メタモルフォーゼ 風の子守唄 番外編
<第 1 話>
「なんと久しく 高貴なる御方様方におめもじを許されませんでしたが、皆様方ご健勝であられましたでしょうや?わが盲しいた眼には見えませぬが、ラインハルトの若き国王と王妃は、それは麗しく、仲睦まじく、後の世に黄金の時代と言われる時を御創りにになられておりました。」
「王妃様、御召かえのお時間でございます、王妃様。」侍従長のマリエンヌは、侍女を連れて王妃の姿を探していました。まだ、朝食もお召し上がりではないし、一体何処へ・・・・
「あ、マリエンヌ、みっけた!」まだ舌っ足らずの、小さな王女、カトリ―ヌがちょこちょこと裸足で追いかけてきました。「まあ、王女様、可愛いお足が見えていますわよ?」カトリーヌは口をとんがらせて、言いました。「靴下も靴も、お友達は履かないもの。笑われるもん。」
あら、また始まった・・・マリエンヌは、王女様の言う、お友達が誰なのか知っているので、溜め息をつきました。「困りましたねえ、また大じじ様に叱って頂きましょうか?」
王女は首をすくめると、「マリエンヌはお友達に笑われたりしないから、分からないのよ。みんな笑いながら逃げるんだもん!」「それじゃあ、マリエンヌからお友達に言ってあげましょうか?」「無理よ、みんな、マリエンヌが怖いって・・・・」マリエンヌは、これには参ってしまいました。「おお、そんなお友達は、今すぐ出て行ってもらいましょう!王女様を笑うなんて、以ての外です!」
「だめだよ、そんなこと言うと、カトリ―ヌが泣いちゃうだろ?」いつの間に現れたのか、双子の兄のユーリがテーブルのレースの下から声を掛けました。 「この前、泣いた時のこと、忘れたの?」「いいえ、王子様、ええ、王子様、そうですわね。王子様もお友達と遊んでたんですか?」
「ううん、僕は、魔法の勉強。先生のところに行ってたんだ。また、行かなきゃ。バイバイ!」
・・・・ユーリはそういうと、また消えてしまいました。マリエンヌは溜め息が出るのを止められませんでした。「・・・・ルナ王妃様、わたくしの方が消えてみたいですわ。なんて、なんて困った子達でしょう!・・・さあ、王女様、もうお出かけになるお時間ですわ。素敵な靴下と御あつらえの赤いお靴をお履きくださいませ!!」
その頃王妃と王様は、二人だけの時間を過ごしておりました。ですから、双子が悪戯しようが、マリエンヌが怒ろうが、一向に構わないのでした。というのも、この部屋にはブラウンが直々に
魔法をかけていて、誰一人として近づく事が出来ないのでした。
「ふふふ、可笑しいわね。・・・マリエンヌはきっと、痩せると思うわ!」ルナはそう、王様に笑いかけました。「・・・マリエンヌが?いや、想像がつかないけどね?君はどうして太らないんだい?」
まじまじと見ても、その姿は、20代の頃のままでした。「私が?貴方もね。」
シフォンのベールが天蓋に掛るベッドに腰をかけて、柔らかな髪を振ると ルナは振り向いた。
「もしかしたら、私達には神があの試練の分、少しだけ哀れんでくれたのかも。」
「そうだな・・・・あのまま、狼になるのも、運命のひとつの道だったんだし・・・・。感謝しているよ。」不思議な感覚が戻ってくる時があるのだ、狼になって月の明るく照らす森を駆け巡っている感覚・・・・・あの、体の奥から湧き上がる衝動に四肢が躍動する素晴らしさ・・・・・
「私も、大鷹の翼を、思いっきり伸ばして、大空を風に乗って・・・・そう、その瞬間に、もう一度戻ってみたいって、思ってしまうの・・・・今が、こんなに幸せなのに・・・・」両腕を広げて羽ばたくふりをしてみせて、笑ったのでした。「・・・そろそろ、皆が探しに来るわ。行きましょうか。」
今日という日は、特別な日でした。そう、二人の呪いが解かれた日。大魔法使いが、人間に戻り、運命が正しく廻りだした日でした。そう、あれから8年が経ったのでした。
「ラインハルト王、ならびにルナ王妃様―――――わが国の守護者にして偉大なる王と王妃よ、とこしえにこの平和が続かん事を!皆を代表して御礼申し上げまする!」大臣が大声で口上をのべると、一斉に杯が持ち上げられました。割れんばかりの拍手と歓声が、国中に響くかと思う程でしたが、その時、また鐘の音が打ち鳴らされて、人々に祝福の音色を響かせたのです。
「そう、その日は両国の記念日でした。この見えぬ目にも光はじける音と共に、歓声は一晩中続いたので御座います。そう、もう一つの出来事と共に、この日はいつまでも語り継がれたので御座います。今宵は、これにて・・・・」
< 第 2 話 >
「カーライル国のルナ姫の姉であらせられるマレーネ王女は、その生い立ちゆえ、国民の前から隠された存在でありましたが、あの8年前の出来事を機に、カーライル国王は、ご英断され、ご自身の正義を貫かれて マレーネ姫に「カーライル国 女王」の地位を授けられたのでございます。そして、この「女王」は、魔法使いであられましたから、他の強国より、一層の畏怖をもって迎えられたのでございます。そう、カーライルは、今や 「魔法王国カーライル」なのでございました。」
カーライルの緑豊かな堀の周りに、色とりどりのバラが、今や盛りと咲き競っておりますが、「カーライルの白バラ」がルナ王妃、そして、「カーライル・ローズ」といわれるピンクが、マレーネ女王と言われておりました。庭師達は、それは精魂込めてバラ作りに励みましたから、この時期にカーライルに大勢の旅人達が来るようになっていて、「カーライルのバラを見たかい?」というのが、勿論、女王様にも会えた人々の間で、自慢話になっておりました。それほど、女王様は皆の憧れであったのです。
女王のお仕事は、休む暇がなく多忙を極めましたが、女王には不思議な力が在りましたから、いつの間にか疲れが消えているように見えました。そして、驚いた事には、カーライルに魔法学校なるものまで、設立してしまったのです。勿論前代未聞、今まで魔法なるものに面識のなかった大臣達の驚きようと言ったら、「威張りくさった大臣の鼻をあかした姫様!」という大見出しのニュースが街に号外で飛ぶように売れたそうです。それで、魔法がみんな使えるようになるか?というと、そうはいかないんですが・・・・・
「女王様、魔法書記官のバロウズでございますが・・・・」コホン、と扉の前でかしこまってのっぽの男が名乗りました。「・・・どうぞ。」 開いた扉の正面に、マレーネ女王がおりました。
マレーネ女王は、小柄でバロウズの半分か、と思うほどでしたが、その瞳には何者をも見通す力が秘められておりました。しかし、書記官はすばらしい性格でしたので、女王はつねにこの者の意見を聞き入れておりました。
「・・・最近、噂が流れておりまして。それは、魔法使いの血を捜している怪しい者がうろついていると・・・・・」 女王は、それがどういうことか、判っておりましたのでゆっくりとバロウズに伝えました。「私達の、因果なのですよ。バロウズ、私達には今も、守護して下さる方達が、大勢おります。ご心配をおかけしますが、大丈夫、と思っていて下さい。」
バロウズが去った後、窓辺の厚いカーテンから、ちょこっと顔を出したのは、ユーリでした。
「・・・マスター・マレーネ、ぼく、お話聞いちゃったよ?」困ったようなえくぼの子供に、マレーネは微笑みながら、いいました。「ふふふ、いいのです。あなたに関係があるのです。あなたは、私達の希望。カトリ―ヌは私達の力。よいですか、あなたが、あなたのままで、自分の心に素直であるならば、何も怖れる事はありません。・・・さあ、それでは、魔法の勉強の続きを覚えましょうか?」
お城の中に魔法学校があり、国の内外から魔法の素養がありそうな子供達が、親や親代わりの者達に連れて来られておりました。その日も、入校希望の子供達が、そわそわと落ち着かない風で椅子に座って、広間の見える小部屋におりました。親や親代わりの者達の中には、本当の魔法使いもおりましたので、その部屋には通されず、城外で待つよう言い渡されておりました。その中に、ユーリと変わらないくらい小さい子もおりました。バロウズが子供達の簡単なテストをして、判断するのですが、その小さな子供は、なぜかバロウズは気になって仕方がないのでした。「君は、いくつだね?」「・・・6さいです。」「そう、親はいるのかな?」「・・・いいえ」「ふむ、では親代わりの人は、誰だね?」「・・・おばさんです。」「・・・ふうん、では手をこちらへ。私の手のひらに重ねなさい。」左手を重ね、そうしておいて、バロウズはそのこの頭に右手をあてて、この子の潜在意識を探りました。しかし、おぼろげな過去の映像しか浮かばないので、この子があまり幸せではなかったということしか、判りませんでした。「・・・・しかし、魔法を受け入れる素直さはありそうですね。よろしい、合格です。」試験が終わり、バロウズは受かった子供3人を連れて、また女王様の部屋まで戻りました。 「お入りなさい。」すぐに声がして、扉は音もなく開きました。
中には、ユーリが夢中になって物を浮かせる浮遊術を勉強中でした。でも、同じ歳ぐらいの男の子がいるのを見ると、気になって出来なくなってしまいました。皆が順に名前を告げました。
「女王様。今日の合格者3名です。これで、今全員で21名ですね。」バロウズが神妙に付け加えると、女王は3人をじっと見つめました。「よく、この魔法学校で学ぼうと決心してくれましたね。ここは、皆さんが世の中に役立つ魔法を身につけて頂く為の所です。勉強は難しいかもしれませんが、頑張って下さいね。」側にいたユーリは、そわそわと落ち着かなくなって、女王様に言ったのです。「マスター・マレーネ、僕、この子達にお城を案内したいんですけど、いいですか?」
「いいですよ、では、その後、皆をお部屋まで連れて行きなさい。これからは、お城で生活するのですから。」ぱあっと明るい表情になって、ユーリはお辞儀をして、皆を連れて出て行ったのでした。廊下にでると、ユーリは、その小さな男の子にくっついて、聞きました。「ぼく、ユーリっていうんだ、君は?」「僕はシェリマ。・・・6歳だよ。」「ぼくも6歳なんだ。」ユーリは、おそらく妹以外で同い年の友達はこの子が初めてだったので、いろんな事を話し始めて、止まらなくなってしまいました。シェリマは、ユーリに言ったのです。「僕、受かった事、おばさんに言わないと。お城の外にいるんだけど、一緒に来る?」大喜びで、ユーリは頷くと、他の子を部屋に案内してから、2人で外に出て行きました。
<第 3 話>
「さて、一方ラインハルト国では今夜、カーライル女王も招いての大祝宴会を催す為に、あらゆる商人が最終準備に追われておりました。中でも、ラインハルトのコック長の鼻息の荒い事と言ったら、いつも肉を仕入れる係りが、10回は蹴り飛ばされる始末で、周りのコックは今日だけは絶対にコック長に逆らうまい、と心に決めているようでした。そんなお祭りムードに水をさすような出来事が、起こったのでございます。」
「・・・・お母様、私頭が痛いの・・・・・」カトリーヌが、珍しくルナ王妃にそう言ってきたのは、夕方の5時を過ぎた頃でした。まだ、夕日が赤く染まる前で、ルナ王妃はマレーネ女王が飛ばした伝書鳩の手紙を見ようとしていたところでした。「まあ、風邪かしら?どれどれ?」おでこに手を当てましたが、少しも熱は在りません。そのかわりに、汗がじっとりと手につきました。「・・・・なんでしょうね、しばらく横になっていましょうね。マリエンヌ、お願いするわ。」ルナ王妃は伝書鳩の手紙を開くと、しばらくして、手が震えるのを感じました。「・・・・・マリエンヌ、この子をしばらく、どこにもやらないでね。つきっきりで、眼を離さないでいて。わたくしは、王に至急会わねばなりません。よろしくお願いしますね。」急いでその部屋をでると、王を探して執務室を訪れました。
「あなた、ルナですわ、入ってもよろしいかしら?」扉の中の声は、一瞬黙ると、扉を開けたのは大召喚師ブラウンでした。「・・・・まあ、ブラウン、お元気でしたか?お変わりなく?」ルナ王妃は務めて明るく話し掛けましたが、明らかに動揺していました。
「お蔭様で。久しくこちらにも参りませんでしたが、今日を忘れる事は一生ありませんよ。・・・・どうされた?顔色がすぐれぬようだが?」ルナ王妃は、その言葉で、とうとうこらえる事が出来ずに、泣き崩れるように言いました。
「この、手紙ですわ・・・・あなた、ユーリがさらわれました。あの子が、城の外に出るのを門番が見かけたそうです。その時に一緒だったのはユーリと同い年の子と、そのおばさん・・・・マレーネお姉様の見立てでは・・・ガラティアだったのではないかと、いうのよ!」最後まで言うと、手紙を王様に差し出して、床に泣き伏してしまいました。確かに、マレーネの筆跡で、カーライルの印も押されておりました。「・・・・・しかし、マレーネ様は、ご自分の責任であるから、必ず助けると仰っている。ルナ、あの方がそう言われているのなら、大丈夫ではないか?」王は、ルナ王妃に優しくそう言いました。「・・・・わかっております、信じても、います。でも・・・・わたくしは、子供が心配で、今にも心臓が破裂しそうなのです。・・・自分の時にはこんなに不安を感じませんでしたのに、子供に降りかかって来る災いの、なんと恐ろしい事でしょう。」その気持ちを、ブラウンが分からない筈もなく、静かにルナ王妃に話し掛けました。
「・・・ルナ王妃、私が行きましょう。マレーネ女王も大事なお方だ。私は貴方達には、大きな借りがあります。一生かかっても返せない借りが。どうぞ、ここでお休みになっていて下さい。」
ばさっと召喚師のマントを翻すと、ブラウンは一礼して扉から出て行きました。「ふう、ブラウンはやはりここに来る用があった訳だな。・・・7年ぶり、か。ルナ、あの人はいつも、運命の輪を回しに来るんだよ。そうなるように、全てが廻るんだそうだ。・・・・出来れば、ただ遊びに来ていただけるといいんだがね。どうも、運命の女神がブラウンを気に入っているらしい。」
ブラウンはまず、双子の妹に会いに行きました。「おお、ここでしたか、プリンセス!」慎重に小さな姫君の様子を窺うと、案の定顔色が悪い事に気がつきました。「私は、召喚師ブラウンと申します。姫のご両親と一緒に旅をしたんですよ。・・・・さて、どうされましたかな?」
侍従長のマリエンヌが疲れたように言いました。「ブラウン様はお医者様ですか?お嬢様は頭痛を訴えられて・・・汗をおかきでしたから、何度もお着替えをして。でも熱はないんです。」
カトリ―ヌ王女は、綺麗なブルーグレイの瞳でブラウンを見つめた。「姫、お兄様には会いたいですか?あなたは、ユーリといつも心の中で、お話をされているのでは?」
びっくりして、カトリ―ヌは眼をしばたいた。「なぜ知ってるの?あなたはお兄様とお話したの?」「ええ、分かりますよ。姫、あなたが頭が痛いのは、お兄様に頭が痛くなるような事があったんです。あなたが先に痛かったんじゃない。・・・さあ、私のいう通りにして下さい。お兄様に呼びかけるんです。ユーリ、どこにいるの?とね。」
<第 4 話>
(・・・・ユーリおにいちゃま、どこにいるの?頭が痛かったよ?おにいちゃまも痛かったの?)
・・・・しばらくして、ユーリの心がカトリ―ヌに聴こえて来たのです。
(・・・・カトリーヌ、ぼくはシェリマとシェリマのおばさんと・・・一緒だよ・・頭は後ろから殴られた。多分、おばさんが・・・・・)そこで、意識が一旦途切れ、再び戻って来た時には、疲れた様子でした。(ここは、古い寺院跡だよ・・・・街外れらしい。シェリマが教えてくれた。カトリ―ヌ、聞いてくれる?お父上達には、言わないで。いいね?)(おにいちゃま、まだ帰らないの?もう、ご飯のお時間なのに・・・)(・・・・いいんだ、帰らないけど、心配しないでね。)妹の心にぽっと明かりを灯してユーリは、自分の心を閉じたのです。
カトリ―ヌは安心して、ブラウンを見ると言いました。「おにいちゃま、ふるいじいんにいるって・・・じいん、て何?シェリマって言う子といるの。まだ帰らないって。お父上に言わないでって・・・・。でもユーリは大丈夫って言ったの。だから、大丈夫なの。」そう言うと、カトリ―ヌは、スウー――っと寝てしまいました。「よしよし、いい子だね。・・・マリエンヌ、ベッドに運んであげて下さい。今日は、疲れた筈だから。」一部始終を観ていたマリエンヌは、もうこれ以上はないほど、目を見開いて、突っ立っていました。「・・・魔法なんですか?まさか、お姫様も??」ブラウンは苦笑しながら言いました。「・・・双子の、不思議ですよ。さあ、運びますよ。」
ブラウンは、姫の部屋を足早に出ると、人気のない中庭に降りて、すぐに風神を呼び出すと、風の渦に乗ってカーライル国に飛び立ったのです。カーライル城の上空に来た時、不思議な眼を感じたので、ブラウンは城に向かって、声を掛けました。「我は、カーライルのマレーネ女王 縁の召喚師ブラウン・ローゼズ。おして参るが、よいな!」その声が届き、城は沈黙を守りました。ブラウンは、そのまま古い寺院を捜し降り立つと、ユーリの意識を感じようと、土に手を置きました。土はまるで水のようにブラウンのところから波紋を広げ、ユーリにぶつかると、戻って来ました。「・・・北西、ここより2キロぐらいか・・・」再び、ブラウンは飛びました。
その頃、マレーネ女王も変身術で白い犬になり、ユーリを追っていました。匂いは切れ切れになりながらも、森の中に続いていました。
「・・・シェリマ、ほらお食べ。これは、お前の肝を強くするよ。それから、これは毒を薄めたものだよ、トリカブトの毒さね。少しずつ、毒を食べて、毒に負けない体にするんだよ。魔法使いなら、それは当たり前なんだ。・・・それから、これはあっちの・・・ユーリに食べさせるんだ。いいね」
その声の主は、ガラティアでした。しかし、あの頃の面影は、どこにもなかったのです。そう、そこのいるのは白髪を束ねて腰を曲げた、しわがれ声の老婆でした。あれから8年しか経っていないというのに、運命はガラティアの寿命を早めていたのです。「おばさん、このパンもユーリにあげていい?」半分にしたパンを見せるとシェリマは訊きました。おもいっきり不愉快な顔で、ガラティアは首を横に振りパンを取り上げました。ユーリは椅子に縛られて動けない上、声も出せないように口を塞がれていました。
「シェリマ!お前は私の言う事が分からないのかい?ユーリは私の力を奪った憎いラインハルト王の息子、この私がただの人間になってしまった、その原因は、この子の両親が生きていたからなんだ!そして、この子を生かしておけば、シェリマ、お前の命が危ないんだ!お前がいずれなるであろう大魔法使いの椅子を、奪うのはこのユーリなんだよ!お前を引き取り、育てながら話した事を、よもや忘れてはいまいね?!・・・分かったら、早くこれをこの子の口の中に入れるんだ!!」シェリマは、ガラティアの話をそれは毎晩聞いて育ちましたから、今更疑う訳もありませんでした。ただ、目の前にいるユーリを 殺さねばならない悪 だとは、信じられなかったのです。ユーリの口元の布をはずすと、ユーリにガラティアの作った丸薬を飲ませようとしました。
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