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水色の光 14

カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

ザワールガス教皇     ・・・ 70歳    ルクール帝国 ルクール教皇

エシュリー教官       ・・・ 24歳    ルクール帝国特殊警部補 女護衛官

オリランドー教官      ・・・ 53歳    ルクール帝国特殊警部  特別護衛官

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

レイン             ・・・???    ルクール帝国  反宗教活動家


第 14 話



後世に「 審判 」と名付けられたその絵は、千年の時をずっとカテドラルの大聖堂と
共にあった。カシュクが修復しなければ、現れなかった色、筆のタッチが、今蘇った。

そこには柔らかな花びらのような淡い色の、聖母が見つめる世界が描かれていた。

皇帝は、「・・・私は、まるで今、初めて観たように、感動している」と述べた。
レンカは唸っていた。「カシュク!!お前って奴は・・・!!」
エシェリーは、審判の絵を何度も観ている筈なのに、涙が流れて驚いていた。
オリランドーも、大扉の前から、絵の方へ歩き出していた。

合唱団の皆の持つキャンドルに、ひとつ、ひとつ、火がつけられていった。
ひとりが、隣の者のキャンドルに火を移す、またその火はその隣の者へ・・・・・・・

その火は、牧師達の持つキャンドルへも灯されていった。
照明は消されていた。

その輪の中心に、カシュクは立っていた。


「・・・私は、このエドラ・カテドラルの、この絵が、この場所にかかげられた時を
想像しました。絵画が、教皇を導くという意味を。

ルクール教の始祖である聖ジファスの為に、彼を心から尊敬し敬愛した画家が
この絵を、このカテドラルに置いたのです」


天窓がきらりと光った。

太陽が天の高い場所へとゆっくりと移動し、光は天窓から斜めに差し込んできた。

天窓のガラスは縁がカットされて光はキラキラとそこで乱反射した。
そしてシャンデリアに全ての光は落ちてきた。
シャンデリアは鏡のように、この瞬間一番輝き、その光を審判の絵に集めた。

その光は眩い光の洪水のように絵を包み込んだ。
カシュクは見上げていた瞼を静かに閉じ、ゆっくり息を吸った。そのしぐさは
光を吸い込んでいるように見えた。そのまま、カシュクは客席の方へ身体を向けた。




「・・・さあ、ここに おいで」

まだ眼は閉じたままだった。 カシュクは片手を伸ばした。



その手に向かって女の子が近づいてきた。

カシュクは眼を開け微笑んだ。




「・・・教皇代理、この娘をご存知ですよね?

皆さん、この子は現教皇の孫娘のミランです。

・・・ミラン、あの絵を観て。 ミランなら、わかるだろう?」


カシュクはミランを抱き上げて、自分の胸より上に持ち上げた。



ミランは、絵を指差した。「私がいるよ!」


「そうだね、あれは聖母なんだ。聖女ファクターリアだよ。
ありがとう、ミラン」

ミランは可愛らしくカシュクに挨拶をすると、母親の待つ席へ戻った。



皆があまりのことに息をのんでいた。

その光景に、皇帝が、カシュクと絵とミランを順に眼で追っていた。
「カシュク殿、今 何と・・・・・・・・」


「はい。ミランは聖母の生まれ変わりです」


レインがたまらず大声を出した。

「な・・・・・・・何を馬鹿な?!そんないい加減なことが信じられるものか!!!
嘘をつくな!!!!」



「・・・奇跡は、いつも 突然起こるものです。

私は、ミランに会った瞬間、その顔が聖母そっくりなのに驚きました。
そして、予言のリングは鳴りました。

その時、奇跡は起こると思ったのです。

歴代の教皇の宣誓文の中で、6代目の教皇は書いていました。
絵は輝く ・・・私は光に導かれる・・・

絵が輝くと書いていたのは、その教皇だけでした。

私は最初に聞いた話を思い出しました。
ご神託を受けたのは、聖母、聖女ファクターリアだったと。
そうです、この絵に導かれるのは、聖ジファスの魂だったんです」


皇帝は、頷くと、言った。

「・・・現教皇が、あなたをこの国に招いたのも、奇跡だったのでしょう。
この絵が、そんな奇跡を起す・・・心からの感謝をあなたに。
・・・私は、是非あなたに次期教皇を、お決め戴きたいと思います」

レインは歯軋りをして下を向いていた。教皇代理は傍にある台座につかまって、かろうじて
立っていた。カシュクはだんだんと移動してゆく光を見つめた。




「皇帝陛下、そして皆さん。

私は、絵が教皇を選ぶという伝説の、その真実を探していたんだと思います。
ですが、真実は聖ジファスにしかわからないのです。この絵は聖ジファスに捧げられた
ものだったんです。聖ジファスの魂を導く、聖母の心がここにあります。

つまり・・・
この審判の絵は、教皇を選ぶ力があるのではないのです。
宣誓文に出てくる、絵と光の記述が、全ての誤解の始まりでした。

それからです。現教皇の思いが理解できたのは。
教皇は、絵を怖れていました。自分は、教皇に相応しくないと
いつも思っていたと、私に打ち明けられました。



教皇代理。

現教皇は、あなたに次期教皇になって戴きたかったのです。
あなたの信仰心は気高く尊い、そう認められていました」


代理は、その言葉に、床にひれ伏した。

「・・・・・・・・おお、おお・・・・・・・・おおおお・・・!!」



レインはその様子に、じりじりと隠し扉の方へ動いていった。
レンカは大きな声で言った。

「それでは、カシュク殿。
次期教皇は、教皇代理である、この・・・」

「・・・ジェライド牧師、あなたを新教皇に任命致します。

これは、現教皇の、願いです」



それは、この場の皆が、思いもしない結末だった。


レインは、この国の宗教自体を全て滅ぼすつもりで教皇代理と結託していたのだ。
(カシュク!!!!それを、防ぐ手立てをここに来て考えたというのか・・・・・?!)

レインはもう、ここまでだと思った。
レインは隠し持っていたスイッチを押した。



(・・・・・・・・・????なん・・・・だ?どうした??爆発は???)


レンカが、レインの方を見た。そしてひと言。



「どうかしましたか?レイン?」


ざわっ!!!!!!皆の間に恐怖が走った。

「レイン、だと?!どこに??あの、テロリストがここにいるのですか?!」
皇帝は慌てて辺りを見回した。

「ええ。それが、ですね。・・・レインは自首するそうです。
私が、これを持っているので」レンカは録音装置を見せた。
「小部屋で何か話していたらしいんですよ~?」

レインは、その時自分の完全な敗北を知った。
新教皇は振り向かない。

レインは吐き捨てるように言った。「・・・・・・・・覚えていろ!!!教皇!!!!」

カシュクは言った。

「レイン、あなたはこのカテドラルと共に皆の宗教心を破壊するつもりだったのでしょうね。

それが、どれ程怖ろしいことか、考えた方がいい」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-08-21 23:59 | ファンタジー・水色の光

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