイ」である。 アオイの、もう一つの「脳」が、作動し始めたのだ。

その異常に、トンボはいち早く気がついた。「大変だ、始まっちゃった!アオイを停めないと!」
「何が起こったんだ?!」どこのドアも、セキュリティーも解除されて、皆が右往左往しているのを見て、リョウも異変に気がついた。

「大変よ!みんな暴走してるわ!メインのコンピューターシステムに何物かが、ウイルスを入れたのよ!」女性の悲鳴に、リョウはまさか、とトンボを見た。「そうだよ。彼女は、ここのデータを吸収して、膨大な量の情報を食べているんだ。今は、僕達の事も解らないだろうね。」15階の、研究室にアオイがいる。今はエレベーターも制御不能で、使うな!と皆が怒鳴っている。「階段で行くしかない!急ごう!」俺は、何がなんだか、解らなかった。息をきらしながら、トンボは説明した。

「博士は・・・彼女に2つの脳を与えたんだ。普段は1つでいいんだ。でも・・・・彼女は言ってたでしょ?私は、満足できない性格なのって。僕は、やっと気がついたんだ。その意味に。」

同時刻。

博士の部屋に通されたロイドは、他の者達を廊下に待たせていた。
「博士、お目にかかれて光栄です。早速ですが、貴方と取引がしたい。」

不躾な挨拶に、眉も動かさず博士は言った。

「ロイド、私はあなたに話しておきたい事がある。それは、妻の事だ。」今度は、ロイドが冷静に訊いた。「奥様、ですか?奥様がどうか?」

「妻は、8年前に交通事故で亡くなりました。その当時、私達は一緒にアンドロイドの研究をしていましてね、ふとした事で、喧嘩になり、妻が出て行ったのです。」「ほう、それは・・・」
「しかし、出て行ったはいいが、連絡が取れなくなったのが気になり、警察に行方不明で調べてもらった所、もう、すでに・・・・妻は、しかし亡くなった時何も所持していなかったんですよ。おかしいとは思いませんか?」・・・ここにきて、ロイドは何か思い出したようだった。

「ああ、それは・・・・・変ですねえ?では、博士はその時、お調べになったと?」「そうです。妻の所持品の行方と、証拠・・・・事故ではなく、犯罪、殺人事件だったという証拠をね。」

「ところが、何一つ出ては来なかった。遺留品は何もなかったんです。それで、私は彼女の部屋の持ち物から何か解らないか、と調べたんです。そうしたら・・・・」博士は本棚にいくと、一冊のノートを持ってきた。「これは、あなたの会社のノートですね?ここに、妻が走り書きであなたと会う日にちを書き込んでいた。それが、彼女が亡くなった日でした。」
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# by f-as-hearts | 2005-02-27 23:45 | SF瞳の中の記憶 | Comments(0)
          <ロイドのミス>

ロイドは博士の言葉に、逆上した。「それは、私が殺人に関わった、という意味ですか?!名誉棄損で訴えますよ!」

「――どうぞ?私は 事実を述べただけです。」ロイドが また何か言おうとした瞬間、ドアが乱暴に開いて、ライトが慌てて入って来た。「ボ、ボス!!き、緊急の連絡が!」

「なんだ?こっちはそれどころじゃ――」「ボス、会社が、会社のコンピューターが、暴走し始めたそうです!」「なんだって?!馬鹿な!あのコンピューターは―――」ロイドが博士の方を見た。

博士は、冷静にその様子を眺めていた。まるで、そうなる事を知っていたかのように。

「博士、まさか・・・まさか、アオイが・・・いや、あのコンピューターは完璧なんだ!あれは・・あれは・・・!!」その後の言葉を飲み込むと、博士の顔を睨み付けた。   「ボス!早く!」

「何をしたんだ?!博士!何をした!何をした!何をしたんだ!!」わなわなと震えるロイドをボディーガード二人が抱えて外に連れ出していった。怒鳴り声は、博士の部屋にまで聞こえていた。  博士は1人になった部屋で、ロイドに言う筈だった言葉を、呟いた。

「・・・そうだ、あのアオイの2つ目の脳のスイッチは、柱時計の鐘の音だよ。ロイド、おまえの大事なコンピューターは、ジョリーンの設計だ。・・・・ロイド、おまえが 殺してまで奪った、ジョリーンの・・・」  博士は、ゆっくりと部屋の奥の、古いアンティークのレコードプレーヤーの方に歩いていった。そして覆いを外すと、電源を入れた。

その頃、リョウは研究室に辿り着くと、トンボと共に[アオイ]を停めようとしていた。トンボはアオイに繋がっているコードを触ろうとして、電流に弾かれた。「トンボ!大丈夫か?!」

「アオイ、アオイ、聴こえてるか?!トンボ、アオイは、今どんな状態なんだ?!」トンボはくらくらしながら立ち上がると、言った。
「2つ目の脳は、取り入れたデータをどんどん、圧縮していくんだ。1/10、1/100―――そして1/10000000に、どんどん・・・・そうしていって、このコンピュータ―の全てを写して、それから・・・それから、きっと・・・」トンボは震え出した。その時、研究所員が慌てて入って来た。

「お前達、そこで何をしている!」リョウは、すばやく腰の銃を構えると、所員に狙いをつけて、低く言った。「俺達のものを、返して貰いに来ただけだ。出て行け!」所員は、悲鳴を上げて両手をあげると、すぐに部屋を出て行った。ドアを椅子で動かないようにしてから、トンボを見た。

「今まで動いていた脳を書き換えていくんだ。それも圧縮して。もう、今はこのビルのコンピューターはアオイそのものなんだ。アオイはそれだけじゃなく、このコンピューターが繋がっている世界中のコンピューターに侵入していくんだ。そうして、どんどん、本当のアオイはいなくなってしまう。うんと小さなデータになって・・・」トンボは、泣き出した。

「停めて、アオイを停めて!彼女は、自分がウイルスになるのを、知っていたんだ!こうして、いなくなってしまう存在だって・・・」トンボは、わあわあ泣いている。俺は呆然としていた。
「アオイがウイルスだって?!いなくなるなんて事が・・・・」   ああ、あの朝、俺に彼女は言ったじゃないか・・・いずれ、忘れてしまうでしょうと。  俺の中で、答が全て噛み合った。

「トンボ、どいてろ!俺は電源を切る!アオイが、化け物になるなんて、許せるもんか!」銃を構えるとコンピューターを打ち抜いたが、まだ電源は切れない。「このビルの、電源を落とさないと駄目なんだな!トンボ、先にアオイを降ろそう!」

2人でアオイのコードを絶縁体で覆ってから引き抜いた。すでに、アオイには何の反応も、無かった。リョウは泣きたいのをこらえると、制服の上着をアオイにかけてやった。

            <ラスト・ソング for you・・・>

・・・その時、反応の無い筈のアオイから、微かに音楽が流れているのに気がついた。
「・・・曲だ・・・一体 何の・・・」 すると、その曲と共に、コンピューターの暴走は収束していった。

「博士・・・・か?!」博士は、アオイを停める鍵を、やはり持っていたのだ。
リョウの携帯が鳴った。   「博士、アオイを連れて行く。 いいな!」

博士は、レコードの音楽を聴きながら目をつぶると、言った。
「そうか。・・・・私はこれから、アオイが送ってくれたその会社の情報を元に、大統領にロイドの逮捕命令を出してもらうつもりだ。・・・・リョウ、君は 君の 生きたいように生きてくれたまえ。」

「ジェームズ・・・・」 アオイから聴こえていた音楽が、なんだったのか、今やっとわかった。

「I  say  good-by my love」 ・・・はるか昔にジョリーンが好きだったカーペンターズのナンバーだった。

アオイを抱きかかえて、俺はトンボと一緒にまだ混乱しているフロア―を抜けて行った。フロア―ではコンピューターのデータが、無残な状態になっているのが解って、またあっちこっちで悲鳴が上がっていた。 ・・・アオイのデータは、博士の元へ無事届いたんだろうか。二人は、ガードマン達の出入り口から、会社を後にした。すれ違いに、ロイドが、ボディーガードを叩きながらビルの中に入っていった。

それからのアオイは、俺のベッドで眠り続けている。いや、本当は生きていないのだが、シフォンのドレスで横たわる姿は、まるで眠り姫のようだった。

博士は、I・S・Cのデータをまとめて、大統領に送った。そして、その中に写真のデータが入っているのに気がついた。
アオイが撮ったものか・・一体何を・・・?そう思い、開いてみると そこには・・・・

花火に浮かび上がったリョウの姿が、 あった。・・・・たった1枚の写真。

博士は、それが アオイの どうしても残したかったものだと判って、知らずに涙が流れていた。

「トンボ、おまえ、なんでPC持って歩いてるんだ?」大事そうに超小型PCを抱えて、にこにこしながら公園を歩いているのだ。未だに、時々コンピューターに異常が見られたり、信号機がおかしくなったりしてるけど、最悪ではない。

「え?!ううん、なんでもないよー。そうだ、ニュース!ロイドはレッド・シャドーと共謀して、大統領を狙ってた事がバレて、牢獄行きだって。会社も勿論閉鎖。再開のメドは立たないってさ。
ざまあみろ!」  その言葉に、PCから返事があった。
      
     「ざまあみろ、クソジジイ!」

「え?」 その声は? トンボはもじもじして、言った。「あのね、黙っていようかって思ったんだけど、ほら、博士 研究していいって言ってくれたから・・・僕、アオイのデータを僕のPCに移して
いたんだ・・・」

     「これからもよろしくね、ボディーガードオヤジ」


俺は、大笑いした。「トンボ、お前は大天才だよ!本当に!」 「あ、でもまだデータ、戻せないんだよ?いずれは、さ、出来ると思うけど・・・・リョウ?」
俺は本当に 泣きながら笑っていた。

ふん、博士には もう少しガッカリしていてもらおう。 ・・・そんな事を思いながら。


                 E  N  D



あとがき

  皆さん、長いお話を、また未熟者の作にもかかわらず最後までお付き合い頂き 本当に  ありがとうございました。

 
ずっと以前に マンガにした時は、エンディングでアオイは復活(?)していませんでした。 でも、トンボなら、きっと みんなを裏切ってくれるんじゃないかと(爆)彼の、大天才ぶりに 期待を残しました。

タイトルの 「瞳の中の 記憶」の意味、実は二重の意味があるんです。一つは 写真。 もう一つは・・・・あのアオイの瞳は、実は・・・・・

・・・・お分かりのようですね。

占いに関係なく、SFなぞ 書きました。皆様の暖かい励ましのお蔭です。コメントやブログでのご紹介も、身に余る光栄でした。

また、以前にボツッたネタ、小説にします。(懲りてないなあ)その時は、また どうぞよろしくお願い致します。


                          AS   
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# by f-as-hearts | 2005-02-25 00:00 | SF瞳の中の記憶 | Comments(0)