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召喚師 ミンクの冒険 19

・・・昔々、召喚師が大勢いた頃のお話。


ミンク・デリーシュア       ・・・20歳        召喚師

アーカディ・カッシ         ・・・19歳        魔法使い

ホワン・イーリイ          ・・・28歳        武術師範

ガウル               ・・・???        召喚獣 火炎妖魔 

カロン・デリーシュア      ・・・51歳         ミンクの父 召喚師


・・・・・過去の世界・・・・・

ノルン・デリーシュア      ・・・22歳         ミンクの母 妖精族

セト伯爵              ???        時間城の謎の人物



第  19  話   「 母の秘密 」



ミンクは自分が妖精の血のせいで小さくて、それはコンプレックスだったが、今の5歳の
自分は最悪だ、と思った。(近所のうるさい犬と、おんなじ大きさじゃない!!)
ミンクが時間魔法のことを何も言わないのを見て、母は安心して皿を並べていた。
「ほら、ミンクの好きなオニオンスープに卵焼きだよ~!」パンと温かな湯気があがる
スープに、つばが湧き出た。「お父さんもすぐに戻るといいけど、先に食べよっ!」

そこに、どたどたと村人が現れた。「ノルン、大召喚師様がお呼びだ、急いできてくれ!」
「・・・ええ・・・・・・ミンク、いい子でお留守番ね」母はミンクに笑いかけた。
「お母さん、私も行く!」ミンクは急いでついていこうとした。「・・・待っててね、お父さんが
戻ってくるから待ってるのよ」優しい声だった。ミンクは扉の前で立ち止まった。

ミンクは母が出かけてから、少し待って追いかけた。母が向かった場所は大召喚師の
ところだとわかっていた。外はすっかり日が暮れて、全天燃えるような夕焼けが目に
飛び込んできた。さっきまでの恐ろしい空と同じとは思えない・・・ミンクは急いでいた。

大召喚師の館はミンクはよく知っていた。館の中へ静かに滑り込むと、ミンクは部屋を
探して辿り着いた。中から数人の声が聴こえた。
「・・・それではおまえはあの魔法陣を知らないというのだな?」「ええ、なんのことですか?」
大召喚師の声が聴こえた。
「妖精族が使う魔法のひとつでね、聖なる魔法陣というのね。・・・そう、知らないの。
・・・ならいいよ。ではね、皆はもう帰っていいよ。私はもうちょっとノルンに話があるから」

部屋からばらばらと召喚師達が出て行った。ミンクはそばにあった籠の陰に隠れていた。
静かになった部屋の扉に耳をつけてミンクは話を聞こうとした。

「ノルン、妖精族の魔法は初めて観たけど、あれね・・・確か、大変な魔法だったね?
どうして、使おうと思ったの?・・・・神々は確か、君達にあれ、使っちゃいけないって
いってなかった?」ミンクはどきっとした。・・・もしかしたら、大召喚師様は時間魔法の
ことを言ってるの??胸の鼓動が早くなる・・・母は、なんと言うのだろう?

「大召喚師様に 申し上げます。私はカロンの妻として、この村に嫁いで参りました。
それはご神託だったのです。どうぞ、それ以上はお尋ねになりませぬよう。
私の役目というものを、まっとうさせて頂きたいのです」

「・・・そうだったの。おお・・・ノルンがそれで良いならば、ね・・・

・・・しかし、2度はないからね、ノルン。それだけは絶対にいけないよ。約束しなさい」
「・・・・はい・・・」

カチャ・・・・・ギィィィィ・・・・・・・母が外へと出て行った。
扉から声が響いた。「・・・・ミンク、こちらにきなさい」

ミンクはそーっと扉から大召喚師の元へ歩いていった。心臓が早鐘のようだった。
大召喚師は笑っていなかった。目を閉じて、手をミンクの頭に乗せて、言った。
「・・・お前の母、ノルンはただの妖精族ではないよ。素晴らしい魔法使いだ。
お前は母を誇りに思い、あの母の魔法を継ぐのだろう・・・
だが、それは今、ではないのだよ・・・・・・・・



未来より来たるミンク、おまえならわかるね?こどものおまえはすべて忘れる・・・
その方がよいのだよ・・・・・

今は、母におもいっきり甘えておいで」
大召喚師はそう言って、ゆっくりとその手を離していった。

ミンクは、涙が溢れた。そうだ・・・大召喚師様は、冥界の神にその未来を尋ねられた
のだ、きっと、そうだ・・・お母さんの、その未来を・・・・・・・・・
ミンクは召喚師の試練を受けた時のことを思い出していた。あの祠を・・・・・・・
ミンクは武道でのお辞儀をして、大召喚師の前から走り去った。
大召喚師は頷いた。「ほう・・・・そうだったのか・・・・ノルン、お前の子は賢いよ」


ミンクは走った。チビのミンク、ほら走れ、走れ!!!お母さんはあの夕焼けの下だ。
「おかあさーーーーーん!!!!」

母は振り返った。夕陽に輝く金色の髪、小柄で華奢な身体、そして22歳でミンクと
ほとんどかわらない歳なのに、大輪の花のような笑顔で。
ミンクはべたっとこけた。「あら!!!!だ、大丈夫???」


「だいじょ・・・・・うぶ~~~~!!」「もう、泣いてるのに大丈夫なわけないでしょっ!」
そう言いながら、母は笑った。「痛いの~~?おんぶしてあげようね」

夕陽と母の背中と・・・自分の小さな手がミンクの気持ちをそのまま母に伝えていた。
「お母さん・・・・・」「ん?」「・・・・・大好き・・・・・・・」ミンクはまた泣いていた。
「あはは!!!お母さん、幸せだな~~~~!!ミンクが好きっていってくれたから」

ルル・・・・・母の鼻歌が、その背中から空へ飛んでいくようだった。







・・・・・・・・・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)









・・・・雑感 9・・・・


他の神話同様、北欧神話にも主神オーディンには正妻である女神フリッグがいるのだが、英語の金曜日を意味する「Friday」はその女神、「フリッグの日」という意味から由来しているそうだ。そして他の神話とも共通点があるのが、オーディンが象徴するものが「天空」であるのに対してフリッグは「大地」なので、ふたりの関係は天と地の結婚ということになる。天と地の神の結婚というと、逆なのがエジプト神話の天の女神ヌトと地の神ゲブ。二人は絡み合うように抱き合っていた為、天と地の間に何者も入る余地がなかったが、それに業をにやした女神の父の大気の神が二人を引き離し、ゲブはこれに抵抗したが繋ぎとめられたのはヌトの手と足だけだった。こうしてヌトは天球状の空になり、天と地の間に空気が流れるようになったという話。

・・・かなり不思議な話である。そしてこれらは世界創世の話ではない。天と地は、いつも神々の美しい祝福なのだとする思想なのだろうと想像する。

これから秋になり・・・そんな神話の話が思い起こされる美しい季節が来る、そう思いたい。
by f-as-hearts | 2010-09-01 23:59 | ファンタジー小説Ⅵ

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