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紡ぐ夢 綴る夢

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タロット占い師ASのブログです。

<   2011年 09月 ( 15 )   > この月の画像一覧

・・・遥か大昔の、剣と魔法の物語。


ノア             ・・・ 27歳   宿屋の息子

クオリム          ・・・ 27歳   召喚師

リジム王         ・・・ 59歳   グランマーク王国 初代国王  

チェリア王女       ・・・ 16歳   グランマーク王国 第2王女

ガウル           ・・・ ???  炎の眷属  幻獣




第 2 話    「 まてまてまて!!! 」



「ガウル、君に頼まなきゃならないのは、私が神々に何か頼めば、あの魔法使い
にわかってしまうからだよ」「めんどくせえな!!!」「でも、それでおまえにも、この
世界に出てこれる理由が出来ただろ?」「ふん!ちょっとは気を使ったつもりか?」
「そうそう」「・・・まあいい。今は幻獣界も平和そのものだからな!!!」

俺は2人、いやひとりと一匹の顔を交互に見て首が痛くなった。
その視線に獣がゆらりとクオリムを越えて俺の方に向かって来た。

「し・・・・召喚師様?????なんです?この・・・・・この・・・・・・・・・・?!」
「幻獣です」「いやいやいや?!そうじゃなくて」「大丈夫、いい奴ですよ」
「は???」「いい奴ってえのは・・・・・・・・・・・・俺のことか?!

はっ!!!!!

笑わせるぜ!!!!!!!今までで、一番ひでえ冗談だ!!!!」

ガウルは口から炎の息を吹いた。

「クオリム、おめえじゃなかったら、喰らってるところだ!!!!」

その真っ赤な炎の色に、俺は気を失った。




目が覚めたら、もう昼近かった。







ああ、あれは夢だったんだ・・・・・・・



ははは、そうか、よかっ・・・「おい、早く起きろ!!!!!」

浅黒い顔、ギラリと光る眼、鋭い牙のように見える歯が、こっちを向いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どちら様で??」

「何度もいわせんな!!!!俺は、ガウルだ!!!!!」

「ノア、彼は今、君の為に人間に化けているんだ。・・・・・・・あら?」
「おい?!!!!!!めんどくせえのも、たいがいにしろよ!!!!!
白眼むいてるんじゃねえ!!!!いいか、今日中に王様に渡すぞ!!!!
クオリム、さっさと説明しとけ!!!」

何がなんだか、何でそうなるんだか、何なんだあああ~~~~~~????

ずっと俺は叫んでいたさ、思いっきり心の中で!!!!!!

クオリムは丁寧に説明してくれたが、結局・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結局は!!!!!!!!!!




「召喚師?」

門番が怪しそうな眼で俺を睨んだ。

・・・結局は、俺が召喚師のふりをしなけりゃ、城には入れない・・・・・・・・
今の俺、恨みがましい凄んだ顔に見えないかな・・・

「ああ、そうだ」「名前」「クオリム」「出身地」「言えない」「・・・・・・そうらしいな?
・・・・・年齢」「27歳」「用件」「王様の謁見」

・・・・・・・・・・なにやらもうひとりと話し合っていたが、2人で俺を見ると、言った。

「召喚師、魔法を見せてみろ」



俺は、手を前に突き出した・・・・あ、違った・・・・・いけねえ!!
手は上だよ上!!!!


「炎の幻獣よ、あれ!!!」

俺の影から、巨大な体躯の幻獣が現れ・・・・・

「うわああああ!!!!!!」2人の門番は、慌てふためいてテーブルの後ろへ
隠れた。「く、く 喰わないでくれ!!!!!」


・・・・・・お? なんか、気持ちいいもんだな?!

「・・・・・・・・もういいぞ」

ガウルは鼻を鳴らすと、影に消えた。

城の中の鏡の部屋で俺はひとり、呼ばれるのを待っていた。
扉が開いて、小姓が俺を呼んだ。


謁見の間は何段か高くなった場所に大きな椅子が2つあり、顔を伏せて待っていると
王と王女が2人で並んで椅子に座った。

「王様、召喚師、クオリムでございます」王の御付きの大臣が言った。
「この者があの・・・魔法の宝を持っております」大臣が俺に近づいて来た。

俺は胸のポケットから小箱を取り出そうとした。
その時、ガウルの唸る声が聴こえた。



「待て!!そいつから獣の臭いがするぞ!!!!俺の名を呼べ!!!!!!」

「?!出でよ、ガウル!!」

ガウルは炎の幻獣の姿でその大臣に飛び掛った。


皆が悲鳴を上げたが、大臣は飛び掛られる前に、巨大なアナコンダに変身した。

「おまえは?! ガウル!!!!」
「ずいぶんなところで遇うもんだな!!!幻獣界から逃げ出したお尋ね者が!!!」
「幻獣界の番犬の分際で!!!この貴族の私を愚弄するか!!!!!」
「幻獣界を逃げた奴に言い訳されたかねえな!!!」


「ま、まてまてまて!!!!!!!」
俺の声に一瞬2匹(??)は振り返った。

「おい、おまえの狙いはこれだな?これだな??いいか、俺はこれを持って逃げる!!
ガウル!!!おまえは王様達を守れ!!!」

俺は後ろも見ずに扉から走って逃げた。外へ!!
やべえ・・・・俺、何こんなに頑張ってんだろ・・・・
だってよ・・・・・・・王女が泣きそうだったんだよな!!!
くっそ~~~~~~!!!馬鹿じゃねえ??俺・・・・・・・
兵隊達がへっぴり腰で謁見の間を覗いている。

「お前ら、剣持ってんだったら、戦えよ!!!」俺は逃げながら叫んだ。


ガウルは唸ると王様達をすぐに隣の部屋へ避難させた。

「おい!!!!!キングアナコンダ!!!
てめえの狙いは確かにあの箱だな!!!

行かせるかよ!!!!!」ガウルの牙が閃くと胴体に牙を食い込ませようとした。
アナコンダは尻尾を大きく振ってガウルを払おうとした。勢いよく尻尾の一撃を
喰らって、ガウルが吹っ飛んだ。
アナコンダが城から外へ、俺を追いかけてくる!!!

俺は足が地についてるというより、地面をドシンドシン、バタバタ動かしている
みっともない動物になってる気がした。アナコンダはシュシュシューーーーーッと
俺の背中に迫って来ていた。

「ちきしょーーーーーーー!!!!」もうこうなったら腹ん中で暴れてやるっっ!!
そんなことを考えた時・・・

「ノア!!!!伏せやがれ!!!!!!」

俺は反射的に地面にべたっと伏せた。

アナコンダが鎌首を持ち上げていた、その瞬間だった。
ガウルはそこに回り込んで横から体当たりした。

「ノア、動くなよ!!!」

獣の皮が焦げるような臭いと悲鳴が響き渡った。俺は静かになった背中の方を
振り向いた。ひっくり返って黒こげの、巨大なヘビがそこに横たわっていた。

「ヘビ肉は鶏肉みたいな味だが、食うか?」ガウルは皮を口で引きむしりながら
言った。
「・・・・・・・・・怖いんですけど・・・・」「ふん!」ガウルはかまわず、食い続けていた。


「ノア、箱は無事だろうな?」「ああ・・・」俺はそういうと、仰向けにひっくり返った。

「そうだ、ガウル、もう君だけでこれ、届けても大丈夫だろ?
王様を助けたんだしさ!」

ガウルは頷くかと思ったら、首を振って言った。

「王女が、お前に会いたいらしい。

かっこよかったとかなんとか・・・・・・俺は別にどっちでもかまわんけどな!!!」


「マジか?!」
俺はガバッと起き上がった。「あの、王女が???」

「しらん。そう聴こえただけだ」「・・・・・・・・・・・行く」「なら、背中に乗れ!」「え?」


ガウルは俺が背中にいることなんか、まるで蚊ほどにしか感じていないようだ。
「ガウル、これ・・・そんなに価値のある宝なのか?」「まあな。俺はいらねえけどな」
「ヘビの仲間は、もう来ない?」「さあな」「悪い魔法使いが狙ってるんだよな?」
「・・・・・・・・・・・・・ふん。昔っから、そういう宝は狙われるものなのさ!!
・・・・・着いたぞ」「ああ・・・・・・・」

門番は敬礼をして俺を通してくれた。
「クオリム殿!王様がお待ちでありますっ!!」

俺とガウルは並んで王様の前に立った。

「クオリム召喚師殿。王様が褒美をとらせるとのことでございます」女官がそういうと
大臣が大きな指輪を持ってきた。

「これを・・・」
その指輪は琥珀で、細かなグリーンの光る羽のような破片が中で光っていた。

台座つきの指輪なんて生まれて初めて見た。それを俺はぼんやりと眺めた。
「綺麗ですね・・・・・・・」

王様が話しかけた。

「先程の礼を言う。まさか、化け物が大臣に変化していようとは・・・・・
私達は、召喚師殿が助けてくれなければ、今頃・・・おお、考えただけでも
怖ろしいことだ。姫も・・・あなたに感謝している。チェリア、そなたからもお礼を」

姫はその16歳には見えぬ可愛い瞳を俺に向けた。
「ありがとう、クオリム召喚師どの・・・」玉座から降りて、指輪を手に持つと
その白い指が俺の手をとった。
「これを受け取ってくださいませ。これは代々王家に伝わる琥珀のひとつです」



指に触れた途端、俺は目が覚めた。
・・・・・・・違うんだ、俺は!!!・・・・・・・・

「待ってください。
王様、王女様、俺は召喚師じゃありません。
ただの、宿屋の息子です。

俺は、クオリム召喚師に頼まれただけです。
ガウルが王様達を助けただけです。

嘘ついて、すみませんでした。
俺、すぐにクオリム召喚師を呼んで来ます」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-30 21:34 | ファンタジー小説Ⅷ
・・・遥か大昔の、剣と魔法の物語。


ノア             ・・・ 27歳   宿屋の息子

クオリム          ・・・ 27歳   召喚師

リジム王         ・・・ 59歳   グランマーク王国 初代国王  

チェリア王女       ・・・ 16歳   グランマーク王国 第2王女



第 1 話    「 どうして 俺が? 」



ある日、俺の街に召喚師が国王に呼ばれてやってきた。
その召喚師は質素な身なりで一見すると旅芸人のような風貌だった。
国王に謁見する前にせめて風呂にでも入ろうと決めた宿は、俺の親父が商っている宿屋
だった。召喚師の名前は クオリム。聞くとはなしに聞いていたら、俺と同じ歳で、27歳だった。

「ずい分若い召喚師だな。俺はここの宿屋の息子で、ノアって言うんだ。あんたと同じ歳だよ」
「若いとはよく言われるけどね。流石にここまで風神の風で飛んでくるのは疲れたよ」
「へえ??風神か。・・・召喚師ってのは、凄いんだな!田舎はどこだ?」「・・・ごめん。
言えないんだ」「へえ?そういう決まりごとでもあるのか?」「そうなんだ」「へえ・・・・・・」

俺はクオリムが部屋に荷物を置くのを手伝ってから、風呂はこっちだと指で指した。
「じゃ、まあなんかあったら呼んでくれ」「ありがとう、これ・・・」「お~ありがとう!」
チップに銅貨をくれたんで、俺はちょっと気分がよくなった。「後で良かったら遊べる店教えて
やるよ!!」「はは・・・ありがとう」


ノアは召喚師を見るのは初めてだった。
ずい分ひ弱な感じだが、あれで魔法使いなんだよな?・・・どういう魔法を使うんだろう?
風神って一体なんだろう?・・・外の薪を風呂釜に突っ込みながら、色々考えるのだった。

クオリムは次の日国王の謁見があるからと言って、早くに部屋に引っ込んでしまった。
俺は大手を振って遊びに行ける予定が、すっかり狂って、一人で近所の遊技場へ出かける
ことにした。まさか、その間に大変なことになってるなんて、思いもしなかったのだ。


遊技場では、弓矢で的を当てる遊びで盛り上がり、気がついたら夜中になっていた。
家に着くと、なんだか門のところに立派な馬車が停まっていて、いつもなら消えてる筈の
外灯が灯されていた。

玄関口で「親父~?!」と声をかけると、慌てて父が出てきた。
「どこへ行ってたんだ!!ノア?!お客様が大変なんだ!!!」

部屋には医者と助手が召喚師の手当てをしているところだった。だがその様子は尋常では
なく、皆がばたばたと走り回っていた。

「おふくろ、何?クオリムになんかあったの?」「それがね・・・・ちょっと、こっちこっち!」
おふくろは俺の腕を引っ張って隣の部屋に連れて行った。
「わたしら、夕ご飯を用意しますかって聞きに行ったんだわ、そしたらお腹を抱えて苦しんで
いたのよっっ!!召喚師様が!!驚いたのなんのって!!」
「それで医者か」「すぐに着てくれたのはいいんだけど、何の病気かわからないっていうのよ」
「へ??じゃあ、もしかして流行り病ってやつかよ?!」「いやね、それは違うから、安心した
けどさっ!!お前、あの方に変なもの食べさせなかったよね??」「はああ????
おふくろ、あんたに訊きたいよ、俺はっっ!!」「あら何よ」「俺、昔おふくろのメシで死にかけた
よな?!」「忘れたわ」「いいさ、そうやってよ・・・あ、先生!!」

医者が3人に話があると言った。
「ふぇ・・・・まあそれがようわからんがねぇ・・・体冷えとったからね・・・ふぇふぇ・・・・
風呂あがりじゃったそうだねぇ、一番考えられるんは、湯あたりっちゅうか。
それに飯くっとらんらしかったしのぉ。かゆでもな、食わして静かにいちんち、寝せときゃ
よ、だいたい治るもんじゃわ」「ありがとうございました!!先生、夜中にすいません」
「一日ってよ、先生、召喚師様、今日王様んとこ行くって言ってたんだけど?」
「無理じゃな~ふぇふぇ・・・・」「ほんにま、ありがとうございました」


医者が帰った頃、クオリムが目を覚ました。
「あ・・・・・・・・ノア・・・・・・・私は・・・」「おい、起きない方がいいぞ。先生がな、静かに
寝てなきゃダメだってさ!」「あの・・・・すみません・・・・・・ノア、君にだけ話が・・・・・」
「・・・・?わかった。おふくろ達、ちょっと外にいてくれ」「・・・・・・・・すまない・・・・・・・・」


「どうしたんだ?」
「・・・・・・寝ている訳にはいかなんだ・・・でも、どうして私が動けないかは
わかっているんだ」「・・・何かの病気か?」「いや・・・・・・・私が、王様に会えないように
とある魔法使いが呪文をかけたらしい」「え?!魔法使い?どこにいるんだ??」
「・・・それで、君にお願いしなければならないんだ。それが出来るのは、君しかいない」
クオリムはそれから、俺に詳しく話した。・・・つまり、俺は仕事を頼まれたってことだ。




「ちょーーーーーっと、待て?!

それって、つまり・・・・・・・・・・・・
俺が、お・お・お・・・王様に、会うって話か??????」

「これを渡して欲しいんだよ・・・」


渡された箱は、ぐるぐると見た事の無い文字が書かれた帯のような細い紐で
何重にも巻かれていた。大きさは卵が2つ入りそうなくらいだ・・・振ってみるとカタカタ
音がした。

「クオリム・・・・・・・おまえな、王様に会うって簡単だと思うか?!
おまえ、頭いいんだよな??なら、なんで俺を選ぶんだよ?!

絶対!!!!!絶対だ、無理に決まってるだろ!!!!!!!」俺は呆れて言った。

「いいか?俺が今までにした一番すげえ仕事ってのは、森で狩りをしたことくらいなんだ!!
どの面下げて、王様に会うって言えるんだよ??」








クオリムは背中の方を見ながら、言った。

「・・・・だってさ、おまえはどう思う?」


「ああ??狩りができりゃあ、それでいいんじゃねえか?!なんか他に必要か?」

クオリムの影が、ゆらりと揺れ、そこから大きな獣が現れた。


「クオリムが、俺に なんか頼むなんてよ!!!まったくありえねえがな!!!!!」

俺は腰が抜けるかと思う程、驚いた。


「おい、人間!!! 召喚師の頼みだからな、いいか?俺に命令すんなよ!!!」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-26 08:54 | ファンタジー小説Ⅷ
カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェリスト
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト


フェザークロス        ・・・ 26歳   ジュライの息子 バイオリニスト


エメラダ            ・・・ 68歳   バイオリニスト故ノーザンクロス の妻



・・・・・・・・最終話・・・・・・・・・・



ザザーーーーーーン・・・・・ザザーーーーーン

「カシュク、本当なの?奥様が、あの教会でのコンサートに来られなかったって」
「そうなんだ。・・・TVで拝見しますから、って言って・・・皆が説得したんだけどね」
「・・・・・・・・そうだったの・・・・・・私は、あの場で演奏が聴けて、本当に幸せだった」

「・・・人の、思いは・・・きっと簡単じゃないんだ。・・・だから、今日は・・・・・」




晴れ渡り遥か水平線が見える、その家で、ノーザンクロスの妻 エメラダは
窓を開けて海を眺めていた。



透き通る風のように、音楽が流れてきた。


エメラダは驚いて窓に寄った。



・・・一人の青年が、海を見ながら、バイオリンを弾いていた。

逆光で煌く海を背に、青年は一心に海の歌を弾いていた。

彼は時折、手を止めて・・・海を眺めていた。




エメラダは、その姿を・・・静かに見つめていた。

微笑みながら・・・・・・・・・・・・

犬が、ワオン!!と吼えて、その青年の方へ走り出した。

エメラダは慌てて、海辺へと歩いていった。






カシュクとエシェリーは、それを・・・・・・

少し離れた場所から、ずっと見ていた。





「・・・素敵な音楽だったね・・・」

エシェリーが、感激したように言った。

「・・・カシュク・・・・・・・・大好きよ・・・・・・・・・」

「・・・・うん・・・・・・・・こんな、夢もいいかなって・・・・・・・」




風の中に、またバイオリンが響いていた。

その優しい音色は いつまでも消えない夢のように・・・

いつか 届けばいい、そう カシュクは思うのだった。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-21 22:44 | ファンタジー・予言のリング
カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェリスト
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト


フェザークロス        ・・・ 26歳   ジュライの息子 バイオリニスト


エメラダ            ・・・ 68歳   バイオリニスト故ノーザンクロス の妻



第 11 話



公演の日程が公になる前に、テグンはまず美術教会の2人宛に封書を送ってきた。
それは2人にとって、思いもしない内容だった。だが、後にテグンと話をしたレンカと
カシュクは、それがやはり最善にして最高の場所であり、日にちであると納得がいった
のだった。


・・・ 5月18日 ルクール帝国 エドラカテドラル 大聖堂 ・・・・・

今までここでのコンサートは合唱団くらいだったが、指揮者テグンはここの音の響き方
また演奏者に与える精神的な影響は、他のホールの比ではないと言った。
そしてなにより、ノーザンクロス自身が教会の信者で、妻のエメラダもカテドラルでならば
と心から願ったのであった。5月18日はノーザンクロスの命日だったのである。

それからレンカもカシュクも忙しい日々が続いた。





   ・・・・・・・5月 18日 エドラ カテドラル 大聖堂・・・・・・・・・・・


世界中に配信されたTV中継のニュース、ルクール帝国のカテドラル大聖堂の内部初公開
当日まで極秘にされた演奏者達。ノーザンクロスの遺作の発表は音楽界にとって記録尽くし
の話題だった。

「レンカ最高顧問。美術教会始まって以来の人出ですね」教会からの電話を聞いて
カシュクは言った。「美術教会の映像室に、一般のお客様が1000人もつめかけたそうです」
「そりゃあまあ、カテドラルには招待出来る人は限られているからな~!
この大聖堂、オーケストラが入ると流石に・・・でも凄いな!それでも100名は座席を確保
出来たそうだ」「美術教会の音響担当が相当悩んでいたそうです」「ああ!彼か!!」

キンググランドオーケストラと指揮者テグンが中央の席に着いた。
カメラが一斉に向けられた。取材記者達の声が、そこここでニュースを流し始めた。
「スタートしたら、一切カメラのフラッシュは出来ないように伝えてある。映像はTVのみ。
それに、私達が進行をする訳ではないからな。皆、静粛にするだろう」レンカが言う通りだった。

シスターが2列に並び、大扉が開くと、教皇が壇上へと静かに向かった。
テグン達オーケストラが皆で起立すると、参列している招待客も皆が立ち上がった。
教皇が席についたのを合図に、皆も着席し、厳かな雰囲気の中で始まった。

教皇が祝福の言葉を述べ、そして改めてこの日、ノーザンクロスのミサを行うことを告げた。
オーケストラは、立ち上がった。

大扉が再び開き、そこからコンコード、ジュライ、フェザークロスの3名が入場した。

記者達や客からざわめきが起こった。「おい!!見ろよ!!!あの、3人・・・・・!!!」
拍手に迎えられ、彼らはゆっくり歩いていった。

コンコードは漆黒のスーツにグレーのドレスシャツ、ジュライは純白の細身のロングドレス、
フェザークロスは漆黒のスーツに薄い水色のドレスシャツの姿で、オーケストラの中央に
立ち、軽く会釈した。皆が座ると、テグンが指揮棒を持った。

最初に、ノーザンクロスの為にミサ曲が演奏された。
キンググランドオーケストラと3人の音は、教会の隅々にまで光が満ちるような眩さだった。


ミサの祈りを教皇が捧げ、教皇がまた座ると、今度は指揮者テグンがマイクに向かって
静かに話し始めた。



「私達人間は、いつの時代の、どんな国、どんな場所であろうとも、音楽が無い世界には
生きられないでしょう。

私達は知っています。ノーザンクロスは、いつも世界中を旅し、どこの国のどんな場所でも
人々の為に、そのバイオリンで音楽を、愛を、伝えながら生きていました。

今日は、そんな彼が、最後に皆と創り上げた音楽を発表致しますーー

・・・・・・・・世界を巡る音楽を、どうかお聴き下さい。」


最初に天井や壁から響いてきたのは・・・

4人が録音した、あのノーザンクロスの音楽だった。

その演奏を、オーケストラも3人の奏者も、じっと目をつぶって聴いていた。
教皇は身を乗り出して聴いていた。カシュクとレンカは、教会に響くその音楽に、息をする
のを忘れたかのように聴き惚れていた。

ノーザンクロスの弦が、すうっと消えてゆく、その音そのままにーーー
フェザークロスのバイオリンが音を重ねた。

それからだった。

フェザークロスとコンコードが、海の世界から再び地上へと・・・
新たな世界の始まりを謳い始めたのである。

オーケストラはノーザンクロスが見てきたであろう世界を、そして、ジュライは天空をゆく
鳥のように、そのノーザンクロスの姿を追っていた。


「・・・・・・・・・ノーザンクロスが、世界を謳っている・・・んだ!!!」

カシュクは思わず唸った。


そう、海から始まる物語は、3人によって再び世界を巡り始めたのである。

ノーザンクロスは、これを・・・この曲を、子どもだと言った。

この楽曲は、こうして・・・皆が完成してゆくのだと・・・・
そういうメッセージだったのである。



オーケストラと3人の、演奏は・・・・・・

壮大な希望の歌となって世界中に流れていった。

静かに・・・・・フェザークロスがバイオリンの音を響かせて・・・・・・・


そして、音が止むかと思った時・・・・

フェザークロスの音に、重なるように、バイオリンの音が流れてきた。

それは、ノーザンクロスの・・・本人のバイオリンだった。
優しいその音色は、いつまでもいつまでも輝く光のように響いた。

皆がその音を、胸に刻んだ。



指揮棒が下がった。その瞬間、観客から一斉に拍手と歓声が上がった。
鳴り止まない拍手と歓声・・・・・・・・ジュライの涙が笑顔の中で光っていた。
テグンは、3人の演奏家を手招きして、拍手した。




・・・それから、数日後。


カシュクはエシェリーと共に、海辺のノーザンクロスの家へと向かっていた。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-21 22:00 | ファンタジー・予言のリング
カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェリスト
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト


エメラダ            ・・・ 68歳   バイオリニスト故ノーザンクロス の妻



第 10 話


テグンの言葉は、コンコードの記憶をいきなり20年前に引き戻した。

30歳のコンコードは、自国のオーケストラですでに重厚なチェロの演奏とその経歴・・・
チェロの世界的コンテストで数回最高金賞を受賞し、今はもう特別審査員に選任されて
いること、まだ若手ながら、コンサートで世界を巡業するなど、彼にはライバルになりうる
演奏家はいないとさえ言われ始めていた。

しかしコンコードはそれが、チェロにおいてのみの賛辞だと言い切れるだけの、常識は
あった。彼が本当に恐れていたものは、自分への過信だったのだ。

それはその年、30歳の時に、ノーザンクロスと出会っていたからだった。
ノーザンクロスは彼のコンサートを観客席から観ていて、そしてコンサートが終了して
からコンコードに会いに控え室に来た。

彼は帽子をとると、軽く会釈をした。
「コンコードさんですね。チェリストの?
私はノーザンクロスというバイオリニストです。
素晴らしい演奏でした。今度よろしければ一緒に演奏をしませんか?」

ノーザンクロス・・・コンコードは、その演奏家が、いつも一人で演奏旅行をしている孤高の
バイオリニストだと噂で聞いていた。コンコードはすぐにでもお願いします!と返事をした。
その日は夜はコンサートがなかったので、時間を合わせてすぐにその会場で2人は
演奏をすることになった。

ノーザンクロスはさっきコンサートで聴いたばかりの曲を、合わせたいと言った。
コンコードは、そこで、ノーザンクロスの音を初めて聴いた。


「ノーザンクロスは天才だった。

テグンは聴いた事があっただろう?彼は、どこのオーケストラにも所属しなかったが
それは、どこにでも客演できるということで、どの国のオーケストラも喜んで彼を呼んだ。
それは・・・どこのオーケストラの音にも合わせられ、そして・・・それでいて、誰よりも
彼は、音楽を輝かせることが出来た。

彼が、私を選んだ?

それを言うなら、彼とは違う私の音楽に、興味を持ったという意味だ。
彼が目指すものとは違う音楽を、私は見ていたから。
私は、ノーザンクロスの反対側にいたんだ」

コンコードがノーザンクロスの音に追従してはいなかったことを、テグンは不思議に
思っていた。だからその言葉でやっと、その時に感じた高揚感の正体に辿り着いた。

「ノーザンクロスは、あなたの弾き方すらあの楽曲の為に必要としていた筈だね?」

「そうだよ。

だから、それも天才の力だ、と言うことだ。
そんな風に・・・全ての森羅万象を見る力を持つ人間に、反発するというのは
滑稽にみえるだろう?

だが私はそういう人間だ。

協調も和合も、私の中では一瞬なんだ。
常にあるのは、個の、輝きだ。」

レンカは言葉の重みをかみ締めていた。
テグンは頷いた。

「・・・私達は、個々の生命。お互いが引力と重力を持つ星の連なり。

そうだろ?コンコード。

ノーザンクロスの精神は、きっとその子息に受け継がれている、そう思わないか?」




「・・・・・・・それを、見届ける、か・・・・・・・・

・・・・・・・・わかった。

何が起こるかわからんが、もう一度、始めてみよう。」


レンカはやっと、ふう~~~っと息をついた。
「レンカ、どうしたんだ?」テグンが訊いた。
「は?どうしたもこうしたも!!緊張しただけですよ?凡人の悲しさってやつです」
「??意味がわからないが?」「指揮者様にはわかるまい!!」

コンコードは笑った。「テグン、彼は本当に美術教会の顧問なのか?
彼とだったら、私は酒を呑んでもいいな!!」「え?!本当ですか!!!是非!!!」
「やめとけ。コンコードはウワバミだって有名な話だ!」
「ひどいな!最近はそうでもないぞ!」「その話は最近聞いたんだが?」


「冗談はともかく、ジュライと子息には連絡しよう。テグン、キンググランドオーケストラとの
コラボレーションは、そっちの音を聴いてから決めたい。いいか?」「勿論だ」


それから半年が過ぎた。
様々な事情もあらゆる情報も、レンカ最高顧問の驚くべき辣腕によって、世間に流れる
頃には世界がノーザンクロスの遺作へ期待を抱くような、そういうニュースになっていた。
全くの新作、今まで隠されてきた遺作とは一体なんなのか?
まるで映画の前宣伝のように、レンカのその広報方法は完全に人々を、ノーザンクロス
の写真へ目を向けさせていた。
カシュクが宣伝部顧問だといったのはあながち嘘ではなかったらしい。

コンコード、ジュライ、フェザークロス・・・そして、テグンとキンググランドオーケストラ。
彼らは密やかに着々と公演に向けて準備を進めていた。
それはレンカ達美術教会にも極秘にするという徹底ぶりで、カシュクもレンカもその内容
を全く掴めなくなっていた。だが、テグンが時折もったいぶって説明する言葉を借りると
それは「完全な夢を実現する為に不可欠な秘密」であるそうだ。
そして、とうとうそのコンサートの日程と場所が公になる日がきた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-19 01:15 | ファンタジー・予言のリング
カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェリスト
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト


エメラダ            ・・・ 68歳   バイオリニスト故ノーザンクロス の妻



第 9 話


レンカはジュライ本人の言葉に目を丸くしていた。

「今、なんておっしゃいました?」


「・・・遺作を、3人で演奏できるようにしますわ」

「ほ・・・・・・・本当ですか?!」

「ええ。・・・・・・これから、皆のスケジュールを調整して・・・」
「本当ですか!!!!!!ああ!!!!よかった!!!!!
もう、それは!!!!!何でも言ってください!!!!私達に出来ることは
何でも!!!!ええ!!!!なんでも致します!!!!!」

カシュクはレンカが今にも踊りだしそうで、見ていられなかった。
「レンカ最高顧問。落ち着いてください」「馬鹿言え!!!!これが落ち着いていられる
かって!!!!!!」

「そうですね、私も嬉しいですわ。それでは、私は帰ります。
またご連絡致しますわね」

ジュライはふと振り向くと、 カシュクを見た。


「カシュクさん。

・・・・・・・・あなたは、本当に、リングに選ばれた人だったんですね。

ノーザンクロスの心、私にも聴こえました。

・・・・ありがとう。・・・また会いましょう」


ジュライを駅まで送って帰ってきたレンカは、カシュクに抱きついた。
「げ・・・・」「カシュク~~~~~~~!!!!お前~~~~~!!!!!!
よくやったなあああ~~~~~~~~!!!!!これで俺達は無敵だ!!!」
「いや何に対して??」「気にするな~~~~~~~!!!」「???」

「よし!!!!これでテグンに張り切ってもらわないとなっ!!!」
「レンカ最高顧問。張り切り過ぎです。電話、鳴ってましたよ?」

「あ・・・・・・・・・・・・




やべえ!!!!!」

レンカは電話を持って急いで廊下へと出た。
「・・・・・もしもし・・・・?」


「あらあなた。今私、捜索願を出したところよ」
「だ・・・・・・・誰の?」「あなたの」「すまん!!!!!!!!ほんとにすまなかった!!!
・・・・許して!!!!!!」
「3日間どこにいたのかしら?私の主人は?」「美術教会にいたんだよ~~~~!!!!」
「帰ってこれないほどの用事って何かしら?」「色々ありすぎなんだって!!!」
「私も色々考えていいかしら?」「ダメ、それはやめて!!!!今から帰るから!!」

電話を切ると、レンカはカシュクを探して、言った。
「明日は俺はここに来れない。緊急事態発生でね。何かあったら後はよろしく!」
「はい???」「敵は世界最強でね。やっぱり俺は無敵にはなれないな~~~!!!」
「はい???」「今にも爆発しそうな爆弾があってね~~~!!!俺って不幸・・・・・・・」
「・・・!ああ・・そうですか・・・頑張ってください」「嫌味な奴だな!頑張れないから!!」




・・・・・・・・・・・・・・・・ジュライの屋敷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


屋敷の庭からバイオリンの音が響いていた。
ジュライは荷物を置くと、すぐに庭に出た。

「・・・ただいま、フェザークロス」

その声に青年は振り返った。

「・・・・・・・・・おかえりなさい。
ジュライ、美術教会の話は、何でした?」

「ええ・・・・・・・  冷えてきたわね。中に入りましょう」

青年と母は今は2人でこの古い館に住んでいた。
壁の時計がカッチコッチと音をたてて、静かな時間を刻んでいた。
2人はよく話をした。青年は母に似た大人びた表情で、小さく頷くのだった。
青年は母の思いをよく理解し、そして賛成した。

「僕に考えがあります。ジュライ、こういうのは、どうですか?」

その夜から2人のバイオリンの調べが、高く低く続くようになった。
通りがかった人々はその演奏者が誰かはわからなかったがその演奏の間中
その通りに人の絶えることはなかった。

運良く散歩していた人は、近所の人をつかまえては尋ねるのだった。
「あの演奏者は誰ですか?ここにはどういう人が住んでいるんですか?」
「ここにはこの国の名誉バイオリニストのジュライとその息子が住んでいるよ。
彼らは私達の誇りだ」



・・・・・・・・・・・コンコードの自宅・・・・・・・・・・・・・・・


コンコードはテグンとレンカの2人に直接説得され、根負けしたように言った。
「ジュライともうひとりが了承済み??

・・・ありえないことが、起こったようだな。
一体、どうやったのか教えてくれないか?何があったんだ?」

レンカが言った。

「私達美術教会には、予言のリングを持つカシュクという絵の修復師がいます。
予言のリングをご存知ですよね?

そうです、ノーザンクロスの物だったリングです。
カシュクがジュライと、いや、その前にノーザンクロスの奥さんもですが、説得
してくれたんです!」



「予言の・・・・・・・・・・!!!

ま・・・・さか・・・・・・・あれが?!



・・・・確かに、予言のリングのことを、ノーザンクロスは特別だと言っていたが。


・・・それでは、遺作を発表するのか・・・・・そんな日が、本当に来るとは
思ってもいなかったよ。

・・・一生そんな日がくるとは、ね・・・」

コンコードは深いため息をついた。


「テグン。・・・・・・君の言う通りだ。

あれが、発表できるなら、私の最高傑作になるのは間違いない。



・・・だが、君にならわかるだろう?

作曲をする者にとって、他人の創ったものよりも、自分の作った楽曲が最高だと
言われたい願望は、容易に消せるものではない。

私が、この12年間、どれだけあの曲を超えようと足掻いてきたか・・・・・・・・

私は、あの楽曲を演奏して、嫉妬に苛まれた。
私とは、全く違う・・・天賦の才能というものに、ね。

テグン、私が黙っていた理由はそういうことだ。
ノーザンクロスは、そういう曲を、私に突きつけて天国に逝ってしまった。

・・・その曲に、また私は向かい合う訳だ。」

レンカはコンコードのその言葉に、いきなり目の前に巨大な壁が現れたように黙った。
しかしテグンは頷いていた。


「私は、曲を聴いた時に、気づいていた。

君の演奏は情感豊かで、その存在感は圧倒的だ。
だから、ソロパートであらゆる奏者を置き去りにして、君はその君の世界を創る。
君の荒々しさは、類を見ない。

・・・だから、だろう?



ノーザンクロスは、君を選んだ。



いや、君も、ノーザンクロスを選んだんだ」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-17 02:01 | ファンタジー・予言のリング
カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェリスト
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト


エメラダ            ・・・ 68歳   バイオリニスト故ノーザンクロス の妻



第 8 話


ジュライは、カシュクが説得にきたんだとばかり思っていた。
なので、リングを置いて出て行ったこと、そしてリングに曲を聴かせてくれと言ったことに
戸惑っていた。

ジュライはそっと、リングに触ってみた。



「・・・綺麗だろう?

これは、予言のリングと言うんだそうだよ」

ノーザンクロスがリングを外してジュライに渡した。

「私は、これを持ってずっと、世界中を廻っているんだ。このリングは私のすべてを
知っているんだ」

・・・全て?・・・

「そうだよ。演奏中も旅している時も。・・・今ここにいる、私もね」



・・・・・・・ここにいる、あなたを?・・・・・・・

「さあ、バイオリンを弾こうか」


ノーザンクロスはいつも言っていた。

「さあ、バイオリンを弾こう・・・・・・・・・・」



ジュライはいつの間にか、バイオリンを手にしていた。
そして、無意識のまま、あの曲を弾いていた。

「そう、ここは静かに」

「そうだ・・・・・・・私の音を聴いて・・・・・」



「ここから皆がひとつになるんだ」



最後まで、弾き終わった時・・・

ノーザンクロスが振り向いて、そして笑った。



「・・・ジュライ、君の音楽は天にまで届くようだ・・・」



ジュライの目に大粒の涙が浮かんだ。


これは、以前に彼が私に言ってくれた言葉・・・・・・・・・

私は、ずっと、忘れていた?

哀しみのあまり、ずっと忘れていたの?




・・・・・いいえ・・・・・・・・

忘れていたんじゃない。

あなたがいないんだと 思いたくなかった・・・・・・

この世界に・・・・・・・・

そうじゃなければ 私は バイオリンを持つことができなかった。

何も無かったように 日常が 続いて まるで 私に 関係ない みたいに


私の 時間は   止まっていたのに・・・・・・・・・・・・・


ジュライはバイオリンを胸に抱いた。


「ノーザンクロス・・・・・・・・・・・・

誰にも 言えなかったのよ・・・・・・・・・・・・・・


あなたを 愛していた って・・・・・・・・・・・・・・・・・


誰にも・・・・・・・・・・・



・・・でも  やっと ・・・どうしたらいいか わかった




・・・・・・この 曲の中でなら 私は 私の愛を 伝えられる。


・・・あなたに届けることが 出来るのね?・・・・・・・」









     リングが 鳴った。



ジュライは その音を 聴いた。

バイオリンを抱いたまま ジュライは天を仰いだ。


「・・・・・・・・・愛しているわ。 永遠に・・・・・・・」 








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-14 22:14 | ファンタジー・予言のリング
カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェリスト
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト


エメラダ            ・・・ 68歳   バイオリニスト故ノーザンクロス の妻



第 7 話


カシュクとエシェリーは、海辺の家を何度も振り返りながら、帰り道を歩いた。
老婆と犬はずっとあの家にいる。ノーザンクロスが家に帰る、その姿が目に浮かんだ。
灯りがついた、海辺の家へ・・・


「カシュク・・・・・・ノーザンクロスは家に帰りたいって、思っていたんでしょうね。
いつも・・・奥さんが待っている、あの家に・・・」

エシェリーの目はまだ赤かった。

「・・・・ノーザンクロスは、今も あの家に帰って来るんだ・・・
だから、奥さんは、いつまでも彼を想って暮らしていられるんだと思う」


リングが鳴った。

エシェリーはまた泣いた。

「そんな、素敵な夢を、ずっと見ていられたら・・・きっと人は寂しくないのにね」

カシュクはエシェリーの手を引っ張って、頭を触った。

「君が泣かないでくれるなら、私はそんな話をずっとしてあげる。
・・・ノーザンクロスも、きっとそう思っていたんだ」

波の音がいつの間にか消え、エシェリーの涙をカシュクは拭っていた。

「あの2人は、同じ夢を見たんだ・・・それが幸せなのかもしれない」





カシュクは次の日、美術教会へ戻った。
教会にはいるやレンカの仏頂面が目に飛び込んできた。


「おい!!!どうにかしてくれ!!!!!」「はい??」

レンカはカシュクの作業する部屋に入ると、延々と今までの話をした。
ジュライとその子と楽曲の事である。勿論、カシュクがノーザンクロスの妻から
どのような話を聞いてきたかも話させたが。

「ジュライという女性は、今まで独身で、私生活は謎だったんだが、それはかなり
旧家で名門の家柄のせいで、一切の自由が無かったということだったらしい。
・・・まあ、貴族さん達の気苦労なんか俺にはわからないが、それでもな・・・
人知れずノーザンクロスの子を育てねばならなかったジュライの、全てを隠そう
とする気持ちは、同情できるし理解もしたつもりだ。

・・・そのジュライを、奥さんがいいと言えば遺作を発表してもいいと言うところまでは
説得できたんだが、まだ、問題があるんだ。

あの遺作・・・あの曲を聴いて、もうあんな風に弾く自信がないんだと!!
・・・俺にはわからないんだが、もうノーザンクロスがいた頃のような音は
出せないって言うんだよ!!!

おい、カシュク~~~~~!!なんとかしてくれないか!!!」

カシュクは首を横に振った。
「無理ですね」「おいいいい!!!!即答するな!!心臓が止まるわ!!」
「あ、リングには訊いてません」「当たり前だ!!!!訊くな、そんなこと!!!」

「でも、レンカ最高顧問。
芸術家ってそういう人達ですよ?」
「・・・・・・・・・・・・それが困るっていうの!!な?考えてもみろよ~~~!!
宝物が目の前にぶら下がってるんだ、誰だって自分の得になることを手にいれたい
だろうが!!!」「私に力説されても」「うううう~~~~彼女には、そういう俗物的な
考えはないのかよ?!」「だから私に言わないで下さい」「言えるか、ジュライに!!!」

レンカは握りこぶしで思いっきり天を仰いだ。

「あの、ジュライだぞ?!オーケストラであんなに光り輝く演奏をする、彼女に
どうか頑張って昔のような音を弾いてください、なんて、言えるか??
どんだけ俺は思い上がった男だよ?!
頼む、カシュク!!リングの力でなんとか説得してくれ!!!!」

カシュクは思わず吹き出した。

「レンカ最高顧問にも弱みはあるんですね。

・・・私はもっと何も言えませんが・・・


・・・・・・わかりました。ちょっとお話を伺ってきます」


レンカはカシュクを、彼女が宿泊しているホテルに案内した。
ドアが開いて、彼女がレンカを見上げた。

「ジュライさん、先日の件で・・・」「・・・・・・すみませんが、もうそのお話は・・・」
「いえ、今日はリングの継承者のカシュクを連れてきたんで、ちょっとだけでも
お話を・・・・」

ジュライは驚いたようにカシュクを見た。

「・・・・そうでしたか・・・・どうぞ・・・・・・・・」

その部屋の中央には、詰められた旅行鞄とバイオリンケースが並んでいた。
もう帰る用意は出来ている、それが見て取れた。

カシュクはレンカが困った顔でジュライに話しかけているのをじっと聞いていた。

「レンカ最高顧問。私がジュライさんとお話する間、ちょっと席を外してくれますか?」
「あ、ああ。わかった・・・・」レンカがドアを閉めた音を聴いてから、カシュクは少し息を
整えた。

「・・・・・すみません。さっきまでレンカ最高顧問と話をしていたもので。
水をください」カシュクはテーブルにある水差しの水をコップに注いだ。
「ジュライさんはいかがですか?」「・・・・いいえ、結構ですわ」

2人は椅子に腰掛けた。

カシュクは静かにジュライを見つめた。そして、話し始めた。

「このリングは・・・ノーザンクロスが持っていたものでした。

不思議な縁で、これを持ってノーザンクロスの家に行き、奥さんと会い・・・
リングとノーザンクロスの話を聞きました。

最初に会った時、奥さんはリングがノーザンクロスを訪ねてくれたと言って
喜んでくれました。

2度目は先日お会いしたのですが、その時はノーザンクロスの遺作について
話して下さいました。

そして・・・リングは、ノーザンクロスの心を伝えてくれました。

奥さんの話では、ノーザンクロスは昔、リングに語りかけるようにバイオリンを
弾いていたそうです。




・・・ジュライさん。

良かったら、リングに、あの曲を聴かせてあげてくれませんか?」


ジュライは驚いて、リングと、カシュクを見つめた。

「私は、しばらく外にいますから」

カシュクはリングを外してテーブルに置くと、ドアを出て行った。
ジュライはそのリングをじっと見つめていた。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-14 00:00 | ファンタジー・予言のリング
カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェリスト
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト


エメラダ            ・・・ 68歳   バイオリニスト 故ノーザンクロスの妻



第 6 話


指揮者テグンはコンコードとの電話の後、ノーザンクロスの遺作をどう発表するのが
一番いいのか、過去の事例を紐解いていた。

テグンは、コンコードがノーザンクロスと直接話をしている、それを確信した。
遺作があることを知っていた、それと、勿論彼が奥さんの話をしたからだった。

しかしノーザンクロスの遺言は奥さんにしかわからない筈だし、コンコードの言う通り
事情があるのなら、いくら美術教会に贈られた物だとしても、勝手に世に出せる代物
ではないのだ。
だが、一度聴いたからには、自分にもこの遺作に関わる権利がある。そう強く思うのだ。

コンコードは電話でテグンの話を聞き、奥さんの了承があれば真実を話してもいいと
言った。

「コンコードさん。私はこの遺作をオーケストラで演奏したいんです。
キンググランドオーケストラの演奏者が役不足だとは思わないが、私は・・・・・・
この楽曲の演奏者達を抜きには、この曲を語れないと思っています。

・・・・コンコードさん、この曲はあなたの代表作でしょう?

きっと、そうなると、私は確信しているんです」

コンコードは何も言わなかった。電話口で彼はふうっと息を吐いた。
「・・・話はわかりました。それでは私は、用がありますから・・・」・・・プッ・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・海辺のノーザンクロスの家・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


カシュクは奥さんの話を聞いて、立ち上がって手を出した。

「奥さん・・・・私は、この曲は奥さんに贈られた最後のプレゼントだったんだと
知らなかったんです。ごめんなさい。勝手なことを言いました。

この曲の想いをどんなに誰かが語っても、それは他人の言葉になります。
奥さんが受け取った心は、いつまでも色褪せないんですね。
それが、一番大切なことだと思います。

美術教会には、私から話をします。
大丈夫です。私も、あなたからこの曲を聴かせてもらえて幸せでした。
この曲は、お返しします。」


その言葉に、老婆はこらえきれなくなって泣き出した。
エシェリーは傍にいって肩を抱きしめた。「奥様・・・・・・・」

「・・・・・・・・この・・・・曲は・・・・・・・

私の、支えだったんですよ・・・・・・・・・・・・・・ずっと・・・ずっと・・・・・

ごめんねえ・・・・・・こんな・・・に・・いい曲なのに・・・・・


主人が    私の こどもだって言って くれた・・・それが

それが・・・・・ほんとに 嬉しかったんですよ・・・・・・・・・・・・




・・・決心 というのは  いつまでたっても・・・・・できないんですよ・・・・・

いつだってね・・・・悔やんでばかり・・・で・・・・・・・・



だから、あなたのリングに 訊いてみたかったんです・・・・



・・・私は あなたの曲を 皆に 聴いてもらったら

それで  それを  幸せに 感じられるんでしょうかって・・・・・」






リングが、 鳴った。


「・・・・・・あなた。  ありがとう・・・・・・・・・」


エシェリーはカシュクに訊いた。


「本当に?」

「はい・・・・・・・・・・」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・美術教会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



レンカはジュライの言葉に、頷いていた。

「ジュライさん・・・・・・・

私は、奥さんが・・・・・・もしかしたら、曲を聴いて・・・そのことに、気がついて
いたんじゃないかと、思います。
そして、何も言わずに曲を大切にされてきた。

ジュライさんが、もしこのことを話してくださらなかったら、私は不躾にあなたや
あなたのお子さんを傷つけていたかもしれません。

・・・この曲を聴いて、キンググランドオーケストラの指揮者テグンは私に
3人目の人物が、若くてとても瑞々しい演奏をしている、まるで若い頃の
ノーザンクロスだと絶賛していました。

ですから・・・私は、もしかしたらと思っていました。



・・・・・・ひとつだけ、わかっていることがあります。

ノーザンクロスは、この3人とでなければ、この曲を創り上げなかった。
・・・あなたと、あなたのお子さんが、賛同してくださらなければ、この
遺作は発表しません」

ジュライは顔を上げた。



「・・・・・・・・・・・・・曲を、   聴かせてください・・・・・・・・・・

  もう一度、あの曲を・・・・・・・・・・・・・」



ジュライは ひとりで音響の部屋で、曲を聴いた。

ジュライは手が震えているのを感じた。





・・・・これ は    私の 音 ?

・・・・私 は     こんな 音を  弾いて ・・・・・・・!!!

震えが 止まらなかった。



レンカはその後、ジュライから驚くような言葉を聞いた。

「あの音を、どうやって出したのか、わからない・・・・・・
本当に私は、あんなに良い音を 弾けたんでしょうか?」

「・・・・・・・・?え??それは、どういうことですか?」

「言葉の通りです。・・・・・・これは、ノーザンクロスがいたから出来たんです。
今の私に、出来るかどうか、自信がありません・・・」

レンカは言葉がなかった。

音楽家の、その楽曲への心は推し量れるものではないと、その時
気づいたのであった。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-12 11:20 | ファンタジー・予言のリング
カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

テグン             ・・・ 46歳   キンググランドオーケストラ指揮者 音楽家


コンコード           ・・・ 50歳   チェリスト
                 

ジュライ            ・・・ 44歳   バイオリニスト


エメラダ            ・・・ 68歳   バイオリニスト 故ノーザンクロスの妻



第 5 話



ジュライはにこっと笑いかけた。

「とても面白いお話ですね。本当のことでしたら。
まさか、私が演奏をしているとお考えだったとは、思いもしませんでしたわ。
私はてっきり、ノーザンクロスの楽曲を演奏する機会を戴けるのかと思っていました」

レンカは唸った。
「・・・・・・・・・!!うう~~~~んん・・・・!!」
(なるほど・・・そう、簡単には認めない・・・か!!じゃあどうする?!)

「そうですね、ええ、今この楽曲を、どうやって世間に発表するか、美術教会として
協議中です。

ノーザンクロス氏が一人で創り上げた作品なら、奥様だけの承認でいいのですが、ね。」

ジュライは何も反応しない。

「・・・・・そうなんですよ。

この遺作は、ひとりのものじゃない。」

腕組みをし口元に手をあてて、レンカは悩んでいる顔をした。

「奥様がこれを発表して欲しいと言われても、無理かもしれませんね・・・・・・・」


ジュライは思いもしない言葉に驚いた。
「は・・・・・・発表して欲しいって、言われたんですか?」

「ええ。絵の修復師カシュクが、この楽曲について詳しく伺う為に、今頃奥様に
会っているんじゃないかと思いますが。

おお、そうだ~~!!
・・・なんでしたら、今なら奥様に繋いでもらえると思いますので、直接訊いて
みましょうか?」

「待って下さい。・・・ノーザンクロスの遺作だということはわかりましたが、レンカ最高顧問。
何故今までこの楽曲が世の中に出てこなかったのか、理由を奥様はおっしゃいましたか?」

「いいえ?・・・ジュライさんはご存知なんですか?そういう風に聞こえますけど?」

ジュライの手が震えていた。
「いいえ、存じません。噂を聞いたんです」「ほう?・・・どんな噂でしょう?」

「・・・・・・・ノーザンクロス、は・・・これが自分の最後の曲だと 知っていたっていう・・・」

今度はレンカが飛び上がるぐらい驚く番だった。

「な・・・・・・・・・・・・・・・・!!なんですって??

誰に、聞いたんですか?!そんな話は誰も知らなかった筈ですが!!」



「誰も知らない筈ですわ。・・・私はノーザンクロスに会った知り合いから聞いたんです。

そういう遺作があるそうだけど、彼が・・・・・・・   


これは奥様に捧げる曲だと・・・   最後になってしまったが ・・・   

・・・って言っていた・・・・・と・・・・・・・・」


ジュライはバイオリンケースに目を落としたまま、そう、言った。


レンカは、その時初めて、ノーザンクロスもリングに選ばれた人間だったことを
・・・カシュクのように、ずっとリングと共にいたということを、思い知らされた。


「・・・・・・・・ジュライさん。

私は、予言のリングの力を知っています。カシュクと共にいるからです。
ですが、予言のリングはその本人の問い掛けにしか、答えないと聞いています。


・・・・失礼ですが。

ほんとに失礼を承知で、申し上げます。



ジュライさん、あなたはノーザンクロス本人から聞いたんですね?

でなければ、そんな大事な話を、誰に訊くことができるというんでしょうか」


ジュライは笑顔をつくろうとした。
何か、言わなければ、と必死で考えていた。

「ジュライさん。

私は、あなたが護ろうとするものを、一緒に護ります。

あなたが護りたいのは・・・・・もうひとりの、演奏者ですね?」


ジュライは堅く目を閉じた。もう、無理・・・だ。

もう、きっとすべてが動き出すのだ・・・・・・・・
・・・・そうなら・・・・・・



「・・・・・レンカ最高顧問。

・・・想像、  できます・・・か?

自分が憧れ・・・師と仰いだ人が   私と・・・・・私の、子と・・・・・

ある日・・・一緒に 最高の演奏を しよう と 言ってくれたんです。

 最初で 最後の・・・・演奏を ・・・・・・・



・・・・・・・これは 私の 最高傑作だ と 喜んでくれた 日 ・・・・・・・・・




・・・私の 時間は ・・・・・あの日から 止まったまま だったんです」






・・・・・・・・・・・・・・・・海辺のノーザンクロスの家・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ザザーーーーーン・・・

ザザーーーーーーーーン・・・・ザザザーーーーーン・・・・・・

白い波が高く波打ち際で砕けて、降りだした雨に吼えているように見えた。


家の窓は全て閉じられたままだった。もう昼に近いというのに、分厚い雲がまるで
戦車の群れのように水平線から押し寄せて、陽の光を遮ったままだった。


「・・・・ノーザンクロスはね・・・

演奏旅行に行くのは、一年中のことでね。 普通のことでね。
結婚した当初は、一緒に旅行もしたけど、そのうち・・・私がついて行くのに
疲れてしまって・・・

・・・主人は、旅行の途中にここに来て

・・・私がこの海辺の家で、帰りを待っていてくれる夢を、見たんですって。

犬がいて、子どもが・・・いて・・・砂浜を走り回っている・・・

私もね、そんな夢が好きだった。

・・・・・・海は、本当に綺麗で、毎日見ていても見飽きないし・・・・

主人はいつも、海を見ていた。


私は・・・・・・主人の夢を 叶えてあげられなかった・・・・・

それでも、主人はここに帰ってきてくれる。




・・・・・・あの、日・・・・・


・・・この曲は 私達の こどもだから。君の元に ずっとおいてくれないか?

・・・・と 言って 私に渡して・・・・・・・・・


それから・・・・・・・・・・・それから、 ね ・・・・・・・


曲を 聴いて ね・・・・・・・

涙が 流れて 止まらなくなって・・・・・・・・



ノーザンクロスが 私に 

寂しくないように 悲しまないように、 おまえは ・・・・・


・・・・おまえは、 ひとりじゃないんだよって・・・・・・・・・・・・・・







だけどねえ・・・・・ 私は 泣いていたんですよ・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・カシュクさん・・・・・・・

あなたが、私を訪ねてくれたのもねえ・・・・・

主人が きっと言いたかったことが あったんだと 思う・・・・・・・」


エシェリーは下を向いて涙を拭いていた。
カシュクはノーザンクロスが残していった愛の大きさを思った。
そして・・・それはレンカも、同じ気持ちだったのである。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-09-12 11:14 | ファンタジー・予言のリング