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水色の光 11

カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

ザワールガス教皇     ・・・ 70歳    ルクール帝国 ルクール教皇

エシュリー教官       ・・・ 24歳    ルクール帝国特殊警部補 女護衛官

オリランドー教官      ・・・ 53歳    ルクール帝国特殊警部  特別護衛官

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者

レイン             ・・・???    ルクール帝国  反宗教活動家


第 11 話


エシェリーの電話が鳴った。
「オリランドー教官!良かった、ご相談したいことが・・・・・・・
はい・・・・・・・はい、わかりました。そちらに向かいます」

真夜中のエドラ・カテドラルは、周囲の物々しい警戒とは裏腹に、小さな照明が点々と
点いて、静かにまるで眠っているように感じられた。オリランドーはエシェリーをカテドラル
の大聖堂に呼んでいた。勿論、そこにも警備の者達、牧師の姿もあった。

オリランドーは覆いの掛かった絵の前にいた。
そこには、体格のよい牧師と小柄なシスターが共にいた。
「エシェリー、この牧師様が式の進行をしてくださる。そしてこのシスターが大聖堂で
参列される女性客や子ども達のお世話と案内をされる方だ。牧師様、我々特殊警部部の
女護衛官、エシェリーです」「よろしくお願い致します」

牧師はエシェリーの胸元でパチンと指を鳴らした。

「ルクール神のご加護を。それでは、当日の流れをおさらいいたしましょうか」
シスターが笑いながら言った。「小声でお願い致しますね。レンカ牧師」
「そうですね~そういたしましょうか。エシェリーさんは美人ですね、美しいということは
よいことです」「神よ~愚かな牧師に是非罰を当てたまえ!おほほほ」「・・・はい??」

エシェリーは眼をパチパチさせて驚いていた。オリランドーは頭を掻いていた。

「・・・・・・・そうなんだ、この人は牧師じゃない。
カシュク殿の仲間だ。美術教会最高顧問のレンカ殿だ。こちらのシスターは美術教会の
軍隊の隊長で武術師範のミナ殿。・・・レンカ殿はカシュク殿をかくまっているそうだ」
レンカは言った。
「俺は言うなれば、魔術師みたいなものでね。ちょっと面白い業を持っている」
パチン!

大聖堂の中にいた警備の男達の何人かと、牧師数名が、突然耳に手をあてて
その場から静かに去っていった。
「シスター、あと、よろしく」「わたくし、今日の正装は気に入ってますのよ」
「あと2、3着は必要ですね」「まあ、おほほほほ。ごきげんよう」シスターは大聖堂に
入っていた他のシスターに小さく手招きをして、ロングスカートをひるがえして出て行った。

「何があったんですか??」「耳が聴こえなくなった敵が数名」「て・・敵ですか?」
「正確には、耳に入れていた受信機が壊れただけですがね~」「え???」
「・・・だ、そうだ。私も聞いても信じられなかったが」オリランドーは唸りながら言った。

「・・・これで、君も自由に動けるよ。エシェリー。カシュクがエシェリーが可哀想だと
心配していた」レンカはまじまじと彼女を見た。
「エシェリー、カシュクみたいな奴の、どこがいいんだ??」「はい???」
オリランドーが咳払いをした。「すみませんが、レンカ殿。本題に入りませんと・・・」

「そうだな・・・・まず、面倒だが、俺達が何故こうしてここにいられるか?を
説明しておくか。ルクール教の牧師の中に美術教会員がいる。そういう仲間は
世界中にいるもんでね。情報は早い。まあ、どの業界、どの業種でも同じだよ」
「非常にわかりやすいですね」「ありがとう。それから俺が来た訳は、明日わかる。
エシェリー、君の役割はカシュクをカテドラルに連れてくることだ。
・・・出来るか?」

エシェリーはレンカの鋭い眼に怯んだ。「はい」「どう転んでも?」
エシェリーは吹き出した。「・・・・・・・・・!はい、やり遂げてみせます」
その返事を聞いて、レンカは微笑んだ。
「・・・・・・・出来れば、すんなり何事も無く終わって欲しいんだ、俺は!!
もう、アレルギーがでそうなんでね!!!」「何のアレルギーですか??」
「頼む・・・・・・・・・・それだけは、訊かないでくれない?」「?はい?」「いいこだ!」


3人はそれから詳しい話を続けた。当日教皇の代理の牧師が司会を務める。レンカは
進行に必要なことを全て把握し、その用意をする役どころだ。
その先のことは、カシュクが話したことでなければ、到底信じられない話だった。

「長年付き合ってきた俺にも、未だに訳がわからんのだからな~!
カシュクの頭ん中は、きっと誰にも理解不能だな!」「長いお付き合いなんですか?」
「ああ、2年間も、だ!」「え?2年、ですか??」「エシェリー!君はカシュクと2年付き
合う自信があるっていうのか?!」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」「ほらみろ!!」
「レンカ殿、そのう・・・時間も時間ですので、エシェリーをカシュク殿のところまで連れて
行ってくれますでしょうか」「いいぞ、じゃあ腕を組んで参りましょうか~」「いえ、それは」
「レンカ殿~~!!」「ははは!頭カタイなあ!!!」「・・・・・・・・・・・・・・・・」

外の空気はひんやりとして気持ちが良かった。
レンカは早足で歩いていたが、エシェリーにとってはそれも頼もしく感じられた。
さっきまでの不安が霧散し、澄んだ鐘の音にどこか過去の世界を旅しているような
不思議な感覚にとらわれた。

カテドラル・・・・・・・・この時間を超越した場所に、また朝陽が昇る。
もう、数時間後のことなのだ。

まだ鳥達も目覚めていない小道に、木々の朝露が時折落ちてきた。
エシェリーは聖母の涙のようだと、つぶやいた。
レンカは黙って頷いていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-08-18 23:59 | ファンタジー・水色の光

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