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サウザンド・アイランド    16

異世界の島の物語。



サカマキ・ショウゴ         ・・・28歳   検査員
カネムラ・オクトー         ・・・19歳   研究員
エリック・ジェイントン       ・・・5歳    S級会員
マーマレード・リリア        ・・・20歳   保護委員
ワインバーガー           ・・・60歳   ???
メラニー               ・・・33歳   科学者
長老                 ・・・??    ???
レゼンダ               ・・・??    ???
イムズ                ・・・??    ???


第十六話 「 イムズという男 」


イムズは自国の空軍の会議に出席していた。
円卓会議と言う様な、大げさなものではなかったが、巨大なホールの円形
会議室は、中央が沈んだ、伏せた円錐形だった。
その、底にあたるところに、会議を主に進行する空軍大佐とイムズがいた。
イムズはその軍服に数々の勲章をつけていた。

会議を見つめる、壁のように整然と並ぶのは、軍議に参加を許された少数の
副官と中佐クラスの者達だった。彼らにとって、イムズをその眼で見られる機会
など無いに等しく、周りの静かな興奮は、大佐をして妙な会議だと言わしめた。

空軍の新たな戦略的基地配備と、空港配置による連携の確認が一通り終わった
ところで、大佐がイムズに感想を求めてきた。

「革命は我々の大勝利で幕を開けたが、その立役者であるイムズ大佐・・・
いや、今は将軍になられたが、イムズ将軍、今回の会議の総評をお願い致します。」

イムズはゆっくりと立ち上がり、中央のテーブルに手をついた。



「皆に訊く。・・・危機は去ったと思うか?

革命は、終わったと思うか?

自分の役割は終わったと思うか?




私は これからも特殊任務に就く。

君達に 期待している。


・・・・・・・・・・以上だ。」


イムズはそのまま、ドアへと向かった。

皆が立ち上がり、敬礼の姿勢でイムズを見送った。

大佐が帽子を下げてつぶやいた。

「・・・格好つけやがって。・・・死ぬなよ、イムズ・・・」


ドアの外でイムズを待っていたのは、若いパイロットだった。
敬礼の姿勢から、そのまま、イムズに向かって口を開いた。

「イムズ将軍、私はパイロットで、エラルー2等兵といいます。
少々質問してもいいでしょうか?」

「かまわんが、短めで頼む。」
「はいっ!!

イムズ将軍は超能力者ではないかという噂を聞きました。
革命の大功労者である将軍が、超能力者だなんて、凄すぎ
ます!!憧れます!!それは、本当なのでしょうか?」

イムズはちらっとその男を見た。
そして、さっとその男を掴むと、もろともに空間に消えた。


次の瞬間、イムズだけが戻っていた。

帽子をかぶり直すと、低い声でつぶやいた。

「・・・・・馬鹿が。

私の軍で、私のことを知らぬ者は、いない。
そしてそれを噂する者は、いない。

おまえは、自分が偽者だと、白状しただけだ。


・・・どこの国だ?こんなまぬけを使うのは?」


イムズはぶつぶつと独り言を言って、そして異次元へ消えた。
空軍大佐がドアを開けて通路に来た時には、すでにイムズは
いなかった。大佐の部下が大佐にイムズのことを訊ねてきた。

「大佐、イムズ将軍の任務は、また、極秘でありますか?」
「そうだ。将軍になっても、イムズが安穏と椅子に座っている
訳がない。

あの男は、肩書き通りの生き方なんかしないんだよ。
・・・誰よりも軍隊が似合う。怖ろしいことに、ね。」

大佐はイムズの今回の任務について、何も聞かされていなかった。
だがさっきのスピーチを聞いて、一抹の不安を覚えていた。

・・・危機は去ったと思うか?・・・・・・か。

イムズは常に、先を見据えている。
そして、軍では、常に自分の役割を優先させてきた。
・・・何か、何かが違う・・・

それが何なのか、がわからない。



大佐は部下に笑いかけた。「君はイムズ将軍の元で働きたいか?」
「はい。私は能力と言えるほどの能力者ではないのですが・・・」
「・・・私はイムズと共に、青春時代を過ごしたからわかるが、
彼と共に行動できることは、奇跡だ。
君が、能力者なのだとしたら、是非彼を助けて欲しい。

・・・だが、今回だけは、特殊だと思う。」
部下である青年は大佐を見つめている。

「・・・今回の任務が終わったら、考えよう。ところで・・・
君は、映画は好きかね?」「は?はい、好きであります。」
「・・・戦争物は良いな。君は、あの有名な映画を観たかね?」


イムズは異次元を彷徨いながら、狂気にかられる先程の男を
見て、冷ややかな眼を向けた。

「もしお前に能力があるなら、あんな言葉で近づかなかった
だろうが。


・・・エリック・・・・・・・・・・・・

俺は、お前が怖い。

だが、捕まえてみせる!!!それが俺の任務だからな。」


ゆっくりと歩く。多次元空間移動能力とはつまり、目的地を目指せる能力だ。
どの次元であろうと、行動には始点と終点がある。多次元ではそれに時間と
重力による始点と終点を加えて、重ね合わせねばならない。
それが自然と出来るのが、イムズの持つ多次元のマップ化能力だった。

「だが、この能力では、エリックの能力は推し量れない。この世界ですら
紙のように丸めるなど・・・理解出来ない!!!
人間の領域を大きく外れている・・・・・・・・・・・・・」

イムズは自分の持つ能力で、革命を成し遂げた。
いつでもそう、成功しか彼には許されなかった。
それなのに何故、エリックには戸惑うのだろうか?

イムズの眼が、終点を捉えた。
時間にして、一週間。

レゼンダと合流できる筈だ。大きく深呼吸をして、イムズは外へと一歩踏み出した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2012-07-11 23:59 | SFサウザンドアイランド

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