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ファントム Phantom 25

第  25  話    「  終幕へ   」



ジェラールはゴードに今までのいきさつを聞いた。
ーーしかし、ある1点だけは、正規の誓いを立てて貰わねば話せない、とゴードは
突っぱねた。
それは、何故医者がブランに殺害され、それがどう王家と関係があるのか、
という問題だった。

「・・・じゃあ、どんな誓いを立てれば、聞かせてもらえるんだ?」
「--うーん・・・そうだな、王様の前で、自分は一生聞いたことを誰にも話さない、この誓いを
破った場合は死刑を受ける・・・というところかな」
「・・・・凄いな。・・・・だが、ゴードは勿論知っているんだよな」
「関係者だから、というしかない」
「・・・俺を信じてくれ、と言っても無理か。まだ付き合いが浅すぎるからな」

ゴードはちょっと笑った。「まだ3回しか会っていない」
「いや?4回だね。深夜の劇場で」
「ああ、あれか。・・・あの怪盗はお前だったんだ!やっぱり怪しいなー!」
「なんだと?!だから、お前には言われたくないって!!」「あはははは!!!」

「---そんなことより、ゴード、お前俳優に戻るんだろうな?」
ゴードはまた笑った。
「さてね?どんな運命が待っているかな」
街道を足早に渡りながら、ゴードは言った。

「おい!これだけは言っておくぞ!もう追いかけっこはごめんだからな!」



王宮のサロンでヴォーグ・レーヴィエ卿は、グラハム王と午後のお茶を愉しんでいた。

「・・・・・思うに・・・・」グラハム王は何の脈絡も無く話し出した。
「我々は常に安定を求めているが、不安定で不確かな、変化するのが当然の理の
この世界では、安定とは実は常に、バランス、調整の中でしか存在しないものなのだな」

「ーーなるほど・・・」レーヴィエ卿は頷いた。
「--つまりそれは、これからも誰かがその調整をすべきだと言う、お考えでしょうか」

「うむ・・・・次の王にも、そのような者が必要であろうと思うが、どうだ?」
「ルシウス殿に、ですか?」

レーヴィエ卿は、微笑んだ。

「・・・・愉しみでございますな。   これからの世界が・・・・・」










               E N D










・・・静かな書斎にて


ローレンス・イクシアン卿は いつもの書斎で台本を書いていた。
そこへ、従者が来客を告げた。

ローレンス卿は仕事を切り上げると、すぐに客が待つ応接間へと向かった。


そこにはシャトー・エンタールⅡ世が明るい窓際を背にして立っていた。
2人は挨拶もそこそこに本題に入った。

「ローレンス卿、大変ご心配をお掛けしましたが、ゴードが戻って参りました」
「そうでしたか、エンタールⅡ世殿よろしかったですね」

「--それが・・・何から説明すれば良いものか・・・・・
王と、レーヴィエ卿には敵いませんな、全く・・・・」
エンタールⅡ世は手短かに事情を話した。
「・・・ほほう・・・そこまで謎は解けた訳ですね。・・・・・それでは、ゴードは芝居に戻れそうですね」
「・・・私は、それをあなたに伺うつもりで、失礼とは思いましたが参りました。
ローレンス卿、ゴードを許してもらえますでしょうか?」

ローレンス卿は、ふっと、表情を和らげた。
「--いえ、事情は大体わかっておりますから」

エンタールⅡ世は、頷くと言った。
「私とゴードは不思議な縁で結ばれておりましてね。王家との因縁もございますから
嘘偽りなく、この国の為にこれからも働くことになるのでしょうな。

・・・また、ゴードの為に台本を書いて下さる時は、是非私にもお教え下さい」
「ええ、そうします」

ローレンス卿は、エンタールⅡ世を見送ると、また書斎に戻った。
そして引き出しの奥の、書きかけの手紙にペンで書き加えた。



     ・・・追伸


    いつか  必ず  君と約束した台本を 書こう。

    君が 出会った 魔術師や警部達  舞台でまた一緒に

    活躍する日ーーー

    その時は  どんな世界で君は  戦っているのだろう

    君が 満足する作品を  作りたいと思っている

    それまで      待っていて欲しい



    ごきげんよう



                    ローレンス ・ イクシアン
by f-as-hearts | 2009-01-25 23:59 | ミステリー・ファントム

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