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メタモルフォーゼ  風の子守唄

第 4 話

 「なにゆえ、サラマンダ―は現れしや?続きでございます・・・」

主人公 ブラウン・ローゼズ  (魔法使い・召喚師)

      クレイバー・ラインハルト・J   (ラインハルト国の王子)

      ルナ・ジェファーソン       (カーライル国の王女)

      サラマンダー           炎の神の眷属       


            <  Ⅳ  >

 
サラマンダ―、火の世界の怪物、トカゲのようなその姿は、覆われた鱗の間からも炎が燃え上がり 灼熱の息が 近づく全ての生き物から生命を吸い取る。勿論、どこにでも現れるような、そんな怪物ではない。
 狼は唸りをあげ、跳びかかった。その鋭い牙は、敵の一撃をかわすと、その手に噛みついた。しかしもう一方の手が振り払うと、狼はもんどりをうって、跳ね飛ばされた。しかしたいした打撃ではなかったらしい。あたり中に、毛の焦げる臭いが漂い、サラマンダ―は目を細めて喜んでいるように見えた。 ルナは、その細い手足からは信じられないような力で、地面を叩いた。
「大地の母よ、私に武器を!今こそ我が女神に力をお見せする時!」そう、彼女が言った途端大地が割れ、そこから金の弦を張った弓が現れた。彼女はさっと弓を引くと、次々に矢を射った。
 サラマンダ―の鎧のような鱗は、硬く隙間も無い。ルナは、唯一開いている目を狙った。
それを察して、狼も背後に近づいてじりじりと間合いを詰めてゆく。私はサラマンダ―の目に気がつくと、大声で叫んだ。「やめよ、こやつはもしや・・・敵ではない。」

 サラマンダ―が笑った。「ハハハ・・・オモシロイコトヲ イイダス オトコダ。デハオノレカラ、エサニナルカ?」 サラマンダ―の声は、ふいごのように火を吐きながら渦巻いた。
「私は、ここより遥か南西、100キロは離れた村、「荒地のヤード」から参った者。そなたに問う。そなたは、火の国の賢者、サラマンダ―族の王ではないか?」

 ほう、と感心して(した様に見えただけだが)サラマンダ―は答えた。
「イカニモ、ソレヲシッテイルノハ、タシカニ ソノムラノ モノデアロウナ。ヨイ、デハ・・・・」と言うとサラマンダ―は あっと言う間に姿を変えて 白髪長髭の老人の姿になった。「こんな姿で 我は居たくは無いが、そちらの二人には 刺激が強すぎたようじゃて。勇ましい事じゃ、王女、王子。」しかし、目は笑っていた。

 「控えよ、二人とも。」サラマンダ―の前で膝をつくと、ブラウンは話し出した。「火の国の賢者殿が何故、このようなところに?まさか、魔法使いの話を?」頷いて、サラマンダ―は答えた。
「お前達は あ奴の名前を知らんのか?ほう、情けないのう。あ奴は、ガラティアじゃ。あ奴の欲望は果てしないわい。我々 火の国の荒ぶる一族の者どもを、根こそぎ連れて行きよったわ。」

 「みんなガラティアとかの、部下になったのですか?」ルナの問いに、サラマンダ―は怒りをぶつけた。「なんだと!人間ふぜいが、知ったような口をきくではないぞ?!我々の一族は他の種族の配下等に、死んでもなるものか!やはり、くだらぬ!!私が来たのは間違いであった!」

 「待って下さい、それでは私の心だけでも覗かれるがよろしいでしょう!あなたが知りたい答が、一つだけあるはずです。」サラマンダ―は、その燃えるような目をブラウンに向けると、額に指をつけて目を閉じた。めまぐるしく廻りだす運命の輪に、サラマンダ―もその時の出来事を、目撃した。「ふう―― む・・・・・お前の、運命が行き先を告げておるな。・・・よい、分かった。」指をさっと離すと長い髭をしごいてブラウンを見た。

 「そなたは、すでにこの先に待ち受ける事から逃れる術を知らぬようじゃ。若い、若いのう。我の如く、とく歳をとらねば。そなたの運命の重さに免じてこれより、我はそなたに力を貸す事としよう。しかし、我々の一族が無事に戻るまでじゃ。その為に我は来た。・・・召喚師の村の、最後の生き残りよ、それでよいな?」サラマンダ―はそう言うと、ブラウンの腕を掴んだ。

 「聴け、我は 炎の神の申し子にして、誇り高きサラマンダ―の長である。この、地上の最後の召喚師である人の子に我は力を貸す事を誓った。我は、この宣誓を一族の誇りにかけて守り抜くであろう!」サラマンダ―に掴まれた腕が、一瞬炎に包まれた。と、見る間に印が腕の中に残った。「これは、誓いの印よ。炎の神も、これを見れば分かるであろう。」腕を放すとサラマンダ―は踵を返して、元の姿に戻った。「この、貧相な馬はお主のものか?食おうかと思ったが、まあ良い。この次にご馳走になろう。」いい置くと、風の如く走り去っていった。

 「こうして、力強き味方が出来たのではありまするが、さても 待ち受ける運命とは?何がこの先にありまするやら。」




第 5 話

 「さて、お話は少し戻りまするが、そう、王子と王女の、
  恋のお話でございます。お二人がどのような、恋を
  されましたか、皆様の耳目を集めそうでございまするな」

ルナ・ジェファーソン・カーライル   カーライル国王女
(15歳の頃)
月の女神アルテミス

           
             <  Ⅴ  >


 それは、両国の戦争が 休戦状態になり、しばしの平和が訪れた年、今から 4年前の事でございました。王女は15歳、花のかんばせ、もう りっぱに王女のお仕事をお務めでございました。
 
 その年は、どの国も豊作で、それは見事な 果物や穀物、野菜などが日々人々の生活に潤いを与え、どこの市場も活気が溢れていたのです。

 王女様は、市場を覗くのが、何より好きでした。そして、山歩きも大好きでした。それは、崇拝する女神が月の女神で、狩の女神でもあったせいでしょう。同じ、「ルナ」月という名をもつからでもあるのでしょう。 王女には似つかわしくないと、周りは止めましたが 王女は女神様の後を追いかけておりました。女神は、人と交わるのを極端に嫌いましたが、この姫だけは何故か傍にくる事を許していました。

 ある日、女神がいつもの狩の途中で、山の中腹の横倒しになった古木に腰をかけて休んでいましたら、ルナ姫に不意に声を掛けたそうです。

 「ルナよ。お前は無邪気にわらわの後を追いかけてきたが、もうそろそろ、遊びは終いじゃ。お前が私の庇護を必要とした時期は、過ぎた。よいな?わらわは、お前の未来を変える事は出来ぬ。お前に与えられた運命は、そろそろ 動き出すようじゃ。心して聴くが良い。お前は人の子でありながら、わらわの子でもある。お前には印として、この アルテミスの弓 を授けようぞ。 よいな?それは、悪戯に使えばお前の命を奪うであろう。狩の場でも、お前の前で、膝を折る動物には弓を射っては ならん。それはわらわの 眷属じゃ。お前の朋友じゃ。弓は、大地の母に守っていてもらう。必要ならば、頼むが良いぞ。」弓は大地に吸い込まれた。

 「アルテミス様、ありがとうございます。私には、女神様がなぜそこまでして下さるのか、今は分かりません。でも、本当に もうこれで、お会い出来ないのですか?」ルナ姫は 涙に濡れた頬を拭こうともせずに、女神を見上げた。

 「ほほほ、わらわは いつも空を見上げれば そこにおろうが。昼も夜も、嵐の日であろうとも、お前のまなこが 曇らぬ限り。  よいな?この事、決して誰にも 話すではないぞ。 では、これにて お別れじゃ。」

 女神は、そのビーナスと争ったといわれる程の美しい微笑みを最後に、ルナ姫の前から、霧の中の薄日のように消えていったのです。姫はそれから、暫くは山歩きも町を散策する事も忘れたかのように、城の中で 考え込む事が多かったのでした。

 そんなある時、休戦中のラインハルト国王がカーライル王国に使者をとばして第一回の和平会議を開こうと言われたのです。ラインハルト王とカーライル王は、その200年にも及ぶ戦争の歴史にそろそろ幕を引かねばと、お考えのようでありました。

第 6 話

侍女のマリエンヌが語る・・・

 「ラインハルト王は、それは素晴らしい君主であられましたが、とても慎重で、ある意味狡猾極まりない策略を練る策士でもありましたから、ラインハルト国は近隣の国々より恐れられてもいたそうな。カーライル王は、反対にあまりに実直、豪胆な性格でしたから、これも他国より世辞など一切きかぬ堅物として、けむたがられる王でございました。」

ルナ・ジェファーソン・カーライル   カーライル国王女
(15歳の頃)           (後でマリエンヌと入れ替わる)

カイン                   王子つきの小姓
(16歳)

          <  Ⅵ  >

 
 第一回和平会議は カーライル王国で開かれる運びとなり、ぞくぞくとラインハルトの大臣や小姓 召使い等が、まるで物見遊山か何かと間違えているように、賑やかに集まってまいりました。その様子を、高い窓に身を乗り出して ルナ姫は観ておりました。ひと際 大きな馬車が城への通りを曲がって来ようとし、その中に、とても立派な毛皮のベストを着た若い男と、綺麗な顔立ちの小姓の身なりの少年を見つけました。

 「あれは、きっと王子様ね。」少しだけ、姫にも外の国に対する興味が湧いたのでしょう、ちょっとした悪戯を思いつき、侍女のマリエンヌを呼ぶと二人は入れ替わって、あちらの国の王様や王子を騙そうと思ったのです。そうしておいて、父王には入れ替わった事を話しておきました。真面目な王は、まず「困った娘だ。」と大臣にはこぼしましたが、内心では(ふうむ、あのラインハルトには、これぐらいの策は必要やも知れぬ。)と、娘の悪戯に感心したのでした。そのぐらい、ラインハルトには気を許せないと思っていたのです。

 和平会議の顔合わせはほんの一時で終わり、大広間に場所は移されて大舞踏会が催されました。カーライル王とラインハルト王は、それぞれに和平会議が始まった事やお互いの国を讃え、祝福の言葉を掛けて、満場の喝采を浴びておりました。国王の傍で、若い王子がちらちらと姫を見ている姿が壇上にあり、また人々の関心も高まりました。

 「カーライル王、初めて紹介致しますが、これがクレイバー・ラインハルト・ジュニア。息子です。」王は、息子の背を押すとそういった。王子は少し顔を赤らめて下を向いていましたが、歳は16歳、文武両道の噂に違わぬ王子よ、と、カーライル王は誉めました。

 「これが、我が娘、ルナ・ジェファーソン。歳は15歳になる、おてんば娘ですわい。」本当はその隣にルナが控えておりましたが。(お父様、お上手!)娘は傍で王子の事をじいっと見ていました。(マリエンヌには、気の毒だけど私はそんなドレスを着たくなかったのよ。ごめんね。)侍女はお姫様らしく優雅に踊っていましたが、そのドレスは流石、一流の仕立て屋が1ヶ月かけて縫い上げた物だけに、どこも非の打ちどころのない物でした。(でも、姫だというだけで、和平会議の間中、夜は舞踏会。考えただけでも、頭痛よ!)

 周りが、自分に注意を払わなくなったのを良い事に、姫は夜風にあたろうと、バルコニーにでたのです。 「こんばんは。お嬢さん。」少し、ほてった頬で振り返ると、王子の連れていた小姓がそこに立っていました。

 「・・・こんばんは、ラインハルトの方。」ルナ姫は、まさか誰も来ないだろうとたかをくくっていたので、びっくりしました。「夜風にあたりたいのですが、お邪魔じゃないですか?」そう、丁寧に訊かれて、またびっくり。

 「どうぞ、ここは誰の場所でもありませんから。」「いえ、あなたが先にいらしたから。あなたの場所です。」「面白い方ね。侍女にまでそんなに丁寧に話すの?」「ああ、私は女性に対しては失礼があってはならないと、それは厳しく教わりましたから。」「しつけ役に?」
「ええ、しつけ役に。」・・・・面白い人、なんで私、こんなに男の人と話しているんでしょう?

 「あなた、王子の小姓でしょ?ひまなら、明日山登りしない?とても眺めのいい丘があるわ。今の季節は、ライラックがとてもいい香り。お弁当を作るから、どう?」小姓は、一瞬ためらいましたが、喜んでその申し出を受けました。

 次の日姫は朝から大急ぎで厨房を借りて パンと少しばかりのハム、トマトの採れたてとをバスケットに詰め、約束の場所へと向かいました。

 「いい眺めだね!」小姓は丘の中腹で、カーライルの緑豊かな平原を眺めていました。
「私はあなたの名前、聞いてないわ。」「そうだった、俺はカイン。君は?」「私は、マリエンヌ。」二人は、自分の国の事を色々教えあい、下らないゴシップや、面白い話題をいつまでも話していました。

 「カインは、王子の事どう思っているの?」姫は本心で王子の事を聞いてみたくなりました。「どうって、俺は仕える身だから。お優しい方だと思うよ。俺達 下の身分の者にも声をよくお掛け下さるし。・・・でも、我がままだな。うん。」「へえ、そう・・・・」「じゃあさ、ルナ姫はどうなの?」「えっ、ええ、とても良い方よ。私のご主人ですもの。どんな人にも分け隔てないお姫様よ。・・・でも、なんで気になるの?」「いや、君が訊くから、ちょっと気になっただけさ。さあ、もっと上まで行こうよ!この山は不思議だね?歩いても全然疲れないや。」

 (・・・それはそうよ、女神のいらっしゃる山だもの。でも、この人も疲れないの?不思議だわ、私の侍女達はみんな上がる事さえ嫌がったのに?)こうして、2人で過ごす時間はあっと言う間に過ぎてゆきました。

第 7 話

「ルナ姫は、マリエンヌと入れ替わってカインと毎日楽しく遊んでおりましたが、段々嘘をついているのが辛くなってきたのでございます。」

ルナ・ジェファーソン・カーライル   カーライル国王女
(15歳の頃)           (後でマリエンヌと入れ替わる)

カイン                   王子つきの小姓
(16歳)



          <  Ⅶ  >

 和平会議は、事の他順調に進んでいる様でありました。マリエンヌも、姫らしい姫を演じていてなんの苦も無さそうで、ルナ姫は感心して言いました。「あなた、この仕事が終わったら、役者になれるわ!」「姫さま、ご冗談ばっかり。早くお戻り下さいな。」「そうね、その内ね。」生返事で、今日はカインと何をして遊ぼうか、考えるのでした。

 「・・・カイン?どうかした?」魚釣りに夢中かと思ったら、ボーっとしている様子。
「一体どうしたの?魚は嫌いだった?」「いや。・・・・・もう、和平会議は終わりだなって。もう、調印式が行われる頃だよね。」「そうね。」
「1週間、来る前は俺、長いなあって思ってたんだ。」「・・・そう。」
「でもあっと言う間だったんだ。」「・・・・うん。」
「このまま、この国と俺達の国が仲良く国交を続けていく事が出来たら、いいな。」「・・・・・・・うん。」
「・・・でも、まだ第一歩なんだ。うちの国にはカーライルを占領しようという大臣達が大勢いる。半分は、そんな奴らだ。」「・・・・・・」
「だから、俺達はまたいつ、会えなくなるか分からないんだなって。・・・・マリエンヌ、俺は・・・・」カインは、釣りを止めると真剣な面持ちで、話し出した。

 「笑われても、いい。怒ってくれてもいい。マリエンヌ、実は俺は、クレイバー・ラインハルトだ。王子がこんな格好をして、何をしているんだって思われてもいい。それよりも、大事な事は、俺が君の事を好きになってしまった事実だ。君を愛している、マリエンヌ。」

 姫は、あまりの出来事に、その場から逃げ出したので御座います。その胸の内は熱く、反対に手足は氷のように冷たくなっておりました。(どうしたらいいの?)こんな気持ちは初めてだったのでございます。
 
 (ああ、調印式の終わりを告げる鐘の音が、響き渡っている。このまま、あの王子と別れてしまうの?私に耐えられるのでしょうか?)姫は、ご自分の部屋に入ると、鍵をかけて1人で居りました。大広間には、皆が集まっている事でしょう。そして、閉会の宣言がなされれば、姫の事もこの国の事も、王子にとっては一瞬の夢、幻になってしまうでしょう。
 
 その時、声が姫の耳には聞こえて来ました。「怖れるな、我が娘よ。そなたはわらわの自慢の娘ではないか。」振り返ると、そこには ほほえみをたたえた女神の姿が。「女神様!」
「よい、そなたは 善き人と出逢ったのじゃ。忘れてはならぬ。そなたは、我が娘。怖れずに自分のゆくべき道を歩むのじゃ。よいな?」

 調印式が終わり、皆は壇上に国王が並ぶのを見て、またそこに、見慣れない素晴らしい若者が立っているのを見て、驚きの声を上げました。

 「カーライル殿、私は、実は息子を隠しておりました。何故そのような真似をしたか、と言われまするな。この国にも、まだ私の国に対して敵対心を持つ輩が居ますゆえ、和平が結ばれるまで、せめて息子だけでもと、思った次第です。お許し願いたい。」ラインハルト王の言葉に、オオ、と声が上がりました。
 
 ざわざわとした広間で、カーライル王が何か、言おうとした時、広間の正面のドアが静かに開きました。 
 
 そこには、ルナ姫が 立っていました。その、輝くばかりの金色の長い髪に美しい白い薔薇が飾られ、純潔の月の女神より贈られた純白のドレスを身にまとい、それは不思議な光沢のある絹でした。瞳の色と同じ水色のアクアマリンの王家の指輪をして、大きく開いた胸元には、ムーンストーンを何列もつなげたネックレスをしておりました。その姿は、長く吟遊詩人達の語り継がれるところとなりましたが、人々は、息を呑み 姫が目の前を通り過ぎてゆくのを、まるで奇跡を見るような面持ちでただ、見守りました。

 その姿を観て、クレイバー王子は、全てを理解しました。そして、前にでると言いました。
「・・・姫、私は、あなたがカーライルの姫君だから あなたを愛した訳ではありません。あなたの全てが私には 必要なのです。」

 ルナ姫は、応えて言いました。
「王子、私も あなたが 王子ならどんなにいいかと、ずっと想っておりました。今、私はそうであって良かったと、心から思っております。この国とあなたの国が永遠に結ばれる時、わたくしはあなたのお気持ちに従います。」

 その言葉の後は、もう国王達も、姫も王子も祝宴の最中に呑み込まれ、歓声や祝福の嵐に人々は酔いしれました。

 最初に会ったバルコニーに二人は立っていました。
「ルナ、君は不思議な人だ。その姿は、女神のように美しい。君は女神に愛されているんだね?」王子は、溜息をつきながら 姫を見つめた。「その姿を、最初に見なくて良かったよ。」
「何故?」「・・・最初に見ていたら、もう君と話なんか出来なかっただろうからね。」大真面目に言う王子の横顔に、姫は笑った。「・・・こんなふうに?」

 白い薔薇が、髪から落ちて、ルナのバラ色の唇がやさしく王子の唇に重なりました。あまりに優しいキスでした。王子は、すぐにひざまずいて、ルナの手をとると、あらためて言ったので御座います。「ルナ姫、私の女神よ、私は命を賭けてこの平和を守ります。あなたと、あなたの居るこの国をあなたとともに、永遠に愛していくでしょう。」

 「そうでございます、この時より全てが始まったので御座いました。」
by f-as-hearts | 2005-04-21 00:08 | ファンタジー小説

タロット占い師ASのブログです。


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