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闇色の魔法使い~ブラックウィザード

・・・・神々が突然消えた世界の物語・・・・


その大魔法使いは、誰よりも深い闇の色を纏っていた。
そして、彼は自分を、ブラックウィザードだと名乗った。


第 1 章 「 神々が消えた夜 」


第 1 話 「 巫女 ミーリア 」


「あらゆる神話神書の曰く。・・・・ああ、そこじゃない。211ページ目だ。
この世は大いなる神々の規律・戒律・法律という三原律の教義に護られている。
いにしえより、神々の声を聴く事が出来る神官が教義をこの神書に記した。
より神々の意志に近づく道は、この神書より始まる・・・・・・」

大神殿の中で教えを受けている次期神官達は、大神官カザードの授業をあくびを噛み殺し
ながら紙に書き写していた。

6大陸の東に位置するコラスタ大陸のクリムナン王国は、東に海を臨む絶壁、西は
3000メートル級の山脈に囲まれた、他国には侵略されづらい地形だった。
産業も農業や養蚕などが主であり、その為に戦争とは無縁ののどかな王国であった。
しかしそんなクリムナン王国にも他国の戦争の惨状は伝わっていた。
戦火で逃亡を余儀なくされた人々が、助けを求めて神殿へと避難してきていたのである。

次期神官達の多くは、クリムナン王国に多数存在する神殿の、守護神官になる為の
修行を受けに来ていた。大神官のいるこの大神殿に宿泊していたが、今はそんな避難民の
生活のお世話をすることも仕事の一つになっていた。
段々と、戦争が激しくなる中、大神官カザードは神々の声が聴こえなくなったことに
気づいて、愕然としていた。

それは、神書に書かれた未来の章の、不可思議な文と一致していたのである。


大神官カザードには、16歳になる一人娘のミーリアがいた。
彼女がいずれ神官となる者と婚姻し、この大神殿を護る立場になることを、誰も疑わなかった。
ある日、カザードは娘に大神殿で話したいことがあると言って、普段は大神官以外入れない
奥の殿へ招いた。

大神官カザードは、白絹の光るマントに銀の杖を持って、神殿の火の前で神書を開きながら
娘に話しかけた。

「・・・・ミーリア。
どうやら・・・・・・・・・予言の通り、神々は我々に試練を与えようとしている。
いや・・・・・試練、ではない。宿命、というものかもしれない。
怖ろしいことだ・・・・・・」

ミーリアは黙って聞いている。背が伸びた・・・だが、まだ16歳・・・・母親譲りの銀色の髪。
白い肌・・・・母親がもしも居たのなら、ミーリアを連れて逃げるように言えたものを・・・・

「人間の戦争が、神々の怒りをかっているのだ・・・・」
「全ての人間が、悪いわけではないのに・・・・」
「それはいつの時代であろうとも、そうなのだ。大昔に書かれた、この神書が、何故
未だに未完なのか・・・・何度も同じ歴史を繰り返しているからだよ。

・・・・私は、怖ろしい。
今に、神々の怒りがどんなものか、わかる時が来る・・・・」

ミーリアには父カザードの不安はわからなかった。彼女にはそういう、精神的脆さが
欠落していたのだ。ミーリアは父の両腕に抱きしめられて、少しでも父の気持ちが
わかればいいのにと、心の中で思っていた。

「お父様、きっと大丈夫です。神々は私達をお許し下さいますわ。」

父は、ミーリアの明るさが救いであり、また悩みを深くもしていることを、どう話して
聞かせればよいか、わからなかった。

「・・・・ミーリア・・・・大神殿の巫女であるおまえに、心配をかけてしまったね。

・・・・私も、できるだけのことをしなければならないようだ・・・・」


ミーリアは自分が巫女であっても、そう自覚したことがないままだった。
大神官である父が、何故こんなに不安になっているのか・・・・
神の怒り?それは一体なんなのだろう?

だがミーリアはすぐにそのことを考えなくなった。
大神殿でお世話しなければならない人々が、大勢ミーリアを待っているのだ。
人々が口々にこの国は幸せだと言った。戦争で家族を殺されて、皆が毎日眠れない
夜を過ごしていた。

「きっと皆様が、故郷に帰れますように。みんなで祈りましょう。」
ミーリアの子守唄が夜の神殿に静かに響いていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2013-12-27 22:11 | ブラックウィザード

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