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紡ぐ夢 綴る夢

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タロット占い師ASのブログです。

カテゴリ:ミステリー・ファントム 2( 19 )


   最終話   「  再び 変わりゆく ・・・ 」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・海の上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーおおい! この、おしめというヤツは、どうやって赤ん坊につけるんだ?!」
「閣下、全くもって、わかりません!!」
「なんでお前はこんな時だけ自信満々で言うんだ?!私の可愛い赤ん坊が、このままでは
風邪を引くじゃないか! おお~~~い、ユノー!!どこにいるんだ?!」
「閣下、手紙がありました!」「何?!」

「えーーとー・・・あなたへ

私は ちょっと海賊退治に行ってきます。 じゃあね。 X ユノー   」

「・・・・・・・」「む・・・お前、何故黙る?---良し!子供の為だ!ユノーを追うぞ!!
銀の鯨軍はユノー将軍を援護する!出撃だ!!」
「えっ?!・・・・・・・・・り、了解であります!」



・・・・・・・・・・・・・・・・王宮の会議室・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ジョルジュ、この元ヴァレンシア貴族の収支の申告書を見たかね?
無駄遣いとはどういうものか、馬代、宿代、あげくに飲食費まで申告しておる!
これをお手本にしたら、貴族のほとんどがやましいところなど何もなくなるね。
・・・私なぞ、庭の木1本切ってもらうのも、考えるというのに」

「そんなことより今は新国王の為に議会を作らないといけないのですから、伯父上、
その、愉しそうな所から手をつける癖を改めてください。

まずは、我が国が ヴァレンシアグランデ王国となって再出発する為に、
伯父上のその優秀な頭脳を総稼働して下さい」

「議会法案かね。もうそれは出来ておる。実を言うと、先日元ヴァレンシア王妃とお会いした時に、
草案は御覧頂いた。とてもわかりやすくて良いですねとおっしゃられた。

ーー実に!実に、聡明な方だ」

「---ほう・・・それは」「・・・・・・・・それは?」
「それはそれは」
「---ジョルジュ、お前の頭脳は稼動中かね?」

「---伯父上、だから私は、その、愉しそうな所から手をつける癖を改めるようにと
先程から言っているのですが」

「・・・ジョルジュ、私は大いに反省した。
もっともお前に必要なことを教えるのを、私は忘れていたようだ。
ジョルジュ、人はどんな時もどんな仕事でも、愉しむ事を忘れてはいかんのだ」
「ええ、伯父上、私は仕事が愉しい仕事人間ですから、ご心配には及びません。
こんな大事業は滅多にあるものではないですから」

「・・・・いやだから、そういう意味ではないのだが」「まあまあ、伯父上にはあの大問題の
貴族院を担当していただきますから。ああ、私は医者に休むようにいわれておりますので
これで下がらせていただきますよ」

「・・・・いやだから・・・それはそれこれはこれで・・・うむむ!ジョルジュ!」

「あははは!!冗談ですよ!!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴードの部屋・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


トントン・・・・・ガチャッ・・・・・・・・・キィーーー・・・・・・

「ゴード様、ローレンス卿との合作は進んでいますの?」
「・・・ようやく半分までいったよ。ジェラ-ルに聞いたんだな?読みに来たんだろ?いいよ」
「うふふ!ありがとうございます!-----わあ!恋愛小説ですのね!
・・・・・ゴード様、でもゴード様の作ったお話のところは、ちょっとくだけ過ぎでは?」
「? 何故俺のところの話が、わかるんだ?」「気がつきませんか?」「?」
「ほら、ここ・・・・・・文末に  。  が無いんです。ゴード様のクセですわ。
交互にお話を繋げてゆくのも面白いですわね。ローレンス卿はゴード様の書くように真似して
書かれているし・・・・・・」
「はは・・・・・そうか!!しまった。これじゃあすぐに皆にばれてしまうな。気をつけるよ」

ガチャッ・・・・・・・・・・・キィィーーー・・・・・・・・

「おい、アイーダ、またゴードの邪魔してるのか?ゴードは作家と俳優の両方で忙しいんだ
から、俺達は静かにしてないと」
「そういうジェラールの声の方が、とてもうるさいですわ」
「・・・・アイーダさん? また猫かぶって、お前ってホント・・・」
「女優だね」「女優でしょ」

くすっ・・・ゴードは笑いながら言った。
「魔術師と女優のカップルじゃ、誰でも騙せそうだな!

うん、次回はそんな2人の話を芝居にしよう。
俺とベルガー警部は2人に振り回されるんだ。---いや、世界中が2人に振り回されそうだ。
あははは!!」

「へー、面白そうだな!---それじゃあ、俺がゴードの役を考えてやるよ!
・・・・・・そうだな・・・・ベルガーは警部しかないから、お前は警部の邪魔をする探偵っていうのは
どうだ?」
「・・・敵か、味方か、謎の多い探偵っていうことかな・・・・・・それはいいかもしれない。
・・・今度はジェラール、お前とも共作することになるかもな」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・拘置所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ベルガー警部はヴァレンシア王崩御と戦争の終結をブランに伝えに着ていた。

「---王は・・・・何故?・・・・」「・・・詳しくは知らんが・・・・・・どうやら王と王妃の揉め事を
止めようとした王妃の弟が、関係しているらしい」

「・・・・ラザルフ  か・・・・・・馬鹿な・・・・・・・・・ゴホッ・・・ハァ・・ハァ」
「ブラン・・・・いや、ロザリー・・・もう王に充分忠誠は尽くしたろうが・・・・・・・・・・
王妃は、お前が生きて帰国出来るようにしたいと言っているそうだ」



「---どのみち・・あの国は、無くなったのだろう?・・・私 ・・・は
王の下でしか・・・生きられなかった。

ベルガー・・・・


私は 一つだけ ・・・後悔している事がある。だから、このことだけは聞いてほしい。

ゴード・・・ウイリアム・ルター の、両親を・・・殺したのは間違いだった・・・
セシリア妃の・・・出産予定・・臨月は、結婚した時期から計算しても早く・・・・・・・
それは、どんな産科医にも、すぐわかることだった・・・だから・・・・
町医者を呼んでは異常がないか秘密裏に見てもらったが・・・もしも、噂が立つような
ことがあれば、全てが水の泡だ・・・・・だから・・・町医者は殺害した。

しかし・・・ルター夫妻はマクファーレンをとりあげてくれた2人だ。
だから・・・私は2人を逃がすつもり・・・だった・・・・・・・・・

だが・・・・・・・ラザルフ将軍の 副官 は、その医院に 火を放った・・・・・

今更・・・だが・・・



ベルガー・・・・私は王の下へ逝く。
私を助けようと思わないでほしい・・・」

ベルガーは首を横に振ると、言った。

「真実は、何よりも重い・・・・・・・時として、命と同じくらい重いものだと思う。
ロザリー・・・あなたは真実への鍵だ。
あなたは王を、一番知っている人物だ。あなたの証言がこれからも必要になる。
それを、忘れないでほしいのだ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・剣術の練習場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ルシウス王はマクファーレンの剣術の練習を見に来ていた。
マクファーレンは伸び盛りのせいもあり重い胴衣を着けていても、軽々と動いていた。
練習用の剣は刃を丸めてあるので切れはしないが、彼と立ち合う者は、その早い剣筋に
たじろいでいた。
ルシウス王は師範に言って、マクファーレンと剣を交えることになった。

向き合って始まると、マクファーレンは勢いをつけて切り込んできた。
ルシウスは剣先で円を描くようにすばやくマクファーレンの剣を絡めとり、柔らかい動き
からは想像もつかない速さで、マクファーレンの剣を宙に弾いた。

「?!」「---マクファーレン、もう一度だ」
今の動きを把握できなかったマクファーレンは、また剣を持って父の剣を見た。
それは、今度はひどく大きく感じられた。
間合いを考えて、動こうとした瞬間、今度はルシウス王の方が刹那に一気に前へ出ると
マクファーレンの動きを止めるように、皮一枚のところで胴を水平に剣で払った。

「---参りました」マクファーレンは驚いていた。

ルシウス王は言った。
「-戦場では、相手の力量を一瞬で見極められるか否かが勝負の分かれ目となる。
自分の今の力をどうすれば出し切れるか、どのように自分の心技を磨くか、が、大切だ。
そして、その先は、迷いが無いことが、もっとも大事なことになる」


練習を終えて、歩きながらマクファーレンは父に訊いた。
「--お父さんは・・・・何故僕が人質になった時、自分が身代わりになろうとしたんですか」
「父親だから、当然のことをしただけだよ」

マクファーレンは言葉が上手く出てこなかった。ルシウス王はマクファーレンが何を想って
いるのか、知っていた。

「セシリアは・・・お前をどんなに愛しているか・・・私は2人を私の命より大切に思っている。
セシリアはお前を失えば、どうなるかーーーー

私は、また、サラジュール王の事も信じていた。あの王がやられっぱなしで引っ込んで
いるわけが無いのでね。だから、もし私が殺されても、お前だけは助かるだろうと
わかっていたのだ」
「サラジュール王が!!」
「・・・伝書があったのだ。サラジュール王がヴァレンシアに向かっていると。だから、私は
急がねばならなかった。そして、その少し前にお前が捕まった事もレーヴィエ卿が伝えてきた。
それは、ほとんど、同時だった・・・・
私はその時はっきりと自分のすべき事がわかった」

風が さわさわと 吹いてきた。

「--将軍達に囲まれて・・・怖くなかった?」

「私より 腕の立つ者は1人しかいなかった。

・・・・ヴァレンシア王だけだった」

風の中 遠く夕暮れの時を告げる鐘の音が 響いてきた。

「新しい国は、お前達がどんなに変えていってもいい。何ものにもとらわれずに。
・・・一生を懸けるだけの価値はあるだろう」

マクファーレンは父王の顔を見た。
そして、父が総てを自分に託していると、知った。

「さあ、忙しくなるぞ。覚悟はいいな?」

鐘は高く 空に鳴り響いていた。








       ・・・ E N D ・・・・・

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by f-as-hearts | 2009-06-06 23:59 | ミステリー・ファントム 2

   第 18 話      「 過去の 亡霊との決別 」


戦争は ヴァレンシア王崩御の訃報が津波のように伝わり、それと共に突然総てが終わった。

ヴァレンシア王妃は亡き王に代わり、ヴァレンシア王国の敗戦と即時に議会解散を国民及び
他国に対して宣告し、今後はシャトーグランデ王国並びにその同盟国の、どのような決定であろう
と受け入れるとし、事実上ヴァレンシア王国は、崩壊した。

グラハム王と同盟各国はすぐに同盟国会議にて協議に入るとした。


ゴードは協議に入る前に、と グラハム王に呼ばれて、王宮の門をくぐった。
王は、人払いをしてから ゴードの話を聞いた。

「・・・ヴァレンシア王の義弟ラザルフ将軍は、王妃である姉が王の怒りをかって殺されそうになった
のを 止めようとして剣を抜きーーー王は結果として将軍に殺されてしまいました。

私は、その直後に扉の外におりました。
・・・将軍が逃亡した後、私は、気づいて、王の手紙を・・・・・・・

今しか、王の手紙を渡す時は無い と思い、ヴァレンシア王の前で手紙を読みました。


ーーー読み終わった時、ヴァレンシア王は 

勝手なことを・・・・いつまでも 待っているが いいさ と・・・・・・・・」

王は、その言葉に、目を閉じた。

「-そう言った 後・・・・・・・王の手紙を握り締めて・・・・・・・・

・・・・・・・・私には、笑っているように見えました。

ヴァレンシア王は 王妃に  少し眠るだけだ、と 最後の言葉を・・・・・・」

ゴードはそこまで話すと、声が詰まった。

グラハム王はゆっくりと目を開けた。


「ゴード・エンタールⅢ世殿。

・・・・・・ありがとう・・・・・私は ヴァレンシア王にどうしても伝えて欲しかったのだ。

何としてでも生きて・・・もう一度、戦おうと・・・・。

この役目は・・・やはり 貴殿でなければ、出来なかったことだ」

グラハム王は、深い溜息をついた。

「・・・・・・・・・しかし もう  叶わぬ事だ・・・・・・

 ・・・・・・夢 だと・・・・奇麗事だと、ヴァレンシア王は、笑っているだろうーーー」


「---ですが、私は・・・・」ゴードは涙が一筋ほほに流れるのを感じながら、言った。

「王の手紙が、 ヴァレンシア王をやっと・・・・・・・・・過去の王達の亡霊から、
解き放ってくれたのではないかと、思います・・・・・」

そういいながら、ゴードは自分も解放されたのではないか、と気がついた。
自分を縛る見えない手が、消えてゆく・・・・・・・


グラハム王は、少しの間 自分の手を見つめた。そして、頷いた。

「・・・私は、退位する。  次期国王ルシウスはーールシウスならば・・・・・きっと
真の平和の意味を、その重要さを、皆に伝えられるであろう。

私は、旅に出るつもりだ。

・・・・・レーヴィエ卿、ご一緒にいかがかな?」

いつの間に着たのか、ゴードの後ろにいたレーヴィエ卿は、コホンと咳払いをして、答えた。
「おお!!それは!よいですな。 旅立ちには まことに良い季節です」


「---ゴード様!!!」今度は突然扉からアイーダが現れ、ゴードに抱きついた。
「アイーダ?!」「やれやれ・・・・・やーーーーーーーーーっっっと、アイーダのお守りから
解放されたよ!!ゴード、お前な、俺が どれだけ大変だったか、わかるか?!」
「ジェラール!王の面前であるぞ!!少しは礼節をもってーー」慌てた様にベルガーまで
その部屋にやってきた。

「よいのだ、ベルガー殿。我々は皆にどれだけ感謝してもし切れぬ恩がある。

直に、ルシウスもセシリアもマクファーレンも、ここに来るであろう」

   王は、やっとその笑顔を皆に向けた。

「頼みがあるのだ。

 ---皆の話を、ゆっくりと 聞かせて戴けないかな?」









(この お話は フィクションです)

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by f-as-hearts | 2009-06-03 11:47 | ミステリー・ファントム 2
・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・


ヴァレンシア王妃               50歳
                         



ロード・クロス・ヴァレンシア王      ・・・51歳
                        ヴァレンシア国王





ゴード・エンタールⅢ世            30歳
                          ・・・俳優(ファントム)




第  17  話   「   手紙    」



王妃は 王の手をとって、自分がマクファーレンを逃がした・・・それは自分があの王子に
嫉妬したからだ、と懺悔をした。

今 城は将軍達が全ての兵隊を引き連れて外へと向かった為、まるで王と王妃しかいない
ように静かだった。従者達もこの執務室には呼ばれるまで近づく事は許されていないので、
王妃のその泣き声も、誰にも気づかれる事はなかった。

「・・・おまえに罪があるとすれば・・・・」
王の声は 静かだった。
「私の、この、ヴァレンシア王家の・・・血 の 重さ を、理解・・出来なかった・・・こと・・だ

・・・・ヴァレンシアの・・・亡霊 達  が・・私に 復讐を 命じる のだ・・・

私に シャトーグランデを   あの王国を 潰せ・・・と・・・」

「あなた、お願いです。もう、しゃべらないで・・・」



扉から  ゆっくりとゴードが入って来た。そして、暗い部屋の隅に立って、話し始めた。

「・・・ヴァレンシア王、ゴード・エンタールⅢ世です。

私は グラハム王とエンタールⅡ世殿から2つの使命をいいつかって参りました。

1つは、ロザリア夫人とお会いする事。

そして・・・もう1つは・・・・」

胸のポケットから書簡を取り出すと、それを広げた。

「グラハム王からの手紙です。




         ヴァレンシア王

  今生で 貴公のような好敵手を 得た 私は、 他の誰にも分からぬだろうが
  この 互いの剣を交えた手は、 もしかしたらこの世界を支配するよりも
  胸高鳴る刻を 覚えている。

  王よ

  我らは再び 戦おうと誓ったな。
  今度こそ、2人だけで 戦うのだ。

  それまでは、何としてでも 生きていようぞ。

  待っている。


                      グラハム・トゥラスト 」




ヴァレンシア王は 手紙を その手に握らせてもらうと、閉じていた目を開いた。

「・・・・・・・・・・・ふ・・・・・ん。  グラハム・・・め。

どこ・・・・・・・ま・・でも・・・・・・・・勝手 な・・ことを・・・・・

・・・・・気の、  短い・・・奴だ。


いつまでも・・・・・・・待っているが  いい・・・・さ・・・・・・」

「---あなた・・・!」

「・・・・・・・・・・泣く な。  私は  少し 眠るだけだ・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・」

王は目を静かに閉じた。

王妃は王を抱きかかえたまま、その両の目からは、涙が・・・
王の額に、王の目に、注がれるように流れていた。


ゴードは膝をついて 頭を下げて目を閉じた。

静かに・・・・・・・・・・・

ヴァレンシアの 終焉の時が 近づいていた。







( このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2009-05-30 14:02 | ミステリー・ファントム 2
・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・・

ヴォーグ・レーヴィエ            67歳
                     ・・・革新派議員 ジョルジュの伯父

ジョルジュ・レーヴィエ        40歳
                         ・・・貴族院議員(ノーブルノワール・リーダー)




・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・


ヴァレンシア王妃               50歳
                         



ロード・クロス・ヴァレンシア王      ・・・51歳
                        ヴァレンシア国王



ラザルフ将軍                ・・・42歳
                        王の義弟(ヴァレンシア王妃の弟)




ゴード・エンタールⅢ世            30歳
                          ・・・俳優(ファントム)





第  16  話   「 王妃 と 王 と  」


・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・王宮の 会議室 ・・・・・・・・・


ヴォーグ・レーヴィエ卿はノーブルノワールと共に、保守派の議員達と戦時下の国民への
非常事態宣言条項を議会案としてまとめていた。

「戒厳令はいつ布かれてもおかしくはないが、現況国境の4将軍のどこかが崩されることは
考えづらい。しかし、敵の戦略によっては、1ヶ所を集中的に破られることもないとはいえぬ。
国内の護りを、また国王軍を強化していただくことは必要となろう。
また、ヴァレンシア国より移住してきた者達は、その身柄を保護し、本人の希望によっては
他国へ避難、また、戦況によって国内では避難場所を別に確保する必要がある。

何より早急に事を進めねばならぬのは、緊急時の伝令を統一することと、国民に戦時下の
行動活動規制のあることを、理解して頂く事だと、まあ・・・・」

レーヴィエ卿はすらすらと答弁した。「・・・当たり前の事だが、確認を」

「ヴァレンシアの者を、どこに避難させるのですか?」「すでにシャトー・エンタールⅡ世殿が
屋敷の使用許可をご提出なさいましたな」「・・・・!!それは・・・では、戦時下における我々の
避難場所は・・・」「まさか、他に避難されると?」「勿論、それも考えに入れておきたいと」
「おやおや、皆様は御自分の軍隊を確保されていると伺いましたが?」
「あんなもの!!この国が戦場になった時に、どれ程の役にたつものか」
「・・・・・可笑しなことをおっしゃる。・・・では、今すぐ、そのご自分の軍隊を国境に向かわせなさい。
国を護らぬものが、自分だけは護られたいとは!!

ところで、あなたはどこかへ避難される訳ですな?では、そのお屋敷を国民の避難所として
お貸しいただけると思っておきましょう」

「レ、レーヴィエ卿、ご冗談を!!私は、私はこの国を議員として護る立場にある。
勿論、先程の話は、もしも、という仮定の話ですから!!」
「今話しているのは、現実の話でして。お分かりいただけるとありがたいですな」

「伯父上、あまり話を混乱させないほうが良いと思いますが。
保守派議員の皆様には、これからやって頂くべき事が、沢山ありますから」

ソファーに横になった姿で、ジョルジュは言った。
「国王軍に、皆様の資金援助と人員を送って欲しいのですが。そこで皆様は護られることに
なるでしょう。それは、国王からのご要請であります」

「・・・まあそれも・・・」ジョルジュは続けた。「実は伯父上のお考えだと聞いておりますが?」
「ジョルジュ、何事も順序を間違えてはいかんのだ。私が、常に誰の為に戦っているか-」
「まあまあ・・・さて、私達の方も動きましょうか」



・・・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ルシウス将軍とサラジュール国王が城を去った後、ヴァレンシア王は執務室で王妃と話を
していた。

「サラジュール!!!あの者は、海軍で我々を脅かし続けているが、唯一他国に侵略を
許していない・・・我々が海の領域で後れをとるのも、あの銀の鯨軍のせいだ。

私は、やはりあの者と戦う!!」

「あなた、どうか、それだけはおやめ下さい!ユノー将軍は、自分が戦うと、あんなに
はっきりーー」
「いや!!だめだ!!!ルシウスもそこにいると言っただろう!私はーー」
「あなた、お願いです!!」

扉の前で王妃はナイフを自分の胸に当てると再び言った。
「あなたが危険な目に遭うのは、もう耐えられません・・・どうしてもというのなら、私はここで」
「何を馬鹿なことを!!」すっとその手を握って、王妃を扉からどけると、王は振り向かずに
言った。「私のする事に、目をつぶれとーーー」

扉がいきなり開くと、そこにはラザルフ将軍が立っていた。
「姉上!!!一体どうしたのですか?」「ラザルフ、王を止めて!!」
「どけ!!!お前も、私の邪魔をするというか?!」王は剣を抜いた。
「王、どこへーー」「言う必要はない!!どけ!!!」「おやめ下さい、姉上が・・・・」
「あなたは、そんなに、あの子をーーー!!!」

王は激怒して、王妃を切ろうとした。将軍は、叫ぶと、王に切りかかった。

「・・・・・・・!!!!!ラザ・・ルフ、お前・・・・!!」

「あ・・・・・・ああああああ!!!!」剣が、手から落ちて、将軍は後ろも見ずに部屋から走り去った。

王は床に倒れ、王妃は驚いて王を抱き起こそうとした。
扉の外には、ゴードが、扉を背にして立っていた。

皆が、あまりのことに動けずに、そこにいた。





(この お話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2009-05-27 23:59 | ミステリー・ファントム 2
・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・

ルシウス・トゥラスト             39歳
                     ・・・王子(グラハム王の長男)

ベルガー警部                 55歳


キュベレー男爵                64歳
                          ・・・劇団の団長

ロザリア夫人                  53歳
                          ・・・セシリア妃の母 ヴァレンシアの貴族

ヴァレンシア王妃               50歳
                         


ゴード・エンタールⅢ世            30歳
                          ・・・俳優(ファントム)

マクファーレン・トゥラスト          14歳
                          ・・・ルシウスの長男


ロード・クロス・ヴァレンシア王      ・・・51歳
                        ヴァレンシア国王


サラジュール王                 35歳
                          ・・・サラジュール国国王(通称・銀の鯨)





第 15 話  「  絆  」


その馬車は郊外へとひたすらに走っていた。

「マクファーレン殿、手の傷は痛みますか?」
キュベレー男爵はシャツを引き裂くと、包帯のように赤紫色に腫れ傷だらけの手首に巻いた。
「・・・大丈夫です。それよりも、さっき・・・私のロープを解いてくれたご夫人は・・・」
男爵は手元から目を離さずに言った。「あなたの、お祖母様です」
マクファーレンは驚いて男爵の顔を見上げた。「まさか?!母の?」

「そうです・・・あなたは2つの国を繋ぐ、大切なお方だ」

馬車は向かい風の中、急ぎに急いでいた。

「・・・夢だと・・・・思っていました。
ヴァレンシア王が、僕に言ったんですーーーーー

我々が勝てば、おまえが総てを支配出来る。
もし、負ければーーーーおまえは生きてここを出る事は無い・・・・・・

おまえが望む 平和・・・・それは2つの国が1つになるまで 永遠にくることはない・・・」

風は唸りを上げて馬車の隙間から入り込んできた。

「・・・なぜなら、おまえは私の息子だからだ・・・・・・」頭を振って、マクファーレンは苦しそうな
表情を向けた。「・・・そんな話・・・・僕は信じられない!絶対に!!」

「--もし、それがーーー」キュベレー男爵は言った。
「真実だとしたら、王子、王子はどうされますか?」

突然、馬車は大きく外側へふくらんで向きを変えようと御者の掛け声が響いた。
「将軍の兵隊が追いついてきました!」御者は間髪を入れず鞭をいれた。
「ここからは道が悪い、何かに掴っていてください!」

馬車は雑木林のくねくねとした道を、全速力で走った。しかしすでに気付いた時には、周囲を
兵隊に囲まれていた。馬車は止められた。そこに将軍がやってくると兵隊は一斉に弓矢を引き
絞って馬車を狙った。「・・・さあ、王子!おとなしく城に戻っていただこうか?」

そこに、林の遥か遠くから弓矢が将軍目掛けて放たれた。「!!」将軍は弓矢を間一髪で払い
落としたが、今度は兵隊目掛けて何千と飛んできた。
「ぎゃっ!!」「何者だ?!」

「ヴァレンシア!!!借りは返してもらうぞ!!!」



同時刻・・・・・・・・・・・
ヴァレンシア王宮にて、ルシウス将軍とベルガー達が、ヴァレンシア王や将軍に取り囲まれていた。
「じきに人質は戻る。お前達は新たな人質として、我が国の戦いを優位に導いてくれる訳だ!」
将軍の一人がそう言ったのを合図に、皆が一斉に飛びかかろうとした。

そこに大声で軍隊と共に階段を駆け上がってきた者がいた。

「何者だ?!」将軍達が振り向いた。

「おお!勇ましい姿だな!シルバーシャーク将軍!!!」
それは海軍王サラジュールだった。

「もう、王子は助けた。人質はいないぞ。どうする?ヴァレンシア王よ。私の銀の鯨軍が、
この城を取り巻いているが?我々はこの場を戦場と化しても一向に構わないがな?
・・・改めて、取引といこうか。

俺は海で戦いたいんでね!そこにいる女将軍、ユノー殿との決着をつけさせてもらいたい!
我々は、このルシウス将軍共々、貴公らを海で迎え撃つ。

否、と言うなら、ここで皆殺しにするまで!いかがか?!」

女将軍は、きっ!とサラジュール王を睨み返すと、叫んだ。
「貴公が、我々を皆殺しだと?!出来もしない大ぼら吹きは、相変わらずだな!!
我が王に、お前の指一本触らせるものか!!!

ヴァレンシア王、私はこの者と決着をつけさせて頂きたい!!サラジュール王は、私の仇敵!!!
海の上でなら、私は負けはしない!!!私に今すぐ出撃命令を!!!」

怒りで紅潮した頬は、この女将軍を不思議と美しく見せた。
「ここから、サラジュール王、無傷で出られるものならな!!」血気にはやった若い将軍の一人が
切りかかった。「馬鹿者が!!!」ベルガーがその剣を目にも留まらぬ速さで弾き返した。
「サラジュール王が言った意味を、理解できんのか?!ここでの無意味な殺戮を避ける為だろうが!!」
「お前・・・ただの兵士ではないな?」年老いた将軍が、思い出したように言った。
「そういえば・・・騎馬隊を率いて無敗だった将軍に似ている」ベルガーはその将軍を睨み返した。
「過去に何の意味も無い。私は大切な方を護りにきた、それだけだ」



「サラジュール王、今すぐ城の周りの軍の包囲を解けば、貴公の話を信じてもいい」
ヴァレンシア王の言葉に、サラジュール王は頷いた。
「良し!!!海兵、すぐに包囲網解除の伝令を!!!」「了解!!!」
「こちらも、すぐに全軍出撃だ!!よいか、将軍、すぐに全軍に指示を!!!」
「ははっ!!!!」

将軍達は、ルシウス将軍とサラジュール王に一瞥すると、急いでそれぞれの軍隊の駐屯地へと
向かった。
ヴァレンシア王は、何も言わずに王の執務室へと向かっていた。王妃はその後を追った。
その様子に、ラザルフ将軍は一抹の不安を覚え、自軍への指示もそこそこに、王の元へと急いだ。

サラジュール王は外に出るとルシウスに話しかけた。
「急ぐぞ!!!マクファーレンを待たせては悪い。やっと海で戦える!!!」
「・・・いや、私は、これから国境線でヴァレンシア軍を迎え撃つ。後続の、将軍が来るのでね」
「山越えか!!!ふむ・・・それも良し!!だな!!ルシウス・・・・・・・」

珍しく、サラジュール王はぼやいた。
「ユノーは相変わらず、いい女だったが・・・いつになったら俺の事を想ってくれるようになるだろうか」
「・・・・勝っても、負けても・・・・・敵に変わりないからな」
「くそ~~~~!!!!意地でもあいつを負かしてやる!!!!!」
くすっと笑って、ルシウスは馬にまたがった。「ありがとう、感謝している!!それでは!!」
「おお!!!御武運を!!!」「貴方にも!!!」




(この お話は フィクションです)

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by f-as-hearts | 2009-05-21 23:59 | ミステリー・ファントム 2
・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・・

ジェラール・レックス              48歳
                          ・・・マジシャン


アイーダ・ローゼンハイム          24歳
                          ・・・女優


ミシェル・グルックス              55歳
                          ・・・新聞社所長(アイーダの叔父)
                  


セシリア・トゥラスト              35歳
                     ・・・ルシウスの妃



第 14 話  「 ミシェル 」


ジェラールはワインをグラスに注いだ。その時、アイーダがセシリア妃に一言言うのが聞こえた。
「セシリア様、ジェラールはお酒に強いんですのよ」

ジェラールは一瞬、はっとしてアイーダを見た。アイーダは何も言わず、見つめ返した。

ワインを酌み交わしながら、セシリア妃とアイーダはおしゃべりに花が咲いていた。
しかし、急に静寂が訪れた・・・・・・・・・グラスがテーブルから転がり落ち、3人の寝息だけが聞こえ
てきた。

それから数十分はたった頃、塔を登って来る足音が聞こえてきた。

カツーン・・・カツーン・・・・・・・

カチャッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ギィィィーーーー・・・・・

「---アイーダ・・・・いるかね?」
ミシェルはゆっくり入って来て部屋を見回した。
そしてセシリア妃の方へ近づいた。
「セシリア妃・・・・・・・・」ミシェルの横顔をテーブルランプの灯りが斜めに照らした。

「・・・・・セシリア妃。  貴女は間違いを犯した。最後までヴァレンシア王を信じるべきだったのだ」

セシリア妃の真上から、光る刀身が振り下ろされた。

ギィィィィィィーーーーーーン!!!!
ミシェルのサーベルは、ワインのビンを叩いて撥ね返された。

「!!ジェラール?!」
「残念だよ、叔父さん。・・・・・・・折角のワインを、美女2人と呑めなかったんでね」
ミシェルは唖然としてジェラールを見た。
ジェラールはビンを床に置くと、ナイフを手に持った。

「・・・アイーダは、俺からの手紙、セシリア妃の所に来て欲しいという手紙に、返事をくれた
・・・・・・・・・ゴードは、戦争を終わらせるまで会えないと言っていた、とね。
そして、ゴードは アイーダに、今だけは本当の事を言うと、言い残して消えたんだそうだ。

アイーダはずっと、悩んでいた・・・・・・・・・どうしても信じられないとね。

ゴードは、叔父さん・・・・・・・あんたがあの議員を殺した、真犯人だと言い残していたんだ」

ミシェルはサーベルを落とした。

「・・・くっくっくっ・・・・・・私は、ゴードを見張っていたつもりが、逆に見張られていたという訳か!

そうか・・・やはり、レーヴィエ卿か!・・・くっくっくっ・・・
本当に、くえない人だ。

私の出した手紙にも、引っかからなかったんだからな。だが、どちらに転んでも良かった。
ルシウスが手紙通りにマクファーレンが助かっていると思っても、どちらでも、な。

ージェラール、それより・・・・何故ワインに気がついた?」

「-俺は酒に弱いのに、何故かアイーダが俺は酒に強い、と言ったんだ。嫌でも、俺は
気づかされた。
・・・・ゴードが真犯人だと言った叔父さん、あんたは何故ここに来たんだ?

俺は、魔術師なんでね。誰が何を仕掛けているのか、考えるのさ。
・・・入っていたのは、睡眠薬か?2杯で、効くような・・・・」

ミシェルはそれには答えず、つぶやいた。
「--アイーダは・・・何故、分かっていながら、ワインを・・・・・」
ミシェルは言いかけて、口元を覆った。ランプの灯りが風に揺れて、小さくなった。

「叔父さん、アイーダの為に、自首してくれ!」
少しの沈黙の後、ミシェルは笑い出した。

「叔父?! アイーダに、叔父などいない。アイーダはただ単なる、私の手駒だ。
私は、ラザルフ将軍の副官だ。

その、セシリア妃が生んだのは、ヴァレンシア王の子。今頃マクファーレンは、それを
知らされているだろう!!

ヴァレンシア王に、子がいない現実で、マクファーレンは、世継ぎだ。

そう、どちらの国の、どちらの王となるのか!!
ヴァレンシアにとって、このセシリア妃の裏切りは、許される訳がないのだ!

ふ・・・・・・・・私らしくもない・・・何を私は、話しているのだろう・・・・」

ミシェルはふと、アイーダの寝顔を見た。
そして、塔から逃げるように出て行った。ジェラールは呆然として、ミシェルを追いかける
こともしなかった。

アイーダに、なんと言えばよいのか・・・・・・・・・・
そして、ミシェルは何故、最後に彼に全てを話して行ったのだろうか・・・

その、もう答えの無い問いに、ジェラールはいつまでも想いを巡らせていた。








(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2009-05-15 23:59 | ミステリー・ファントム 2

・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・

ルシウス・トゥラスト             39歳
                     ・・・王子(グラハム王の長男)


キュベレー男爵                64歳
                          ・・・劇団の団長

ロザリア夫人                  53歳
                          ・・・セシリア妃の母 ヴァレンシアの貴族

ヴァレンシア王妃               50歳
                         


ゴード・エンタールⅢ世            30歳
                          ・・・俳優(ファントム)

マクファーレン・トゥラスト          14歳
                          ・・・ルシウスの長男


ロード・クロス・ヴァレンシア王      ・・・51歳
                        ヴァレンシア国王






第 13 話  「 ルシウス将軍 」



・・・・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ジェラ-ルが乾杯をしようとしていた丁度その頃、ロザリア夫人とキュベレー男爵、そして・・・
俳優のゴードを乗せたヴァレンシア王妃の馬車は、王宮に到着した。
王妃は何も語らなかった。御者は言い付けられた通り、馬車を裏門へ着けると、門番に王妃様付き
の従者をすぐにここに呼ぶように伝えた。従者は急いでやってくると、王妃の指示に頷いていた。

「私は正門へ回りますが・・・」王妃はキュベレー男爵に言った。「貴方達はこの従者について、こち
らからお入り下さい。よいですか、誰と会っても話してはいけませんよ」

従者は手際良く、扉を開けては廊下を通る者がいないか確認して、皆を従者達の支度部屋と呼ばれ
る所へ案内した。

「男の方、こちらでこの服にお取替え願えますか?王妃様のご意向でございますので、
あしからずご了承下さい。私がお供致します。
奥様はこちらへ・・・  王妃様と、御会食の予定となっております」

夫人は2人と分かれ、扉を出て待っていると、一人の侍女が現れた。侍女は王妃の待つ広間へ
と案内する途中で、突然立ち止まると、左奥の扉を指し示しながら言った。
「こちらのお部屋でどうぞお化粧直しをしていらして下さい、と王妃様からの伝言でございます」

明かりが無い廊下を少し歩くと、その扉を開けた。
中は、ひんやりとして分厚いカーテンが少しだけ開いた窓から、細く斜めに入る夕日と
短くなったローソクのキャンドルが、辺りを微かに照らしていた。
「---誰?誰かいるの?」ロザリア夫人は恐る恐る奥へと進んだ・・・
そこには、床に崩れるように倒れている青年が、少しだけ目を開けていた。
青年は、手足を縛られていた。

「-----おお!!!まさか・・・・・・あなたは!?・・・・マクファーレン?!」
「・・・は・・・・・・い・・・・・・私を・・・ご存知なのですか?」

それには答えずにロザリア夫人は、急いで青年を縛っているロープを解こうとした。
ところがあまりに固く、夫人の指はすぐに傷だらけになった。
「待っていて、すぐにーーー」夫人はボロボロと涙がこぼれるのも構わずに、ロープを緩めた。

「・・・奥様?・・・ありがとうございます・・・・僕は、シャトーグランデの・・王子なので・・・
捕虜として捕まったんです・・・・・・・外は、もう・・・・戦争が始まったのでしょうか?」
ロザリア夫人は、マクファーレンの体を気遣うと言った。
「今はまだ、準備におわれています。・・・・・逃げるなら、今しかありません!」
コン・コン・・・と扉を叩く音が響いた。ロザリア夫人は王子に隠れるように言うと、扉で
声をかけた。
「もうすぐ行きます」「・・・・お急ぎ下さい。王妃様が広間に向かわれました」「わかりました」

王妃は、マクファーレンに逢わせてくれた・・・今はそれをただ感謝するしかない・・・
「すぐにまた、参りますから・・・・・」そう、王子に声をかけると、夫人は扉を出て行った。

ロザリア夫人は心臓が破裂するのではないかと思いながら、王妃の待つ広間へと向かった。
テーブルに着くやいなや、突然大声で伝令が走り抜けた。

「ヴァレンシア王!!シャトーグランデ王国より、緊急の使者が参りました!!軍隊ではありません!
誰か、早くお伝えするように!!使者の名は、王子ルシウスーールシウス将軍だと!!」

城中がざわめき、皆が門へと走った。そこにはルシウス将軍と、ベルガー率いる数十名の精鋭部隊
が門から城内へと向かって来ていた。
王妃とロザリア夫人は侍女や衛兵に守られて、その広間から出られずにいた。

10人の将軍達と共に、ヴァレンシア王は現れた。

ルシウス将軍は王の前に進み出た。皆が注視する中、臆することなく大声で口上を述べた。

「ヴァレンシア王よ、私はシャトーグランデ王国の使者として来た。
王子として、将軍として、全面戦争となる前に、人質の交換を申し込む!」

将軍達がざわめいた。王はずいと、前に出た。
「人質だと?」
「その者は、今どこにいる?私はヴァレンシア王、貴方と取引に来た。
その人質と、私を、今すぐ交換してほしい」

その一言で、将軍も王も、一瞬にして水を打ったように押し黙った。
ややしばらくして、王が口を開いた。

「・・・・・・ほぉ・・ルシウス王子、貴方は自分が何を言っているのか、わかっているのだろうな?」

「わかっている。
私は、私の命よりも大切なものを、貴方に奪われた。
それも、  2度も、だ!! 私は、この命と人質を、交換してほしいと言っている」

最年長の将軍が皆を押しとどめると言った。

「王子、我々が貴公の申し出を受け入れる必要が、どこにあろうか。
我々は、貴公をこの場で切って捨てることも出来るのだぞ!」

その気迫にもたじろがずに、ルシウスは応えた。

「何故、使者としてきたか、というのなら・・・・・
大軍を率いてきては、私の真実の言葉は王には届かぬ。

私は、王に 私の命では不足か、と、問いたい」

将軍が唸った。王は再び口を開いた。

「---流石は、シルバーシャーク・・・ルシウス、私は貴公の牙は幾重にも連なるという
ことを、忘れてはおらぬ。
その、戦略、単純な訳が無かろう!!---言え!!まずは、ルシウス、そのお前の戦略、
全て、ここで吐いてもらうぞ!!」

将軍と兵隊は剣を抜くと、ずらっとルシウスやベルガー達を取り巻いた。
「・・・取引は、不成立ということか・・・・」
ルシウスも剣を構えた。

ーーーその時・・・・・


「王、王様!人質がーーー!!」飛び込んできた伝令の言葉に、兵隊が慌てて大声を出した。
「人質が、逃げた模様です!!」
「なに?!」将軍の一人が、急いで人質がいる部屋の探索にまわった。将軍が叫んだ。
「むう!!!!馬車が、1台走り出たとーーー急ぎ、その馬車を、追え!!!」

「お前の仕業か、ルシウス!!」「残念だが、それは無理だ。私は今到着したばかりだからな!
だが、人質を無事に救出出来ねば、私の来た意味は無い!!!
ヴァレンシア王よ、私はやはり、貴方と決着をつけるしかないようだ!!!」



(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2009-05-12 23:59 | ミステリー・ファントム 2
・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・・

ジェラール・レックス              48歳
                          ・・・マジシャン


アイーダ・ローゼンハイム          24歳
                          ・・・女優


ミシェル・グルックス              55歳
                          ・・・新聞社所長(アイーダの叔父)
                  


セシリア・トゥラスト              35歳
                     ・・・ルシウスの妃





第  12  話  「 アイーダの過去  」


アイーダはジェラールからの手紙を受け取って、新聞社の叔父に相談に来ていた。


             ミス・アイーダ


       
        私は今、王子に頼まれてセシリア妃の話し相手として王宮に滞在中です。
        妃はルシウス王子が戦地へ赴いた事を知り、大変悲しまれています。
        
        セシリア妃の心をお慰めしたいと思っています、アイーダ嬢の事をお話
        しましたところ、セシリア妃は是非貴女にも来て欲しいとの事です。
        待っています。


                           ジェラール・レックス


アイーダは溜息混じりに叔父に言った。
「・・・叔父様、私 何をお話したらよいか・・・何も思い浮かびません。セシリア妃は、マクファーレン
王子の向かわれたサラジュール海軍とヴァレンシアがぶつかった事は、ご存知なのでしょうか?」

「--そうだな・・・もし私が聞いた情報が正しければ、セシリア妃は幽閉状態で塔にいるそうだ。
ルシウス王子がその事を話すとは、思えないがね」
叔父はアイーダの表情から、王宮に行くべきかどうか迷っていると知って、優しく言った。
「心配なら、ゴードに相談してみたらどうかな?」

「・・・・・・・ええ、そうします。叔父様」アイーダは微笑んで叔父の顔を見た。
「ゴード様は今どちらに?」「確か、今日も取材だといっていたが。

ーーー王族議員のところじゃないかね。---そうだな、王宮に行っているかもしれない。
なにしろ有名人だから、どこでも通行出来るし・・・・
ーーー私も取材方々、行ってみるか。

アイーダも来るかね?ゴードに会えたらそこで相談すればいいんじゃないか?」
「本当ですの?!嬉しいわ!そうしたら、話がすぐにつきますわ」
アイーダは叔父の手を握ると言った。「叔父様なら、そう言ってくださると思ったわ!!」
「なんだ、そういうことか!ははは!」

2人は馬車に乗り込むと王宮へ向かった。街は軍隊の為の仮宿舎が増え、武器屋、刀剣の研ぎ屋が
いたる所に店を構えて商売していた。軍人や兵隊達が声高に自国の戦力や同盟国の軍隊の話や
ヴァレンシアの噂を話し始め、一般の市民達は、まだ統率のとれていない下級兵達の横暴な振る舞いに
眉をしかめていた。

「・・・取材をしていると・・・」馬車の中でミシェルは外を見ながら言った。
「たかだか10年や20年ぐらいの停戦では、お互いの国に対する不信感は拭えないのだと、
つくづく思うね。
信じられるものがあるということは、幸せなことだ」

「・・・叔父様は 何か信じるものがありますの?」
馬車が道の轍の溝に落ちて、ガタンと揺れた。
「・・・・・・・・・・自分の仕事・・・・・・だな。私には、仕事しかないからね」
「いいえーーーー」アイーダは首を振った。

「そんな、仕事だけなんて・・・・・・・・・

叔父様は・・・戦争で両親を失って天涯孤独だった私を、ずっと探してくれて・・・・・
そして、私を女優として育ててくださいました。
・・・叔父様に初めてお会いした6年前・・・あのままだったら、私は今も、カトリーヌ様付の侍女で・・・
私が、叔父様の妹に似ていると喜んでくれた、あの時の叔父様の顔を、私は覚えていますわ・・・・・」

馬車は時折強い風に煽られて、ぎしぎしと音を立てた。
「それに、ゴード様のことも、黙って新聞記者としてかくまって下さって・・・・私はいつも、ご恩を忘れては
いません」

ミシェルは外を見つめたまま、頷いた。

「・・・その気持ちだけで、充分だよ。

アイーダは、女優として成功した。私は叔父として、鼻が高いよ」
ミシェルは手を擦り合わせた。「おお、手が冷えてきた。今日はどうやら寒さが戻るらしい」


王宮の門は、衛兵が軍隊へ入隊を希望する者や、貴族議員への応対に追われて、ごった返して
いた。ミシェルは新聞社の王家の許可証を見せて、衛兵に2、3言話して、すぐに通してもらった。

「今日はどなたの取材ですか?」衛兵は先を歩きながら振り向いた。
「・・・先に、我が社の記者で、ジャンという者が着ていると思うが・・・」「さあ?私の前に出入りを
警備していた者が、見たかどうか・・・御用の向きは、そのことだけで?その記者をお探しですか?」

アイーダとミシェルは目を見合った。「出来れば、先に探したいが・・・・そうだ、それから・・・ジェラール
という魔術師のことも取材したいのだ」「ああ、はい!彼ならすぐにお呼びしましょう。ではこちらの
緑のクローバーの部屋にてお待ち下さい」


その部屋で待っている間に、ミシェルはゴードを探しに行くといって、出て行った。議員の集会部屋は
大体わかるからと、アイーダには告げていった。

程なくして、衛兵はジェラールを部屋に案内して消えた。
「アイーダ!来てくれたんだ!!」「ええ、それが・・・・・・」
ジェラールに事情を話すと、アイーダの叔父のミシェルには会っていないが、ゴードにも会っていないと
ジェラールは首をひねった。

「ゴードがここに来ていたら、俺に会って行かない訳がない。
どうやら、行き違いになったらしいな。 それより、アイーダ、俺には女心なんてわからないんだ!
頼むから、セシリア妃の相手になってくれ!・・・・いやごめん、お願いします、この通りだよ!!!!」

2人は、セシリア妃の塔に上がっていった。

「セシリア様、ジェラール様と女優のアイーダ様がお見えです」侍女がそういって下がろうとすると
セシリア妃は侍女に飲み物を持ってくるように伝えた。

「なるべく早くお願いね。まだこの塔は西日が射して暑いの。冷たい物があると嬉しいわ」


「ご機嫌麗しゅう。セシリア様、アイーダ・ローゼンハイムでございます。舞踏会の折は大変失礼
致しまして・・・」
「ええ、ミス・アイーダ、今日は本当によく来て下さったわ。あの時は、貴女も怖い思いをされた
ことでしょう・・・本当に、お詫びのしようもないままで・・・・・・・・・」
「いいえ、いいえ!私はあの舞台は・・・最後まで演じる事が出来ませんでしたから、その方が
皆様には失礼ではなかったかと・・・・」
「まあ・・・!!あの舞台は、本当に、驚きましたね!!」「はい、セシリア様!」
やっと2人の顔に笑顔が戻り、ジェラールも少しだけほっとした顔をアイーダに向けた。

「それじゃあ、再会を祝して、乾杯といきましょう!」ジェラールが赤いシルクの布地をさっと
手の中で持ち上げると、そこには冷えた赤ワインが、あった。

「まあ、種明かしは無しで!さあ、乾杯しましょう」





(このお話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2009-05-07 20:59 | ミステリー・ファントム 2
・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・・


ジェラール・レックス              48歳
                          ・・・マジシャン


セシリア・トゥラスト              35歳
                     ・・・ルシウスの妃


ルシウス・トゥラスト             39歳
                     ・・・王子(グラハム王の長男)



・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・


キュベレー男爵                64歳
                          ・・・劇団の団長

ロザリア夫人                  53歳
                          ・・・セシリア妃の母 ヴァレンシアの貴族

ヴァレンシア王妃               50歳
                         


ゴード・エンタールⅢ世            30歳
                          ・・・俳優(ファントム)


第 11 話  「  正義 と 愛 と  」


ジェラールはルシウス王子に引き止められて王宮に留まっていた。
最初、王子がジェラールを王宮に呼んだのは、その優れた魔術や話術でセシリア妃の退屈な毎日に
少しでも明るい話題をと、考えての事であった。だが今は、マクファーレンの事を切り出せない辛さから、
ルシウスはセシリア妃の顔を見る事すら出来ない・・・それをジェラールはまた、理解していた。

ジェラールは突然ヴァレンシア海軍がサラジュール海軍を奇襲した意味を考えると、背筋が寒くなる
のだった。
(もし、自分が考えていたマクファーレンの秘密、それが真実だとしたら・・・ヴァレンシア王の復讐は・・・)

「ジェラール、あなたにお願いしたい事がある」
見違えるような将軍の軍服に身を包んだルシウスが、皮の手袋をはめながら言った。
「セシリアの話し相手になってやってくれないか。出来るだけ長く・・・宮殿に部屋を用意させる。
私はこれから敵地へ向かう。ジェラール殿の相棒、ベルガー警部達と共に」
「ベルガーと?!」「そうだ。彼らの馬がとても優秀で、また彼らの力が必要になったのだ。
・・・ジェラール・・・こんなに君達の力を借りるようになろうとは・・・」

「・・・これだけは約束して下さい。 セシリア妃に、悲しい想いをさせないでください」
「---そのつもりだ。後を、頼む!」

ルシウスはセシリア妃に何も言わず、会わずにそのまま王宮の門をくぐった。
しかし、セシリアはその時、何かを感じて 塔の窓から外を観ていた。
そして、門から軍隊が走り出てゆくのと、将軍のマントに兜の装束のルシウスを、見た。

セシリアは胸がつぶれるかと思えるほど、その名を呼んだ・・・・
だが、その声は、ルシウスには届かなかった。



・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・・


ロザリア夫人は王妃や貴婦人とのお茶会を開いていた。

ヴァレンシア王の王宮は、今 将軍や兵達の会議で慌しく、また戦略準備と経過の報告で
右往左往している状態で、王は王妃達に王宮をしばらく離れる様言い渡してあった。
ロザリア夫人の夫もまた軍人であったので、その様子をおもんばかり、皆の心を慰めようと
その邸宅に招待したのだった。

王妃や将軍の妻達、また貴婦人達はロザリア夫人の料理長や菓子職人の腕を褒め、お茶の
香りに迫り来る戦争への不安を和らげようとしていた。

ロザリア夫人が王妃の方を見ながら話し出した。
「皆様、今日はちょっとした余興をご用意いたしましたの」そういうと、鈴を鳴らした。
扉を開けて現れた男に、皆が驚いた。
「キュベレー男爵!!まあ!貴方がお芝居を見せてくださるのですか?」

「ーーいえ、皆様ーー

皆様は ひとり芝居というものをご存知でしょうか? 私の、 古い知人が育てた俳優が
これから皆様に ひとり芝居をご覧にいれます」

その言葉の後、また鈴の音が響き、それを合図に仮面をつけた男が キュベレー男爵が
立っている後ろの扉を開けて現れた。

男は とても由緒ある衣装と、エンタール家の紋章を刺繍した将軍のマントを羽織っていた。
その姿で 皆の座っている中央までゆっくり進むと、片膝を折って膝をつき、胸に右手をつけ
話し始めた。


「私は たった今 戦場となった北の前線から戻ってきた。

ー貴女にもう一度 逢いたい・・・ただその想いだけが・・・
あの 屍が累々と続く荒涼とした戦場で生き残る為に 必要な・・・
私に残された たった一つの正義だった・・・

いつ、 この緊張が途切れ、命を落とすか分からないーーそんなぎりぎりの状況の中で



それでも、生きるという事は 命を貴女に預けていたから出来たのだ」

男は 立ち上がった。そして、ロザリア夫人の方を見た。

「--貴女の言葉がいつも心に蘇る。

・・・私が敵国の縁の者だから、愛してはくれないのですか、と・・・」

ロザリア夫人の目から 涙が落ちた。

「私は、その答えを  今、  貴女にわかってもらう為に、再び貴女に命を預けに来た。
私は貴女の国がどうであろうと、誰が何と言おうと、貴女にだけは
私が犯した罪を分かって欲しかった。

貴女を想いながら、貴女の国と戦う私のーーー
この私の、罪の重さを・・・

これが、 私の 愛 だった  と・・・」


ーその場の女性達は皆、戦争の悲劇を想い、涙を溜めていた。

・・・ゆっくりと男は天を仰ぎ見た。



「ーー私は、もう一度だけ、貴女に逢いたかった。

もうすぐ、ここに 我が王の軍がやってくる。
私は 盾となり、貴女を護る。

貴女は、私の為に生きて欲しい。

貴女が、私を忘れないと誓い 生きていってくれるならば

このまま 逢えずに死んだとしても

この先 私の名誉が 泥にまみれようとも


私は    生きてきたことを 後悔しないですむ・・・・・

これからも、   ずっと・・・・・・・・・」


男は くるりと 背を向けると、扉から出て行った。


その扉が閉められると、大きな拍手が起こった。

皆は口々に、あの俳優は誰なのかと、ロザリア夫人に問いただした。
夫人は微笑むばかりで、答えなかった。
ヴァレンシア王妃も、俳優が出て行った扉を見つめ、何も言わなかった。


客人がロザリア夫人に挨拶をし、皆が帰った後で、王妃はキュベレー男爵とロザリア夫人に
話し掛けた。
「・・・とても哀しいお話でしたね。とても・・・」「はい・・・王妃様」
「ロザリア夫人、ここではゆっくりお話出来ませんね。・・・あなた これから王宮の方へ
一緒にいらして下さい。王様達には会わずに済む様に取り計らいますから」
「え?それは・・・!」「それからー」王妃は夫人の言葉を遮る様に続けた。

「扉のところで待っている、名も知らぬ俳優さん?貴方のお芝居、私はとても気に入りましたわ。
もっと貴方のお芝居を観たいものです。キュベレー男爵、彼にも一緒に来るように言って下さい」
王妃は自分のコートを手にした。
「おお、それは!誠に名誉な事でございます」キュベレー男爵の言葉に王妃は頷いた。
「今すぐ用意してください。・・・私に出来る事は、それだけです」

俳優が扉から入って来たのを見ると、王妃はにこりともせず、言った。

「・・・本当に・・・噂に違わぬ実力ですこと。
先程の ひとり芝居、それが貴方があの方に認められたという、お芝居だったわけですね」

王妃はそれだけ言うと、すぐに扉を出て行った。その瞳は 夕陽の色に染まっていた。






(このお話は  フィクションです)
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by f-as-hearts | 2009-04-23 23:59 | ミステリー・ファントム 2
・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・・

ヴォーグ・レーヴィエ            67歳
                     ・・・革新派議員 ジョルジュの伯父


ゴード・エンタールⅢ世            30歳
                          ・・・俳優(ファントム)


ルシウス・トゥラスト             39歳
                     ・・・王子(グラハム王の長男)



・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・


キュベレー男爵                64歳
                          ・・・劇団の団長

ロザリア夫人                  53歳
                          ・・・セシリア妃の母 ヴァレンシアの貴族


マクファーレン・トゥラスト          14歳
                          ・・・シャトーグランデ王国王子 ルシウスの長男


第  10  話   「 守護するもの  」


・・・・・・・・・・・・シャトーグランデ王国・・・・・・・・・・・・・・・


レーヴィエ卿は王宮の門に入る所で、ノーブルノワールのメンバーに手紙を渡された。
封は破られていなかった。表にレーヴィエ卿へと書かれていて、その字には見覚えがあった。

「誰からだね?」「・・・わからないのです。私は王宮の衛兵から渡されたもので・・・」
メンバーが帰ったのを確かめてから、レーヴィエ卿は封を切った。



        ヴォーグ・レーヴィエ卿


   マクファーレン王子は無事にサラジュール王に助け出されたと、伝書鳩が先程
   届きました。  新しい情報ですが、ルシウス王子に、セシリア妃を狙って、特殊
   部隊が動き出したと、お伝え下さい。


              ゴード・エンタールⅢ世



レーヴィエ卿は、唸った。「ゴードは何かを掴んだのか・・・」レーヴィエ卿はその手紙を
持ってルシウス王子の部屋まで行き、扉の前でふと、立ち止まった。
そして、もう一度手紙を読み返した。

ーーー呼吸を整えると、レーヴィエ卿は呟いた。

「---成る程・・・・敵の考えが読めて来た・・・・・・・

さて、どう動くべきかな?」


卿は目の前の扉を叩かずにそのまま王宮を後にした。それから数時間後、
ルシウス王子に手紙が届けられ、そして・・・・・・・・・・・
ルシウスの叫び声が、王宮に響き渡った。




・・・・・・・・・・・・・王宮の大会議室・・・・・・・・・・・・・・

ルシウス王子は王と議会の全員の前で、過去の戦争と同じく、自分もまた一人の将として
前線に赴くと宣言した。
その姿は、すでに今までの王子ではなく、11人の将軍と同じ、いやそれ以上に気迫に満ちて
いた。王子も加わった円卓会議で、他の将軍達は王子の戦略に驚いていた。

「それは、ルシウス王子、いかに足の速い馬を揃えても、3日はかかると・・・」
「いや、それでは私がヴァレンシアへ行く意味が無くなる。2日だ!誰か、2日で行けるという
者を知らぬか?」皆が、押し黙った。

「王子、あの山道をですか?!・・・・ううむ!!いいでしょう、私は警ら隊を束ねる男で、
優秀な馬達を育てている者を知っていますから、その者達を王子の軍隊で働かせましょう。
しかし、その者達は兵隊ではありませんから、王子の先発部隊に遅れても後続の部隊はかなりの
使い手を揃えねば・・・」将軍の中では特に武勇に優れて、その手の甲の傷を隠すように立派な皮の
手袋をした将軍が話した。
「では後続の部隊にはーーー」王子とほとんど年齢も変わらない、1番若い将軍が後に続いた。
「私達が行きます。皆さん、それでいいですね?」
皆は1も2もなく頷いた。「あなたが行くなら、万全だが!王子、彼はこの国で1番剣術に長けた
軍隊をお持ちだ。王子もご存知でしょう?」
「勿論!彼とは剣術の試合でいつも決勝で戦っているからね」王子はじっとその将軍の顔を見つめた。

「それから・・・・

これは将軍、皆に言っておくが、これからは私を王子と呼ばないでくれ。
戦争になったからには、私は将軍としての責任を全うする。」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヴァレンシア王国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


キュベレー男爵は歌劇団をソード国へ見送ると、自分はヴァレンシア王国に密かに入国
していた。彼の向かった先は、ヴァレンシアでも由緒正しい、とある貴族の邸宅であった。
邸宅の広い庭園、その垣根の蔦に覆われた扉を、一定のリズムで叩くと、中から従者が
現れ、男爵を招き入れた。

「・・・急な帰国の連絡に驚きましたが、一体何があったのですか?」
年配の、白髪をとても上品に結い上げた貴婦人が、従者達を人払いしてからキュベレー男爵に
尋ねた。
「奥様、マクファーレン王子が・・・」声を殺して話し出した。「ヴァレンシア王の軍隊に捕まりました。
戦争になれば、必ず何か起こるものです。私は国の為ではなく、私の信念によって、ここに参り
ました。奥様には真実をお伝えすべきだと・・・・」

貴婦人は驚き、また少し眼を潤ませながら頷いた。
「そうでしたか・・・・・・あなたは、エンタールⅡ世殿に頼まれていらしたのですね・・・・

・・・・・皮肉な、本当になんという運命なのでしょう・・・・・・・

・・・・男爵、それから・・・娘は・・・セシリアは?・・・・」

「・・・ブランの件が明るみに・・・その為、今は公の公務を総て辞退され、幽閉されています」
「なんですって!!!・・・・・・まさか、そのような?!・・・」貴婦人が倒れそうになったので
キュベレー男爵は支えた。「ロザリア様!お気を確かに」

「・・・そうでしたか・・・・・・・そのようなことになっていたのですね・・・・
戦争になるのも、それも・・・・王の・・・・」

キュベレー男爵はロザリア夫人としばらく話した後、ヴァレンシアの街並みに消えた。

ヴァレンシア海軍はその次の日ヴァレンシア王宮に到着した。




(この お話は フィクションです)
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by f-as-hearts | 2009-04-16 23:59 | ミステリー・ファントム 2