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SF小説 ジェームズ・ビンセント博士の憂鬱 14

 登場人物 

 ジェームズ・ビンセント博士   38歳    科学者 アンドロイド製作・研究 の第一人者
 
 執事                 80歳    ジェームズ博士の執事

 T・W                 ??    ザ・フー  博士の助手

 リョウ・ロバートソン        38歳    日系アメリカ人 探偵 

 トンボ                12歳    本名 アレックス・K・ロートレックス 天才少年
                            リョウの相棒

 リンダ                ??    元国際警察・犯罪捜査官

 アオイ                ??    ジェームズ博士のアンドロイド

 山藤所長              ??    ザ・フーのメンバー 博士の友人




  最終話  「 博士の憂鬱 」



国防省長官は、博士がそのコールドスリープ状態から解けるのが半日後だということを
確認すると、すぐに軍本部へ連絡、その場の部下全員を更迭して軍の輸送車に乗せた。
彼らの処分はやはり内密に行われるというが、長官はシェード事務次官の処分について
は、フーに伝えた。「刑務所送致は決定だ。今後のことを考えると、その方がお互いの為
に良いだろう」「・・・わかりました。後程博士には伝えます」

研究所はまた何事も無かったように静かになった。
トンボは、ベッドに寝ていた。リンダも疲れたのか、ソファーで眠ると、部屋を出て行った。
フーと山藤所長は、刻々と元に戻っていくジェームズ博士の様子をチェックしていた。

今は、アオイとリョウだけが、その部屋でモニターに映る博士を観ていた。

デジタル表示だけがモニター画面で動いていた。リョウは、アオイの横顔を見つめた。
「・・・・アオイ、俺はまた、博士に騙されるところだった。
博士は、お前に、パスワードを教えていたな?・・・そうじゃなければ、お前がパスワード
の秘密を知っている訳が無いよな・・・・・」
「いいえ?パスワードは知らなかったんです」「嘘だろ?」「本当です。知っていたのは
2重パスワードという事実で、最初のパスワードの逆だという事だけです」
「!・・・じゃあ、あの、トンボに大丈夫だと言ったのは、本当にアオイの気持ちだったのか!」
「そうです」

リョウはマジマジとアオイの顔を見た。「お前に、不安という感情は、ないのか?」
アオイは微笑んだ。「トンボのことは知っていますから」「確かに天才だ・・・・だけど12歳の
子供だぞ??」
「博士は、トンボがいつか自分の悩みを解決してくれるだろう、と言っていましたから」





少しの沈黙が流れた。
「・・・・アオイ、お前がどうして博士に創られたか、俺はわかった気がしている。
お前は、博士の奥さん・・・・ジョリーンの代わりなんだ。
彼女は・・・・不幸にも、交通事故で亡くなった。

・・・・・・その時、俺の・・・俺の一生の中で、大切なものが全て過去に逝ってしまった。
お前を見ていると、苦しいんだ・・・・・お前は、一生、変わらないんだな・・・・・・・
だからこんなに苦しいんだ・・・・・・・・・・

ジョリーン・・・・・・・何故、俺は、お前を一生守ると、言えなかったんだろう。
何故、俺は・・・・・・・・」



「・・・・・・・・リョウは、今も ジョリーンが好きなの?
私のことを、 守ってくれるんじゃないの?」



リョウは、息が止まるかと思った。それは、まるで奇跡のような言葉だった。
いつもの声が、いつも聞いてる筈の声が、まるで生きている女性の声に聞こえたのだ。

「・・・・・・・ああ。・・・・夢の中で、ジョリーンにも頼まれた。
・・・・・・お前を、一生守ってやるよ」

アオイは笑った。

「・・・・その前に、博士は一発ぶん殴るけどな!」



「は~~~~~っくしょん!!!!」博士は、大きなくしゃみをして目覚めた。
「・・・・博士、おはようございます。体の方はいかがですか?」フーは笑いながら尋ねた。
「とてもいいようだ。何しろ、面白い夢をずっと見ていてね。久しぶりで、レム睡眠の楽しさ
を思い出したよ」「ははは、そうでしたか!」「君達には迷惑をかけたね」「いえいえ!」

アオイが博士を覗き込んだ。「はい、おっきして!」「・・・・アオイ、それは何の番組かな?」
「ベビーちゃんと一緒、です」「大人には言わないように。いいね?」「はい」

周りは笑いをこらえるのに必死だった。「博士~~~あのう、観ていい番組一覧表を作成
しましょうか?」フーの声は、ふるえていた。「・・・いや、いい。これもアオイに自由を与えた
結果の一つだから。それから、笑うのを我慢するのは、健康に良くないと思うが」


それから、数日があっという間に過ぎ、博士が政府の研究施設へ向かう日になった。
「私は、これからまたアンドロイドの研究に10年はついやすだろう。人工頭脳の新たな設計
も待っているのでね。皆とも、連絡は取れなくなるが、何かあればまたこちらから連絡する」
「いや、俺はもうごめんだね」「そうだな。今度はもう少しボクシングを習ってからの方が、
君の為かもしれないが」「ジェームズ、博士のくせに趣味が悪いな!」「プロレスよりはいい」
「・・・・ほんと、あなた達って・・・・呆れてものが言えないわ!!じゃ、私はこれで。
ごきげんよう」リンダは笑いながら去って行った。

「アオイはどうするの?」トンボが心配そうに聞いた。「アオイはアンドロイドだから、狙われる
よね?」「それなら・・・」ジェームズ博士が言った。「アオイがもうボディーガードを頼んだそうだ」
「・・・頼んだ?誰に??」「・・・・・君に、守れるのかね?」

「何だって???それは俺をまた馬鹿にしているわけだな?!そんな手に俺が乗ると思って
いるのか?そんな、みえみえの手にーーー」「リョウに守ってもらうから、大丈夫です」
「アオイ~~~~~~~!!!」「・・・ということらしいね。では、皆さん、ごきげんよう」



博士が去った後・・・・・・
3人でのおかしなおかしな生活がここから始まったのだが、それはまた別のお話。
はたして、博士の憂鬱な日々は終わりを告げた・・・かどうかは、定かではない。
しかし、執事が政府の研究室という新たな環境で、憂鬱になったのだけは確かなようだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(このお話は フィクションです)
by f-as-hearts | 2010-03-01 23:59 | SFジェームズ博士の憂鬱

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