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水色の光 7

カシュク            ・・・ 21歳    美術品修復師・美術教会特別顧問 
                            アラバイン国出身 
                            予言者のリング所持者

ザワールガス教皇     ・・・ 70歳    ルクール帝国 ルクール教皇

エシュリー教官       ・・・ 24歳    ルクール帝国特殊警部補 女護衛官

オリランドー教官      ・・・ 53歳    ルクール帝国特殊警部  特別護衛官

レンカ             ・・・ 37歳    美術教会最高顧問 理事
                           特殊能力者


第 7 話



「オリランドー特殊警部部長、通信に不穏な会話が!」
「録音したのか」「はい、すぐに確認してください」「こっちにそれを流してくれ」

ザーーー・・・・「知ってるか?教皇はもう危ない」「へえ?」「いいか、すぐに・・・」

・・・・プッ・・・・

「・・・傍受したのか?」「ええ、回線の波長がたまたま合った時に」「で、すぐ切れたのか」
「気づいた、としか・・・」「・・・・・・・・!いいか、回線の傍受に気づくという意味がわかるな?
誰かがスパイとして入り込んでいる。・・・・今、そちらにいく。待っていろ、通信班」

しかし、その情報は遅かった。
すでに、人々の間で教皇が危篤であるという噂が流れ始めたのである。
相次ぐ爆破や道路の封鎖でイライラしていた人々は、それを聞き、いよいよこの帝国が
危ないのではないかという危機感をつのらせた。

その日から人々は教皇への祈りを捧げる目的でカテドラルの周りを取り巻くようになった。
その数は日に日に増え続けた。封鎖されているカテドラルを何万人もの人々が見上げて
いた。その静かだが大きなうねりは警備の者達に動揺を与えた。その中にレイン一派が
紛れ込んでいないか見張り続けねばならず、その神経をすり減らすような仕事に、皆が
疲弊していた。

「オリランドー教官、今なら寝ていても大丈夫ですよ」
カシュクは絵の修復をしながら、振り返らずに声をかけた。「すまん・・・少しだけそうさせて
もらえれば・・・」洞窟の中は涼しく、オリランドーは程無く横になり寝息をたてていた。

カシュクはレインという人物について考えていた。
教皇が危篤になったということは、レイン達が手を下す必要がなくなったということだ。
レインが考えそうなのは、あとは、どうやったら一番教皇の権威を陥れられるか、だ・・・・

カシュクはレンカからの連絡で、もうエドラ・カテドラルの周辺は大丈夫だと聞いた。
レンカ達の軍隊は本当のエリートだった。その姿に軍隊だと気づく者達は皆無だった。
「カシュク、俺をこき使った代償は、大きいからな!」「まだこき使ってません」
「俺達の仕事を、見せてやれないのがくやしい」「一生見なくていいです」「ぬかせ!」

電話では軽口を叩いていたが、レンカの仕事は驚異でしかなかった。
どうやるのかわからなかったが、その特殊能力は武器の発見とその解除だった。
だから、彼が行く場所には彼は普通の、一般人の姿で紛れ込んでいた。または変装・・・
その彼が、こき使ったと言ったのだ。・・・どれだけの武器がそこにはあったのだろうか。
発見された武器を、何事もないように取り除く。それがまたこの軍の特殊たる所以だった。

レインはその報告を受けて、歯軋りをしていた。

「なんだと?!武器が水道工事の車で持ち去られた?!そっちはなんだ・・・
ビルの清掃人だ??言い訳をするな!!!何故わかるような場所に置いた?!
絶対にわかる訳が無いと思った、だと???じゃあ、そいつらが何故すぐに持ち去ったんだ
???今すぐ地下に埋めた爆破物の確認を・・・無い???なにもないだと??????

・・・・何がおこった?!一体・・・・お前達、すぐに総動員で敵を探せ!!!」

凶悪な刃がこちらを狙っているような寒気を感じて、レインは震えた。

あれだけの、人員と時間をかけて設置した爆発物をどうやって・・・・まさか、逆スパイが??
それしか考えられない・・・レインは数名の信頼している部下に病院の様子を聞いた。
変化はない・・・教皇の安静状態は変わらない・・・カシュクが、予言のリングで何か指示した
のか??・・・・そうだ、そうに違いない。

「カシュクがひとりになったところで、捕まえるんだ!!いいか、あいつが絶対爆発物の
撤去を指示しているんだ!!急げ!!!」

レンカは軍隊の皆の首尾に満足していたが、レインの次の行動をカシュクと共に予測して
いた。
「そいつがお前に会ったってこと事態、よほどの自信家だとわかるが。そういう行動を
取るのなら、お前のリングを狙いにくるだろうな」「そうですね」「どうする?」「リングだけでは
意味がありませんから」「わかっているじゃないか!だからどうするって・・・」

「レンカ最高顧問には、やって欲しいことがあります。それは・・・・・・・・・」カシュクは説明
した。レンカは呆れたように頷いた。「・・・・・・・・・・・!!!本当か?!うう~~~ん・・・・」
しばらく沈黙が続いた。
「わかった。・・・・・・・・それじゃ、当日、だな!」「はい、お願い致します」「うう~~~~ん!」


レンカとその軍は街の中で人知れず人々の安全に気を配っていた。そのせいで街中で起こる
ケンカや争いなどもいつの間にか静かになっていた。警備の軍の者達はそれでずい分助け
られていた。「レイン達の暴動は、起こらないんじゃないか?これだけ平和な街を壊そうなんて
正気の沙汰じゃないよな!」「まったくだな!よう、今日も見回りごくろうさん!どうだった?」
「ああ、たまたま怪我して動けない男を運んできたけど、それだけだったな!」「今日は1件
だけ・・・と。他には?」「なんか、やたら綺麗なシスター達がいたんだ。あれは、よかったな!」
「いいなあ!!!どこで見かけたんだ??」「ええと、そこだよ、あの花屋の角」「了解!!」



「シスター、そっちは?」「ええ、とてもうるわしく」「それはまったくよろしいことです」「おほほ。
・・・お似合いですわ」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」「その本、逆さまですわよ。おほほほ・・・」
「シスター、靴が汚れておりますよ」「あら・・・・失礼致しました。ちょっと思いもかけないもの
を蹴飛ばしてしまいましたの」「・・・おみ足、大丈夫でしたか?」「おほほほ。ごきげんよう」


カテドラルの内装も着々と祝賀の為に磨き上げられていた。
「閉鎖の時期は騒ぎで早まったが、どっちにしてもこの完全清掃の為に閉鎖しなけりゃ
ならなかったんだ。こっちにしてみりゃ、気が利いてるってところだな!」清掃担当の男が
笑いながら彫像を磨いていた。「ところでよ、今回は特別料金ってことだ!!これで半年
遊んでくらせらあ!」「ああ、普通こんな手間かけるなんざ、ありえねえからな!!」
「おい、それを磨き上げたら、指示通りきっちり動かしてくれ!いいな?」「へ~い」

絵の修復は終わった。カシュクはその絵を元通りにカテドラルに掛けることをオリランドー
に頼むと、椅子に腰掛けたまま眠った。
オリランドー教官には全て頼んである・・・・・・・カシュクはいつしかぐっすりと眠っていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(この お話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-08-10 23:59 | ファンタジー・水色の光

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