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音の惑星 ミリオンドール  3

その星には永遠に鳴り響く結晶があるという・・・


ケイゴ トミタ           ・・・ 27歳  宇宙空母パイロット

アイナ               ・・・ 25歳  ケイゴの恋人

エンジェル            ・・・ 31歳  宇宙空母エンジン技師

キャプテン             ・・・ 52歳  宇宙空母艦長

ジュール              ・・・  7歳  宇宙移民の子



  <後編>


ケイゴはエンジェルと2人でこの惑星で買出しと情報を集めると言って、組んだ2人と
別行動で地上に降りた。2人は女性だったが、エンジェルはその片方の方をやたらと
けなして言うのだった。「あんなに男らしい奴はいないぞ!俺のおっかあにそっくりだ!」

惑星ソーシェルの総統府のある都市は、地球の大都市となんら変わらなかった。
しかしそこに住む人々はかなり様子が違っていた。女性も男性も、その気候のせいか
薄着で女性は特に目のやり場に困るような、胸をはだけたデザインの洋服を着用して
いた。ケイゴもエンジェルも、ついつい情報を女性からばかり聞き出そうとして、女性達
に仕舞いには敬遠されてしまった。「なんでこう、ここの女性達は魅力的なんだ??
みんなギリシャ彫刻の女神のようじゃないか!!」「・・・・・ちょっとやりすぎたらしいよ。
地球からナンパしにきた変な奴らだと思われたらしい・・・エンジェル、あそこの男性に
話を聞こう」

今度はいかにも商人風で金持ちの、ふてぶてしい顔つきの男に話しかけた。
こちらが知りたい情報を持っていそうに見えた。「すみません、私達は地球からつい先程
宇宙船で着いたばかりなんで、伺いたいことがあるんです。今皆が探しているという
惑星のことで・・・」「なんだね君達は?!新惑星の情報を簡単に手に入れようなどと、
大それたことを考えているのかね?そんな輩ばかりがこの街にはびこるようになって、
一番迷惑しているのが、私達商人なんだよ。私の商社でもレアメタルは貴重品なんだ。
・・・邪魔だ、さっさとうせろ!!」ケイゴが何か言おうとしたのを押さえると、エンジェルが
ずいとその商人に胸を張って大声で答えた。

「おいっ!!俺様は地球一巨大な戦艦、宇宙空母スカイライダーのキャプテンだ!!
てめえがどれだけすげえ商人かしらねえがな、俺の船が出てきたら、どんな惑星だろうと
1週間で見つけてみせるぜ!!!」

その、迫力に商人だけでなく周り中がざわついた。「・・・おい!!聞いたか??あの、
空母の・・・だってよ!!」「ええ??さっき聞いてきた人達、そんな凄い人だったの??」

「・・・・・これはこれは!!勿論存じておりますよ?!先程我々の仲間が、地球の巨大
宇宙空母がドック入りしたと教えてくれましてね。・・・失礼いたしました。

・・・・それで?何をお聞きになりたいのですかな?」突然態度を変えた商人に、ケイゴは
嫌気がさしたが、エンジェルは今度は声をひそめて言った。

「新惑星の情報で、気になることがある。そこにはセイレーンがいるだろう?」
商人の顔色が変わった。「・・・・・・・!何故、それを・・・・・・・・・まさか地球にまでそんな
噂が??」「地球政府に、ここの惑星の総統が依頼してきたんだよ!だから知っている。
キャプテンだからなっ!!」(嘘ばっかついて大丈夫なのか?)エンジェルは平気な顔で
続けた。「セイレーンのいる惑星じゃ、人間は近づけねえ。違うか?」

商人はふてぶてしさをかなぐり捨てて、真剣で真面目な顔つきでエンジェルを見た。
「・・・方法はあります。誰も怖がってやりませんが。・・・耳の機能を麻痺させるんです。
一時的にではありますがね。     ・・・そうだ、貴方達ならできるでしょう?


・・・どうですか?セイレーンの正体と、そこに在る筈の、希少なレアメタル・・・
もし手に入れたなら、私が、貴方達の言い値で買取りますよ?」
エンジェルは頷いた。「いいだろう。それじゃ、目撃情報を教えてくれ」

商人は本気だった。彼が雇った屈強な男達が、やはり何人も行方不明になっていたのだ。
ケイゴ達は皆が準備しているホテルに戻ると、さっきの話からどうすべきか考えた。

「・・・班の女達には悪いが、こいつは危険すぎる。やっぱ、俺達だけでいくしかないな。
それに・・・商人が譲ってくれた薬、耳を麻痺させる奴だが、これも2人分しかねえ。
それだけしか手元になかったらしいからな・・・ケイゴ、規律違反で俺らは処罰もんだなっ!!
どうするよ?」「・・・・・・・・・・その、惑星には行方不明の人間が大勢いるんだ。
そうなら、行くしかないだろう?」「へっ!!!まあそうなるかな」「頼りにしてるよ」

2人は誰にも言わずに小型宇宙船を発進させた。そして、あの商人の言っていた小惑星ベルト
から惑星ソーシェルのグレイの月の方へ航行した。突然、地上からの通信が船の中に鳴り
響いた。「・・・・・・キャプテンだな」「キャプテンだ」「ま、キャプテンにはあとで報告すりゃいい」

グレイの月はもう一つの月と対になっていて、その鈍い輝きはケイゴには地球の月を思わせ
・・・アイナならどうするのだろうかと考えるのだった。


丸3日は小型宇宙船で光速運航してそれらしき惑星はないか、探し続けていた。

「・・・・・・・!ケイゴ、あれを観ろよ・・・・!!」
グレイの月の影に隠れるように、小惑星の隕石群・・・小惑星ベルトの中、その惑星はチカッと
光った。「・・・・なるほど!!月の、影に重なるような位置にあったってわけか!!!」

宇宙船は危険な隕石群を慎重に進んでいった。「やっぱすげえな!!!こんなとこ、俺なら
怖くて一歩も踏み込めねえよ!!!ケイゴの腕がなけりゃ、皆生きて帰れねえ!」

惑星群の太陽からの距離は十分で、それは奇跡のような美しさの惑星だった。

「・・・・・・・地球・・・に・・・似てる・・・・・・・・・・でも、もっと・・・・・・」

大気に透けて見える海はエメラルドグリーンに輝き、太陽に照らされている大気には
虹のような光彩が惑星をリングのように取り巻いていた。
「・・・・・・!エンジェル、薬は飲んだか?」「ああ。もうすぐ何にも聴こえなくなる。そうしたら
あの惑星に突入しようぜ!!」「了解。今のうちに説明しておくけど、この星からレアメタル
の反応がある。やはりあの商人・・・」そこまで言って、ケイゴは周りから音が消えたのが
わかった。エンジェルも、こっちを見て耳を指差している。
「効いてきたわけか・・・じゃ、いくぞ!!」


惑星は小惑星ベルトの中にあり、確かに宇宙星域立体地図にはその位置を記されていな
かった。そしてそれは無理も無いことであった。小惑星の中には、この惑星とさほど大きさの
変わらない、昔惑星が壊れて岩の塊と化したものまであったのだ。そしてどうやらこの惑星は
惑星ソーシェルから見て、グレイの月とは直線上にあり、小惑星ベルトの速度とグレイの月の
見た目の速度がほぼ同一なところから、見つけられなかったのだとわかった。
「ケイゴ、理屈はわかったが、これからが大変だ。なにせ声が聴こえない」「そうだな」
エンジェルが身振り手振りで伝えてきた。ケイゴは惑星を指差すと、操縦桿を下へ向けた。


大気が振動していた。空気が震えている、宇宙船の中にいても身体に感じるということは
どれ程の音なのだろう??ケイゴはぞくっとした。
宇宙船は静かに惑星へ降り立った。

そこは大昔の地球のように巨大な植物や、動物達の楽園のようだった。地上でセンサーを
使い、行方不明の船の反応を捜した。宇宙船のモニターには半径3キロ周辺には何も金属
反応がなかった。5キロ、まだ無い。10キロ・・・・・・微かに左方向に小さな点があった。
エンジェルにそれを見せると、もう一度上空へ上がり、その方向へと向かった。

空気が風と音で揺れている、そんな不思議な感覚が、この大気にはあった。
何が音を出しているのだろう?ケイゴは不思議でならなかった。または、それが人工物だと
して、そんな大掛かりなものをどうしてこの星の生物がつくったのだろう?

宇宙船は反応のあったその場所を旋回して、遭難しただろう船を捜した。
ケイゴはエンジェルに下、下、と合図した。そしてゆっくりとその場所へ降りた。
2人はその宇宙船を見つけた。外へ出ると、その宇宙船へと急いだ。中には何もなかった。
この船の乗組員は??PCで確認すると、その船の機体から3人のクルーがいた筈だと
わかった。船内のPCはすでに壊れていて、船内には食料も水も十分すぎるほどあった。
エンジェルは首を振って、行こう、と合図した。ケイゴはその船の様子を映像に残しつつ
そのままこの惑星の自然も映していった。
2人は音が聴こえないので、音源がどこなのか、どちらへ向かうのがいいのか・・・その判断
を迷っていた。しかしそれがわかったのは、自分の身体の反応だった。

・・・・風、ではない振動が、一方方向からやってくる!
2人は顔を見合わせた。間違いない。・・・それは空の雲にまで及んでいた。
動物達は何食わぬ顔で2人の前を歩いている。その様子からみても、人類を知らないのか
と思えた。ケイゴはずっと映像を映し続けた。

火山らしき山々も遠くに見える。時々鳥が羽ばたいて現れて2人を驚かせたが、音が聴こえない
という怖さを初めて経験し、2人は探査用スコープを常に観ながら進んだ。
行方不明者が音源の方へ歩いていったという根拠はまるでなかった。だが、エンジェルの言う
セイレーンに魅せられたのなら、きっと・・・    だが今は、ただただ観える世界が、美しかった。

エンジェルがケイゴに合図した。ケイゴはそこに水筒が転がっているのを見て、中身を確かめた。
林の雑草から何かが飛び出して来た。

子ども???
それは予想していなかった事態だった。2人は水筒を無理やり取り替えそうとする子どもに
驚いて、その水筒を放した。子どもは何も話そうともせず、2人は自分達が耳が聞こえないのも
忘れて、こどもを安心させようとしゃがみながら、ゆっくり話し出した。
「おめえ、遭難者だな?俺達は、おまえを救助に着たんだ」「大丈夫だよ、船もあるんだから」
こどもは首をすくめると、そのまま林の中へ走って逃げていった。2人はすぐに後を追った。

林の中を抜けると、そこには小川が流れて、少しずつ段差になって上へと続く道が出来ていた。
見上げて、2人は・・・驚きのあまり息を呑んだ。

「・・・・・・古代文明??そんな、馬鹿な?!」
そこには、ピラミッドやマヤ文明にも似た建造物があった。ただ違うのは、それが全て金属で
出来ていたことだった。「・・・・・・・・ま、まさか?!これは全部、レアメタルか???」
その金属の建造物は緑色の藻類や苔に覆われていた。センサーは希少レアメタルだという
表示を示していた。商人の顔が一瞬浮かんで消えた。

子どもはその建物の脇に空いた空洞から中へと入っていった。ケイゴは映像に全てを映そう
と気にしながらも、こどもを見失わないようにエンジェルに先に行ってくれと合図した。
中はとても広かった。そして・・・・・・そこに、大勢の人間がいるのを発見して、大声を出した。

「おめえら?!一体何をしてるんだ??」皆は倒れこんでいるものや、壁際で座り込んでいる
もの・・・生気を失っているような顔であった。こどもは、エンジェルの大声にも振り返らなかった。
「もしかしたら、おめえ・・・・・・聴こえてないのか??」振動は、その奥の大きな金属のドーム
から起こっているとわかった。あれもレアメタルだ・・・・そうだ・・・・・

だがここにいる筈の人類・・・この惑星の先住民は、どうしたんだ??
「どこにいるんだ?君達は・・・この惑星は、一体どうしたんだ?」ケイゴはたまらずに大声で
呼びかけた。
金属のドームの球体が回転して、ドアのように開いた。









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2011-02-11 00:00 | SF音の惑星ミリオンドール

タロット占い師ASのブログです。


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