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紡ぐ夢 綴る夢

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タロット占い師ASのブログです。

<   2011年 02月 ( 10 )   > この月の画像一覧

・・・・・・・・・・・・・・2・・・・・・・・・・・・・・・・


ガウルは火の鳥の宮殿に戻って報告をした。
「なんで復讐の3姉妹が出てきたんだ?奴ら、そんなにヒマな魔女だったか?」
火の鳥はその炎を透かして何かを見ているようだった。
「・・・・・現世ではかなり荒稼ぎしているようだったが・・・・何があったのか・・・・」
「王にもわからねえのか・・・・けっ!!!それじゃ仕方ねえな!!!まあな、女の恨みなんて
くだらねえもんに何の力があるんだか!!」「・・・・そうでもないのだ。だから困っているのだ」
「王、何言ってんだ??」「おぬしは女の本当の恐ろしさを知らないのだな。まあよい・・・・
それより、この者達を動かした者が誰なのか・・・それがわからぬのだ。

・・・・ウンディーネよ、そなた、ガウルと共に調べてはくれぬか?」

ウンディーネはちょっと顔をしかめて言った。「かまいませんけれど・・・王よ、私はガウルの
粗暴さにはついていけませんわ」「あ???寝言は寝て言えよ?!竜の時のおまえに、誰が
勝てるって???火の神だって手を焼」バチン!!!「あらっ失礼な子ね!!!私になんて
ことをいうのかしら?」「・くっ・・・・・・・・・・・・・・・くっ・・・・・・そ~~!!!」
「・・・・・・おてやわらかに頼むぞ、ウンディーネ。・・・ガウル、ウンディーネの加護は絶対だ。
安心するが良い」


ウンディーネは河のようになって走ることも出来、そのスピードはガウルを凌駕した。
地中を移動する方が速いが、それでは声が聴こえぬでしょうと、人の形をとどめながら話し
ていた。「それにしてもなんで王にも誰が黒幕かわからなかったんだ?」
「それはつまり・・・・現世の者だからでしょうね」「現世の??」「こちらの世界の者のことなら
王にわからぬことはないでしょう」「・・・・・・・・・・・・ふん!なるほどな」

竜の巣に近づいたところで、ウンディーネがガウルに待つように言った。
ここからは慎重に行かねばならない・・・・・ガウルも低く身体を沈めて、匂いを嗅いでいた。

竜の巣の洞窟を細い水の流れで隅々まで調べたウンディーネは、ガウルの傍まで来て言った。
「現世との結界をこじ開けた者がいるわ。この洞窟の中に、つなぐ穴があった」
「!結界を??できるのか?そんなことが・・・」「普通の魔法使いには出来ないでしょうね」
「!・・・・・まさか・・・・大召喚師か??」「可能性は、あるわ」「だが、そうとも言い切れないって
とこか」「冴えてるじゃないの。ついでに、こいつらの相手、一緒にどう?何かがやってくるわ」

ウンディーネがすぐに戦闘態勢になった。「もう嗅ぎつけやがったか!!」

竜神の湖の底から昇ってくる泡があった。その姿にウンディーネが声をあげた。
「竜神??その姿は??」
その姿は蒼龍と言われた姿ではなく、漆黒ともいえる姿をしていた。
「ブラックドラゴンか???でもおまえは・・・蒼龍ではないか?!」
「そうだ・・・ウンディーネ、よくぞ見抜いた!!!だが、そんなに驚くには値しない。
私は新たな力を得た。ウンディーネ、おまえ達神々と戦える力だ!!!!はははは!!!」

ウンディーネの竜の目が見開かれた。
見る間に巨大化しその水のように透明だった身体は真っ白い氷の鱗に覆われ、白竜となった。

「まさかそういうことを、本気で言ってはいないだろうな??この、私に??
神々が許しても、私は赦す訳にはゆかぬ!!!覚悟するがよい!!!!!」

「!!うおっ?!おい?ウンディーネ??だから女神っていうのはよ!!!!
あ~~~~~~~~~!!!くそっ!!!!挑発にまるっきり乗ってんじゃねえか!!
おいっ!!!ブラックドラゴン!!!てめえが復讐の3姉妹の連れってことだな!!!」
「なんだ、ガウルか」「あ???てめえに言われたかねえ!!!くそったれの3姉妹に操られて
んじゃねえって言ってんだよ!!!」

「ふふん・・・ガウル、あんたなんか目じゃないのよ、私達は!」「けどウンディーネは別」
「こいつ・・・どうしてやろうか」「不死の女神だなんて冗談じゃない」「ガウルが先だ!!」
3姉妹はどこからか見ていたらしい。すぐにガウルの目の前に飛んで来た。

ウンディーネはブラックドラゴンから一瞬も目を離さずにいた。
その白竜の姿で真っ白な霧を吹き出した。あっという間に辺りは真っ白になり、指の先すら
見えない程の深い霧に包まれた。ブラックドラゴンはその霧を吹き飛ばそうと羽ばたいた。
しかし、それは攪拌するでもなくブラックドラゴンの匂いや存在をそこに在るとわからせるだけ
の動きでしかなかった。白竜はその場所に岩石のような雹を激しく落とした。
ズシッズシン!!ズシンズシン!!!ズドドドド!!!!
大地が揺れたがそのブラックドラゴンの姿は何も見えないまま、爆撃のような音が響き渡った。

霧の中で同じように3姉妹も羽ばたいていた。自分の身体すら見えないその濃い霧は、まるで
目を潰されたかのように思えた。3人はてんでに逃げようとしていた。

グルルルルル・・・・・・・・・・!!!
霧の中から沢山の火の玉が姉妹を襲った。「!!!ぎゃっっ!!!」

「てめえらの匂い、忘れるかよ!!逃げられるなら逃げてみろ、この地獄耳からな!!!!」

白竜の濃霧と雹、そしてガウルの炎の攻撃はその敵が動かなくなるまで続いた。
霧が消え、静かに湖の面を見つめるウンディーネの傍まで、ガウルが近づくと、見つめる先に
ブラックドラゴンが息絶えていた。
「あいつらはどこだ??」

そこには黒衣とおびただしい数の黒い羽が落ちていたが、3人の姿はどこにもなかった。
「・・・・・・・・逃げた・・・だと???ありえねえ!!!!」ガウルは吼えた。
「・・・復讐の魔女達は、その目的を達成するまで、何度でも蘇ります。
逃げたのではない、また現れる、そういう者達なのです」
ガウルは身体を振るわせた。「・・・・・・・・つまり、あんたと同じ、不死ってことかよ?!」
ウンディーネはその透明な瞳をガウルに向けた。

「・・・・・・・・いいえ?その方法を、2人で探すんです。
私は、ガウル、あなたを見直しました。・・・・少しは協力できそうですね?」








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-02-28 00:00 | ファンタジー小説Ⅵ外伝
ガウルがまだミンクとも出逢っていなかった頃の幻獣界にて・・・




ガウルは火の鳥の命を受けて、幻獣界で起こる問題を解決(?)していた。
「よう、ガウル!!ずいぶん急いでいるな?何があった?」
ガウルはその火を吐く口を一度振ると「あとでな!!」と言ってスピードを上げた。

火の鳥がガウルを呼ぶ時は、大抵が大惨事が起こる前兆があり、それはいかに鼻が利く
ガウルであろうとも、火の鳥のその超感覚にはまだ及ばなかった。火の鳥はその煌く炎を背に
して優雅な姿態で振り返ると、言った。

「ガウルよ・・・・今や幻獣達の間では現世に行けば、幻獣の天下だという風評が広まり
つつある。・・・ガウルはまさか、そうは思わぬだろうな?」火の鳥の瞳はじっとガウルの顔を見つ
めていた。
「ああ??そりゃあ、風神とか火の神とかよ、やっかいな奴らがいなけりゃ、俺様の天下だな!!
・・・で?王よ、どこの馬鹿が、また騒いでるって?!」


幻獣界は広い・・・火の鳥は前任の大地のガイアから引き継いだこの世界を、統率する為に
ガウルら火の眷属にこの世界を守るよう伝えていた。現世との境界線、結界。それがガウル達の
防衛ラインだった。

・・・その場所はガウルの管轄を大きく外れていた。と、いうより、ここは竜の巣がある場所として
誰も立ち入ろうとしない場所の筈だった。切り立った山脈、竜の洞窟と言われる深い洞穴、そして
竜神が棲む透明でどこまでも狭く深い湖・・・・・ここは幻獣達が勢力争いする場では決して無かった。
だがガウルはすぐに異常に気がついた。「?!竜どもの匂いがしねえ?!」

不思議な感覚だった。その、異常な雰囲気にガウルは全身の炎を高温にして警戒した。
自然と喉の奥から威嚇するような声が出ていた。何かが来る・・・なんだ??

それは恐怖だった。「てめえらは?!復讐と呪いの3姉妹か!!!」
岩山のその頂上に2人、そして樹の葉陰から黒い鳥が降りてきて、あっと言う間に黒い羽を持つ女
達がガウルの前に立っていた。「お~や、誰かと思ったら、炎の番犬じゃないの!こんなところまで
よくおいでだねえ?」「どうやら火の鳥に命令されたってところね?ふふん、流石は王、なんでも先
が見えるって話、嘘じゃなかったらしいわ」「邪魔なもんは邪魔!!!消えて頂戴!!!」

「けっ!!!てめえらの仕業か!!!竜どもをどこへ追い払った?!」
「あっははは!!!追い払う??私達が??こんなかよわい女にあんな巨大な竜達を追い払える
とお思い?」3人は大笑いしていた。「まあね、そんなことしなくてもね・・・・」

突如3人の後ろに巨大な化け物が大口を開けて現れた。
「ノヅチ!!!こいつも飲み込んでおしまい!!!!」言うが早いか、3人の女は飛び立った。
ノヅチは目は無く、その姿は巨大な口だけの生物だった。「くそっっ!!!させるかよっっ!!!」

驚くべき吸引力でガウルを吸い込もうとノヅチは迫ってきた。炎をノヅチの身体にぶつけようとしたが
その身体ではなく、すべて口の中に吸い込まれてしまった。その胃袋は異空間、次元の狭間だと
言われていた。ガウルはなす術もなくじりじりとノヅチの方へ引き寄せられていった。

「氷の刃よあれなる幻術を打ち砕け!!千なる氷結陣!!!」
ズダダダダダ!!!!!!!上空の雲という雲が氷の刃に変わり、それは地上目掛けて降って
きた。

「・・・・・・ウンディーネ???」

ノヅチは天から千本の氷の槍を受けて、地に消えた。その消えた水の中からウンディーネが
ガウルの前に現れた。

「・・・意外そうな顔ね?竜神から助けるように伝達があったわ。ガウル、元気そうでなにより」
「ウンディーネに助けを??一体何が起こってんだ??」「それはあの3人に聞いた方がいい
わね?」ウンディーネはその姿を水の竜へと変化して3人を襲った。
「さあ、お言い!!!おまえ達は誰の使いだ?!復讐の3魔女よ!!!」

あははははははは!!!!!!!「捕まえられるものならね!!!」

笑いながら3人は飛び回り、そして空中に消え去った。


竜はその姿をまた水の女神に戻して、ガウルの元へ降りて来た。
「・・・あの者達は真実の言霊で封じなければならないわ。彼女らは何者かの復讐を叶えることで
報酬を得る筈。それを得るまでは彼女達は執拗に現れるわね。何故竜達を消したのかわからない
けれど・・・」「俺のことを邪魔だとかいってやがったがな!!」「どういうこと?」「わかるかよ!!」

ガウルは炎の警戒を解いた。「とにかく、王に報告だ」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)

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by f-as-hearts | 2011-02-25 17:47 | ファンタジー小説Ⅵ外伝
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夜景 人知れず想う
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by f-as-hearts | 2011-02-20 18:55 | 祈り

-

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雪の夜 冬の枝
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by f-as-hearts | 2011-02-17 22:52 | 祈り
その星には永遠に鳴り響く結晶があるという・・・


ケイゴ トミタ           ・・・ 27歳  宇宙空母パイロット

アイナ               ・・・ 25歳  ケイゴの恋人

エンジェル            ・・・ 31歳  宇宙空母エンジン技師

キャプテン             ・・・ 52歳  宇宙空母艦長

ジュール              ・・・  7歳  宇宙移民の子



  <前編>


宇宙への移民が始まって102年が過ぎた地球。
ケイゴは宇宙空母のパイロットとして宇宙開発事業団から採用され、もうすぐ1年が
過ぎようとしていた。地上に残してきた恋人のアイナは、病気療養の為採用を取り
消され、文句を言っていた。
「ケイゴ、もうすぐ空母に乗って宇宙に行っちゃうんでしょ!私も空母に乗りたかった
な~~~~~!!!あと何日?」「あと2日だよ。・・・大丈夫、医者も君は治るって
いってたろ?帰ってきたら退院してるだろうし、僕は真っ先に君のところに飛んでくる
から」「だって、そんなに早く帰って来れないじゃない・・・地球では3年過ぎちゃうのよ
?!ケイゴだけ、歳をとらないなんてずるい」「でも宇宙船でも1年は過ぎる計算だった
けどね。ああ、帰ってきたら君と同じ歳になるんだ!それはいいな!」「ちっともよくない
わ!!もう!!」アイナの怒った顔、なんかカピパラに似てるが、それは言わない方が
いいかな。「じゃ、もう訓練に行かないと。また後で」

映像で話を終えるとテーブルにある彼女がモデル立ちしている立体映像(彼女が送って
きた)に、話しかけた。「ちゃんと、君も連れて行くよ・・・アイナ、本当のことを言えなくて
ごめんな・・・」ケイゴは先日、病院で医者と話したことを思い出していた。

「ケイゴさん。あなたは宇宙へ行くんでしたね?
・・・宇宙での勤務の方には特例が色々あります。そのひとつに、家族や恋人の病気の
ことをお話するということがあります。勿論、ケイゴさんが望まなければ、聞かないという
選択も出来ます。どうしますか?」

ケイゴはアイナが病気の事を知らないというのを確認した上で、どういう状態なのか
聞いた。宇宙への夢を絶たれたアイナに、その事実は聞かせられるものではなかった。
「治療は日々進歩しています。それは宇宙開発と同じで、今も最先端では信じられない
速さで技術が開発されていますから」
「・・・・・・・・いつか、アイナに、事実を話すんですか?」「そうですね。・・・その時は」
ケイゴは医者に頼んだ。自分の記憶を一部消してくれと。そして、消した記憶を、彼女の
診断書として自分宛てに空母へ送ってくれと。消したという事実は、消した時点で教えて
もらったのだった。
・・・それらは、全て、宇宙へ行く者達への配慮として医師団の特別条例に記載されていた。
精神的な負担の軽減・・・アイナが病気でも自分の任務はまっとうしなければならなかった。
それは、この任務に就く時の規則だった。サインする時もし今後そういう不測の事態が起
こっても、任務に支障なく就労する、という・・・それは、パイロットという職が特別であるが
故であった。だから、ケイゴに思い出せることは、一番最初に医者が言った内容だけだった。

空母は開発中の新惑星の話で持ちきりだった。
コクピットのクルーで、ケイゴと同期のエンジェルがそのごつい身体にTシャツで近づいて
きた。「おい、聞いたか?新惑星の名前がそろそろ投票で決まるらしいぞ!」
「へえ?セカンドっていつも呼んでたけど、やっと決まるんだ」「どうやら移民のボスがかなり
独裁者らしいがな。星の名前だけは、議会が自分達の意見を通したらしい。いいんじゃない
か?自分らが住んでる星だ、自分達で名前くらいつけたいだろうよ!」「じゃあ、あの星に
行ったら、きっとお祭騒ぎだろうな!」「ああ、ただし、向こうでは1年半経ってるけどな!」

そうだった。今回の任務は、その新惑星への就航だった。
エンジェルは腕のいいエンジン技師だが、身体に似合わぬ器用さで、どんな雑用もこなして
いた。ケイゴが運行表を確認している間も、壊れて映らない小さな手元のスクリーンを直して
いたりした。
エンジェルが思い出したように話した。「そういえば、よ。ケイゴ・・・宇宙で奇妙な体験をした
奴の話、聞いたか?」「・・・いいや?どんな?」
「なんかよ・・・ひとりで小型宇宙船に乗って、新惑星の周りの小惑星ベルトを探索してた奴が
妙な通信を残して消えたんだってよ」「妙な通信?」ケイゴは興味を持って聞き返した。

「気味が悪い話だけどな。・・・音楽が聴こえるって言ったらしい。
・・・探索の目的はレアメタルの収集だった筈だけどよ。まさか他の宇宙船に拉致されたとか」
「音楽??宇宙空間で、音がする訳がないじゃないか!振動する空気がないんだから」
「だから、変な話だって言ってるんだよ!また宇宙伝説とかできちまうんじゃねえの??
空母のやつらは、セイレーンだって言い始めてる。航海中に、霧の海で乙女の歌声が響くんだ」

セイレーン・・・それは海の精霊の名前だ。だがまさかこの宇宙へ行く時代に、そんな古臭い
伝説が?「その歌声に引き寄せられて、船は難破する。船の人間はみんな気が狂っちまう。
だけどよ、確かに音が、通信に微かに聞こえていたらしいんだ。俺はそんなとこ、ぜっったい
いかねえけどな!!」

翌日、空母のキャプテンがコクピットのクルー全員に明日からの航行について、伝達事項を
告げた。
皆がこの船の性能のよさは知っていたが、キャプテンはことさらにこの船を自慢して言った。
「いいか、もし宇宙空間で、未確認宇宙船と遭遇しても、なんら我々は驚異を感じないだろう。
光速運行、それに今ではワープの技術まで取り入れることができたこの船に、追いつける船
はない!宇宙開発により今まで数機の他惑星からの飛来と思われる宇宙船を確認したが
この船には敬意を払っているようだ」
皆が笑った。「キャプテン!確かによ、俺達の船じゃ完全に空母だし、ごつくて見た目で
怖がってこねえんじゃねえか?!」エンジェルは軽口をたたいた。「なんなら、船の横に
キスマークでもペイントしようか!」「おまえのキスマークをか??やめてくれ!!」

キャプテンは笑いながら続けた。
「ああ、それから、真面目な話だが、新しい任務も開発事業団から送られてきた。
小惑星ベルトでの行方不明が続いたそうだ。レアメタルの探索中だったという話だが、
その行方不明の船を捜す。
もうひとつ、新事実がわかったようだ。その付近に、新しく移住可能な惑星がありそうだ
というんだ。・・・ということは、もしかしたらその惑星に行方不明の船が不時着している可能性
があるから、探し出して欲しいそうだ。だからこの船での航行は長くなる、皆の了承が必要だ。
地球への帰還が1年延びる計算になる。・・・それでもいいという者は、ここにサインしてくれ」

エンジェルはキャプテンに食ってかかっていた。「キャプテン!!そんなのは、惑星セカンドの奴ら
の仕事じゃねえのか?!自分達で努力させろよ!!」「十分、捜索しているようだがね。
私達の空母が行くのに期待しているらしいし、こっちの政府も何かと恩を売りたいってことだろ」
「・・・俺は降りる。そんな訳がわからねえ仕事まで引き受けるのは、納得いかねえ!!」
「エンジェル!!」ケイゴの声にも彼は振り返らなかった。

キャプテンは帽子をとって、頭を掻いた。「エンジェルはまた後で説得するとしよう」
「キャプテン・・・私は、ちょっと病院へ行ってきます」「・・・・・・・ああ、そうだな・・・・・・・」
皆がキャプテンの持っている書類にサインをしていたが、ケイゴはすっとドアを出ようとした。
キャプテンが後を追いかけてきた。

「ケイゴ!!・・・・・・ケイゴの事情は最初に聞いている。
・・・だが・・・君の様に優秀な男はいないのもわかって欲しいんだ。大勢パイロットを見てきたが
・・・よく考えてくれ。それだけだ。」

ケイゴは空母に格納されている小型機でそのまま彼女の病院のある街へと飛ばした。
病院は近くに飛行場をもつので、それだけでもありがたかった。

「・・・ケイゴ?!どうしたの??明日はもう出発でしょ?
・・・あはは、わかったぞ~~!!怖くなったんでしょ!!」
ケイゴはベッドに身体を起しているアイナに笑いかけようとしたが・・・その笑顔は崩れてしまった。
「ああ、そうさ!!!僕は意気地なしだよ!!!宇宙空母のパイロット失格なんだ!!」
ベッドのアイナの手を握ってしゃがみこんだ。
「まさかあ!!・・・またまた~~笑わせようと思ってそんなこと・・・」
アイナはそういいながらケイゴの顔を見て・・・はっとして何かあったんだと気がついた。
「ケイゴ・・・・そう、じゃあ・・・私の為に看護士になるのね~~!!よかった、これでいつも一緒
ね」「・・・・そうだな、それがいい・・・けっこういい看護士になれそうじゃないか?・・・」

「じゃあ、看護士さん、最初のお仕事は私と散歩に行くことよ!車椅子でね」
ケイゴはアイナを車椅子に乗せると、外の庭へ出た。ケイゴにはわからなかったが、何かの花が
咲いていた。「あの、白い花の下がいいな」

「これね、梨の花だって・・・白くて可愛いね。看護婦さんに聞いたんだ。
ケイゴ・・・そういえば、前に遊園地で足こぎの乗り物に乗ったの覚えてる?」ケイゴは頷いた。
「あれ、ケイゴってとんでもなく早くこぐから、私の靴、脱げちゃって・・・あの時、ケイゴはパイロット
は無理だって思ったな!!」「・・・・え?どうしてそうなるんだよ??」「だって私に合わせてくれない
んだもん」「あれは、さ、スピードがでないから面白くなかったんだよ」「無理無理!!あれは安全
第一の乗り物じゃない」「まあね・・・」

「ケイゴってさ・・・言いたいこと言わないで、いつも突っ走ってるんだよね。
我慢強いっていうか・・・ケイゴ、どうしたの?まさか、くびになっちゃった?」

ケイゴはぐっと言葉に詰まった。
「・・・違うんだ・・・・・・今朝、新しい任務が増えて・・・・・・・
地球への帰還が・・・・・・・・・1年、延びることになって・・・・・・・」

アイナの首筋の髪の毛が揺れた。振り返らずにアイナは言った。
「な~~~~んだ!!!そんなことかあ!!!!心配して損しちゃった!!!
そんなことで私の寂しがる顔を見たいなんて、思っちゃったんだね!!!
あ、でも私より若くなっちゃうって、やっぱり許せないかも!!!」

アイナは振り返った。「ねっ!!ケイゴ・・・」

ケイゴはアイナを抱きしめると、優しくキスをした。
「・・・セカンドで、君へのプレゼントを見つけてくるよ。君が驚くようなものを・・・
アイナ、君は僕を待っていてくれるよね?」
「プレゼントねっ!!待ってる待ってる!!!」「今までで一番嬉しそうだな?!なんか
・・・・でも、会いに来てよかった・・・・」

ケイゴは彼女をベッドに寝かせると、外へ走って小型機に乗り込んだ。
操縦桿を握る手が震えているのがわかった。
もう前に進むしかない。そう心に思い、静かに機を離陸させた。
・・・空は、真っ青に晴れ渡っている・・・ゴーグルの内側がくもって、慌てて手でぬぐった。
宇宙空母の巨体が、ケイゴの視界一杯に広がった・・・何度見ても、自分があれを操縦して
いるとは信じられないが・・・小型機の収容されるデッキへと向かった。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)

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by f-as-hearts | 2011-02-14 00:00 | SF音の惑星ミリオンドール
その星には永遠に鳴り響く結晶があるという・・・



ケイゴ トミタ           ・・・ 27歳  宇宙空母パイロット

アイナ               ・・・ 25歳  ケイゴの恋人

エンジェル            ・・・ 31歳  宇宙空母エンジン技師

キャプテン             ・・・ 52歳  宇宙空母艦長

ジュール              ・・・  7歳  宇宙移民の子


  <中篇>


エンジェルはキャプテンの説得に根負けしたとケイゴに言った。
「確かによ、俺がいなかったらエンジンの整備にも手が足りねえだろうけどよ。
あの新しい任務には俺は加わらねえ、それならいいってことさ!」

宇宙空母の離陸はいつも注目の的だった。通信士が冷静に皆に外の映像を見せて
解説していた。「この機械は瞬時に人の数を判断できるセンサーがついているんだ。
今外にいるのは103万2160人だそうだ。見物客の人数をまた更新したようだ」
取材するTV局を見ながら、アイナも今TVを観ているだろうかと思った。
もう出発するという頃にケイゴのコクピットに通信士がやってきた。
「ケイゴ、君宛の手紙だ」「?ありがとう・・・」
ケイゴは自分の名前しか書かれていないその手紙を、ポケットにねじこんで後で読もう
と思った。今は集中する必要があった。全てのサインがグリーン、発進出来る状態になる
まで異常が無いか目を皿の様にして盤面を見ていた。「発進準備完了です。キャプテン」
キャプテンが号令をかけた。「宇宙空母スカイライダー、発進!」歓声がどよめきと共に
巻き起こっていた。

外の騒がしさはモニター画面で拾えていたが、すぐに地球はその球体を宇宙空間に浮かべて
回転する静かな姿となって、ケイゴの意識を置き去りにした。

ケイゴは発進後、太陽系を抜けてこの銀河の中心方向にある新惑星へ向けたプログラ
ミングをスタートさせると、後は全方向からの隕石の衝突が無いか、シールドとそれらの
関連するガードシステム・・・通称ガーディアンシステムにしばらく空母の安全を任せると、
椅子にどっかりと座った。ガサッと音がして、ケイゴは手紙を思い出した。

手紙は病院からのものだった。

診断書

アイナ 川村    


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケイゴは、自分がアイナの診断書を後で送ってくれるように
頼んでいたのを、今になって思い出し・・・そして、後悔した。
覚えていれば、あと1年延びるとわかった時点で、絶対に彼女の元を離れなかった。
何故、記憶を消してもらったんだろう?!パイロットだからか??

その手紙の中に、もう一通封筒が入っていた。
「・・・・・アイナ?!」

    ケイゴへ


お医者さんに頼んで、この手紙を送ってもらいました。
今どき手紙なんて、時代遅れもいいとこって思うけど、たまには驚かせて
みようかなって。
これを読んでいるのは、きっともう空母が出発した後でしょ?
ぎりぎり間に合うかなってお医者さんが言ってたから。
ケイゴ、私・・・病気になったことが今でも信じられないの。
だから、ケイゴが私に普通に話してくれて、宇宙へも行っちゃうのって
逆に私は大丈夫なんだなって思えた。

ケイゴにお願いがあるの。
新惑星の風景や綺麗なもの、いっぱい観て来て。
そして、私も観れるように記録しておいて。
どんな世界かな。
ケイゴの観た世界を、私も観たい。

いってらっしゃい ケイゴ


       アイナ より




ケイゴはキャプテンにちょっと休んできますと言って、自分の個室に入った。
自分の部屋の壁には・・・・・宇宙に浮かぶもう豆粒のような地球が・・・
青く透明にも見える星が、絶対に還るべき場所として 光輝いていた。
ケイゴにはそう強く想えた。



地球が目視出来ないほど遠くなり、データと格闘する毎日がそれから果てしなく続いた。
空母での日常は重力を発生させているコクピット以外では、弱い磁力のあるブーツを
履かないと移動ですらままならない。そのブーツは磁力を調整できるので、壁にぴたっと
固定すれば筋力トレーニングも簡単にできる優れものだった。いつもエンジェルは腹筋と
上腕筋を鍛えているようで、ケイゴにも勧めるのだった。ただ、女性達には不人気だったが。

空母で半年が過ぎようとした頃、最初の電波が入ってきた。それは惑星セカンドからだった。

「こちら、惑星ソーシェル。我々は、地球のセカンド、第二の惑星ではなく、新たな可能性を
秘めた惑星として、生まれ変わる。地球の宇宙空母スカイライダー、君達を我々は歓迎する。
こちらの信号に従って宇宙空港へ降りてきてくれたまえ」「了解」通信士は冷静に対応していた。


惑星ソーシェルは地球の1.2倍の大きさを持ち、月のような衛星も2つあった。
先に移住した人々からすでに3世代目がこの星で生まれており、地球の影響下にあった
1世代目とはかけ離れた自由人ともっぱら地球の議会では問題児扱いされることが多く
なっていた。初代の惑星総統であるオーセィウムは、議会との折り合いが悪かったが、今は
2代目のクーガイン総統が平和に治めていた。

宇宙空母スカイライダーはキャプテンの希望で大掛かりな船体検査を受ける為、宇宙空港の
ドッグにそのまま預けられることになった。一週間、それがこの検査と修理に許された時間で
それをキャプテンから依頼されたソーシェルの技師達はキャプテンをクレイジーだと言った。
「1ヶ月の工程を1週間???地球人には常識っていうもんがないのか!!!」
「大丈夫だ。1週間我慢するだけで、あいつらは勝手に出て行ってくれるってことだ」技師の
リーダーは涼しげな顔で言った。「動けばいいっていうことだろ?こんな楽な仕事はないな!」
事実、大きな修理は見当たらず、技師達はその頑丈さに舌を巻いた。「いいか、俺達はこいつ
の技術をただで盗めるんだ!一週間、死ぬ気で頑張れ!!」「了解!!!」急に技師達は
やる気を出していった。

キャプテンはクルー全員に以前の話を持ちかけた。
「一週間、俺達には時間ができた。そこで、提案がある。
最初の計画とは違うが、ソーシェルの行方不明者を、この期間を利用して探す事にする。
異存はないな?・・・・・・・よし、それじゃあ、これから班分けをする」

小型機は4人乗りで、それを3機、12名で探索することになり、エンジェルは当然のように
行かないとごねた。キャプテンは自分はここで司令を出すとして若い者達を中心にと3グループ
を作った。「まずは、情報収集だな。・・・通信士、今までの調査結果を教えてくれ」

通信士は詳細をデータとして皆のPCに送ると、解説し始めた。グループの12名は真剣に
聞いていた。
「まずレアメタルは確かにこの小惑星ベルトと呼ばれる地帯に反応があり、合計5機の小型
宇宙船が行方不明になっています」「5機も?!」「そうです。そして全ての機体の反応が、
最後の通信後、時間はそれぞれですがこのように消失しています。ソーシェルからそれらの
機体番号と乗組員のデータをこちらに送ってきていますが、注目すべき点はその人物達にも
レアメタルを収集している各企業にも、なんの繋がりも無いということと、大体皆が口を揃えて
行方不明者は逃亡するような事情も無い人々だった、と言っていることです」

エンジェルは、離れて聞いていたが、たまらずに口を挟んだ。「それみろ!!セイレーンだ!!
宇宙の精霊が人間を惑わしているんだ!!」キャプテンはエンジェルに言った。
「エンジェル、確かにな、不思議な音が通信に残っているというのが、最初の頃あったのは
事実だがね。ここにいる若者達に無用な不安を与えるんじゃない」
「キャプテンは、宇宙人にあったことあるんですかい??こんな空母に乗ってたって、みんな
船乗りとかわりゃしねえ!宇宙は謎だらけだ!!!」「・・・・ははあ??エンジェル、おまえ、
臆病風に吹かれてるってやつか。なんだ、臆病もんは黙って聞いてるんだな!!」

これにはエンジェルも黙っていなかった。
「なんだって???キャプテン、あんたを見損なったよ!!俺はみんなの安全が心配なんだ!!
てめえはここで言いたい放題言って、行方不明者を探すわけじゃねえだろうが!!!」
キャプテンは、ちらりと細めた目でエンジェルを見て、言った。
「確かにな。だが、俺には立場ってもんがあるからな。おまえと違って」
「なんだと?!!くそっ!!いいだろう、俺はセイレーンがいるって証明してみせるぜ!!!
ケイゴ!俺と組め!!!キャプテンの鼻をあかしてやるっっ!!そんでセイレーンも捕まえて
みせるぜ!!!」勢いでエンジェルはケイゴと組むことになった。キャプテンはそれぞれに
小惑星の区分を割り当てた。「いいか?何か発見したら、すぐにこちらに通信するんだ」

キャプテンはこの空母がドック入りしている間に、行方不明者を探すと、ソーシェルの総統に
通信をした。総統はすぐに公式にキャプテン達の勇気と義援に感謝を表し、行方不明者達の
生死にかかわらず、賞金を贈ると約束した。そして、もう一つ、気になることを通信してきた。

「惑星ソーシェルは新たな惑星の発見にも期待している。すでにこの惑星から大勢の冒険者
達が新惑星の存在を信じて、活躍し始めている。地球の人々もそれが何か、気になっている
ようだ。新惑星は確かに存在する。それがどんな星か、皆が是非発見し報告してくれることを
切に望む」

キャプテンはエンジェルに笑いかけた。「こりゃあいい!!エンジェル、もしかしたらそこに
絶世の美女精霊がいるのかもしれないな!!」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-02-12 11:46 | SF音の惑星ミリオンドール
その星には永遠に鳴り響く結晶があるという・・・


ケイゴ トミタ           ・・・ 27歳  宇宙空母パイロット

アイナ               ・・・ 25歳  ケイゴの恋人

エンジェル            ・・・ 31歳  宇宙空母エンジン技師

キャプテン             ・・・ 52歳  宇宙空母艦長

ジュール              ・・・  7歳  宇宙移民の子



  <後編>


ケイゴはエンジェルと2人でこの惑星で買出しと情報を集めると言って、組んだ2人と
別行動で地上に降りた。2人は女性だったが、エンジェルはその片方の方をやたらと
けなして言うのだった。「あんなに男らしい奴はいないぞ!俺のおっかあにそっくりだ!」

惑星ソーシェルの総統府のある都市は、地球の大都市となんら変わらなかった。
しかしそこに住む人々はかなり様子が違っていた。女性も男性も、その気候のせいか
薄着で女性は特に目のやり場に困るような、胸をはだけたデザインの洋服を着用して
いた。ケイゴもエンジェルも、ついつい情報を女性からばかり聞き出そうとして、女性達
に仕舞いには敬遠されてしまった。「なんでこう、ここの女性達は魅力的なんだ??
みんなギリシャ彫刻の女神のようじゃないか!!」「・・・・・ちょっとやりすぎたらしいよ。
地球からナンパしにきた変な奴らだと思われたらしい・・・エンジェル、あそこの男性に
話を聞こう」

今度はいかにも商人風で金持ちの、ふてぶてしい顔つきの男に話しかけた。
こちらが知りたい情報を持っていそうに見えた。「すみません、私達は地球からつい先程
宇宙船で着いたばかりなんで、伺いたいことがあるんです。今皆が探しているという
惑星のことで・・・」「なんだね君達は?!新惑星の情報を簡単に手に入れようなどと、
大それたことを考えているのかね?そんな輩ばかりがこの街にはびこるようになって、
一番迷惑しているのが、私達商人なんだよ。私の商社でもレアメタルは貴重品なんだ。
・・・邪魔だ、さっさとうせろ!!」ケイゴが何か言おうとしたのを押さえると、エンジェルが
ずいとその商人に胸を張って大声で答えた。

「おいっ!!俺様は地球一巨大な戦艦、宇宙空母スカイライダーのキャプテンだ!!
てめえがどれだけすげえ商人かしらねえがな、俺の船が出てきたら、どんな惑星だろうと
1週間で見つけてみせるぜ!!!」

その、迫力に商人だけでなく周り中がざわついた。「・・・おい!!聞いたか??あの、
空母の・・・だってよ!!」「ええ??さっき聞いてきた人達、そんな凄い人だったの??」

「・・・・・これはこれは!!勿論存じておりますよ?!先程我々の仲間が、地球の巨大
宇宙空母がドック入りしたと教えてくれましてね。・・・失礼いたしました。

・・・・それで?何をお聞きになりたいのですかな?」突然態度を変えた商人に、ケイゴは
嫌気がさしたが、エンジェルは今度は声をひそめて言った。

「新惑星の情報で、気になることがある。そこにはセイレーンがいるだろう?」
商人の顔色が変わった。「・・・・・・・!何故、それを・・・・・・・・・まさか地球にまでそんな
噂が??」「地球政府に、ここの惑星の総統が依頼してきたんだよ!だから知っている。
キャプテンだからなっ!!」(嘘ばっかついて大丈夫なのか?)エンジェルは平気な顔で
続けた。「セイレーンのいる惑星じゃ、人間は近づけねえ。違うか?」

商人はふてぶてしさをかなぐり捨てて、真剣で真面目な顔つきでエンジェルを見た。
「・・・方法はあります。誰も怖がってやりませんが。・・・耳の機能を麻痺させるんです。
一時的にではありますがね。     ・・・そうだ、貴方達ならできるでしょう?


・・・どうですか?セイレーンの正体と、そこに在る筈の、希少なレアメタル・・・
もし手に入れたなら、私が、貴方達の言い値で買取りますよ?」
エンジェルは頷いた。「いいだろう。それじゃ、目撃情報を教えてくれ」

商人は本気だった。彼が雇った屈強な男達が、やはり何人も行方不明になっていたのだ。
ケイゴ達は皆が準備しているホテルに戻ると、さっきの話からどうすべきか考えた。

「・・・班の女達には悪いが、こいつは危険すぎる。やっぱ、俺達だけでいくしかないな。
それに・・・商人が譲ってくれた薬、耳を麻痺させる奴だが、これも2人分しかねえ。
それだけしか手元になかったらしいからな・・・ケイゴ、規律違反で俺らは処罰もんだなっ!!
どうするよ?」「・・・・・・・・・・その、惑星には行方不明の人間が大勢いるんだ。
そうなら、行くしかないだろう?」「へっ!!!まあそうなるかな」「頼りにしてるよ」

2人は誰にも言わずに小型宇宙船を発進させた。そして、あの商人の言っていた小惑星ベルト
から惑星ソーシェルのグレイの月の方へ航行した。突然、地上からの通信が船の中に鳴り
響いた。「・・・・・・キャプテンだな」「キャプテンだ」「ま、キャプテンにはあとで報告すりゃいい」

グレイの月はもう一つの月と対になっていて、その鈍い輝きはケイゴには地球の月を思わせ
・・・アイナならどうするのだろうかと考えるのだった。


丸3日は小型宇宙船で光速運航してそれらしき惑星はないか、探し続けていた。

「・・・・・・・!ケイゴ、あれを観ろよ・・・・!!」
グレイの月の影に隠れるように、小惑星の隕石群・・・小惑星ベルトの中、その惑星はチカッと
光った。「・・・・なるほど!!月の、影に重なるような位置にあったってわけか!!!」

宇宙船は危険な隕石群を慎重に進んでいった。「やっぱすげえな!!!こんなとこ、俺なら
怖くて一歩も踏み込めねえよ!!!ケイゴの腕がなけりゃ、皆生きて帰れねえ!」

惑星群の太陽からの距離は十分で、それは奇跡のような美しさの惑星だった。

「・・・・・・・地球・・・に・・・似てる・・・・・・・・・・でも、もっと・・・・・・」

大気に透けて見える海はエメラルドグリーンに輝き、太陽に照らされている大気には
虹のような光彩が惑星をリングのように取り巻いていた。
「・・・・・・!エンジェル、薬は飲んだか?」「ああ。もうすぐ何にも聴こえなくなる。そうしたら
あの惑星に突入しようぜ!!」「了解。今のうちに説明しておくけど、この星からレアメタル
の反応がある。やはりあの商人・・・」そこまで言って、ケイゴは周りから音が消えたのが
わかった。エンジェルも、こっちを見て耳を指差している。
「効いてきたわけか・・・じゃ、いくぞ!!」


惑星は小惑星ベルトの中にあり、確かに宇宙星域立体地図にはその位置を記されていな
かった。そしてそれは無理も無いことであった。小惑星の中には、この惑星とさほど大きさの
変わらない、昔惑星が壊れて岩の塊と化したものまであったのだ。そしてどうやらこの惑星は
惑星ソーシェルから見て、グレイの月とは直線上にあり、小惑星ベルトの速度とグレイの月の
見た目の速度がほぼ同一なところから、見つけられなかったのだとわかった。
「ケイゴ、理屈はわかったが、これからが大変だ。なにせ声が聴こえない」「そうだな」
エンジェルが身振り手振りで伝えてきた。ケイゴは惑星を指差すと、操縦桿を下へ向けた。


大気が振動していた。空気が震えている、宇宙船の中にいても身体に感じるということは
どれ程の音なのだろう??ケイゴはぞくっとした。
宇宙船は静かに惑星へ降り立った。

そこは大昔の地球のように巨大な植物や、動物達の楽園のようだった。地上でセンサーを
使い、行方不明の船の反応を捜した。宇宙船のモニターには半径3キロ周辺には何も金属
反応がなかった。5キロ、まだ無い。10キロ・・・・・・微かに左方向に小さな点があった。
エンジェルにそれを見せると、もう一度上空へ上がり、その方向へと向かった。

空気が風と音で揺れている、そんな不思議な感覚が、この大気にはあった。
何が音を出しているのだろう?ケイゴは不思議でならなかった。または、それが人工物だと
して、そんな大掛かりなものをどうしてこの星の生物がつくったのだろう?

宇宙船は反応のあったその場所を旋回して、遭難しただろう船を捜した。
ケイゴはエンジェルに下、下、と合図した。そしてゆっくりとその場所へ降りた。
2人はその宇宙船を見つけた。外へ出ると、その宇宙船へと急いだ。中には何もなかった。
この船の乗組員は??PCで確認すると、その船の機体から3人のクルーがいた筈だと
わかった。船内のPCはすでに壊れていて、船内には食料も水も十分すぎるほどあった。
エンジェルは首を振って、行こう、と合図した。ケイゴはその船の様子を映像に残しつつ
そのままこの惑星の自然も映していった。
2人は音が聴こえないので、音源がどこなのか、どちらへ向かうのがいいのか・・・その判断
を迷っていた。しかしそれがわかったのは、自分の身体の反応だった。

・・・・風、ではない振動が、一方方向からやってくる!
2人は顔を見合わせた。間違いない。・・・それは空の雲にまで及んでいた。
動物達は何食わぬ顔で2人の前を歩いている。その様子からみても、人類を知らないのか
と思えた。ケイゴはずっと映像を映し続けた。

火山らしき山々も遠くに見える。時々鳥が羽ばたいて現れて2人を驚かせたが、音が聴こえない
という怖さを初めて経験し、2人は探査用スコープを常に観ながら進んだ。
行方不明者が音源の方へ歩いていったという根拠はまるでなかった。だが、エンジェルの言う
セイレーンに魅せられたのなら、きっと・・・    だが今は、ただただ観える世界が、美しかった。

エンジェルがケイゴに合図した。ケイゴはそこに水筒が転がっているのを見て、中身を確かめた。
林の雑草から何かが飛び出して来た。

子ども???
それは予想していなかった事態だった。2人は水筒を無理やり取り替えそうとする子どもに
驚いて、その水筒を放した。子どもは何も話そうともせず、2人は自分達が耳が聞こえないのも
忘れて、こどもを安心させようとしゃがみながら、ゆっくり話し出した。
「おめえ、遭難者だな?俺達は、おまえを救助に着たんだ」「大丈夫だよ、船もあるんだから」
こどもは首をすくめると、そのまま林の中へ走って逃げていった。2人はすぐに後を追った。

林の中を抜けると、そこには小川が流れて、少しずつ段差になって上へと続く道が出来ていた。
見上げて、2人は・・・驚きのあまり息を呑んだ。

「・・・・・・古代文明??そんな、馬鹿な?!」
そこには、ピラミッドやマヤ文明にも似た建造物があった。ただ違うのは、それが全て金属で
出来ていたことだった。「・・・・・・・・ま、まさか?!これは全部、レアメタルか???」
その金属の建造物は緑色の藻類や苔に覆われていた。センサーは希少レアメタルだという
表示を示していた。商人の顔が一瞬浮かんで消えた。

子どもはその建物の脇に空いた空洞から中へと入っていった。ケイゴは映像に全てを映そう
と気にしながらも、こどもを見失わないようにエンジェルに先に行ってくれと合図した。
中はとても広かった。そして・・・・・・そこに、大勢の人間がいるのを発見して、大声を出した。

「おめえら?!一体何をしてるんだ??」皆は倒れこんでいるものや、壁際で座り込んでいる
もの・・・生気を失っているような顔であった。こどもは、エンジェルの大声にも振り返らなかった。
「もしかしたら、おめえ・・・・・・聴こえてないのか??」振動は、その奥の大きな金属のドーム
から起こっているとわかった。あれもレアメタルだ・・・・そうだ・・・・・

だがここにいる筈の人類・・・この惑星の先住民は、どうしたんだ??
「どこにいるんだ?君達は・・・この惑星は、一体どうしたんだ?」ケイゴはたまらずに大声で
呼びかけた。
金属のドームの球体が回転して、ドアのように開いた。









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2011-02-11 00:00 | SF音の惑星ミリオンドール
その星には永遠に鳴り響く結晶があるという・・・


ケイゴ トミタ           ・・・ 27歳  宇宙空母パイロット

アイナ               ・・・ 25歳  ケイゴの恋人

エンジェル            ・・・ 31歳  宇宙空母エンジン技師

キャプテン             ・・・ 52歳  宇宙空母艦長

ジュール              ・・・  7歳  宇宙移民の子



  <完結編>



その球体の中に、今まで見た事の無い位純度の高い巨大な結晶・・・それはダイヤモンドか
水晶なのかはケイゴにもエンジェルにもわからなかったが、・・・それが音の源であるのが
わかった。巨大な結晶からの振動は最大になり、2人を襲った。
耳の鼓膜の麻痺はまるでもう切れたかのように、その音の洪水は2人を押し流そうとした。
だがそれは、最初に感じた威圧ではなく、まるで細胞を活性化させようとしているようにすら
感じられた。

結晶から声にならない声が頭の中に響いた。

「貴方達は、私に呼びかけた・・・・・・文明を理解する者達か・・・・・・
残念ながら・・・我々は・・・・・・・・文明を放棄した・・・・君達が話しかけているのは
私達の 記憶だ ・・・・この 結晶は・・・・・・・・」

エンジェルは苦しそうに頭を抱えている。「て、てめえ・・・・・・この、やわな頭に
どれだけ振動をっっ!!!やめろ!!」
ケイゴは何故かここに倒れている人々が命令されてここにいるようには思えなかった。

「・・・・・その 通り だ ・・・彼らは 私達の メッセージを 受け取った・・・のだ
不幸では ない・・・・彼らを 連れて 帰るが ・・・・いい・・・・・・」

「どういうことだ?!どんなメッセージがーーー」

ケイゴの耳に、音が戻ってきた。「薬が!!!しまった!!!」

その途端に、そこにいる彼らの感情と結晶がいうこの文明の人々の強い想いが
一挙に押し寄せてきた。

エンジェルは叫び声をあげた。「やめろーーーーーーー!!!」
ケイゴはそのエンジェルの叫び声の意味がわからなかった。「エンジェル??何が聴こえて
いるんだ??」「うるせええ!!!!こんな、優しい子守唄のような声、俺は我慢できねえ!!
消してくれ、今すぐに!!!!」「エンジェル??」

ケイゴにはまるで違う音楽が聴こえていた。それは、美しいオーケストラと波の音が重なり
低く高く美しい女性の声が響いていた。「これはオーケストラとオペラの・・・・・」
いつまでも聴いていたくなるような・・・・・・・・
エンジェルは傍で頭を抱えている。じっといつまでも聴いていたい・・・・こんな素晴らしい世界
が広がる音の・・・・・・・悲しみが全て消えてゆくようだった。再び声が聴こえてきた。

「・・・・・そうだ・・・・・私達は 人々の心に・・・直接・・・音楽を響かせる・・その人が一番

・・・美しいと想う音楽 を・・・・」

「止めろ!!!!俺はそういうのが一番嫌いなんだあああああ!!!!」

ケイゴはそのエンジェルの声に、思い出した。エンジェルはあんなにセイレーンを怖がっていた。
彼は人に操られたり、洗脳されることを嫌っていたんだ。ケイゴは必死になって考えようとした。

「・・・・教えてくれ!!!どうすれば、この音を消せるんだ?!」



結晶は大きく振動した。「・・・・・・もっと ・・・大きな ・・・・振動・・・・もっと大き な・・・・・
想い ・・・・・・・この・・・・・・・私を   超える・・・・・・・・・・」


ケイゴはこの人々の悩みや苦しみを消してゆくような 美しく強い声に逆らえずにいた。
だが、エンジェルはこのままじゃ救われない・・・・






・・・目の前にこどもの姿があった・・・・・・・


女の人の傍を離れずに、水筒の水を飲ませようとしているこどもの姿が、目に
飛び込んできた。
こどもは一心に、女の人の口元に水を注ごうとしていた。
母親・・・・・・なのか・・・・・母親・・・・・・この 子の・・・・・・・・




涙が・・・・・・・流れるのを感じた。



ケイゴはアイナのことを想った。





帰るんだ・・・・・・・僕は・・・・・・・アイナの元へ・・・・・・・・



結晶・・・・・・ケイゴは必死になってその振動に逆らいながら、その結晶に触れた。

その、声を その音を 止めてくれ・・・・・・・・・その美しい 振動を・・・・・・・・・・



ケイゴの想いが 結晶に宿った。






それは 美しさを 超えて ・・・静かに  どこまでも広がる 自由な空を謳う 声となった



「・・・・・・・・・・アイナ・・・・・・・・・・・」








・・・・それから数日後、その惑星に囚われていた行方不明者達は、地球の宇宙空母に
よって救助され、皆がそれぞれの故郷に帰ることが出来たのだった。
この星のレアメタルは、結局惑星ソーシェルと地球が同盟を結び、永久に守ることを
約束した。そして、セイレーンの正体でもあった結晶は、この星の奥深くに・・・ケイゴの
希望を叶える形で残された。





「ケイゴ!」

アイナは病院のベッドでケイゴと抱き合った。

「アイナ、僕は、君に沢山話したいことがあるんだ。

・・・・・・・僕が発見した音の惑星の話だよ。

ミリオンドールっていうんだ・・・・・そこで、君の音楽に出会ったんだ。

・・・・笑わないでくれないか?ほんとの話なんだから・・・・・・」


ケイゴとアイナは 一緒にその映像をいつまでもいつまでも観ていた。

・・・・それは星が綺麗な夜だった。









・・・・・・・・・・・・・・・・・・END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)

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