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西の風が笑うまで  2

・・・遥か大昔の、剣と魔法の物語。


ノア             ・・・ 27歳   宿屋の息子

クオリム          ・・・ 27歳   召喚師

リジム王         ・・・ 59歳   グランマーク王国 初代国王  

チェリア王女       ・・・ 16歳   グランマーク王国 第2王女

ガウル           ・・・ ???  炎の眷属  幻獣




第 2 話    「 まてまてまて!!! 」



「ガウル、君に頼まなきゃならないのは、私が神々に何か頼めば、あの魔法使い
にわかってしまうからだよ」「めんどくせえな!!!」「でも、それでおまえにも、この
世界に出てこれる理由が出来ただろ?」「ふん!ちょっとは気を使ったつもりか?」
「そうそう」「・・・まあいい。今は幻獣界も平和そのものだからな!!!」

俺は2人、いやひとりと一匹の顔を交互に見て首が痛くなった。
その視線に獣がゆらりとクオリムを越えて俺の方に向かって来た。

「し・・・・召喚師様?????なんです?この・・・・・この・・・・・・・・・・?!」
「幻獣です」「いやいやいや?!そうじゃなくて」「大丈夫、いい奴ですよ」
「は???」「いい奴ってえのは・・・・・・・・・・・・俺のことか?!

はっ!!!!!

笑わせるぜ!!!!!!!今までで、一番ひでえ冗談だ!!!!」

ガウルは口から炎の息を吹いた。

「クオリム、おめえじゃなかったら、喰らってるところだ!!!!」

その真っ赤な炎の色に、俺は気を失った。




目が覚めたら、もう昼近かった。







ああ、あれは夢だったんだ・・・・・・・



ははは、そうか、よかっ・・・「おい、早く起きろ!!!!!」

浅黒い顔、ギラリと光る眼、鋭い牙のように見える歯が、こっちを向いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どちら様で??」

「何度もいわせんな!!!!俺は、ガウルだ!!!!!」

「ノア、彼は今、君の為に人間に化けているんだ。・・・・・・・あら?」
「おい?!!!!!!めんどくせえのも、たいがいにしろよ!!!!!
白眼むいてるんじゃねえ!!!!いいか、今日中に王様に渡すぞ!!!!
クオリム、さっさと説明しとけ!!!」

何がなんだか、何でそうなるんだか、何なんだあああ~~~~~~????

ずっと俺は叫んでいたさ、思いっきり心の中で!!!!!!

クオリムは丁寧に説明してくれたが、結局・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結局は!!!!!!!!!!




「召喚師?」

門番が怪しそうな眼で俺を睨んだ。

・・・結局は、俺が召喚師のふりをしなけりゃ、城には入れない・・・・・・・・
今の俺、恨みがましい凄んだ顔に見えないかな・・・

「ああ、そうだ」「名前」「クオリム」「出身地」「言えない」「・・・・・・そうらしいな?
・・・・・年齢」「27歳」「用件」「王様の謁見」

・・・・・・・・・・なにやらもうひとりと話し合っていたが、2人で俺を見ると、言った。

「召喚師、魔法を見せてみろ」



俺は、手を前に突き出した・・・・あ、違った・・・・・いけねえ!!
手は上だよ上!!!!


「炎の幻獣よ、あれ!!!」

俺の影から、巨大な体躯の幻獣が現れ・・・・・

「うわああああ!!!!!!」2人の門番は、慌てふためいてテーブルの後ろへ
隠れた。「く、く 喰わないでくれ!!!!!」


・・・・・・お? なんか、気持ちいいもんだな?!

「・・・・・・・・もういいぞ」

ガウルは鼻を鳴らすと、影に消えた。

城の中の鏡の部屋で俺はひとり、呼ばれるのを待っていた。
扉が開いて、小姓が俺を呼んだ。


謁見の間は何段か高くなった場所に大きな椅子が2つあり、顔を伏せて待っていると
王と王女が2人で並んで椅子に座った。

「王様、召喚師、クオリムでございます」王の御付きの大臣が言った。
「この者があの・・・魔法の宝を持っております」大臣が俺に近づいて来た。

俺は胸のポケットから小箱を取り出そうとした。
その時、ガウルの唸る声が聴こえた。



「待て!!そいつから獣の臭いがするぞ!!!!俺の名を呼べ!!!!!!」

「?!出でよ、ガウル!!」

ガウルは炎の幻獣の姿でその大臣に飛び掛った。


皆が悲鳴を上げたが、大臣は飛び掛られる前に、巨大なアナコンダに変身した。

「おまえは?! ガウル!!!!」
「ずいぶんなところで遇うもんだな!!!幻獣界から逃げ出したお尋ね者が!!!」
「幻獣界の番犬の分際で!!!この貴族の私を愚弄するか!!!!!」
「幻獣界を逃げた奴に言い訳されたかねえな!!!」


「ま、まてまてまて!!!!!!!」
俺の声に一瞬2匹(??)は振り返った。

「おい、おまえの狙いはこれだな?これだな??いいか、俺はこれを持って逃げる!!
ガウル!!!おまえは王様達を守れ!!!」

俺は後ろも見ずに扉から走って逃げた。外へ!!
やべえ・・・・俺、何こんなに頑張ってんだろ・・・・
だってよ・・・・・・・王女が泣きそうだったんだよな!!!
くっそ~~~~~~!!!馬鹿じゃねえ??俺・・・・・・・
兵隊達がへっぴり腰で謁見の間を覗いている。

「お前ら、剣持ってんだったら、戦えよ!!!」俺は逃げながら叫んだ。


ガウルは唸ると王様達をすぐに隣の部屋へ避難させた。

「おい!!!!!キングアナコンダ!!!
てめえの狙いは確かにあの箱だな!!!

行かせるかよ!!!!!」ガウルの牙が閃くと胴体に牙を食い込ませようとした。
アナコンダは尻尾を大きく振ってガウルを払おうとした。勢いよく尻尾の一撃を
喰らって、ガウルが吹っ飛んだ。
アナコンダが城から外へ、俺を追いかけてくる!!!

俺は足が地についてるというより、地面をドシンドシン、バタバタ動かしている
みっともない動物になってる気がした。アナコンダはシュシュシューーーーーッと
俺の背中に迫って来ていた。

「ちきしょーーーーーーー!!!!」もうこうなったら腹ん中で暴れてやるっっ!!
そんなことを考えた時・・・

「ノア!!!!伏せやがれ!!!!!!」

俺は反射的に地面にべたっと伏せた。

アナコンダが鎌首を持ち上げていた、その瞬間だった。
ガウルはそこに回り込んで横から体当たりした。

「ノア、動くなよ!!!」

獣の皮が焦げるような臭いと悲鳴が響き渡った。俺は静かになった背中の方を
振り向いた。ひっくり返って黒こげの、巨大なヘビがそこに横たわっていた。

「ヘビ肉は鶏肉みたいな味だが、食うか?」ガウルは皮を口で引きむしりながら
言った。
「・・・・・・・・・怖いんですけど・・・・」「ふん!」ガウルはかまわず、食い続けていた。


「ノア、箱は無事だろうな?」「ああ・・・」俺はそういうと、仰向けにひっくり返った。

「そうだ、ガウル、もう君だけでこれ、届けても大丈夫だろ?
王様を助けたんだしさ!」

ガウルは頷くかと思ったら、首を振って言った。

「王女が、お前に会いたいらしい。

かっこよかったとかなんとか・・・・・・俺は別にどっちでもかまわんけどな!!!」


「マジか?!」
俺はガバッと起き上がった。「あの、王女が???」

「しらん。そう聴こえただけだ」「・・・・・・・・・・・行く」「なら、背中に乗れ!」「え?」


ガウルは俺が背中にいることなんか、まるで蚊ほどにしか感じていないようだ。
「ガウル、これ・・・そんなに価値のある宝なのか?」「まあな。俺はいらねえけどな」
「ヘビの仲間は、もう来ない?」「さあな」「悪い魔法使いが狙ってるんだよな?」
「・・・・・・・・・・・・・ふん。昔っから、そういう宝は狙われるものなのさ!!
・・・・・着いたぞ」「ああ・・・・・・・」

門番は敬礼をして俺を通してくれた。
「クオリム殿!王様がお待ちでありますっ!!」

俺とガウルは並んで王様の前に立った。

「クオリム召喚師殿。王様が褒美をとらせるとのことでございます」女官がそういうと
大臣が大きな指輪を持ってきた。

「これを・・・」
その指輪は琥珀で、細かなグリーンの光る羽のような破片が中で光っていた。

台座つきの指輪なんて生まれて初めて見た。それを俺はぼんやりと眺めた。
「綺麗ですね・・・・・・・」

王様が話しかけた。

「先程の礼を言う。まさか、化け物が大臣に変化していようとは・・・・・
私達は、召喚師殿が助けてくれなければ、今頃・・・おお、考えただけでも
怖ろしいことだ。姫も・・・あなたに感謝している。チェリア、そなたからもお礼を」

姫はその16歳には見えぬ可愛い瞳を俺に向けた。
「ありがとう、クオリム召喚師どの・・・」玉座から降りて、指輪を手に持つと
その白い指が俺の手をとった。
「これを受け取ってくださいませ。これは代々王家に伝わる琥珀のひとつです」



指に触れた途端、俺は目が覚めた。
・・・・・・・違うんだ、俺は!!!・・・・・・・・

「待ってください。
王様、王女様、俺は召喚師じゃありません。
ただの、宿屋の息子です。

俺は、クオリム召喚師に頼まれただけです。
ガウルが王様達を助けただけです。

嘘ついて、すみませんでした。
俺、すぐにクオリム召喚師を呼んで来ます」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-09-30 21:34 | ファンタジー小説Ⅷ

タロット占い師ASのブログです。


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